2016年12月30日金曜日

『ウガンダ』宮越屋珈琲

 ふだんから宮越屋珈琲のカフェはよく利用しており、店内でコーヒーを飲む機会はあるのだけれど、豆を購入したことはなかった。今回「ウガンダ」が安売りしていたので、つい購入してしまった。
 味はカフェで出すコーヒーと同じく、ガツンとしたパワフルな苦みが口に刺激を与える。そしてその苦みの中に、ナッツやチョコレートの風味が感じられる。こう言っては失礼かもしれないが、思っていたよりもちゃんとした豆で、期待以上の味を楽しむことができた。深みのある苦みがとてもいい。

宮越屋珈琲

2016年12月29日木曜日

『いま哲学に何ができるのか?』ガリー・ガッティング

 ディスカヴァー・トゥエンティワン。Gary Gutting。外山次郎 訳。
 学術的哲学とは違って、本書は専門的で特殊な研究を社会に適用していく大衆哲学の視点から、様々な社会問題に切り込んでいる。政策論争についてや、科学の限界の話、無神論と有神論、資本主義社会における教育、アートの価値、人工妊娠中絶といった問題について、哲学はどう取り組んでいるのか解説している。
 興味深い論点も提示されているし、その解決策も新鮮でおもしろかったりもする。でも私にはこの本がいったい何を言いたいのか、実のところよくわからなかった。そんなに難しい単語が使われているわけでもないし、言葉遣いもやさしい。なのに何度読んでも文の意味がさっぱりとれないところが結構あった。私の理解力のなさが原因なんだろうとは思う。初心者向けの本ではないのかもしれない。本を読む力が最近落ちてきたような気がして、気持ちが沈んでしまった。

2016年12月15日木曜日

『清香黄金桂(2016)』遊茶

 せいこうおうごんけい。
 青茶(烏龍茶系)で、発酵度が低めの中国茶。鉄観音と同じ福建省の安渓が原産だけれど、こっちの方が上品で澄んだ感じがする。品種は黄旦(こうたん)。透明感のある黄金色の見た目と、桂花(キンモクセイ)の花を思わせる香りとから、黄金桂と名付けられたという。でも実際に煎れてみると、水色は黄金というよりは緑がかっている。甘い乳香と呼ばれる香りがして、舌を包み込む甘みもまたいい。おいしい。

遊茶』東京都渋谷区神宮前 5-8-5

2016年12月11日日曜日

『chouchou』上白石萌音

 2016年。かみしらいしもね。
 テレビの歌番組で『なんでもないや』を歌っているのを聴いて、いいなと思った。楽曲はメロディもとりづらいし今っぽい曲ですんなり受け入れづらかったけれど、上白石のちょっとハスキーがかったところのある伸びやかで透明感のある声がとても印象的だった。何度か聴いていると、この曲のゆったりとした感じが、彼女の特長を表現するのにぴったりな曲だと思い直した。
 このアルバムは彼女のデビューアルバムで、洋画や邦画、アニメで使われていた曲をカヴァーしたものだ。バラードっぽい曲が多く、彼女の声をしっとりと聴かせてくれる。英語の曲はちょっと苦手だったけれど、『366日』、『Woman "Wの悲劇"より』、『変わらないもの』など、日本語の曲は好きだった。

2016年12月10日土曜日

『いま世界の哲学者が考えていること』岡本 裕一朗

 ダイヤモンド社。
 はじめの章では20世紀以降の哲学の流れを概観しつつ、21世紀、つまり今の哲学の潮流を解説している。そしてその後の章で、個別の事例について世界の哲学者がどう考えているのか紹介している。
 SNSやスマートフォンの普及、マイナンバー制度の創設、人工知能といったIT革命が人類に何をもたらすのかという問題。クローン人間の権利をどう考えるかや、再生医療で寿命が延びることや犯罪者となる可能性のある人は隔離すべきかといったバイオテクノロジーの問題。資本主義が生む格差は本当に悪なのかといった資本主義の今後についての問題。文明の衝突などの宗教の問題。環境保護論は正しいかといった環境問題。これらの問題に対して、今、世界の哲学者がどういったアプローチをしているのか、複数の立場から紹介している。
 ただ、著者は「いずれかの立場に与して、その観点から主張を押しつけるような書き方をして」いないと述べているが、そんなことはないと思う。クローン人間はいてもいいじゃないかとか、地球温暖化論は重要じゃないとか、そういった立場からの主張を著者もまた受け入れているように思われる。それは一般の日本人からするとドキッとする内容であろうから、もしかすると著者は一般常識と思われる考えも実は間違いなのかもしれないとの例を出すことによって、我々を揺さぶり、議論のバランスをとろうとしているのかもしれない。実際私はこの本を読むことによって、自分の考えとは違う人たちの主張の存在を知り、元々の自分の考えが正しかったのかどうか反省し直す契機になった。当たり前のように感じていたことが実はそうではないかもしれないと思い返すきっかけになった。何が正しくて何が正しくないのか容易にはわからないし、容易にわかろうとしてもいけないのだろう。いろいろな立場からのものの見方を学び、自分の考えをまとめていく作業の重要性を感じた。

