2016年7月26日火曜日

『絵本つくりかた (プロの現場から学ぶ!)』つるみ ゆき

 技術評論社。
 絵本づくりを一から学べる。絵本のつくりや製本、印刷といった基本的なことから、テーマ選び、骨組みづくり、下描き、本描きなど絵本づくりそのものの話、ストーリーやキャラクターづくりのヒント、絵本の表現技法など、ひと通りのことが載っている。最後には電子書籍の絵本をつくったり、Web上で電子書籍をつくって公開したりといった、紙の製本にとらわれない絵本づくりについても紹介しており、参考になる。ちなみに電子書籍づくりはAdobe InDesignによる方法で行っているが、別にこのソフトを使わなくてもつくれそうだ。
 全体的に図版を多く使って、実際に出版された絵本も参照しながら解説してあるので、とてもわかりやすい。絵本製作についてはアナログによるものとパソコンによるものを適度に織り交ぜていて、今の時代にも合っている。あまり小難しいことは書いていないので、絵本をつくったことのない人でも気軽に手に取って読むことのできる本だ。

2016年7月23日土曜日

『BEAU PAYSAGE Chardonnay 2016』Various Artists

 2016年。
「BEAU PAYSAGE(ボー・ペイサージュ)」は、山梨県にあるワイナリー。このアルバムはそのワイナリーのシャルドネをイメージしたオムニバスとなっていて、ピアノやギター、フルート、ヴィブラフォンなどバラエティに富んだインストゥルメンタル・アルバムである。軽やかな雰囲気の素敵な曲がたくさん入っていて、まるで爽やかな風に吹かれながら緑あふれる戸外でワイングラスを傾けているような気分に浸れる。選曲がなかなかいい。このアルバムの曲から辿って、いろいろなアーティストのアルバムを聴いてみたくなる。

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『心という難問』野矢 茂樹

 講談社。副題『空間・身体・意味』。
 目の前にリンゴがある。私はそれを見ている。リンゴという実物がそこにあって、それを脳が知覚イメージに変換して、それを私はリンゴとして認識している。ではリンゴはどこにあるのか。ここ、と指さす。うん、そうだよな。でもそれも知覚イメージであって実物じゃないんじゃないかと反論がくる。じゃあ、脳の中にリンゴがあるのか。ちょっと状況を変えよう。テレビの中にリンゴが映っている。どこにあるのか。ここ、とテレビ画像を指さす。いや、そこにはリンゴはない。じゃあ、やっぱり脳の中にリンゴがある?実物のリンゴにはどうやったらたどり着けるんだろう。
 彼女が腕が痛いという。私はその痛みをわかることはできるのだろうか。自分の痛みならわかる。それから類推して彼女の痛みを想像してみる。うん、痛い。でもそれって彼女の腕に自分の痛みを感じたということで、彼女の痛みじゃないんじゃないか。他人の痛みは自分には絶対にわからないんじゃないか。
 なんかいろいろと考えていくと、自分の知覚や感覚が本当はどういう仕組みになっているのか、訳がわからなくなる。実は哲学という学問の中でも様々な考え方があって、それに決着がついたわけではない。哲学じゃなくて科学だったらきっちりと答えが出せるんじゃないのかというと、そうともいえない。
 そんな心の難問に野矢が挑む。哲学というと何だか難しい言葉を使って突飛な考え方を展開していくというイメージがあるけれど、彼はあくまでふつうの一般人がふつうに感じているその感覚を大事にして、それに寄り添うように答えを導いていく。本書では、空間・身体についての眺望論と、意味についての相貌論という2つの考え方を軸にして、人の知覚や感覚という心の問題を解決していく。心というものはどんな仕組みで成り立っているのか、ひとつの考え方を示してくれる。それに納得できるかどうかは読者次第ではあるけれど、哲学ってこうやってやるんだ、といういい見本になってくれているのは間違いない。いい本だと思う。

