2017年5月31日水曜日

『「原因と結果」の経済学』中室牧子、津川友介

 ダイヤモンド社。副題「データから真実を見抜く思考法」。
 いろいろと興味深い話題に触れている。テレビを見せると子供の学力は下がるのか。偏差値の高い大学へ行けば収入は上がるのか。認可保育所を増やせば母親は就業するのか、等々。ここで著者が繰り返し強調していることは、相関関係があるからといって因果関係があるとは限らないということだ(ここを勘違いしてしまう人が結構多いんだと思う)。そこで、相関関係を調べるのはわりと簡単なことだけれど、因果関係を調べるのは結構な手順を踏んでちゃんと調査をしないとわからないんだよということが書かれている。例えばランダム化比較試験とか。話題は身近だし、説明も実にわかりやすい。ほとんど数式はなく、図表も多い。統計とか経済に疎い人でも楽しく読めると思う。
 ただ、これって経済学なのかなと、また思ってしまった。一応計量経済学の初歩なんだろうとは思うけれど。最近「経済学」と銘打って一般向けに書かれている本をよく見るんだけど、経済っぽくないものが多い気がする。

2017年5月28日日曜日

『Covers』Lotte Kestner

 2017年。
 ロッテ・ケストナーは、シューゲイズ~ドリーム・ポップ・ユニット、トレスパッサーズ・ウィリアム(Trespassers William)のヴォーカリストとして活動していた女性シンガー・ソングライター、アンナ・リン・ウィリアムズ(Anna-Lynne Williams)のソロ・プロジェクト。このアルバムはファンからのリクエストに基づいて演奏したカヴァー曲の一部を集めたベストアルバムで、ベック(Beck)、レディオヘッド(Radiohead)、ピンク・フロイド(Pink Floyd)、マジー・スター(Mazzy Star)、ジョン・レノン(John Lennon)などから17曲が選ばれている。ほとんどの曲がギターによる弾き語りによるもので、そのアレンジと彼女の木訥とささやくような歌声と相俟って、フォーキーな仕上がりとなっている。
 実を言うと私の知っている曲は数曲しかなかったのだけれど、どの曲も私の趣味によくあっていて、とても気に入った。特に『Don't Dream It's Over』(Crowded House)、『Lost Cause』(Beck)、『Fade Into You』(Mazzy Star)、『Not a Job』(Elbow)、『Do You Realize??』(The Flaming Lips)なんかが好きだった。素朴な感じの声がたまらないですね。

2017年5月27日土曜日

『ルイボス・レモン』Lupicia

 Rooibos Lemon。
 レモンの香りづけをしたルイボスティー。爽やかなレモンという感じではなく、レモンでつくったマーマレードみたいに、しっかりとした味がする。ルイボス独特のちょっと苦手な風味がすっかりなくなっていて、絶妙の飲みやすさに仕上がっている。ルイボスティーとレモンの相性がこんなにいいとは思わなかった。これはおいしい。

LUPICIA

2017年5月26日金曜日

『組織変革のビジョン』金井 壽宏

 光文社新書。
 組織の変革に必要なものってなんだろう。動機?目標?人的資源?使命(ミッション)?情熱(パッション)?ビジョン?
 後半の韻を踏んだ3つの言葉は本書で述べられているものだけれど、本当に組織を変えたいと思ったとき、それを成功させるためにはいろいろな要素が絡んでくる。本書では、それらの要素を説明するために古今東西の学者や経営者などの言葉を多数引用しながら、わかりやすくまとめて読者に示している。
 組織変革は絶対善みたいに書かれていることや、多少論理性に欠けるところは気になったけれど、今の自分の所属している組織はこのままではいけないと少しでも思っている人にとっては、変革への一歩を進める足がかりになってくれることだろう。著者は、組織変革が必要ないと思っている人に対しても、変革することを勧めているわけではあるが。

2017年5月23日火曜日

『円山オーガニック(2017)』徳光珈琲

 ものすごく久しぶりにこのブレンドを飲んだ。滅多に円山店には行かないから。
 名前のとおり、このブレンドは無農薬・有機栽培の豆だけを使っているのだという。ただ、私個人としてはそういうことに無頓着なため、オーガニックだから飲んだのではなく、以前飲んだときおいしかったからまた飲んだ。うん、やっぱりおいしい。やわらかな酸味と口当たりで、ほのかな甘みがまたいい。ほんのりとした苦味がいいアクセントになっている。

