2017年12月16日土曜日

『やってはいけないデザイン』平本 久美子

 翔泳社。
 ノンデザイナー向けのデザインの入門書である。デザイン以前に、まず原稿の話から入っているのがおもしろい。説明文やタイトル、キャッチコピーのことだ。その話をした上で、レイアウト、文字・フォント、カラー、写真・イラストなどについて解説している。ほぼすべてのテーマについて、「やってはいけない!」例と「これでOK!」例を提示し、それに解説を加えるという形をとっている。最後にはフリー素材サイトの紹介やお薦めのデザイン参考書についても触れている。
 個人的には「やってはいけない!」デザインなんてものはなくて、ただ、ダサかったり伝わりにくかったりするデザインがあるだけだと思っている。それはさておき、この本に挙げられている「やってはいけない!」例は、わりと私の職場でもよく見るちょっとイケてない素人臭いデザインであることは確かである。デザインを外部に発注してこんなのが出てきたら、たぶん呆れる。本書ではそれをどうすれば改善させることができるのか改善案を提示しているわけだけれど、ほんのちょっとのことなんだけど、驚くほどデザインが良くなっている。プロとしてはこんなのは当たり前のことばかりかもしれないけれど、業務上で名刺やパワポ資料、チラシなどを自分で作らなければならないときには、大いに参考になるだろう。とてもわかりやすかった。

2017年12月13日水曜日

『世界の最新医学が証明した 究極の疲れないカラダ』仲野 広倫

 アチーブメント出版。
 著者は日本ではちょっと聞き慣れない「スポーツカイロプラクター」という仕事をしている人だ。医師とほぼ同様の教育を受けた、手術を行わずに主に手技によって施術をする骨格と筋肉の専門家らしい。カイロプラクターはアメリカでは重宝されているらしくて、オリンピックチームにも同行するのだという。日本における柔道整復師や鍼灸師と通じるところもあるのかもしれないが、科学的な知見に基づき、合理的な診断を行うところが違うらしい。
 ストレッチを運動前にしても効果は上がらないだとか、毎日1万歩歩いてもしょうがないだとか、いろいろと日本人の常識とは違うことを、科学的根拠を持って説明している。大事なことは機能運動性の向上だということで、日常の動作をするときに気をつけたいことや、その向上のためにやっておきたいエクササイズなどをわかりやすく解説している。
 ただ、「疲れないカラダ」の意味するところがこの本を読んでもよくわからなかった。腰痛だとか肩痛を良くする方法、つまり「痛み」を軽減して元気に生きるための方法については書いてある。でもそれが「疲れない」ということかといえば、多分そうではなくて、著者の使う「疲れない」と、私の感じる「疲れない」の意味合いがなんとなくズレているような気がした。
 結局著者の言いたいことは、この本に書かれていることをきちんと実践して、それでもどうにもならないときはカイロプラクターに診てもらえということなのかな、と思った。内容的にはさらっと読めてしまう軽い本なので、ちょっと物足りなさを感じた。

2017年12月10日日曜日

『Rest』Charlotte Gainsbourg

 2017年。シャルロット・ゲンズブール。
 フランス語の響きが好きで、たまにフレンチ・ポップなぞを聴いてみたくなる。そんな気分を感じ取ってくれたのか、ベストなタイミングでシャルロット・ゲンズブールの新譜が出たというのを聞いて、取り寄せてみた。
 シャルロット・ゲンズブールは私にとっては女優であって、以前に何度か彼女が主演の映画を観たこともある。でも歌手としての彼女はよく知らなくて(映画の主題歌なども担当していたようだが)、今回がほぼ初めての彼女の歌との出会いだった。ジャケット写真を見たときは、正直私のイメージしていたシャルロットとはまったく異なっていて戸惑ったが、歌声には彼女の印象がそのまま残っていた。軽やかにふわふわと浮いているようにささやくように歌い上げるさまは、母親のジェーン・バーキンとはまた違っていて、より私好みだった。ポール・マッカートニーから提供された『Songbird in a Cage』以外はすべて彼女が作詞していて、曲調としては全体的にエレクトロニックな雰囲気を持つ曲が多い。『Rest』や『Sylvia Says』、『Dans Vos Airs』なんかが結構好きな曲だった。ちょっとほかのアルバムも聴いてみたくなった。

2017年12月7日木曜日

『○×でわかる! デザインが良くなる5つのポイント』MdN編集部

 エムディエヌコーポレーション。
 2つのチャプターからなっていて、前半が「クライアントからの注文通りに仕上げるデザインのコツ」、後半が「クライアントからの注文に柔軟に対応する写真・文字・配色のアイデア」となっている。とはいうものの、本書の主役は明らかに前半で、クライアントからダメ出しされる前の「Before」と、それを改善した「After」を1セットにして見開きで示している。それがタイトルにある「○×」に対応している。そして、そのポイントとなるのが、「レイアウト」、「配色」、「文字」、「写真」、「図・イラスト」の5つというわけだ。クライアントの要求は、「高級感を出して」とか「明るく元気な印象にして」とかいうように50種類に分けられていて、○×の例もそれに合わせて50の例を提示している。
  確かにそれらはクライアントの要求を満たしていて、「Before」よりも「After」の方が良くなっている。でも「Before」は見るからに何も考えないでデザインしてみましたという感じの例も多く、わざとイケてないものにした感が否めない。なんかそこのところがちょっとモヤモヤした。改善案も、大幅にデザインを変更しているものから少しの変更にとどまっているものまで幅があって、どっちかに統一した方がわかりやすいと思った。改善案の方向性はそれこそ無限にあるだろうから。
 ただ、多くのデザイン例を見ることができて、ああ、こういうやり方もあるんだなと参考になることも結構あった。アイデアに行き詰まったときにちょっと開いてみるという読み方をするなら、わりと役に立つのかもしれない。

