2018年4月13日金曜日

『これ、いったいどうやったら売れるんですか? 』永井 孝尚

 SB新書。副題「身近な疑問からはじめるマーケティング」。
 「人はベンツを買った後どうしてベンツの広告を見てしまうのか」とか、「あの行列のプリン屋が赤字の理由」、「なぜセブンの隣にセブンがあるのか」など、ふつうの人から見ると「なぜ?」と思うような商売の話題を取り上げ、それらをわかりやすい言葉で解説している。
 マーケティング理論というと何だか難しそうでとっつきづらい雰囲気がある。例えばこの本でも触れている、バリュープロポジション、ブルーオーシャン戦略、チャネル戦略、ランチェスター戦略、キャズム理論なんて、一般の人には何が何のことだか、という人が多いだろう。でもこの本では、これらの言葉を使いつつも、具体例を織り交ぜながらやさしく親しみやすい言葉で丁寧に説明してくれているので、さらっと読むだけでマーケティングの基本的な考え方がすーっと頭の中に入ってくる。
 マーケティングについての本格的な本を読破したことのある人や、マーケティングの勉強をしたことのある人にとっては、あまりにも当たり前のことしか書いていないと物足りなさを感じるかもしれない。でも世の中を見ると、せっかくいい商品を作っているのになかなか売れなかったり、とても人気があるのにすぐに潰れてしまったりする店が結構たくさんある。私はカフェや雑貨屋巡りが好きだったりするけれど、お気に入りの店がいつの間にか閉店している例は枚挙に暇がない。それはもしかするとマーケティングの基本がわかっていなかっただけのせいだったのかもしれない。だとすると、マーケティング理論というのは、商売をしている人にとっても敷居の高いものなのかもしれない。そうであれば、そんな人達にこそこの本を読んでマーケティングに興味を持ってもらい、より深い本を読んで戦略を練り、商売をしてもらいたいと思った。やっぱりお気に入りの店は潰れてほしくないものだから。もちろんマーケティングに興味を持った一般の人が最初に手に取る本としても、とてもいいと思う。

2018年4月10日火曜日

『ムダな仕事が多い職場』太田 肇

 ちくま新書。
 日本の職場には無駄が多いという。非効率でだらだらと続く会議、稟議制などの意思決定の仕組み、重箱の隅をつつくようなマイクロマネジメント、顧客に対する過剰なサービス、部分最適化した完璧主義、そして無謬主義等々。これらの無駄によって先進国の中でも日本の生産性は低くなってしまっているのだという。著者はこのように現状の仕事上の無駄を分析し、その原因がどこにあるのかを指摘し、処方箋を与えてくれる。
 この無駄をなくすためには「改善」ではダメで、「革新」が必要なのだという。そして、その「革新」には外圧や内圧が必要であるとする。そのモデルとなってくれるのは、意外にも日本の中小企業なのだという。これらの企業の置かれた状況は、欧米のそれに似ており、「革新」のヒントが多く含まれているというのだ。
 現状分析、そしてそこから脱するための処方箋ともに、実に穏当な議論をしていると思う。ただ、それはわかるんだけれど、その「革新」を行うために、日本の大企業や役所がどうやって変わっていったらいいのか、それを乗り越えるためのその壁の高さに絶望的になる。これらは構造的なものだから、社会全体の仕組みを変えるほどの外圧が必要なのではないかと感じる。今、企業や政府(行政?)の膿みがどんどん明らかになってきている最中なので、もしかしたらこれを機会に大きく変革が行われるのではないかという期待を胸にしている。

2018年4月8日日曜日

『Live in Europe』Melody Gardot

 2017年。メロディ・ガルドー。
 本作は、彼女が2012年から2016年までにヨーロッパ各地で行った300を超えるコンサートの中から選りすぐった17曲を2枚組CDに収めたものである。初め聴いたときはそんなことは知らずにCDをかけていたので、てっきり1回のコンサートの音源をまとめたものだと思っていた。だからこの音源の出自を知ったときは驚いた。4、5年にかけてまったく違う場所で行われた、まさに時と場所を超えたメロディが、見事な統一感の元にひとつのアルバムを形づくっていたのだ。
 ライヴアルバムが聴き応えのあるアーティストは、本当に実力があるんだと思う。スタジオ録音よりも素晴らしい音楽を奏でる人たちもいる。逆にライヴだと音がしょぼくなってしまう人もいる(まあこれは録音の問題もあるのかもしれないが)。メロディ・ガルドーは明らかに前者だ。ジャズ系ということで、演奏者が長めのソロを繰り広げたり、楽しげなMCや観客の声なども相俟って、ライヴ感がたっぷり味わえる。
 それにしても彼女の声は独得だ。時にハスキーだったり張りがあったり。そして一番特長的なのはビブラートを強くかけた歌声であろう。その歌声が彼女自身の作った曲の上で感情豊かに表現される。やっぱり彼女の曲はいいです。

2018年4月5日木曜日

『老人の取扱説明書』平松 類

 SB新書。
 タイトルはちょっと悪意を感じないでもないけれど、内容は実にまっとうで、とてもよかった。
 老人はキレやすいし頑固だし、赤信号を平気で渡ったり、都合の悪いことは聞こえないふりをするくせに突然「うるさい!」と怒鳴ったりする。そんなあるあるは、実は性格が悪くなっていたり認知症になっていたりするためではないんだということを教えてくれる。
 ではなぜか。それは老化のせいなのだという。まぶたが落ちてきて遠くが見えなかったり、歩く速度が落ちていたり、高い音が聞こえなくなっていたり。その老化のせいで、若い人にとってはわけのわからない行動に見える行動が、実際にはごく当然の反応だったのだということがよくわかる。さらに、その老人の行動に対して他の人はどのように接すればいいのか、自分がそうならないためにはどうすればいいのか、もし自分がそうなってしまったらどうすればいいのかについて、わかりやすく解説してくれている。
 ひとつひとつの話題が、そのどれもがなるほどとうなずけるもので、とても役に立った。老人の行動に困っている人は、ぜひ本書を手にしてみてほしい。ひとつやふたつは腑に落ちることが書いてあるだろうと思う。そうすれば、老人との付き合いも少しは良いものになることだろう。

2018年4月1日日曜日

『安渓感徳鉄觀音』遊茶

 あんけいかんとくてっかんのん。中国の青茶で、わりと標高の高いところにある福建省安渓県感徳が産地。
 鉄観音というと焙煎が強くて見た目が黒っぽいイメージがあるのだけれど、この安渓感徳鉄觀音は焙煎が軽くて、鮮やかできれいな緑色をしている。急須(茶壺)にお湯を注ぐと、もうすぐに爽やかで強い香りが辺りに漂ってくる。そして茶碗に移して口に入れると、これまたまろやかながらも爽やかな香りが口いっぱいに拡がってくる。味もとてもしっかりしていて心地よい甘さを持っており、爽やかなのに甘くてコクがあるという、なんとも贅沢なお茶である。味の好みにかかわらず、誰でもおいしいと思ってくれそうな素敵なお茶。

遊茶』東京都渋谷区神宮前 5-8-5