2016年7月20日水曜日

『ボリビア・ママニ(2016)』横井珈琲

 Bolivia Mamani。ボリビアのレネ・ママニ農園のコーヒーだと思う(農園名があるのかどうか不明。レネ・ママニさんとマウリシオ・ママニさんのコーヒー)。
 ダークチェリーとミルクチョコレートの風味。少し苦味があるけれど、まろやかなコーヒー。バランスがよくて飲みやすい。後味もいい。シングルオリジンというよりはブレンドしたコーヒーのような安定感がある。わりと好きかも。

工房 横井珈琲』札幌市西区発寒9条11丁目2-11(地図

2016年7月18日月曜日

『絵本のつくりかた 1』みづゑ編集部・編

 美術出版社。みづゑのレシピ。あこがれのクリエイターとつくるはじめての物語。
 この本は、絵本をどうやって作ったらいいのか手順を追って教えてくれるわけでも、絵本を作る極意を教えてくれるわけでもない。けれども、絵本作家の人たちと一緒に、おりがみ絵本を作ったりポップアップ絵本を作ったり布絵本を作ったりしているうちに、あ、絵本を作るのって楽しいな、とか、今度自分ひとりでも絵本を作ってみたいな、という気持ちにさせてくれる本だ。ふだん絵本作家がどんなことを考えて絵本を作っているのか、どういう風に絵本を作っているのか、そんな横顔を垣間見られて楽しくなる。
 最後の方には印刷や出版の話についても触れているので、読者が一歩踏み出して絵本を作ってみる手助けにもなってくれる。また、付録(?)として、中身が真っ白なハードカバーの「freestyle art book(まっ白な絵本でつくるはじめての物語)」もついているので、すぐにでも自分だけの絵本を作ることができるようになっている。堅苦しくなくて、見ているだけで楽しい。

2016年7月17日日曜日

『すぐわかる産地別やきものの見わけ方』佐々木 秀憲

 東京美術。
 代表的な国内23、海外13の産地の焼き物を紹介している。ひとつの産地について2~6ページを使って、豊富な写真とともに解説している。説明はわかりやすく、各産地の特徴もコンパクトにまとまっている。
 ただ、やはりこれだけの産地をひとつの本に詰め込むと、それだけさらっとした説明になってしまうのは致し方ない。同じ産地でも多様な作品があるはずなので、もっとたくさんの写真も見たくなるし、もっと詳しい解説も欲しくなる。違う産地でとてもよく似た焼き物もあるので、それらの区別の仕方も知りたくなる。だが、それは他の専門書にあたったりネット情報を収集したりすべきなのだろう。焼き物に興味を持って初めて手に取る本としてはこのあたりで満足しなければならないのかもしれない。あとは実際に焼き物をたくさん見てみることですね、きっと。