2017年12月3日日曜日

「あきの雫」がクリエイティブ・コモンズを採用

 私のホームページ「あきの雫」上の作品を、クリエイティブ・コモンズの「表示」「非営利」「改変禁止」4.0国際ライセンスのもとで公開することにしました。今までは「All Rights Reserved.」としていたのですが、それをやめました。簡単に言えば、非営利であれば、「詩月あき」という名前を表示した上で、改変しない状態で作品をそのまま利用するのであれば、自由に使っていいよ、ということです。
 最初は営利目的でもいいかな、と思ったのですが、後々の自分の活動に支障が出るといやなので思いとどまりました。たいした絵は描いていないですが、葉書でもフライヤーでも自由に使ってください。
 ホームページの公開方法を変えたついでに、デザインもちょっと変えて、日本語のWebフォントも導入してみたんですが、ページの読み込みに時間がかかってしまって、しばらく表示がおかしい状態が続きます。そのうち対策を考えますが、来年かな。

『あきの雫』http://akinoshizuku.com/

2017年12月1日金曜日

『多数決を疑う』坂井 豊貴

 岩波新書。副題「社会的選択理論とは何か」。
 物事を決める時、あるいは選挙、投票。そんなとき当然のように多数決によって選ぶことが多い。そしてそれが民主的なやり方なのだと多くの人に思われている。でもそれは本当だろうか、ということを本書は問うている。
 例えば3人の候補者がいる選挙を考えたとき、原理的には3分の1を超える得票が得られれば、その他の3分の2弱の人が、絶対にその人が嫌だと思っていたとしても当選するということがありうる。しかし多数決ではなく、ボルダルールというものを使うと、当選しないことも出てくる。ボルダルールとは、1番いいと思う人には3点、2番目には2点、3番目には1点というように点数を割り付け、投票を行うものだ。このやり方の方が民意を反映しているといえないだろうか。本書でも検討しているように、ボルダルールに欠点がないわけではない。でも、単純な多数決よりも民主的と言えないだろうか。
 今のはほんの一例であるが、 多人数で物事を決めるやり方は、多数決以外にもいくつも考えられる。比例選挙区制やトーナメント制もその例のひとつだ。その方法の選び方次第で、結果もまた違ってくる。「多数決は民主主義だ」とか、「多数決で決めたんだから負けた方は従わなければならない」とか、逆に「民主主義は少数意見をくみ取ることだ」とかいろいろ言われるけれど、ことはそう簡単な話ではなさそうだ。この本は、そんな風に「多数決」を批判的に検証して、社会的選択理論とは何かということを読者に教えてくれる。それと同時に、民主主義とは何かということを読者に深く考えさせる。今の社会の仕組みのあり方は、本当にこのままでいいんだろうか、と。

2017年11月26日日曜日

『マイケル・ヘッジス アコースティック・ギターの革新者』南澤 大介

 リットーミュージック。
 マイケル・ヘッジス(Michael Hedges)は私の好きなギタリストベスト3に入るミュージシャンだが、これまで手に入る楽譜集としては本人らの監修による『Rhythm, Sonority, Silence』(7曲収録、英語)くらいしかなかった。それが今回、日本語で、押尾コータローのスコアの採譜や『ソロ・ギターのしらべ』シリーズでも知られる南澤大介によって、楽譜集が刊行された。わずか43歳という若さでこの世を去ったヘッジスの生い立ちや音楽の話、奏法の解説に加えて、9曲のスコアが掲載されている。前著と重なる曲も2曲あるけれど、解説が詳しいのでうれしい。収録されている曲は以下の通り。

  • The Happy Couple
  • Baby Toes
  • Peg Leg Speed King
  • Eleven Small Roaches
  • Silent Anticipations
  • Aerial Boundaries
  • Hot Type
  • Ragamuffin
  • Two Days Old
 マイケル・ヘッジスの登場以降、アコースティックギター・シーンは明らかな進化を遂げ、ヘッジス・フォロワーと呼ばれるギタリストも数多く誕生した。私のブログで取り上げているギタリストの中にも、彼の影響を受けた人は多い。彼のテクニックは確かにすごいのだけれど、それ以上にその音楽性を知ってもらいたい。そんな彼の曲を自分の手で弾ける手助けをしてくれる本書の刊行は、素直にうれしい。

2017年11月25日土曜日

『 鳳凰單欉黄枝香(2017)』遊茶

 ほうおうたんそうこうしこう。広東省潮州市潮安県鳳凰鎮が産地のお茶。單欉(たんそう)は一株のことで、元々お茶の木一株からできたお茶だから、こんな名前になっている(たぶん)。分類的には青茶のひとつ。元来の漢字は「黄梔香」なのだそうで、「梔」はクチナシのこと。
 ものすごく香りがいい。花のように華やかで、芳醇な香り。味もしっかりしていて、雑味がなく、とてもおいしい。青茶は烏龍茶系のお茶だけれど、そんじょそこらの烏龍茶とは桁違いのおいしさを味わわせてくれる。これはお薦め。

遊茶』東京都渋谷区神宮前 5-8-5

2017年11月23日木曜日

『なるほどデザイン』筒井 美希

 エムディエヌコーポレーション。副題「目で見て楽しむデザインの本」。
 主に雑誌やフライヤーなどのデザインについて書かれた本。
 デザインというと素人にとっては雲をつかむような感じて、なかなかどこから手をつけていいかわからなくなるけれど、この本は実にわかりやすい。ほとんどのページにイラストか写真、またはそれらを含むデザイン例が掲載されていて、まさに「目で見て楽しむデザインの本」である。デザインの要素をわかりやすいように分解してひとつひとつ丁寧に解説してくれているので、デザインのポイントの押さえどころが自然と身についてくる(気がする)。ぱっと見で意図のわかるデザインがどのようにして作られるのか、デザイナーの頭の中がよくわかる。そして、デザイナーの頭の中がわかってくると、自分でもそれを再現することが少しはできるようになってくる。たぶん著者はそれを狙っている。もちろんすぐには読者に伝わるデザインをできるようにはならないだろうけれど、そこは個々人のこれからの実践(訓練)次第。私も努力しよう。