徳光珈琲のHP
『徳光珈琲円山店』札幌市中央区大通西25丁目1-2 ハートランド円山ビル1F

2017年5月21日日曜日

『配色の設計』ジョセフ・アルバース

 ビー・エヌ・エヌ新社。副題「色の知覚と相互作用」。永原康史監訳、和田美樹訳。
 1963年に出版された『Interaction of Color』(色の相互作用)の50周年記念版の完訳である。大学で「色」について教えている講義内容がもとになっている。副題及び原題にあるように、色がある物質そのままの色として知覚されることはほとんどなく、周囲の色や環境によって見え方が違ってくるということが、実践として理解できるように書かれている。モノトーンの単純な例でいえば、同じ灰色が黒い背景のもとに置かれたときと白い背景の中に置かれたときとではまったく違って見えるというようなことだ。同様に、赤や青、緑や紫といった様々な色の関係の中で、それらがどのように知覚化されるかということが書かれている。そして、理屈から入るのではなく、実際にどう見えるのかということを重要視しており、いろいろと試行錯誤して手を動かしてみて、理解を深めていくという方法をとっている。
 前半が説明、後半が図版とその解説という構成になっていて、説明を読みながら図版にも目を通しという感じで読んでいく。カラーの図版がなければ何が書かれているかよくわからないので、図版が多いのはありがたい。でも、印刷のせいなのか私の脳のせいなのか、説明で同じ色に見えると書いてある部分の色が、私にはどうしても違う色にしか見えなかったり、説明の日本文の意味がよくわからなかったりしたところがいくつかあった。こういうのは結局は錯覚の話なので、人によって見え方が異なったりすることはあるのかもしれない。
 とはいえ、この本に書かれていることは、絵を描いたりするような人にとっては知っておくべき内容だと強く思った。絵を観るだけで自分では描かない人にとっては必ずしも必要な知識ではないけれど。

2017年5月18日木曜日

『進化論の最前線』池田 清彦

 インターナショナル新書。
 多くの日本人はダーウィンの進化論を概ね信じているのだろう。しかしそのダーウィンの考え方を修正して発展してきたネオダーウィニズムも、進化に関する様々な謎を解明できていないのだと著者は言う。その考え方とは、遺伝子の突然変異と自然選択により進化を説明するというものだが、それだけでは進化の謎を説明しきれないのだと言うのだ。そしてこれらで説明できない生物の進化の仕方について、具体例を挙げて解説していく。その説明はわかりやすく、納得できる。本書はネオダーウィニズム批判的な雰囲気を持っている。なるほど進化ひとつをとってもいろいろな仕方があり、一筋縄ではいかないんだな。
 とはいえ疑問は残る。本当にネオダーウィニズムは突然変異と自然選択だけで進化を説明しようとしているのか。もっと最新の知見を加えて進化の説明を試みているのではないのか。私は生物学に詳しくないのでその辺のことがよくわからない。素人考えだが、この本に書かれているような進化の知見をすべて取り入れた進化論が存在してもいいような気がした。というかそのような進化論がネオダーウィニズムだと今まで思っていたから、この本を読んで、あれ?と思った。進化についてはまだまだ勉強しなければならないようだ。

2017年5月16日火曜日

『Autumn to Winter』yuri yamada

 2014年。山田由梨による自主制作盤のピアノソロアルバム。
 なんだか季節外れのタイトルだけれど、この季節に聴いても悪くない。表題曲の『Autumn to Winter』こそ多少凝っているけれど、そのほかの曲はとてもシンプルな作りをしている。シンプルなメロディ。シンプルな和音。シンプルなリズム。童謡を聴いているかのような妙な安定感。 中には、かわいらしくてウクレレを重ねたくなってしまうような曲もある。
 難しく考えないで素直に生きようよ。そんな風に背中を押してくれているような気がする。

「雨と休日」で見てみる

2017年5月14日日曜日

『ブラジル・カショエイラ・イエローブルボン(2017)』可否茶館

 Brazil Cachoeira Da Grama。ブラジルのカショエイラ・グラマ農園のコーヒー。イエローブルボンはブルボン種の中でも黄色に熟す品種(ふつうのコーヒーの果実は赤くなる)。
 やわらかい口当たりの飲みやすいコーヒー。コクの中に甘みも同居していて、フルーティーな酸味が舌の横側を控えめに刺激する。
 甘みを感じさせるブラジル産のコーヒーを飲むと、初めて喫茶店で飲んだコーヒーのことを思い出す。年上の従姉妹に連れられて入ったその喫茶店はカウンターだけのこじんまりとした店で、彼女に勧められるまま緊張気味に注文したコーヒーがブラジルだった。一杯一杯ていねいにペーパードリップで淹れるコーヒーは、それまで紅茶党だった私をコーヒーに目覚めさせてくれるきっかけにもなった。その店は今でも「可否茶館」として同じ場所でコーヒーを提供している。

