2016年11月27日日曜日

『西欧絵画の近代』高階 秀爾

 青土社。副題『ロマン主義から世紀末まで』。
 本書は、美術展のカタログや雑誌、美術全集などに寄せた論考を集めたものである。そういった類いの本なので、西洋近代絵画史を系統立てて解説しているわけではない。肖像芸術、ロマン主義、ジャポニスム、ポスター芸術といったように、あるテーマを取り上げてそれに沿って論じていたり、モディリアーニ、マネ、ゴッホといった画家に焦点を当てて論じていたりする。画家に焦点を当てたものでは、モディリアーニのものがおもしろかったが、ビアズリーを取り上げているのには驚かされた。あ、そこ行くんだ、という感じで。
 本書全体をとおして、時代考証に多くのページを割いている印象を受けた。西欧史を知って絵画を観るのと知らないで観るのとでは、同じ絵を観るにしても全然違う受け取り方ができるんだ、ということを強く感じた。絵を観るのは、目の前にある絵そのものを観てただ感じるだけでいい、という考え方ももちろんあるけれど、そうじゃなくて時代背景や画家その人をとおして絵を解釈するという見方もあるということがよくわかる。どっちが正しいとかそういうことじゃなくて、絵にはいろんな見方があるということにすぎないのだけれど。ただ、本書のように、絵の描かれた意図というようなものを透かして絵を観るということは、とてもスリリングでおもしろいと思った。

2016年11月23日水曜日

『ボリビア・アグロ・タケシ・カトゥアイ【深煎】(2016)』横井珈琲

 Bolivia Agro Takesi Catuai。ボリビアのアグロ・タケシ農園。農園が高地にあり熟成に時間がかかるので、独特の風味を醸し出しているという。カトゥアイは品種で、カトゥーラ種とムンドノーボ種を掛け合わせたもの。
 横井珈琲がシングルオリジンのコーヒーを深煎りにするのって珍しいと思う(私がたまたまこれまで購入していなかっただけかもしれないけれど)。深煎りなだけあって、この珈琲は苦い。鋭い苦味がまず舌に感じられ、そのあと、熟したバナナみたいな風味がほんのちょっぴり余韻として残る。平坦な味ではなくて、コクもあって立体感がある。でも1ヶ月ちょっと前に飲んだ、同じコーヒー豆(ボリビア・アグロ・タケシ・カトゥアイ)の中煎りの方が華やかな感じがして好きかも(私の記事)。

工房 横井珈琲』札幌市西区発寒9条11丁目2-11(地図

2016年11月19日土曜日

日本シェーグレン症候群患者の会会報第25号

 2016年11月7日発行の「シェーグレンの会会報第25号」が届いた(こちらからダウンロードできます)。主な内容は2016年4月2日に行われた総会と講演会の内容。今年の総会には出席できなかったので楽しみにしていたのだが、あまり目新しい情報はなかった。ただ、ちょっとは気になる内容があったので、メモ程度に紹介。
○シェーグレン症候群患者の睡眠の質を考える 宮内先生
・シェーグレン症候群患者の睡眠の質はどうも悪そうだ。ただ、病気が原因かどうかは不明。
・特徴的といえるかどうかはわからないが、日中の仮眠と睡眠時の中途覚醒がよくみられた。
・中途覚醒が睡眠の質に影響しているのか、睡眠の質がよくないため日中に疲れて仮眠をとらざるを得ないのか、まとめて睡眠をとる体力が低下しているのか、現段階では不明。
○乾燥自覚と他覚所見の関係 西山先生
・目の乾き、口の渇き、ESSPRI(患者が乾燥自覚症状を評価する指標)といった自覚症状と、シルマーテスト、ガムテスト、サクソンテスト、ESSDAI(医師が全身症状を評価する指標)といった他覚所見は、必ずしも一致しない。
・様々な乾きの訴えをひとまとめに「乾燥自覚」と処理してしまうと、患者の訴えの細かなニュアンスが消えてしまい、他覚症状との関連性がみられなくなる。しかし、この微妙なニュアンスを細かく吟味してみると、表現の違いが病態の違いを反映していることがよくわかる。
○リウマチ性疾患への理解-シェーグレン症候群を中心に- 佐川先生
・シェーグレンの特徴は唾液や涙の分泌低下等であるが、関節痛、頭痛、疲れやすい、集中力が低下する、気分がよく変わる、鬱病状態になったことがあるなどの症状がみられることがある。自分だけで抱え込むことをせずに、医師等に相談してください。
・日常生活で心がけることは、1.規則正しい生活(疲れが溜まらないような生活を守る)、2.安静と十分な睡眠、3.バランスの取れた食事、4.適度な運動、5.気分転換、ストレスをためない、5.病気に対しても悲観的に考えない。