2017年11月17日金曜日

『革命のファンファーレ 現代のお金と広告』西野 亮廣

 幻冬舎。
 著者は過去に『えんとつ町のプペル』という絵本を30万部以上の大ヒットに導いている(そしてたぶん今も売れ続けている)。この絵本の発行はこれまでの常識から考えると異例づくしだった。一人で絵本を作るのではなく、チームで作った。クラウドファンディングで1億円以上も集めた。絵本の内容をすべて無料公開した。本人が発売前に一般人から予約を募り、自分で出版社から1万冊もの絵本を購入した。『プペル展』の開催を一般の人に委ねた等々。
 これらの中には大バッシングを受けたものも多数あったようだが、本人は動じていない。本書では、なぜこのように異例の方法で絵本を売り出すことにしたのか、詳しく解説している。バッシングに動じない理由もそこでわかる。著者は周到に計画を練った上で、これらのことを実行している。
 ネット社会あるいは情報社会が広がることで、当然ビジネスモデルは変わって然るべきだ。これまでの出版業界はそれらにうまく対応して来なかった。社会の変化に対応して、柔軟に売り方を変えて行かなければならない。そのためには○○が必要だ、というのが著者の主張である。彼の主張は実に論理的である。彼を嫌う人も多いし、彼の普段の言動からその理由もわからないわけでもないけれど、少し耳を傾けてみると得られることも多いのではないか。この本を読んで、そんな気がした。

2017年11月11日土曜日

『The Bluebird of Happiness』Lotte Kestner

 2013年。ロッテ・ケストナー。
 2013年盤と、『Ties That Bind』を1曲追加した2017年盤がある。ロッテ・ケストナーは、トレスパッサーズ・ウィリアム(Trespassers William)のヴォーカリストだったアンナ・リン・ウィリアムズ(Anna-Lynne Williams)のソロ・プロジェクト。ほとんどの曲はギターかピアノのシンプルな伴奏で、時折ストリングスやパーカッションが入る。そしてそれらをバックに、彼女のささやくような、細いながらも芯のある淡々とした歌声がメロディーを奏でてゆく。とてもゆったりとしていて静かな音楽に癒やされる。最近疲れていることが多い自分にはぴったりのアルバムだ。7曲目の『Halo』は、もしかするとビヨンセの曲かもしれない。

2017年11月8日水曜日

『MORIHICO.TSUTAYA美しが丘店』

 札幌の美しが丘にあるTSUTAYAに併設されているカフェ。入り口にあるカウンターでドリンクやスイーツを頼んで、店内に持ち込むパターンのお店。スタバと一緒ですね。入り口のカウンターがとってもお洒落なんだけど、店内もゆったりしていて気持ちいい。森彦のコーヒーは苦めの力強い味のラインナップが多い。
 イラストはコーヒーを飲みながら軽くスケッチしてきたものを記憶を頼りにCLIP STUDIOで描き起こしたものなので、細部はかなり違います。ほぼ適当。そういえばクリスタで絵を完成させたの初めてかも。

MORIHICO
『MORIHICO.TSUTAYA美しが丘店』北海道札幌市清田区美しが丘3条4丁目1番10号

2017年11月7日火曜日

『デザイナーになる。』永井 弘人

 エムディエヌコーポレーション。副題「伝えるレイアウト・色・文字のいちばん大切な基本」。
 著者も述べているように、この本はデザイナーになりたい人のための「入門の入門書」である。「デザインの心構え」、「デザイン手法の基本知識」、「デザイン事例から学ぶ」の3部構成からなっている。全然難しいことは書いていなくて、言われてみれば当たり前のことなんだけど、そういう当たり前のことが書かれている本というのは意外になくて、この本は初心者に対してとても優しい。デザインは何のためにするのかとか、デザインを起こしていく過程とか、根っこのところから教えてくれるので、ただ「デザイナーになりたい」と思っていて、でもどうしたらいいのかわかっていない人にはとてもいい。世に出回っている本は、既にデザインをしている人に向けた本が多い気がするので。デザインというのは自己表現ではないことがよくわかる本。

2017年11月5日日曜日

『デジタルイラストの「服装」描き方事典』スタジオ・ハードデラックス

 SBクリエイティブ。副題「キャラクターを着飾る衣服の秘訣45」。
 私が人物を描こうとすると、つい上はトレーナーかシャツ、下はジーンズかスカートとなってしまうので、服装の幅を広げる参考としてこの本を買った。「デジタルイラストの」と書かれているけれど、そこのところはどうでもよかった。中身を見てみても、デジタルに限定して書かれているわけではないし。
 トップス、アウター、ボトムス、オールインワン、アンダーウェア/インナー、シューズ/バッグ、学生服、スーツ/礼服について、どんな種類があって、どういう構造になっていて、どうやって描いたらいいのかが載っている。コートひとつ、スカートひとつをとっても、こんなに種類があるんだ、と思いながら読んだ。街を歩いている人の服装は限りなくバラエティに富んでいるはずなのに、意外と見ていない。こうやって対象を分類してまとめられていると、わかりやすくなるんだなと思った。私には役に立ちそうな本だ。