2016年12月3日土曜日

『あ、お地蔵サンタ』

 11月29日~12月25日が会期の講談社フェーマススクールズのクリスマスイラスト展に出展しました。葉書サイズの切り絵です。

『GALLERYフェーマス』東京都文京区本駒込3-20-3 講談社FSビル1F

『阿里山金萱高山茶』遊茶

 ありさんきんせんこうざんちゃ。
 青茶(烏龍茶系)で、発酵度が低めの台湾茶。海抜1,000m以上の高山で栽培される、金萱という品種のお茶。緑色にころんと丸まった形がかわいい。乳香と呼ばれるちょっとミルキーな甘い香りが特徴だけれど、清流のようにすっきりと澄んだ味がする。うまみがしっかりと出ていて、甘くておいしい。もうちょっとボディが強いほうが好みだけれど、これくらいの方が上品な感じがしていいのかもしれない。

遊茶』東京都渋谷区神宮前 5-8-5

『20thアニバーサリーブレンド/ありがとう』横井珈琲

 横井珈琲ができて20周年を記念したブレンド。今横井珈琲のサイトを調べてみたら、もう既に販売終了になっていた。でもうちにはまだちょっと残ってるのでその感想。
 グアテマラ、コスタリカなどの豆を使っている。深煎りと中煎りの豆をブレンドしているけれど、どの産地のものが深煎りで、どの産地のものが中煎りなのかはわからない。全体的に苦味系のブレンドだけれど、苦過ぎるわけではなく、やわらかい舌触りで飲みやすい。ブラックチェリーにミルクチョコの風味。結構好きなブレンドなんだけど、もう売られていないというのはちょっとさびしい。

工房 横井珈琲』札幌市西区発寒9条11丁目2-11(地図

2016年12月2日金曜日

『哲学の謎』野矢 茂樹

 講談社現代新書。
 地球上からいっさいの生物が絶滅したとして、それでも夕焼けはなお赤いだろうか。
 のっけからそんな問いに襲われる。え?赤いに決まってるじゃん。何言ってんの?とつい口にしたくなる。が、例えば赤を認識しない生物だけからなる星の夕焼けは赤いか?と考え直してみると、はじめの問いはあながちおかしな疑問ではないことに気づかされる。
 これは、哲学の謎を巡る「ぼく」と「私」の2人の対話集である。難しい哲学用語も哲学者の名前もまったく出てこない。ただ、ちょっとした疑問と、それについてのいろんな考え方だけが話される。

 世界はたった5分前に始まったばかりで、周りにあるモノもぼくたちの記憶もすべて5分前につくられた。だからそれよりもずっと前から世界は始まっている気になっているけれど、実は違うんだよ。昔の記憶ごと5分前につくられたんだよ。

 ぼくが見ている「赤」と君が見ている「赤」って本当に同じなんだろうか。実は違う風に見えていて、たまたま同じようにそれを「赤」と呼んでるだけなんじゃないだろうか。

 ホントにちょっとした疑問、でもそう簡単には答えづらい、というか答えられない疑問。そんな哲学の謎を巡るぼくたちの冒険。「ぼく」と「私」はいろいろな方向から答えを見いだそうとするけれど、答えは出ない。謎は謎のまま残される。
 哲学する、っていうのは、こういうことなんだ。思春期の頃にふっと頭の隅に沸いた「ぼくは違う星から来た王子で、それまでの記憶を全部消されて、地球の記憶だけを植え付けられたんだ」というような他愛もない妄想も、もしかしたら哲学の入り口に一歩足を踏み入れていたということなのかもしれない。 なんかそんな風に思えて、哲学が身近に感じられた。哲学は、小難しいことばかり考えている「哲学者」と呼ばれる人たちの専売特許ではないんだよ、とこの本は教えてくれる。

2016年12月1日木曜日

『KTRxGTR』押尾コータロー

 2016年。
 押尾コータローらしさの詰まったアルバムだな、と思った。
 1人で弾いているとは思えないとデビュー当時よくいわれていた、メロディとバッキングを一緒に弾くタイプの曲(『Together!!!』とか『my best season』)。低音を激しく聴かせて勢いのある『蜃気楼』や『JOKER』みたいな曲。ウクレレみたいなかわいらしさのある『えんぴつと五線譜』、『茜色のブランコ』。『同級生~Innocent Days~』、『空と風のワルツ』のような渋いギターの音を生かしたバラード。澄んだギターの音色が心地よい『Moment』、『Birthday』。パーカッションとの絡みがばっちりはまった『BE UP!』。DEPAPEPEのギターにNAOTOのバイオリンと押尾のギターの息がぴったりと合ってる『Magical Beautiful Seasons』。Galileo Galileiの尾崎雄貴の歌とのコラボ『同級生』。
 バラエティに富んでいながらも、どれも押尾らしくメロディを大事にした演奏で、バランスが取れている。そして、録音がいいのか演奏がいいのか、どの曲も使用しているギターの音の違いがよくわかる。いいと思う。