可否茶館HP

2017年5月13日土曜日

『見るということ』ジョン・バージャー

 ちくま学芸文庫。飯沢耕太郎 監修、笠原美智子 訳。
 動物を観る。写真を見る。絵画を見る。彫刻を見る。野原を見る。これらを見ることで見えてくるものは何か。一般論を述べると言うよりは、個々の芸術家の写真、絵画等の作品を観ることで継起される解釈なりものの見方、言い方を悪くすると妄想、そんなものを綴っている評論集である。
 取り上げているのは、アウグスト・ザンダー、ポール・ストランドといった写真家、ミレー、クールベ、ターナー、フランシス・ベーコン、シーカー・アーメットといった画家、ジャコメッティ、ロダン、ロメーヌ・ロルケといった彫刻家の作品である。その中には有名なものもあるけれど、趣味が美術鑑賞という人でも知らないようなマニアックなものも多い。
 「見る」ということにとらわれすぎてこの本を読むと、ちょっと迷路に入り込んでしまうかもしれない。それよりは、もっと自由に作品を楽しむ感じで読むと、わりとおもしろい視点を得ることができるんじゃないかと思う。図版が少ないのが玉に瑕で、作品を頭の中で想像しながら読む場面も多かったが、作者の奔放な思考の流れを追うのは、なかなか楽しい経験だった。

2017年5月8日月曜日

『Observations』Andrew Gorny

 2017年。アンドリュー・ゴーニー。
 とても1人で弾いているようには思えないけれど、たぶんソロギターだと思う。マイケル・ヘッジス(Michael Hedges)からの影響が色濃い。たとえば『Shasta』なんて、ヘッジスの未発表曲だと言われると信じてしまうかもしれない。タッピングの入れ方、音の選び方、立体感。全然メロディアスではないんだけど、私はもともとこの手のギター音楽が好きだから、このアルバムもなかなかいいと思ってしまう。『At Sea』、『Antarctica』、『The Favorite Day』、『Rather Walk with You』なんかが特に好き。
 ただ、このアルバムはCDでは売られてなくて、彼のウェブサイトからのダウンロード販売(好きな値段で買える)のみとなっている。mp3かFLACか選べるけれど、私はFLACをダウンロードしてそれをwaveに変換してCD-Rに焼いて聴くという、しちめんどくさい聴き方をしている。

Andrew Gornyのサイト

2017年5月5日金曜日

『桜の青葉ヶ丘公園』

 北海道の森町にある青葉ヶ丘公園の桜。道南ではわりと有名な桜の名所のひとつで、今年(2017)は5月3日から14日まで「もりまち桜まつり」が開かれている。

2017年5月4日木曜日

『経済は地理から学べ!』宮路 秀作

 ダイヤモンド社。
 本書は、地理から見た経済ということで、「立地」「資源」「貿易」「人口」「文化」という切り口から、44の話題を提供している。アンカレジ空港が持つ地理的優位性や、アルミニウムから見た資源大国の話、なぜトランプ大統領はTPPから離脱するのかとか、中国が一人っ子政策をやめた理由など、話題は多岐にわたる。どのトピックも非常にわかりやすく、興味をそそられる内容になっている。
 でもこれって経済の話なんだろうか。なんかふつうに地理の授業を聴いているようだった。おもしろかったけど。

2017年5月3日水曜日

『キャラクターデザインの教科書』Playce 編著

 エムディエヌコーポレーション。副題「メイキングで学ぶ魅力的な人物イラストの描き方」。
 キャラクターには3つの意味があるという。1.物語の登場人物、2.図像そのもの、アイコン、3.実在する人間の性格や特徴。それらを表現するときイラストレーターはどうやってキャラクターを構築しているのか、5つの実例を挙げてその創作過程を追っている。ちゃもーいによる音楽ユニットのキャラクター、toi8によるカードバトル型RPGのキャラクター、つなこによるゲームのキャラクター、うっけによるコスプレのためのキャラクター、Anmiによる実体験をもとにしたキャラクター。全員がパソコンによる作成である。5者5様のやり方がわかりやすく解説してあって、とても参考になる。本の最後には、付録的に「キャラクター記号学」という章もあり、これも初心者にはありがたい。手に取った当初はなんだか萌え系の本みたいな感じがして気後れしてたけれど、なかなかに役に立つ本だった。

『wintermusik』Nils Frahm

 2009年。ニルス・フラーム。
 ピアノ、チェレスタ、オルガンのシンプルな構成。元々は近しい人へのクリスマスプレゼントとしてつくられたものだという。
 澄んだ音色で軽やかに奏でられるピアノの音が、都会の喧噪に疲れ切った私の心を癒やしてくれる。とはいえ、ピアノの音は軽やかなのに、印象は決して明るいものではない。静寂の中に、楽しさ、もの悲しさ、切なさみたいなものが重層的に積み重ねられている。その一端をになうのがチェレスタ、オルガンの音色であるのは疑いようもない。単なるライトミュージックとは形容しきれない、3つの楽器が織りなす冬の世界観に浸ってみたい。