2017年11月4日土曜日

『Honduras Las Golondrinas (2017)』ハニー珈琲

 ホンジュラスのラス・ゴロンドリナス農園のコーヒー。ニカラグアにもラス・ゴロンドリナス農園があったような気がしてたので、自分の中でちょっと混乱。
 酸味が少し強めのコーヒーだけれど、劣化した酸味とかそういうのではなく、フルーティーで豊かな酸味だ。青リンゴのような酸味に焦がしたオレンジのような苦味がアクセントになっていて、とてもおいしい。
 福岡空港のTSUTAYAに併設されている店舗でこのコーヒー豆を買ったら、エチオピアのイルガチェフェを1杯タダで提供してくれたので、とてもお得な気分。イルガチェフェもおいしかった。

ハニー珈琲

2017年11月3日金曜日

『安溪祥華鉄観音(2016)』遊茶

 あんけいしょうかてっかんのん。
 中国の青茶(烏龍茶系のお茶)。安溪県祥華でとれる鉄観音。見た目はかなり黒っぽくて重たそうだけれど、飲んでみると意外とさっぱりしていて飲みやすい。鉄観音には「韻香」と呼ばれる花のような香りや「音韻」と呼ばれる柑橘類のような口に広がる甘みがあるといわれるけれども、なるほど確かにそうだと思わせる。このお茶はとてもおいしい。今日は「萬順」の月餅に合わせてみた。

遊茶』東京都渋谷区神宮前5-8-5

『新・桃山展 大航海時代の日本美術』九州国立博物館

 2017年10月14日~11月26日。
 たまたま太宰府に行っただけなのだが、歩いてすぐそこのところに九州国立博物館なるものがあって、ちょうど今『桃山展』をやっているというので、閉館ギリギリのところを駆け込んだ。
 たいして期待もしていなかったのだが、入ってみてびっくり。教科書で見たザビエルの絵がある、豊臣秀吉がいる、織田信長がいる、徳川家康がいる、かの美しい油滴天目がある、白天目もある、南蛮屏風がある、本物の火縄銃がある。狩野永徳の花鳥図襖もあるし唐獅子図屏風もある。とても閉館までの30分では見きれないくらいの見応えのある多くの美術品が展示されていた。
 こんなことなら閉館ギリギリでなくてもっと余裕を持ってくればよかったと後悔もしてみる。でも太宰府に博物館があることも知らなかったし、桃山展をやっていたのもたまたまだったので、むしろ運がよかったと言えるのかもしれない。ただ、見終わってからあらためてフライヤーを眺めてみると、表紙に出ている狩野永徳の檜図屏風と長谷川等伯の松林図屏風を見た記憶がない。よく調べてみると、この2点の展示は11月14日からだった。この2枚の屏風はとても好きな絵だったので、かなり悔しい。また何かの機会に出会えることを願っている。

九州国立博物館』福岡県太宰府市石坂4-7-2

2017年10月25日水曜日

『敏感すぎる自分を好きになれる本』長沼 睦雄

 青春出版社。
 5人に1人が持つといわれるHSP(Highly Sensitive Person)気質、つまりとても敏感な人のことを書いた本である。敏感すぎて些細なことを気にしすぎて生きづらくなっているのは、弱さのせいじゃないということを丁寧に説明してくれている。HSPの特徴や、この人たちが生きづらく感じているのはどうしてかだとか、どうすれば敏感すぎる自分に振り回されずに生きられるか、その対処法、また、身近な人が「とても敏感な人」だったらどう接したらいいかなどについて詳しく解説している。
 こういう人が世の中に一定数いるということを知るためにはいい本なのかもしれない。でも第6感とか超能力とか電磁波や食品添加物に敏感だとか、あまり科学的ではないことも書かれていて、そこのところが馴染めなかった。非科学的だからといってその現象が存在しないことの証明にはならないのだけれど。まだ科学ではわかっていないということにすぎないわけだから。ただ、これに加えて論理的に矛盾しているように感じるところがかなりあって、そっちの方が納得感を得られなかった理由としては強いかもしれない。
 HSPについての本はつい先日も読んでいて、『鈍感な世界に生きる敏感な人たち』(イルセ・サン、私の記事)という本なんだけど、こっちの方が私の性には合った。

2017年10月22日日曜日

『(ディカフェ)ペルー チョンタリエリア』徳光珈琲

 シティロースト。ペルーのチョンタリという地域のコーヒー。農園名は不明(チョンタリエリア農園?)。ディカフェ。
 ウィキペディアによるとカフェインレス・コーヒーの作り方には、有機溶媒抽出、水抽出、超臨界二酸化炭素抽出などがあるらしいが、この徳光珈琲のディカフェは超臨界二酸化炭素抽出によるものである。やわらかい舌触りの中性的なコーヒーで、少しリンゴっぽい雰囲気がある。カフェインが入っていないんだろうなという感じはあるものの、十分おいしいコーヒーだ。猿田彦珈琲のスイス式水抽出のディカフェもおいしかったけど、ここのもおいしい。猿田彦珈琲は東京に行かなければならないのに対し、徳光珈琲は札幌で買えるのがいい。

徳光珈琲

2017年10月21日土曜日

『All the Light Above It Too』Jack Johnson

 2017年。ジャック・ジョンソン。
 一聴するといつものハワイのスタジオで録られた、いつもの爽やかなサーフ・ミュージック。明るいギターやウクレレの音が心地よく絡まり合い、その上をまるで波に乗っているかのように彼の歌声が踊っている。ジャック・ジョンソンらしい音づくり。
 でもジャケットの中で彼が、砂浜の上に描かれたポップな背景の中にギターを持って寝っ転がっているのをよく見ると、まわりは海に流れ着いたゴミだらけじゃないか。ポップな背景は実はゴミからできていた。そう。このアルバムの中の曲は、はっきりとそれと主張しているわけではないけれど、いろいろな問題提起を含んだメッセージ・ソングだったりする。私は邦楽洋楽を問わずあまり歌詞をよく聴かない方だけれど、さらっとでも内容を理解しておいた方がいいのかも、と思った。『Sunsets For Somebody Else』『My Mind Is For Sale』『Is One Moon Enough?』『Fragments』とかがわりとお気に入り。