2016年11月27日日曜日

『西欧絵画の近代』高階 秀爾

 青土社。副題『ロマン主義から世紀末まで』。
 本書は、美術展のカタログや雑誌、美術全集などに寄せた論考を集めたものである。そういった類いの本なので、西洋近代絵画史を系統立てて解説しているわけではない。肖像芸術、ロマン主義、ジャポニスム、ポスター芸術といったように、あるテーマを取り上げてそれに沿って論じていたり、モディリアーニ、マネ、ゴッホといった画家に焦点を当てて論じていたりする。画家に焦点を当てたものでは、モディリアーニのものがおもしろかったが、ビアズリーを取り上げているのには驚かされた。あ、そこ行くんだ、という感じで。
 本書全体をとおして、時代考証に多くのページを割いている印象を受けた。西欧史を知って絵画を観るのと知らないで観るのとでは、同じ絵を観るにしても全然違う受け取り方ができるんだ、ということを強く感じた。絵を観るのは、目の前にある絵そのものを観てただ感じるだけでいい、という考え方ももちろんあるけれど、そうじゃなくて時代背景や画家その人をとおして絵を解釈するという見方もあるということがよくわかる。どっちが正しいとかそういうことじゃなくて、絵にはいろんな見方があるということにすぎないのだけれど。ただ、本書のように、絵の描かれた意図というようなものを透かして絵を観るということは、とてもスリリングでおもしろいと思った。

2016年11月23日水曜日

『ボリビア・アグロ・タケシ・カトゥアイ【深煎】(2016)』横井珈琲

 Bolivia Agro Takesi Catuai。ボリビアのアグロ・タケシ農園。農園が高地にあり熟成に時間がかかるので、独特の風味を醸し出しているという。カトゥアイは品種で、カトゥーラ種とムンドノーボ種を掛け合わせたもの。
 横井珈琲がシングルオリジンのコーヒーを深煎りにするのって珍しいと思う(私がたまたまこれまで購入していなかっただけかもしれないけれど)。深煎りなだけあって、この珈琲は苦い。鋭い苦味がまず舌に感じられ、そのあと、熟したバナナみたいな風味がほんのちょっぴり余韻として残る。平坦な味ではなくて、コクもあって立体感がある。でも1ヶ月ちょっと前に飲んだ、同じコーヒー豆(ボリビア・アグロ・タケシ・カトゥアイ)の中煎りの方が華やかな感じがして好きかも(私の記事)。

工房 横井珈琲』札幌市西区発寒9条11丁目2-11(地図

2016年11月19日土曜日

日本シェーグレン症候群患者の会会報第25号

 2016年11月7日発行の「シェーグレンの会会報第25号」が届いた(こちらからダウンロードできます)。主な内容は2016年4月2日に行われた総会と講演会の内容。今年の総会には出席できなかったので楽しみにしていたのだが、あまり目新しい情報はなかった。ただ、ちょっとは気になる内容があったので、メモ程度に紹介。
○シェーグレン症候群患者の睡眠の質を考える 宮内先生
・シェーグレン症候群患者の睡眠の質はどうも悪そうだ。ただ、病気が原因かどうかは不明。
・特徴的といえるかどうかはわからないが、日中の仮眠と睡眠時の中途覚醒がよくみられた。
・中途覚醒が睡眠の質に影響しているのか、睡眠の質がよくないため日中に疲れて仮眠をとらざるを得ないのか、まとめて睡眠をとる体力が低下しているのか、現段階では不明。
○乾燥自覚と他覚所見の関係 西山先生
・目の乾き、口の渇き、ESSPRI(患者が乾燥自覚症状を評価する指標)といった自覚症状と、シルマーテスト、ガムテスト、サクソンテスト、ESSDAI(医師が全身症状を評価する指標)といった他覚所見は、必ずしも一致しない。
・様々な乾きの訴えをひとまとめに「乾燥自覚」と処理してしまうと、患者の訴えの細かなニュアンスが消えてしまい、他覚症状との関連性がみられなくなる。しかし、この微妙なニュアンスを細かく吟味してみると、表現の違いが病態の違いを反映していることがよくわかる。
○リウマチ性疾患への理解-シェーグレン症候群を中心に- 佐川先生
・シェーグレンの特徴は唾液や涙の分泌低下等であるが、関節痛、頭痛、疲れやすい、集中力が低下する、気分がよく変わる、鬱病状態になったことがあるなどの症状がみられることがある。自分だけで抱え込むことをせずに、医師等に相談してください。
・日常生活で心がけることは、1.規則正しい生活(疲れが溜まらないような生活を守る)、2.安静と十分な睡眠、3.バランスの取れた食事、4.適度な運動、5.気分転換、ストレスをためない、5.病気に対しても悲観的に考えない。

日本シェーグレン症候群患者の会HP

『ラプソディー・ジャパン』村治 佳織

 2016年。Rhapsody Japan。5年ぶりのオリジナルアルバム。大病から復帰してアルバムを出せるようになったんだな、とうれしい。
 表題曲『ラプソディー・ジャパン』は、『さくら(日本古謡)』、『花(滝廉太郎)』、『通りゃんせ(童唄)』など、古くからの日本の歌をギター2重奏用にアレンジしたもので、弟の村治奏一と2人で弾いている。日本の歌はあまり得意ではないけれど、しっかりとしたメロディの際立つ、懐かしさあふれる素敵な曲だ。最後の曲の『カヴァティーナ』も村治奏一との2重奏。まるで1人で弾いているかのような一体感がある。ソロで弾くのとはまた違った趣。アルバム『プレリュード』に入っていたドメニコーニの『《コユンババ》作品19』を別テイクで再度収録している。前回の時よりもねっとりと重ために演奏している印象がある。このアルバムを聴いてみて、あ、と思ったのは、村治のオリジナル曲が4曲も入っていたことだ。『島の記憶~五島列島にて~』は、まるで昔からあるクラシカルなイメージを持っていて、クラシックギターの音がよく馴染んでいる。『一輪のスノードロップ』は音数が少なく静かな曲。『雨を見つける』は顔を見上げるとさわやかな雨が降っていたという感じ。『パガモヨ~タンザニアにて~』は緩急に富んだアレンジが印象的だった。オリジナル曲は総じて短い曲だけれど、作曲の才能もあるんだ、と感心してしまった。このアルバムの中でわりと気に入ったのは、東日本大震災プロジェクト「明日へ」復興支援ソングだった『花は咲く』。シンプルながらも耳に残る曲だった。
 村治佳織のギターは、粒立ちがよくて音がきれいなので好きです。