日本シェーグレン症候群患者の会HP

『ラプソディー・ジャパン』村治 佳織

 2016年。Rhapsody Japan。5年ぶりのオリジナルアルバム。大病から復帰してアルバムを出せるようになったんだな、とうれしい。
 表題曲『ラプソディー・ジャパン』は、『さくら(日本古謡)』、『花(滝廉太郎)』、『通りゃんせ(童唄)』など、古くからの日本の歌をギター2重奏用にアレンジしたもので、弟の村治奏一と2人で弾いている。日本の歌はあまり得意ではないけれど、しっかりとしたメロディの際立つ、懐かしさあふれる素敵な曲だ。最後の曲の『カヴァティーナ』も村治奏一との2重奏。まるで1人で弾いているかのような一体感がある。ソロで弾くのとはまた違った趣。アルバム『プレリュード』に入っていたドメニコーニの『《コユンババ》作品19』を別テイクで再度収録している。前回の時よりもねっとりと重ために演奏している印象がある。このアルバムを聴いてみて、あ、と思ったのは、村治のオリジナル曲が4曲も入っていたことだ。『島の記憶~五島列島にて~』は、まるで昔からあるクラシカルなイメージを持っていて、クラシックギターの音がよく馴染んでいる。『一輪のスノードロップ』は音数が少なく静かな曲。『雨を見つける』は顔を見上げるとさわやかな雨が降っていたという感じ。『パガモヨ~タンザニアにて~』は緩急に富んだアレンジが印象的だった。オリジナル曲は総じて短い曲だけれど、作曲の才能もあるんだ、と感心してしまった。このアルバムの中でわりと気に入ったのは、東日本大震災プロジェクト「明日へ」復興支援ソングだった『花は咲く』。シンプルながらも耳に残る曲だった。
 村治佳織のギターは、粒立ちがよくて音がきれいなので好きです。

2016年11月18日金曜日

『パナマ・エリダ・ティピカ/ウォッシュト(2016)』横井珈琲

 Panama Elida Typica 。パナマのボケテ地区にあるエリダ農園のコーヒー。ティピカは品種で、ウォッシュトは生産処理方法。
 ピーチ、っていう感じがして、とてもジューシー。そんなフルーティな酸味の中に、さらに大きな割合を占めているやわらかい甘みが口いっぱいに広がる。こんなに甘いコーヒーはなかなかない。飲みやすく、しかもおいしい。パナマ・エリダはいつも裏切らない。

工房 横井珈琲』札幌市西区発寒9条11丁目2-11(地図

2016年11月16日水曜日

『フランス絵画の「近代」』鈴木 杜幾子

 講談社選書メチエ。副題『シャルダンからマネまで』。
 ふつうの美術史ではない。この本は2つの意図を持って書かれている。ひとつは、西欧絵画の権威である「歴史画」はフランス絵画が近代化していく上でどのように変化していったのかを明らかにすること。そしてもうひとつは、性や裸体や東洋人がキャンバスの中でどのように描かれてきたのかについて考察すること。そのために例として取り上げられているのは、シャルダン、フラゴナール、グルーズ、ダヴィッド、グロ、ドラクロワ、アングル、クールベ、マネといった画家たちである。テーマが歴史画と性にあるので、例示されている絵もそれに沿ったものになっていて、例えば静物画や肖像画で有名なシャルダンではあるけれど、掲載されているのは風俗画ばかりだったりする(シャルダンの風俗画は好きなジャンルなので別にいいのだけれど)。
 全体をとおして、歴史画の変遷については楽しく読むことができた。しかしながら、性、裸体、東洋人の描かれ方から、その時代に画家や鑑賞者たちが無意識に抱いていた偏見やバイアスともいうべきものを、フェミニズム的視点や西洋至上主義批判的視点から次々とやり玉に挙げていくその方法には、読んでいてちょっと不快になるところもあった。不快になるのは自分自身にもそういう偏見があり、痛いところを突かれているせいではある。そして著者はそういう気分になる読者の存在も当然のようにわかった上で書いているのだけれど、少しやり過ぎだろうと思った。 著者の言わんとしていることは十分にわかるのだけれど、もう少し大目に見てくれてもいいじゃん、シャルダンの絵に男性が登場してなくたったいいじゃん、ってちょっと思うのだ。違う方向から絵画を観るということを教えてくれる点では、この本は大いに成功しているわけだけれど。