2017年10月19日木曜日

『鈍感な世界に生きる敏感な人たち』イルセ・サン

 ディスカヴァー・トゥエンティワン。枇谷玲子 訳。
 HSP(Highly Sensitive Person)と呼ばれる人たちがいる。「とても敏感な人」という意味だ。民族を問わず、人口の15~20%(つまり5人に1人くらい)いるといわれている。この概念を提唱したのは、アメリカの精神分析医で学者のエレイン・アーロンという人で、1996年のことだ。これは「性格」なのではなく、生まれ持った「性質」なのだという。人を男女に分けるように、ただ、「とても敏感な人」と「タフな人」に分けただけのことらしい(「タフな人」は5人に4人ということだ)。HSPは、音や匂いに敏感だったり、良心的、創造的、影響を受けやすい、感情移入しやすいといった性質を持つのだという。色々なことによく気がつき、多くの情報を内部に取り入れてしまうために、辛いことだけではなく楽しいことにもすぐに疲れてしまうのだともいう。一般には神経症的、抑圧的、心配性、恥ずかしがり屋などと表現されてきた人たちで、豊かな精神世界を持つものの、不当に低い評価を受けてきたと著者は述べている。
 この本は、そんなHSPの人たちに向けて書かれたものだ。HSPの気質の説明や、その人の抱えやすい問題を解説した上で、鈍感な人たちとうまく付き合うにはどうしたらいいか、敏感な自分とどう付き合っていけばいいかなどについて、丁寧に提案している。本書の冒頭にはHSPチェックリストなるものもあって、結果を鵜呑みにしてはいけないらしいが、自分がどの程度そのような気質を持っているかを知ることができる。
 私はこれまで数多くの心理テストやカウンセリング、占いなどを受けてきたが、この本に書かれている性質以上に自分のことを的確に言い当てたものはなかった。その意味でとても驚いた。と同時に、HSPではない人に、このことをきちんと理解してもらうことの難しさをも感じた。そういう「性格」は治した方がいいよ、HSPなんて、前向きに元気に生きられないことに対するタダの言い訳じゃないか。そんな風に言われて終わりそうだ。だからこそ、この本に書かれているような「対策」が必要なのだと思う。まわりの人と、あるいは自分とどう付き合っていけばいいのか。この「対策」はHSPにとってはなかなかハードルの高いものだとも感じたが、少しずつ積み木を重ねていくようにコツコツと実践していけば、明るい未来が開けてくることだろう。とてもいい本に出会えたと思う。

2017年10月15日日曜日

『やまがみさまのどうくつ』

 第12回KFS絵本グランプリ絵本イラスト部門で入選しました。神社の近くの山神様の洞窟に、おてんばなお嬢さんが入っていって祠を掃除しているところです。画材は久しぶりにガッシュ(不透明水彩)を使ってみました。ちょっとコミック寄りかも。最近私の画風はぶれにぶれまくりです。

2017年10月14日土曜日

『枕草子のたくらみ』山本 淳子

 朝日新聞出版。副題『「春はあけぼの」に秘められた思い』。
 『枕草子』の作者、清少納言は、一条天皇の中宮である定子に仕えた。そしてその頃の貴族らの機知に富んだ雅で華やかな世界を『枕草子』の中に描き出した。では何のために?
 清少納言というと、「春って曙よ!」 で始まる橋本治による『桃尻語訳枕草子』のイメージのせいか、どうしても、頭はいいけどミーハーで、ちょっといっちゃってる現代娘という印象が強い。そして『枕草子』に書かれているそのままに優雅な時代を生きたのだと。ところが実際には、定子はこの平安の世の中で必ずしも幸せとはいえず、権謀術数の渦巻く政治の世界に翻弄され、数奇な人生を送ったのだという。一条天皇に愛され、その間に男子をもうけながらも、失意のうちに24歳という若さでなくなってしまう。そのような中にあっても、『枕草子』の中には暗い話が出てくることはほとんどなく、あくまで雅で気の利いた言葉で定子の住む世界が語られるばかりだ。政治的にデリケートな話も絶妙に避けられている。
 ここに清少納言の思いがあった。 本書ではこれを「たくらみ」と称している。『枕草子』は、ただ定子のために捧げられたものなのだという。生前は定子の心を癒やし、没後は定子の魂を慰める、ただそのままに。
 とてもおもしろい本である。『枕草子』の原文と訳を豊富に掲載し、『紫式部日記』、『栄華物語』、『小右記』などの記述も多数引用することで、この時代背景を詳しく追いながら、定子と清少納言の関係にスポットライトを当てて『枕草子』を解読していく。この本を読むまで、『枕草子』の裏にこんなにも複雑で重々しいドラマが隠されていたとは思いもしなかった。清少納言に対するイメージを大きく変えた一冊である。

『リクくんのキノコ狩り』

 第12回KFS絵本グランプリ創作絵本部門で入選しました。KFS(講談社フェーマススクールズ)は今年度で解体されるので、今回が最後のグランプリでした。とうとう上位に食い込むことができないまま終わってしまったな、というのが正直な感想です。以下は、あらすじと提出した4枚の絵です。