2016年7月15日金曜日

『ポーラ美術館コレクション』北海道立近代美術館

 2016年7月2日~8月28日。副題『モネからピカソ、シャガールへ』。
 箱根にあるポーラ美術館所蔵絵画の展覧会。印象派から後期印象派を経て象徴主義、フォービズム、キュビズムなどの作品を展示している。まあ、シャガールらはこれらの範疇に収まらない画家ではあるけれど。
 まず、モネとピカソは別格な気がした。モネの作品についていえば、近くから見ると荒いタッチが目立つ混沌としたキャンバス面なのに、少し離れて見ると立体的にその場に光景が浮かび上がってくるかのような臨場感が感じられる。それは色彩の組み合わせや微妙なタッチの違いの所産である。ピカソの絵はもうただただ天才だとしか言いようがない。ひとりの人間の中にこれだけたくさんの引き出しが入っているとは(しかも完成度が高い)ため息しか出てこない。
 この展覧会では31人の画家の絵が展示されているが、その中でも目を引いた作品を紹介したい。ブーダンの『ダウラスの海岸と船』は、さすが風景画で有名な画家だけのことはあり、いい。ルノワールは人物が有名かもしれないが、『エッソワの風景、早朝』のやわらかい光の扱いが気に入った。ピサロの風景画は2作品展示されていたが、やはり私は彼の絵が好きなんだな、とあらためて感じさせられた。セザンヌの『4人の水浴の女たち』は構図の妙にうならされた。ゴーガンの『小屋の前の犬、タヒチ』では、オレンジ色の屋根と背景の緑の対比が印象的だった。ルドンはアクセントで入っている鮮やかな色彩にハッとさせられた。ヴラマンクの『画家の父の家』は黒によって引き締まった画面構成に目がとまった。シャガールの『オペラ座の人々』はいかにも彼らしい色遣いと伸びやかな筆の運びに引き込まれた。あと、私の知らない画家も数名いて、その中ではアンリ・ジャン・ギヨーム・マルタンの作品群がとても気に入った。色がとてもきれいで、形態もしっかりしている。ほかにオーギュスト・エルバンの『陽のあたる街』の単純化された光と影の対比が、高彩度の色と相俟って印象に残った。
 上で挙げたもの以外にも、ゴッホやムンクなど素敵な作品がたくさんある。作品数は71点とそれほど多いわけではないけれど、なかなかに楽しい展覧会だった。

北海道立近代美術館』札幌市中央区北1条西17丁目

2016年7月12日火曜日

『都市の目覚め』Sakanoshita Norimasa

 2016年。坂ノ下典正のギターによるアルバム。「Weiss」というレーベルからでている。このレーベルは、 ブダペスト出身の現代美術作家であるリチャード・ヴァイス(Richard Weiss)が立ち上げたもので、彼の選んだひとりのアーティストをひとつの作品としてリリースするというコンセプトとなっている。このアルバムはこのレーベルの第2弾にあたるので、ジャケットには「Weiss2」と書いてある。
 7弦のクラシックギターやエレキギターを使って録音されている。エフェクトを結構強くかけているので、生音という感じはしない。 地面の低いところから徐々に立ち上って空間を埋めていく感じで、とても静かな音楽。ときにトラディッショナルを織り交ぜつつアドリブでそのときの気分をひとつひとつ丁寧に音を紡いでいく。坂ノ下がどういう意図でこういうタイトルにしたのかはわからないが、朝靄のかかるビルの谷間に朝日が差し込み始めたようなそんなイメージがわいてくる。確かに都市はこんな風に目覚めるのかもしれない。

2016年7月9日土曜日

『 鳳凰單欉蜜蘭香』遊茶

 ほうおうたんそうみつらんこう。広東省潮州市鳳凰山が産地のお茶。單欉(たんそう)は一株のことで、元々は特徴的なお茶の木一株からできたお茶だから、こんな名前なんだと思う(違うかな?)。分類的には青茶のひとつ。
 立ち上る香りがすばらしい。花のように華やかで、フルーツのように甘くてさわやかな香りが鼻をくすぐる。味もハチミツのような、あるいはライチのようなフルーティな感じがあって、とてもおいしい。巖茶ほどはどっしりした重みはないけれど、しっかりとした味がする。すごくいい。

