2016年9月28日水曜日

『イコノロジー研究〈上〉』エルヴィン・パノフスキー

 ちくま学芸文庫。浅野徹、塚田孝雄、福部信敏、阿天坊耀、永沢峻 訳。
 図像解釈学、すなわちイコノロジーは、美術作品の形、見た目ではなく、その作品の主題や意味というものを扱う。例えば美しい女性が左手に剣を持ち、右手に男の首の乗ったお盆を持っているフランチェスコ・マッフィの絵。これをただそのまま単なる女性の絵と見るのではなく、サロメとしてみたり、ユディトとして見たりしてみる。そしてその結果ユディトだと見なしたとすると、なぜそう言えるのか。美術は造形のおもしろさを楽しむだけでなく、その意味をも楽しめる。そんなことをこの本は教えてくれる。
 扱っている作品はルネサンス以前のものがほとんどを占める。「ピエロ・ディ・コジモの2つの絵画群における人間の初期の歴史」、「時の翁」、「盲目のクピド」という3つの主題について論じており、図版も多く微に入り細に入りといった感じの突っ込んだ議論がなされている。だから著者の論旨にうまく乗ってしまえば、躍動感のある美術の持つ「意味」の世界にどっぷりと浸かって楽しむことができるだろう。ちょっと小難しかったり、図版が白黒で小さいのでちょっと見づらかったりはするけれど、それを補うに十分なおもしろさがある。

2016年9月24日土曜日

『秋のブレンド/ミエル(2016)』横井珈琲

 スタッフ開発の秋のブレンド。ブレンドに使っている豆は、グァテマラ・ラ・ブレア、コスタリカ・モンテ・コペイ、ブルンディ・マバンガ。
 ミルクキャラメルのような風味。なめらかな口当たり。ちょっとえぐみが感じられるけれど、全体的にはバランスの取れたブレンド。飲みやすい。悪くないと思う。

工房 横井珈琲』札幌市西区発寒9条11丁目2-11(地図

2016年9月22日木曜日

『Four Post Cards』吉村 弘

 2003年録音。
 電子音がちりばめられた静かで穏やかな環境音楽。このアルバムは、神奈川県立近代美術館のためにつくられた音楽だ。この美術館には葉山館と鎌倉館があって、それぞれに対して開館の音楽と閉館の音楽がつくられた。そしてこのアルバムには、その4曲の他に波音などが入ったスペシャルバージョン2曲が加えられている。心が落ち着く。
 同年吉村は世を去り、これが彼の最後のアルバムになった。

「雨と休日」でみてみる

2016年9月19日月曜日

『望郷~駒ヶ岳遠景』

 北海道の大沼国定公園の近くにある駒ヶ岳。この山はどの方向から眺めるかで全然違った姿を見せる。一般には大沼のある七飯町から見た形が有名だけれど、これは山を挟んだ逆側にある町、森町から見た駒ヶ岳。向かって左側の方にある町である鹿部町から見た形もまったく違って見える。
 私はこの方向から見た駒ヶ岳が好き。故郷でも何でもないんですが、つい「望郷」というタイトルをつけてしまいました。アクリル画です。

2016年9月17日土曜日

『絵本の書き方』エレン・E・M・ロバーツ

 朝日文庫。副題『おはなし作りのAからZ教えます』。大出健、椋田直子 訳。
 著者は約500冊もの児童書を手がけてきた編集者。そんな彼女が教えてくれる絵本の書き方がこの本だ。絵本の構成要素である絵と文は明確に分けて考えられており、本書では、どちらかというと絵本の文を書くということに主眼が置かれている。だから「絵本のつくり方」ではなくて「絵本の書き方」なんだと思う。テーマの選び方からストーリー展開、絵本にあった言葉の使い方等々、様々な視点から絵本の書き方を指南してくれる。この本には図版がほとんど掲載されていないため、視覚に訴えてくる類の本ではないが、解説は具体的で丁寧なので読むのに苦労することはない。指南書というよりは読み物的な感覚で、楽しく読むことができた。

2016年9月14日水曜日

『hue』江藤 有希

 2016年。
 コーコーヤに所属するヴァイオリニスト、江藤有希による初ソロアルバム。ショーロクラブ、コーコーヤのギタリスト、笹子重治のほか、チェロやピアノ、パーカッションなども入る。
 伸びやかながらも切れのあるヴァイオリンの音が耳に残る。メロディ・メーカーなんだと思う。アルバムを聴き終わったあとも、ずっと印象的なメロディが頭の中で舞い続ける。全体的なイメージはノリがいい南米の音楽、という感じだけれど、かわいらしい曲やバラードも割合多く収録されている。ギターとヴァイオリン、ピアノとヴァイオリンといった、シンプルな構成のものが私にはよかった。どちらかというとヴァイオリンの音は苦手な分野だったのだけれど、意外といいものだな、と思った。