 鼻の赤いアリクイのリクくんはこの日をとても楽しみにしていました。今日は待ちに待ったキノコ狩りの日です。
 朝からみんなで集まって、朝食を食べながらわいわいガヤガヤ。「私キノコ狩りなんて初めて。楽しみだわ」「両手に抱えるくらいの大きいマッシュルームを取ってくるぞ」「チイちゃん、朝からそんなに食べてたらキノコ汁食べられなくなるぞ」「ハハハ」
 食べ終わってから、さあ出発。トチおじさんの小屋に立てかけてあるシイタケのほだ木を横目に見ながら山の中へ。はじめはなかなか見つけられなかったキノコですが、目が慣れてくるとどんどん見つかるようになりました。ホンシメジ、ムラサキシメジ、ナメコ、カラカサタケ。みんな夢中になってキノコ採りに励んでいます。
 ところがそのうち、それぞれが一生懸命下ばかり見てキノコを採っていたので、気づいたらみんな森の中でバラバラになってしまいました。「おーい、リクくーん」「おーい、カンちゃーん」みんなお互いに声を掛け合ってまた会えることができました。でもチイちゃんの姿だけが見えません。みんなでチイちゃんのことを探しました。
 すると、真っ赤なキノコの横でチイちゃんが倒れているのを見つけました。「これ、毒キノコだよ。チイちゃん食べちゃったんじゃない?」みんな心配して駆け寄ります。大声で話しかけても揺り動かしても起きません。森の仲間たちも心配して集まってきました。
 そして救急車が到着すると、チイちゃんはパッと目を開けて、「あーあ、よく寝た」と言いました。「大丈夫?」とみんな声をかけますが、チイちゃんはポカンとしています。みんなもそのうちチイちゃんがお腹いっぱいで寝ていただけだとわかりました。そしてみんなほっとして、どっと笑い合いました。
 そのあと森のみんなでおいしくキノコ汁を食べました。おしまい。

2017年10月9日月曜日

『ディテール・イン・タイポグラフィ』ヨースト・ホフリ

 現代企画室。『Detail in typography』Jost Hochuli。麥倉聖子 監修、山崎秀貴 訳。副題「読みやすい欧文組版のための基礎知識と考え方」。
 文字、字間、単語、単語間、行、行間、コラムといった、マイクロ・タイポグラフィとかディテール・タイポグラフィと呼ばれるものを対象に、基礎知識と考え方が書かれた本。組まれた文章が読みやすいとはどういうことなのかを、タイポグラフィの視点から説明している。内容は全然難しくなくて、ごく基礎的なことしか書かれていないけれど、つい気が回らずに読みづらい組版にしてしまいがちではあるのだろうから、基礎の確認のために読んでみてもいいかもしれない。70ページに満たない薄い本です。

2017年10月8日日曜日

『ライヴ・イン・モントリオール』上原ひろみ×エドマール・カスタネーダ

 2017年。『Live in Montreal』Hiromi & Edmar Castaneda。
 エドマール・カスタネーダはコロンビア出身のハープ奏者である。2016年6月30日に行われたモントリオール・ジャズ・フェスティバルで、上原がエドマールの演奏を見て一目惚れしたのが、2人の出会いだという。彼女のアタックによって、その後1ヶ月もしないうちに共演が叶ったというのは驚きだ。
 彼のハーブの音を聴いて、私がこれまでハープに抱いていたイメージを根底から覆された。激しく情熱的でグルーヴィーという表現がハープにも当てはまるなんて思いもしなかった。上原が変態的なピアノを弾くということは元々わかっていたことだけれど、同じく変態的なハープを弾く奏者がいたとは(もちろんここでの変態的という言葉は褒め言葉である)。同じ撥弦楽器であるピアノとハープは、元来合わせづらい楽器同士なのだそうだが、このアルバムでの上原のピアノとエドマールのハープはぴったり息が合っていて、相性ばっちりである。ハープには30以上の弦が張られており、その音の間隔はふつうのドレミファソラシドではなく、全音になっているのだそうだ。その制約を聴いている者に微塵も感じさせない素敵なアレンジで、聴衆を圧倒させる。
 このアルバムでは2人のそれぞれの持ち歌の他、上原が2人のために作った曲やカヴァー曲が収められている。どの曲もすごくいいが、私はエドマールの『A Harp in New York』と、ピアノとハープのために上原が作った組曲『The Elements』(Air、Earth、Water、Fire)が特に好きだった。上原の作る曲はいつでもそうだが、このアルバムの中の曲もすべて曲名と中身がぴったり合っていて、音楽を聴いているとその情景が鮮やかに浮かび上がってくる。多くの人に聴いてもらいたい1枚だ。

2017年10月1日日曜日

『FELT』Nils Frahm

 2011年。
 ニルス・フラームはドイツのピアニストで、このアルバムも基本的にはピアノで弾いているが、シンセやヴィヴラフォンなどの音も後から重ねて、曲として仕上げている。たぶん自宅スタジオで録られており、夜中にも録音しているので隣人に迷惑をかけないように、ピアノの弦にフェルトを巻いたらしい。それがタイトルの由来なのだろう。そのフェルトの効果でやわらかく響いてくるピアノのやさしい音が、静かに心に染み入ってくる。おそらくスタジオは完全防音ではないのだろう。時折周囲の音が音源に混ざってきたり、ピアノのハンマーが弦をたたくときの雑音や演奏している彼の息づかいまでもが曲の中に表現されており、まるで目の前でピアノを演奏してくれているような感覚に陥る。録音時ヘッドフォンをして曲作りをしていたので、聴くときも是非ヘッドフォンをしてほしいと、同封のリーフレットには書かれている。

2017年9月26日火曜日

ブログのデザイン変えてみた

 同じデザインで8、9年やってきたんだけれど、ちょっと気分転換ということで、ブログのデザインを変えてみた。
 記事の背景は下地が見えるようにしたかったんだけど、そうするとパソコン上ではまあきれいに見えるんだけど、スマホから見ると読みづらかったりしたので、断念。結局記事の後ろに色をつけた。ださくなっちゃったけど。
 あと、本文中の英字フォントが日本語フォントと合っていないのですごくいやなんだけど、知識不足で直せなくてこれまた断念。日本語フォントを明朝体にすれば、それに合う英字フォントも見つかったんだけど、なんとなく本文はゴシックにしたくて。
 他にもいろいろと思いどおりにならないところが多々あれど、しばらくはこれで行くことにしました。すぐに気が変わってちょこちょこいじるかもしれないけれど。