遊茶』東京都渋谷区神宮前 5-8-5

『働くことの哲学』ラース・スヴェンセン

 紀伊國屋書店。小須田健 訳。
 働くこと。仕事。その意味とは何か。生きるために仕事をするんだって私なんかは思っていたりしたんだけど、生きるためというわけでもなく仕事をしている人はいっぱいいるようだ。じゃあ何のためにしているんだろう。昔、ギリシア時代の人たちは仕事をするということを卑下していたらしい。でもいつしか仕事は良いものだと見なされるようになり、人生の目的になってしまっている人たちもでてくる。仕事と人生。いったいどういう関係にあるんだろう。
 そんな大上段に構えなくたっていい。もっと小さなこと。例えば給料と仕事のこと、レジャーと仕事のこと。また、仕事と外部の関係じゃなくて、仕事内部の話。例えば管理されること、資本家と労働者。
 うん、働くことひとつとってもいろいろと考えることはあるんだな。私は著者の考え方すべてに納得できたわけでもないし、そもそも著者が何を言いたいのかわからないことも多かったけれど、働くことについて著者と一緒に考えることはできた。この本に最終的な答えは載っていない。結局の話、働くことの意味はこの本から学ぶのではなくて、自分できちんと考えてみる必要がありそうだ。

2016年7月3日日曜日

『夏のブレンド/あじさい(2016)』横井珈琲

 6月~8月の限定ブレンド。グァテマラ、エルサルバドル、コスタリカなどの豆を使っている。
 ミルクチョコ、ヘーゼルナッツの風味。苦味、酸味のバランスがよくて、飲みやすい。ふだんのみとして、結構好きなブレンド。
 夏のブレンドということでアイスも試したら、きりりとした酸味が立って、さっぱりとした印象。アイスコーヒーはフレンチローストの苦味系ブレンドが私の中では定番だったのだが、こういう酸味系のアイスコーヒーもいいものだ。

工房 横井珈琲』札幌市西区発寒9条11丁目2-11(地図

『人体のデッサン技法』ジャック・ハム

 嶋田出版。島田照代 訳。
 説明の仕方がとても丁寧で、かつ分析的。人体を描く上でのポイントがしっかりと押さえられているので、読んでいて、これはどういうことだろう、と悩むことがほとんどない。とても実践的な本。
 初学者向けの人体デッサン書というと、俗にハム本と呼ばれるこの本と、ミーリス本と呼ばれるA.ミーリスによる『やさしい人物画』が有名だけれど、本書の方がわかりやすくて、すぐにでも使える知識がたくさんつまっていると思う。ミーリス本もいい本だと思うけれど、この本を先に読んでからそっちを読んだ方が取っつきやすいと思う。この本は役に立ちます。

2016年7月1日金曜日

『まなざしのレッスン(1)西洋伝統絵画』三浦 篤

 東京大学出版会。
 14世紀から18世紀頃までの西洋絵画について、東京大学で行われた講義を元にまとめられている。ロココやオランダ風俗画くらいまでの時代だ。
 絵の見方なんて自由でいい、感覚のまま受け取ればいいんだ、という考え方があるけれど、それはちょっと違うんじゃないかという視点で、この本は書かれている。例えばここに1個のリンゴがあったとして、私たちはそれをただの色と形だけで捉えるだけで満足してしまっていいのか。リンゴといえばアダムとイブの食べた禁断のリンゴを指しているのかもしれないし、愛と美の神ヴィーナスを表しているのかもしれない(もちろんセザンヌの描いたリンゴのように、色と形に主眼を置いているものだってあるだろう)。そんな画面に隠されたモチーフの意味を探ることによって、画家が本当に描こうとしていたもの、あるいはその絵の裏にあるストーリーが浮かび上がってくる。そういう様々な絵の見方を身につけることによって、今までよりもさらに深くて自由な絵画の楽しみ方ができるようになるだろう、とこの本は言っている。例えばボッティチェリの『春』の一番右側で女の人を追いかけている青い男がいったい誰で、何をしようとしているのかを知ってこの絵を見るのと、知らないでこの絵を見るのとでは、楽しさが全然違うだろうということだ。
 そういう様々な絵画の見方を、神話画、宗教画、寓意画、肖像画、風景画、風俗画、静物画といったジャンル別に解説してくれている。カラー口絵12点、モノクロ図版175点という豊富な例を見ながら、楽しみながら著者の講義を受けることができる。この本を読むと、美術館などにおいて、今までとはまた少し違った絵の楽しみ方ができるようになることだろう。