2016年11月18日金曜日

『パナマ・エリダ・ティピカ/ウォッシュト(2016)』横井珈琲

 Panama Elida Typica 。パナマのボケテ地区にあるエリダ農園のコーヒー。ティピカは品種で、ウォッシュトは生産処理方法。
 ピーチ、っていう感じがして、とてもジューシー。そんなフルーティな酸味の中に、さらに大きな割合を占めているやわらかい甘みが口いっぱいに広がる。こんなに甘いコーヒーはなかなかない。飲みやすく、しかもおいしい。パナマ・エリダはいつも裏切らない。

工房 横井珈琲』札幌市西区発寒9条11丁目2-11(地図

2016年11月16日水曜日

『フランス絵画の「近代」』鈴木 杜幾子

 講談社選書メチエ。副題『シャルダンからマネまで』。
 ふつうの美術史ではない。この本は2つの意図を持って書かれている。ひとつは、西欧絵画の権威である「歴史画」はフランス絵画が近代化していく上でどのように変化していったのかを明らかにすること。そしてもうひとつは、性や裸体や東洋人がキャンバスの中でどのように描かれてきたのかについて考察すること。そのために例として取り上げられているのは、シャルダン、フラゴナール、グルーズ、ダヴィッド、グロ、ドラクロワ、アングル、クールベ、マネといった画家たちである。テーマが歴史画と性にあるので、例示されている絵もそれに沿ったものになっていて、例えば静物画や肖像画で有名なシャルダンではあるけれど、掲載されているのは風俗画ばかりだったりする(シャルダンの風俗画は好きなジャンルなので別にいいのだけれど)。
 全体をとおして、歴史画の変遷については楽しく読むことができた。しかしながら、性、裸体、東洋人の描かれ方から、その時代に画家や鑑賞者たちが無意識に抱いていた偏見やバイアスともいうべきものを、フェミニズム的視点や西洋至上主義批判的視点から次々とやり玉に挙げていくその方法には、読んでいてちょっと不快になるところもあった。不快になるのは自分自身にもそういう偏見があり、痛いところを突かれているせいではある。そして著者はそういう気分になる読者の存在も当然のようにわかった上で書いているのだけれど、少しやり過ぎだろうと思った。 著者の言わんとしていることは十分にわかるのだけれど、もう少し大目に見てくれてもいいじゃん、シャルダンの絵に男性が登場してなくたったいいじゃん、ってちょっと思うのだ。違う方向から絵画を観るということを教えてくれる点では、この本は大いに成功しているわけだけれど。

2016年11月9日水曜日

『Among My Souvenirs/100 Strings & Joni in Hollywood』Joni James

 ジョニ・ジェイムス。『Among My Souvenirs』(1957)と『100 Strings & Joni in Hollywood』(1960)の二つのアルバムをひとつにして2016年に発売されたもの。
 ジョニ・ジェイムスは主に1950年代から1960年代に活躍したトラディショナル・ポップのヴォーカリスト。きれいで伸びやかな声で、美しいメロディを聴かせてくれる。古いアメリカンポップだけれど、我が家にはこの手の音楽アルバムが1枚もなかったので、逆に新鮮な感じがする。後ろでオードリー・ヘップバーンがくるくる回っていそうな、映画音楽をイメージさせる。最初かけたときは私の部屋には場違いな感じがしたけれども、たまにはこういうのもいいかもしれない。

『インドネシア・ワハナ・ラスナ/ハニー』横井珈琲

 Indonesia Wahana Rasuna Honey。インドネシアのスマトラ島にあるワハナ農園のコーヒー。ラスナは品種で、カチモール種とティピカ種の交配種。豆が大きくて形がそろっている印象。ハニープロセスで作っている。
 きりっとした苦みの際立つコーヒー。ブドウの皮みたいな渋みと、オンコの実のような風味が少しある。横井珈琲ではわりと酸味系のコーヒーが多いような気がするから、こういった苦み系のコーヒーは珍しいと思う。ボディがしっかりとしていながらも、重すぎないところがいい。とてもおいしい。苦み系が好きな人はぜひ。

