2018年5月13日日曜日

『失敗の科学』マシュー・サイド

 ディスカヴァー・トゥエンティワン。有枝春 訳。副題「失敗から学習する組織、学習できない組織」。
 失敗が人命に大きく関わる業界として、医療業界と航空業界がある。ところがこのふたつの業界には大きな違いがある。患者の10人に1人が医療過誤によって死亡または健康被害を受けているとの研究結果もある医療業界。それに対して2014年のジェット旅客機の事故率が100万フライトに0.23回という航空業界。その違いはどこから来るのか。それは失敗との向き合い方にあるのだという。失敗の原因を、仕方のないこと、個人の資質の問題にするのではなく、徹底的に科学的に調べ上げ、業界全体で共有していけているかどうか。
 医療業界だけでなく、政治においてもふつうの企業活動においても、さらにはスポーツにおいても、失敗が起きたときに誰かをスケープゴートにしてそれで解決させてしまっていることはないか。本当にその誰かがすべての責任を負うべきなのか。他に問題はないのか。こうした解決を行うことで、真の原因は改められることなく、同じ事故はいつまでも続く。逆に失敗を隠蔽することにつながり、 事態はいっそうひどい状況になっていく。本書ではそのような具体例を数多く取り上げ、失敗との向き合い方を指南する。
 大きな成功を収めている企業やスポーツ選手らは、ずっと成功の道を歩み続けてきたわけではないのだという。数多くの失敗をし、それらの原因をこまめに調べ、改善を行い、次につなげていく。そういった努力の積み重ねが彼らの成功につながっている。
 日々の報道、SNSなどを見ていると、安易な犯人捜し(魔女狩り)に終始し、それだけで満足してしまっている例が多くあるように感じる。人間はそういったスケープゴートをターゲットにすることで変な満足感、正義感みたいなものが満たされてしまう生き物なのかもしれない。しかしそういった行動や懲罰は問題解決にはつながらない。むしろ問題の本質を隠すことさえある。組織の成長だけではなく、個人の成長、社会の成長のためにも、本書を一読して、失敗との向き合い方を今一度考え直すことが大事だと感じた。

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