『隷属なき道』ルトガー・ブレグマン

 文藝春秋。副題「AIとの競争に勝つ ベーシックインカムと一日三時間労働」。Rutger Bregman。野中香方子 訳。
 ベーシックインカムとは、例えば、全国民に区別なく1年間に150万円配りましょうというような感じで、生活保障をすることだ。その代わり生活保護も各種学費援助もすべて廃止するという。何だか今の日本では、というか世界のどこででも、そんな制度の導入はあまりにも非現実的なものに見えてしまう。でも実はこのようなベーシックインカムを小規模に導入した例は世界各地に見られ、それは成功しているのだという。つまり、貧者にお金を与えたってギャンブルやお酒に使うだけで余計働こうとしなくなるだけだという反対意見を覆し、実際には各人が生活に必要なものを手に入れたり、働き口を見つけるための行動に結びついたりしたのだという。生活保護制度を維持するためには公務員の人件費がかかっていたり、貧者による犯罪等に対処するための対策費用がかかるなど、多くのお金が使われている。それが、ベーシックインカムを導入することでそれらの費用が激減し、総体で見るとプラスになるとの結果も出ているという。そして驚くべきことに、1960年代のアメリカではベーシックインカムの導入は右派からも左派からも一定の支持を得ており、かのニクソン大統領はそれを議会にかけるところまでいったのだという(結果的には議会は通らなかったのだが)。
 このように著者の話を聞いていると、ベーシックインカムの導入は見果てぬ夢物語でもユートピアでもないような気がしてくる。そのためにはまず、このような概念を世間のより多くの人に知ってもらうことが必要だろう。そうすればもっと現実味をおびてくる。
 「一日三時間労働」というのは、1930年にケインズが行った講演の中の「2030年には人々の労働時間は週15時間になる」との予測を踏まえたものだ。著者は結局は「AIには勝てない」としており、AIとの共存のためには、時間と富の再分配、労働時間短縮とベーシックインカムが必要だと訴えている。また、全世界のわずか62人が35億人の総資産より多くの富を所有しているのは国境の存在にあるとして、国境の撤廃も主張している。
 これらの主張はどれも実現不可能なことのように感じるかもしれないが、著者が言うように、奴隷制度の廃止や女性参政権、同性婚も、始めそれを訴える人は狂人と見られていたという事実を忘れるわけにはいかない。

2017年9月25日月曜日

『DECAF “Colombia”』猿田彦珈琲

 ディカフェのコロンビア産コーヒー。
 ディカフェ(Decafe)とは思えないほどおいしい。ふつうにコーヒーの味がする。中深煎りくらい(猿田彦では中煎りと書いてあったけど)で、ミルクチョコレートのような甘くて舌触りのいいコーヒーだ。「スイスウォータープロセス」という水抽出によってカフェインを抜いているのがいいのかもしれない。簡便なディカフェの方法は有機溶媒によるものらしいから。
 今までカフェインレスのコーヒーなんてあまり飲まないできたけれど、そうもいってられなくなってきた。どうもここ半年から1年くらい、カフェインを取り過ぎると具合が悪くなってしまうようになったのだ。コーヒーだけじゃなくて紅茶とか烏龍茶を飲み過ぎてもいけない。年をとったせいなんだろうか。それとも体質が変わったせいなのだろうか。コーヒーの味と香りは今でも大好きなので、これまでのようにたくさん飲めなくなったのは悲しい。

猿田彦珈琲

2017年9月23日土曜日

『さわやかブレンド(2017)』徳光珈琲

 ミディアムロースト。
 やわらかい苦味はあるものの、酸味が主体のやや浅めの焙煎。徳光珈琲のコーヒーはもう何年も前から飲んでいるけれど、このブレンドは意外にも初めてだった。どちらかというと深めの焙煎が好みだったから、なんとなく避けてきたのだろう。酸味主体とはいえ、いやな感じの酸味ではなく、さっぱりした印象がある。少しナッツっぽい中にもフルーティなところもあって、悪くない。浅煎りのコーヒーは深煎りよりも若干少なめの豆を使った方が飲みやすくなるような気がする。

徳光珈琲

2017年9月19日火曜日

『月刊MdN 2017年10月号』

 今回の特集は「絶対フォント感を身につける。{明朝体編}」。例のごとく「絶対フォント感を身につけるためのフォント見本帳2017」が付録小冊子としてついており、「絶対フォント感を身につける。」シリーズとしては3回目となる(前回は2016年11月号)。特集は「明朝体編」となっているが、付録には明朝体だけでなく、ゴシック体、毛筆・硬筆体、デザイン書体なども含めた668書体が掲載されている。
 書体を見るとき、レトロ系、ベーシック系、アップデート系を大まかにカテゴリ分けしたり、さらに築地系か秀英系かを見たりと、基本的なポイントをいろいろと教えてくれる。そういう視点から文庫や雑誌などを眺めてみると、なるほど今まで気にならなかった書体の違いによる雰囲気の差がなんとなく感じられるようになる。これはこの書体だ、という絶対フォント感はもちろんそう簡単には身につけられないけれど、不思議と好きな書体というのができてきて、それだけは見分けられるというレベルにはわりとすぐに達するような気がする。気になるフォントがあったら付録の見本帳で調べてみるという地道な付重ねが、絶対フォント感を生み出していくのだろう。文字好きにはたまらない1.5冊(本編+付録)。