工房 横井珈琲』札幌市西区発寒9条11丁目2-11(地図

2016年11月5日土曜日

『フランス絵画史』高階 秀爾

 講談社学術文庫。副題『ルネッサンスから世紀末まで』。
 16世紀から19世紀末までのフランスの絵画史を概観している。フォンテーヌブロー派からバロック、古典主義、ロココ、新古典主義、ロマン主義、写実主義、印象派、後期印象派、象徴派、ナビ派に至るまでのほぼ400年間にわたるフランスに息づいた絵画の歴史。そこに登場する多くの画家たちとおびただしい量の作品群を取り出し、彼らを取り巻く政治状況なども織り込みながら、歴史を読み解いていく。
 正直、圧倒される。印象派の頃など数年で刻々と状況が変化していくことを考えると、400年はものすごく長い。そして私の知識の偏りもよくわかった。ここに出てくる古典主義以前の画家たちのことはほとんど知らなかった。だからこそ彼らの作品も観てみたいと思うのだけれど、この本の残念なところは図版がとても少ない印象を受けてしまうということだ。掲載されている図版は59点と結構多いのだけれど、それ以上に画家や作品の数がとても多いので、総体的に図版の数が少なく感じてしまう。出てくる画家がどんな絵を描いているのかは、この本以外の資料に当たらなければならない。その点に目をつぶれば、この本はよくまとまっていると思う。印象派以降の比較的自分のよく知っている画家たちについては、もう少し突っ込んだ話をしてもいいのではないかとも思ったが、本全体の構成を考えると、わりとバランスが取れているのかもしれない。この本を足がかりにして、これからも美術鑑賞を愉しんでいきたい。

2016年11月3日木曜日

『Ballads & Burton』Ann Burton with Louis van Dyke

 1970年の録音。『バラード・アンド・バートン』。アン・バートンのセカンドアルバム。ルイス・ヴァン・ダイク(Louis van Dyke, p)、ジャクエス・スコルス(Jacques Schols, b)、ジョン・エンゲルス(John Engels, ds)、ルディ・ブリンク(Rudy Brink, ts)。
 バラード中心のしっぽりとしたジャズヴォーカルアルバム。昭和の中頃からある、壁やテーブルに艶がいい具合に出てきた、味のある雰囲気の喫茶店で流れていそうな、落ち着いた感じの音楽。聴いていると、何だか心まで穏やかになる。聴きやすすぎず、ちょっと特徴のある彼女の声がまたいいんですね。今日はサンドイッチセットにコーヒーだな。

2016年10月29日土曜日

『さんかくらいふ(2016)』横井珈琲

 2016年9月1日発売の新ブレンド。以前この珈琲店では「横井のさんかくらいふ」というブレンドを出していて、これはそのリニューアル版ということなんだと思う。ホンジュラスの深煎りがベースになっていて、それにグァテマラ、ブラジルの豆を合わせているとホームページにはあったが、購入した袋には、コスタリカ、ブラジル他と書いてあった。ブレンドはその時々によって豆の構成が変わるらしい。また、「さんかく」というのは、生産者と客と横井珈琲で三角をつくるということらしい。
 (アメリカンチェリーじゃなくて)日本のサクランボとかビワのような、すっきりとした風味がある。ちょっとナッツっぽいところもある。キレがあって、凜としたたたずまいをしている。値段の割においしいので、お得な感じ。

工房 横井珈琲』札幌市西区発寒9条11丁目2-11(地図

2016年10月28日金曜日

『Day Breaks』Norah Jones

 2016年。ノラ・ジョーンズ。4年ぶりのニューアルバム。
 久しぶりにピアノを弾いている気がする。ここのところギターを手にしていたから。カントリーは封印して、ジャジーなアルバムに仕上げている。ホレス・シルバー(Horace Silver)の『Peace』とか、デューク・エリントン(Duke Ellington)の『Fleurette Africaine』とかのカヴァーもあったりして。そういえばニール・ヤング(Neil Young)の『Don't Be Denied』なんかも弾いている。オリジナルでは、『It's a Wonderful Time For Love』とか『Carry On』がいい雰囲気を出していて好きですね。基本的にジャズ寄りだけれど、ロックっぽい『Flipside』みたいなのもある。
 正直なところ、すごく好きな曲は『Carry On』くらいだけれど、悪くないです。ここのところずっと聴いていました。

2016年10月16日日曜日

有象無象百楽繪 vol.4 秋

 2016年10月18日~10月23日。うぞうむぞうひゃくらくかい。
 北海道を中心に活動している趣味の絵描きやイラストレーターが集まってできた「針槐(はりえんじゅ)の会」のグループ展です。札幌にある大通美術館というギャラリーで開催されます。画材も描きたい絵も違う22人が参加する何でもあり(写実から抽象画、童画、似顔絵等々)の展覧会なので、楽しめるかと。私も詩月あきという名前で3点出品しています。お暇な人はぜひ。

針槐の会HP
大通美術館』札幌市中央区大通西5丁目11 大五ビル

2016年10月15日土曜日

『Nashville Sessions』Jake Shimabukuro

 2016年。ジェイク・シマブクロ。ナッシュビル・セッションズ。
 この日本盤にはボーナストラックが3曲入っている。本編とこの3曲は分けて考えなければならない。
 本編は、ウクレレがジェイク・シマブクロ、ベースにノーラン・ヴァーナー(Nolan Verner)、ドラムスにエヴァン・ハッチングズ(Evan Hutchings)というトリオ構成で、アメリカのナッシュビルで行ったスタジオ・セッションによるものだ。そしてこれらの曲はロックやジャズといった様々なアプローチから、ウクレレとは思えない迫力の音楽を繰り広げている。ほんわかとしたウクレレのイメージを根底から覆してくれる。ディストーションを利かせた音質の点だけではなく、リズム、メロディすべてがぶっ飛んでいる。ありていに言えば、すごくかっこいい。
 それに対してボーナストラックの3曲は、ウクレレらしいからっとした音の、明るくてさわやかな音楽だ。これらもいい曲ではあるけれど、このアルバムの趣旨からすると、余計なトラックだと思う。 セッション1本でまとめてほしかった。

