2017年7月19日水曜日

『規則と意味のパラドックス』飯田 隆

 ちくま学芸文庫。
 「68+57=?」と聞かれると、ふつう「125」と答える。でも彼は言う。「5だ」。「なぜ?」 。「この「+」はプラスではなくクワスだ。クワスとは、「+」の前後にある数字がどちらも57より小さいときは足し算で、それ以外のときは「5」になる関数なのだ」
 わけがわからないと思うだろう。私もそう思う。それなのに彼の言うことに反論しようとすると、いや、これこれこういう理由で5なのだ、と言いくるめられてしまう。相手を論破しようとしてもどうしてもできない。こんなに当たり前のことなのに。
 言葉、記号などの意味やその使い方は、当然わかったうえで使用しているとたいていの人は思っている。だけれど、突き詰めていくと意外とツッコミどころが満載で、言葉の意味って実はなんなんだろうと、よくわからなくなってくる。そんな不思議な規則と意味についての哲学的議論を、本書では主にクリプキによる『ウィトゲンシュタインのパラドックス』という本の内容をひもときながら展開していく。
 なかなかに込み入っていて難しい内容ではあるが、できるだけわかりやすいようにかみ砕かれていて、哲学的思考のめんどくささとおもしろさを同時に味わわせてくれる、刺激的で楽しい哲学入門書である。

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