2016年9月13日火曜日

『やってはいけないウォーキング』青栁 幸利

 SB新書。
 群馬県中之条町に住む65歳以上の5000人を対象に、24時間、365日の活動を15年間追跡調査して得られたデータを元に、健康によい歩き方を提唱する。それは歩数と運動強度からなり、やり過ぎてもやらな過ぎてもいけないという。なるほど膨大なデータから導き出されただけあって、説得力がある。
 ただ、タイトルはおかしいと思う。本書の主眼は「やってはいけないウォーキング」にあるのではなく、「やるべきウォーキング」にある。やってはいけないことは、実際のところあまり書かれていない。また、この結論は65歳以上の人たちには当てはまっても、それ未満の人に当てはまるのかどうか、やや気になる。もうちょっと言うと、本書の後半はなんだかトンデモ健康本みたいな体裁になってしまっていて、もったいない。せっかくエビデンスのしっかりした研究が元になっているんだから、もう少しきちんと書けばよかったのにと思う。
 この本の結論は1行か2行で書けてしまうくらい、すっきりとした簡潔なものだ。私はこのことを意識しながら生活していきたいと思う。

2016年9月10日土曜日

『暇と退屈の倫理学』國分 功一郎

 太田出版。増補新版。
 暇と退屈について論じてきた様々な哲学者らを参照しつつ、特にハイデガーの退屈についての議論を批判的に読み解き発展させ、著者独自の暇と退屈の倫理学を作り上げている。暇とは、退屈とはどういった状況を表すのかそれほど深く考えてきたことのなかった私にとっては、示唆に富む論点が多かった。
 しかしながら、過去の哲学者や思想家をこき下ろすような記述や、根拠のはっきりしない断定口調、論理性の欠如など、読んでいて不快に思うこともまた多かった。読みようによってはおもしろい本だけれど、著者の姿勢みたいなものにどうしても馴染めなかった。

2016年9月9日金曜日

『雨の日と月曜日は』Ann Burton

 1977年。アン・バートンの3回目の来日時に録音されたカヴァー・アルバム。ケン・マッカーシー(p, Ken McCarthy)、稲葉国光(b)、大隈寿男(ds)のシンプルな構成。
 わりと原曲に忠実なまっすぐなアレンジが多い。そのせいかとても聴きやすいジャズ・ヴォーカル作品となっている。クセがなくて安心して聴ける感じ。
 『You'd Be So Nice To Come Home To』のような元々ジャズで歌われていた曲もあるけれど、イーグルス(Eagles)の『Desperado』とかカーペンターズ(Carpenters)で有名な『雨の日と月曜日は』のようなポピュラーな曲も歌っている。ポール・サイモン(Paul Simon)の『時の流れに』なんかが入っているのは心憎い。個人的には『You And Me Against the World』(Paul Williams)と『I Cover the Waterfront』(Johnny Green)、『I Won't Cry Anymore』(Fred Wise)が気に入った。

2016年9月4日日曜日

『ブラジル・イペ /ナチュラル(2016)』横井珈琲

 Brazil IP。ブラジルのファゼンダ・イペ(Fazenda IP)農園のコーヒー。
 チェリーとチョコレートの風味。やわらかな雰囲気のあるコーヒー。ナチュラル処理したものはふつう独特の香味があるものだけれど、この豆はクセがなく飲みやすい。もしかするとほんのちょっと立ち上るさわやかな酸味がその名残かもしれない。おいしい。

工房 横井珈琲』札幌市西区発寒9条11丁目2-11(地図

2016年9月3日土曜日

『須賀敦子全集 第3巻』須賀 敦子

 河出文庫。
 1993年から1997年にかけて発表されたエッセイを収録している。フランスの女流作家マルグリット・ユルスナールを巡る『ユルスナールの靴』、主にイタリアを辿る旅『時のかけらたち』、ヴェネツィアを描いた『地図のない道』、そして十数編の短いエッセイ。やわらかな、しかし確かな筆致の美しい文体に引き込まれる。もちろんその内容にも。エッセイなのに、まるで自分のすぐ目の前で繰り広げられているような感覚に陥る。何だか小説を読んでいるみたいに。

2016年9月1日木曜日

『河 River』Jia Peng Fang

 1999年。ジャー・パンファン with 美野春樹トリオ。
 ゆったりとした中華の雰囲気をまとった旋律と、情感豊かな二胡の音色がぴったりとはまって耳に心地よい。東洋風ではあるけれども民族的すぎず、いいぐあいに洗練された感じがいい。二胡のアルバムは10枚ほどもっているけれど、同じジャー・パンファンの『遙 Faraway...』と並んで、とても好きなアルバム。
 いつものようにお香を焚いて、台湾の文山包種茶を煎れて、静かに読書をしたりパソコンをいじったり。思いがけなく訪れた突然の休みはちょうどよい休養日となった。星占いは12位だったけれど。