『若き芸術家たちへ』佐藤忠良、安野光雅

 中公文庫。副題『ねがいは「普通」』。
 彫刻家・佐藤忠良と画家・安野光雅による3回の対談をまとめたもの。それぞれの幼少期から今までの生活や出会いの話や、芸術についての話など、ざっくばらんに語られる。自然から学ぶ大切さ、実物をよく観察して書くことの大切さ、奇をてらう必要なんてないことなど、とても大事なことが書かれていると思う。写真についてやスーパーリアリズムについての考え方に対して、それは古い、と思う人がいるかもしれないけれど、私はなるほどと腑に落ちた。最近の私は絵を描くときに考えすぎてしまって袋小路に陥ることが多いのだが、周りに振り回されずに原点に立ち返って絵を描く大切さを教えられたような気がする。

『Good As I Been To You』Bob Dylan

 1992年。ボブ・ディランが古いトラディショナルフォークやブルースばかりをカヴァーした、アコースティックギターとハーモニカと歌だけによるシンプルなアルバム。
 ボブ・ディランがノーベル文学賞を受賞したのいうので、手持ちのディランのアルバムを探したんだけれど、この1枚しかなかった。文学賞はたぶん歌詞を評価しただろうに、この曲にはオリジナルが入っていない。何とも間抜けな私だなと思う。彼のアルバムはカセットテープでは4、5枚持っていたはずなんだけど(年がばれる)、CDを買ったのはこの1枚だけだったんですね。でも他のアーティストの歌ったディランの曲の入ったアルバムなら持っている。P.P.Mの歌う『風に吹かれて(Blowin' In the Wind)』がそれ。これもまあ、微妙な話だけれど。結局ディランの歌うディランの曲は1枚もうちにはないわけで。ちょっとほかのアルバムも漁ってみようかなと思っているところ。
 それはさておき、このカヴァーアルバム、結構いいです。ギターが滅茶苦茶うまい。彼独特の声と歌い方と、この味のあるギターが絶妙にあっている。 オリジナルを歌わないディランを評価しないファンも多いみたいだけれど、こういう曲を歌うディランもまた、「ボブ・ディラン」なのだと思う。

2016年10月10日月曜日

『ボリビア・アグロ・タケシ・カトゥアイ(2016)』横井珈琲

 Bolivia Agro Takesi Catuai。ボリビアのアグロ・タケシ農園。農園が高地にあり熟成に時間がかかるので、独特の風味を醸し出しているという。カトゥアイは品種で、カトゥーラ種とムンドノーボ種を掛け合わせたもの。
 アグロ・タケシ農園のコーヒーはティピカ種は何度も飲んだことがあるけれど、カトゥアイ種は初めてだと思う。発寒本店で試飲会をやっていて、この豆の中煎りと深煎りが出されていたのだけれど、中煎りの方がしっくりきたのでこちらを購入。まだメニューには出ていないけれど、10月中旬には店頭に並ぶ予定と聞いた。口にすると、サクランボやミカン、ビワの風味を感じた。香りもフルーティで、華やかな感じがする。このコーヒーの良さは苦味よりも酸味にあるように思うので、淹れるときは苦味をあまり出さないように気をつけるといいと思う。抽出温度を高くしすぎないとか、豆の量を多くしすぎないとか、そんなとこ。おいしいです。

工房 横井珈琲』札幌市西区発寒9条11丁目2-11(地図

2016年10月8日土曜日

『Guitar Is Beautiful KW45』渡辺 香津美

 2016年。
 今年ギター生活45周年を迎えた渡辺香津美が、今をときめく11人のギタリストとともにデュオ形式で奏でる11曲の音楽。そしてそれぞれが16小節分のソロを担当して1曲にまとめた『Island-Hop』の計12曲が収められている。
 フラメンコの沖仁、ボサノヴァの伊藤ゴロー、ロックのSUGIZO、フォーク(といっていいのかな?)の高田漣、ソロギターの押尾コータローなど、出自も様々なギタリストが参加しているが、すべてに渡辺のギターが入っているせいか、全体的にジャジーな雰囲気がある。そしてデュオのどちらのギターも本気のぶつかり合いをしていて、ものすごく濃密な音楽になっている(それがちょっと聴く方としては重たすぎな面もあるにはあるのだけれど)。
 好きだったのは、Charと弾いたビートルズの『Here, There and Everywhere』、マイク・スターン(Mike Stern)との『Soleil』、リー・リトナー(Lee Ritenour)との『Ripple Ring』、井上銘との『Jammi』あたり。