2016年11月9日水曜日

『Among My Souvenirs/100 Strings & Joni in Hollywood』Joni James

 ジョニ・ジェイムス。『Among My Souvenirs』(1957)と『100 Strings & Joni in Hollywood』(1960)の二つのアルバムをひとつにして2016年に発売されたもの。
 ジョニ・ジェイムスは主に1950年代から1960年代に活躍したトラディショナル・ポップのヴォーカリスト。きれいで伸びやかな声で、美しいメロディを聴かせてくれる。古いアメリカンポップだけれど、我が家にはこの手の音楽アルバムが1枚もなかったので、逆に新鮮な感じがする。後ろでオードリー・ヘップバーンがくるくる回っていそうな、映画音楽をイメージさせる。最初かけたときは私の部屋には場違いな感じがしたけれども、たまにはこういうのもいいかもしれない。

『インドネシア・ワハナ・ラスナ/ハニー』横井珈琲

 Indonesia Wahana Rasuna Honey。インドネシアのスマトラ島にあるワハナ農園のコーヒー。ラスナは品種で、カチモール種とティピカ種の交配種。豆が大きくて形がそろっている印象。ハニープロセスで作っている。
 きりっとした苦みの際立つコーヒー。ブドウの皮みたいな渋みと、オンコの実のような風味が少しある。横井珈琲ではわりと酸味系のコーヒーが多いような気がするから、こういった苦み系のコーヒーは珍しいと思う。ボディがしっかりとしていながらも、重すぎないところがいい。とてもおいしい。苦み系が好きな人はぜひ。

工房 横井珈琲』札幌市西区発寒9条11丁目2-11(地図

2016年11月5日土曜日

『フランス絵画史』高階 秀爾

 講談社学術文庫。副題『ルネッサンスから世紀末まで』。
 16世紀から19世紀末までのフランスの絵画史を概観している。フォンテーヌブロー派からバロック、古典主義、ロココ、新古典主義、ロマン主義、写実主義、印象派、後期印象派、象徴派、ナビ派に至るまでのほぼ400年間にわたるフランスに息づいた絵画の歴史。そこに登場する多くの画家たちとおびただしい量の作品群を取り出し、彼らを取り巻く政治状況なども織り込みながら、歴史を読み解いていく。
 正直、圧倒される。印象派の頃など数年で刻々と状況が変化していくことを考えると、400年はものすごく長い。そして私の知識の偏りもよくわかった。ここに出てくる古典主義以前の画家たちのことはほとんど知らなかった。だからこそ彼らの作品も観てみたいと思うのだけれど、この本の残念なところは図版がとても少ない印象を受けてしまうということだ。掲載されている図版は59点と結構多いのだけれど、それ以上に画家や作品の数がとても多いので、総体的に図版の数が少なく感じてしまう。出てくる画家がどんな絵を描いているのかは、この本以外の資料に当たらなければならない。その点に目をつぶれば、この本はよくまとまっていると思う。印象派以降の比較的自分のよく知っている画家たちについては、もう少し突っ込んだ話をしてもいいのではないかとも思ったが、本全体の構成を考えると、わりとバランスが取れているのかもしれない。この本を足がかりにして、これからも美術鑑賞を愉しんでいきたい。

2016年11月3日木曜日

『Ballads & Burton』Ann Burton with Louis van Dyke

 1970年の録音。『バラード・アンド・バートン』。アン・バートンのセカンドアルバム。ルイス・ヴァン・ダイク(Louis van Dyke, p)、ジャクエス・スコルス(Jacques Schols, b)、ジョン・エンゲルス(John Engels, ds)、ルディ・ブリンク(Rudy Brink, ts)。
 バラード中心のしっぽりとしたジャズヴォーカルアルバム。昭和の中頃からある、壁やテーブルに艶がいい具合に出てきた、味のある雰囲気の喫茶店で流れていそうな、落ち着いた感じの音楽。聴いていると、何だか心まで穏やかになる。聴きやすすぎず、ちょっと特徴のある彼女の声がまたいいんですね。今日はサンドイッチセットにコーヒーだな。