2017年9月17日日曜日

『新世紀』Mike Dawes

 2017年。『Era』マイク・ドーズ。
 基本的にはギター1本で奏でるソロギタースタイルだけれど、ニック・ジョンストン(Nick Johnston)のエレキギター・ソロの入った『Slow Dancing In a Burning Room』(John Mayerのカヴァー)や、ユッカ・バックランド(Jukka Backlund)のエレクトロニック・ピアノ、アナログ・シンセサイザーの入った『Parr & Sway』などの曲もある。後者はゆったりしていながらかわいらしさも共存していて私の好きな曲だ。重ね録りと見せかけて、実はルーパーを使って曲の前半に演奏しながら録音したフレーズを曲の途中から再生させて別パートをその上で演奏するといった面白いこともしている。このルーパーを使った演奏はライブで威力を発揮する。
 パーカッシブでタッピングなども駆使した『Overload』のような、いかにもニュー・エイジという曲もあるけれど、私はスピードがゆったり目で落ち着いた感じの『Scarlet』(Peripheryのカヴァー)や『Fortress』のような曲が好きだ。マイク・ドーズのギターはすごいテクニックが満載なんだけど、それをひけらかすのではなく、彼の音楽に必要な要素として組み込まれている感じがして、嫌みな感じが全然しない。とても好きなギタリストのひとりだ。
 この日本盤には、デビュー・アルバムの『What Just Happened?』(私の記事)収録のライヴ・ヴァージョン2曲も収められており、これもいい。

2017年9月14日木曜日

猿田彦珈琲 恵比寿本店

 東京都内に何店舗かある猿田彦珈琲の恵比寿本店。
 事前にネットで場所を確認していたはずなのに、あるべきところに見つからない。しばらく行ったり来たりして、やっと見つけた。最初に行ったとき目の前にあったのに気づかなかったらしい。だって「猿田彦珈琲」と看板が出ていると思っていたのに、「SARUTAHIKO COFFEE」と書いてあるんだもの。
 わりと有名な珈琲店だという認識だったので大きな店だと思っていたのだけれど、店構えは予想に反してコンパクトでアットホーム 。手作り感いっぱいの二人がけテーブルが5つとカウンターが4席のみ。ゆっくりしたかったので、真夏日にもかかわらずトールサイズの本日のホットコーヒーを頼む。マグカップにたっぷりと入ったコーヒーは、値段も良心的で、飲みやすくておいしい。店内に入ってくるお客さんを眺めていると、半分以上はテイクアウトかコーヒー豆を買っていく。メニューはストレートコーヒーばかりではないので、今度来たときはまた違うものを飲んでみよう。

猿田彦珈琲 恵比寿本店』東京都渋谷区恵比寿1-6-6

2017年9月13日水曜日

『ベルギー 奇想の系譜』Bunkamura ザ・ミュージアム

 2017年7月15日~9月24日。「ボスからマグリット、ヤン・ファーブルまで」。
 幻想的なテーマを写実的な描写で表現してきたベルギーやその周辺地域の画家たちの作品を展示している。16世紀フランドル絵画から19世紀の象徴派、現代のコンテンポラリー・アートまで、非常に幅広い年代にわたる。
 ヒエロニムス・ボスやピーテル・ブリューゲル(父)らの版画は、さして大きくもない画面に、これでもかというくらいの人物や怪物を詰め込んでおり、その情報量の多さに圧倒される。ひとつの作品を30分かけて観ても全然飽きが来ないだろう。それが19世紀以降になってくると、比較的テーマを絞って表現されるようになってくる。ルネ・マグリットやポール・デルヴォーの作品を思い浮かべると、わかりやすいかもしれない。マグリットは鳩の絵で知られる『大家族』が来ていた。他にも有名、無名を問わず多くのアーティストの作品(絵画だけでなく、ブロンズやコラージュもあったので、画家とは書かない)が展示されていたが、その中ではフェリシアン・ロップスの作品が目を惹いた。『娼婦政治家(ポルノクラート)』や『聖アントニウスの誘惑』といった代表作が来ていたのに驚いた。この2つの作品以外もよかった。
 今回の展覧会での作品のように、自由で常識にとらわれない想像力を持って絵を描けたらいいのになと思って会場をあとにした。

Bunkamura ザ・ミュージアム』東京都渋谷区道玄坂2-24-1

2017年9月11日月曜日

『知性の顚覆』橋本 治

 朝日新書。副題「日本人がバカになってしまう構造」。
 知性やばいんじゃね?という話を連載の中でしていたら、知性、顚覆しちゃいましたね、となってこの本は終わる。イギリスのEUからの脱退やトランプ大統領の誕生のことだ。ちょっと前まで「反知性主義」という言葉が流行っていたように感じるけれど、この本はそのことを論じる時に「ヤンキー的なもの」という話題から入る。よく読むと「ヤンキー・イコール・反知性」と言っているわけではないのだが、どうにもいやな感じはする。と思っていたら今度はいきなり阿波踊りの話になり大学闘争の話になり東京山の手の話になりと、ヤンキーと知性とがどうなったのかわからぬままに話はどんどん進んでいく(一応著者なりのヤンキーの定義は途中で出てくるのだが)。最終的には「反知性」とは何か。主義なんてものじゃなくて空気なんじゃないかとかいう話につながっていくわけだけれど、そこに至るまでの道筋はなかなか一筋縄ではいかない。それはあとがきにも書かれているように本人も自覚しているところで、その一筋縄ではいかないところを、読者のみなさん、がんばって考えてみてください。そうすればいわゆる知性というものの全体像が浮かんでくるかもしれませんよ、と言いたいようだ。そんな無責任な、と思わないでもないけれど、本書の中でそのネタは十分仕込んであるということなのだろう。得意の橋本節に踊らされ、私の思考は未だ宙に浮いたままにある。