『無限論の教室』野矢 茂樹

 講談社現代新書。
 アキレスと亀という話がある。亀にちょっとしたハンデを与えて競走するんだけど、アキレスが亀のいるところまで走ると、その間に亀はいくぶんかは先に進んでいて、さらにアキレスがその亀のいたところまで走ると、やっぱり亀はいくぶんかは先に進んでいて、いつまで経ってもアキレスは亀に追いつけないというパラドックス。そんな誰もが一度は聞いたことがありそうな話題をきっかけに、カントールの無限集合論、ラッセルのパラドックス、ゲーデルの不完全性定理まで進んでいく。
 小説風の話になっていて、タジマ先生の講義を女子学生タカムラさんとぼくの2人が受けるという対話形式の体裁になっている。時にはジョークを交えながらの軽妙なタッチで描く学園ドラマ(?)はなかなかに楽しい。無限論にも実無限派と可能無限派の2派があり、実無限派の方が多数派らしいのだが、タジマ先生は可能無限派の立場をとっている。私が学生時代に習った数学は明らかに実無限派のものだったので、タジマ先生の推す可能無限派の主張を聞くと新鮮だった。そういう考え方もあるのか。
 本書全体は軽いタッチで書かれているのだが、実のところ後半は結構難しい。ゲーデルの不完全性定理なんかは正直言ってよくわからなかった。でもこの本はおもしろいです。3人の絶妙なやりとりが何とも言えない。続編があったらよかったのに。

『こく深ブレンド(2016)』徳光珈琲

 フレンチロースト。深煎りの苦味の強いブレンド。
 フレンチローストのコーヒーなんてすごい久しぶりに買った。喫茶店ではこういうコーヒーをよく飲むけれど、家ではフレンチローストのコーヒーはしばらく飲んでいたなかった。以前は酸味よりも苦味のあるコーヒーが好きだったから。いつ頃からだろう。好みが少しずつ変化してきたのは。
 さて、このコーヒー。ただ苦いだけでなく、その名のとおりコクもある。舌触りは滑らかだけれど、喉の奥の方に苦味による刺激を感じる。そのまま飲むのもいいけれど、ロイズの生チョコなんかを一緒に合わせるともっといい。今日は季節限定のマロンの生チョコにしてみた。うん、おいしい。

徳光珈琲

2016年10月1日土曜日

『My Funny Valentine』Miles Davis

 1964年にリンカーンセンターで行われたコンサートの一部を収めている。同時に録音、リリースされた『Four and More』と対になるアルバムで、『Four and More』では割と激しめの曲が、そして本アルバムではスタンダード曲を中心としたおとなしめの曲が収録されている。マイルス・デイヴィスはもちろんトランペットで、テナーサックスにジョージ・コールマン(George Coleman)、ピアノにハービー・ハンコック(Herbie Hancock)、ベースがロン・カーター(Ron Carter)、ドラムスがトニー・ウィリアムズ(Tony Williams)という構成になっている。このころのマイルスの音楽は、フリー・ブローイング時代と呼ばれるらしい。
 大分前に購入してCD用の棚に置いてあったのを久しぶりに取り出して聴いてみたら、すごくよかった。こんなに素敵なアルバムだったっけ、という感じ。もしかするとこの時代のマイルス・デイヴィスが一番好きなのかもしれないなと思った。

『しぐさで読む美術史』宮下 規久朗

 ちくま文庫。
 「走る」「踊る」「殴る」「怒り」「寝そべる」など、40のしぐさに注目して美術史を語る。取り上げている美術作品は西洋絵画にとどまらず、東洋絵画や彫刻にまで及ぶ。ほぼ2ページに1ページが図版で、しかもカラーなのがよい。これまで見たことがない作品も多く、その中に気に入ったものが結構多くあったこともうれしかった。
 ただ、「頭に手を置く」や「天を指す」などのように、裏に宗教的な意味が隠されているようなしぐさについての解説は興味深かったが、「食べる」とか「支払う」とか、特に深い意味はなくごく日常的なしぐさについての解説は多少退屈だった。同じ著者の、リンゴやユリなどの事物に絡めた『モチーフで読む美術史』については面白く読めたのだけれど。「しぐさ」は現代人にとって「モチーフ」よりも難解ではないので、新しい発見があまりないということなのだと思う。視点は悪くないと思うのだけれど。

2016年9月28日水曜日

『イコノロジー研究〈上〉』エルヴィン・パノフスキー

 ちくま学芸文庫。浅野徹、塚田孝雄、福部信敏、阿天坊耀、永沢峻 訳。
 図像解釈学、すなわちイコノロジーは、美術作品の形、見た目ではなく、その作品の主題や意味というものを扱う。例えば美しい女性が左手に剣を持ち、右手に男の首の乗ったお盆を持っているフランチェスコ・マッフィの絵。これをただそのまま単なる女性の絵と見るのではなく、サロメとしてみたり、ユディトとして見たりしてみる。そしてその結果ユディトだと見なしたとすると、なぜそう言えるのか。美術は造形のおもしろさを楽しむだけでなく、その意味をも楽しめる。そんなことをこの本は教えてくれる。
 扱っている作品はルネサンス以前のものがほとんどを占める。「ピエロ・ディ・コジモの2つの絵画群における人間の初期の歴史」、「時の翁」、「盲目のクピド」という3つの主題について論じており、図版も多く微に入り細に入りといった感じの突っ込んだ議論がなされている。だから著者の論旨にうまく乗ってしまえば、躍動感のある美術の持つ「意味」の世界にどっぷりと浸かって楽しむことができるだろう。ちょっと小難しかったり、図版が白黒で小さいのでちょっと見づらかったりはするけれど、それを補うに十分なおもしろさがある。

2016年9月24日土曜日

『秋のブレンド/ミエル(2016)』横井珈琲

 スタッフ開発の秋のブレンド。ブレンドに使っている豆は、グァテマラ・ラ・ブレア、コスタリカ・モンテ・コペイ、ブルンディ・マバンガ。
 ミルクキャラメルのような風味。なめらかな口当たり。ちょっとえぐみが感じられるけれど、全体的にはバランスの取れたブレンド。飲みやすい。悪くないと思う。

工房 横井珈琲』札幌市西区発寒9条11丁目2-11(地図

2016年9月22日木曜日

『Four Post Cards』吉村 弘

 2003年録音。
 電子音がちりばめられた静かで穏やかな環境音楽。このアルバムは、神奈川県立近代美術館のためにつくられた音楽だ。この美術館には葉山館と鎌倉館があって、それぞれに対して開館の音楽と閉館の音楽がつくられた。そしてこのアルバムには、その4曲の他に波音などが入ったスペシャルバージョン2曲が加えられている。心が落ち着く。
 同年吉村は世を去り、これが彼の最後のアルバムになった。

「雨と休日」でみてみる

2016年9月19日月曜日

『望郷~駒ヶ岳遠景』

 北海道の大沼国定公園の近くにある駒ヶ岳。この山はどの方向から眺めるかで全然違った姿を見せる。一般には大沼のある七飯町から見た形が有名だけれど、これは山を挟んだ逆側にある町、森町から見た駒ヶ岳。向かって左側の方にある町である鹿部町から見た形もまったく違って見える。
 私はこの方向から見た駒ヶ岳が好き。故郷でも何でもないんですが、つい「望郷」というタイトルをつけてしまいました。アクリル画です。

2016年9月17日土曜日

『絵本の書き方』エレン・E・M・ロバーツ

 朝日文庫。副題『おはなし作りのAからZ教えます』。大出健、椋田直子 訳。
 著者は約500冊もの児童書を手がけてきた編集者。そんな彼女が教えてくれる絵本の書き方がこの本だ。絵本の構成要素である絵と文は明確に分けて考えられており、本書では、どちらかというと絵本の文を書くということに主眼が置かれている。だから「絵本のつくり方」ではなくて「絵本の書き方」なんだと思う。テーマの選び方からストーリー展開、絵本にあった言葉の使い方等々、様々な視点から絵本の書き方を指南してくれる。この本には図版がほとんど掲載されていないため、視覚に訴えてくる類の本ではないが、解説は具体的で丁寧なので読むのに苦労することはない。指南書というよりは読み物的な感覚で、楽しく読むことができた。

2016年9月14日水曜日

『hue』江藤 有希

 2016年。
 コーコーヤに所属するヴァイオリニスト、江藤有希による初ソロアルバム。ショーロクラブ、コーコーヤのギタリスト、笹子重治のほか、チェロやピアノ、パーカッションなども入る。
 伸びやかながらも切れのあるヴァイオリンの音が耳に残る。メロディ・メーカーなんだと思う。アルバムを聴き終わったあとも、ずっと印象的なメロディが頭の中で舞い続ける。全体的なイメージはノリがいい南米の音楽、という感じだけれど、かわいらしい曲やバラードも割合多く収録されている。ギターとヴァイオリン、ピアノとヴァイオリンといった、シンプルな構成のものが私にはよかった。どちらかというとヴァイオリンの音は苦手な分野だったのだけれど、意外といいものだな、と思った。

2016年9月13日火曜日

『やってはいけないウォーキング』青栁 幸利

 SB新書。
 群馬県中之条町に住む65歳以上の5000人を対象に、24時間、365日の活動を15年間追跡調査して得られたデータを元に、健康によい歩き方を提唱する。それは歩数と運動強度からなり、やり過ぎてもやらな過ぎてもいけないという。なるほど膨大なデータから導き出されただけあって、説得力がある。
 ただ、タイトルはおかしいと思う。本書の主眼は「やってはいけないウォーキング」にあるのではなく、「やるべきウォーキング」にある。やってはいけないことは、実際のところあまり書かれていない。また、この結論は65歳以上の人たちには当てはまっても、それ未満の人に当てはまるのかどうか、やや気になる。もうちょっと言うと、本書の後半はなんだかトンデモ健康本みたいな体裁になってしまっていて、もったいない。せっかくエビデンスのしっかりした研究が元になっているんだから、もう少しきちんと書けばよかったのにと思う。
 この本の結論は1行か2行で書けてしまうくらい、すっきりとした簡潔なものだ。私はこのことを意識しながら生活していきたいと思う。

2016年9月10日土曜日

『暇と退屈の倫理学』國分 功一郎

 太田出版。増補新版。
 暇と退屈について論じてきた様々な哲学者らを参照しつつ、特にハイデガーの退屈についての議論を批判的に読み解き発展させ、著者独自の暇と退屈の倫理学を作り上げている。暇とは、退屈とはどういった状況を表すのかそれほど深く考えてきたことのなかった私にとっては、示唆に富む論点が多かった。
 しかしながら、過去の哲学者や思想家をこき下ろすような記述や、根拠のはっきりしない断定口調、論理性の欠如など、読んでいて不快に思うこともまた多かった。読みようによってはおもしろい本だけれど、著者の姿勢みたいなものにどうしても馴染めなかった。