2015年7月24日金曜日

『直感を裏切る数学』神永 正博

 講談社ブルーバックス。副題『「思い込み」にだまされない数学的思考法』。
 国民の年収を500万円ごとに区切って昨年と今年の区分ごとの平均を比べると、どの区分でも平均所得が増えているのに、全体の平均所得は減ってしまうことがあるという不思議。胃X線検査において、実際に癌の人が要精密検査とされる率が約90%だとされるとき、あなたが要精密検査と言われたら一体どれだけの率で癌なのかを計算してみると出てくる予想を覆す驚きの結果。そんな、直感だけで答えを出そうとするとつい間違ってしまいそうな数学のトピックスを20個集めて、解説している。
 教室の中で誕生日が一緒の人がいる確率が意外と高いという例など、わりと知られているものもあるけれど、数学好きの人でないと知らないようなマニアックなものもある。数式も少しは出てくるし、簡単な計算をしなければならないところもあるけれど、平易な文章でかみ砕いて説明してくれているので、決して難しくはない。直感を裏切る数々の結果に驚かされながら、楽しく読み進めることができる。数学にちょっとでも興味があれば、この本は読者を裏切らない。

2015年7月22日水曜日

『思いどおりに作詞ができる本』田口 俊

 リットーミュージック。副題『リスナーの心をつかむ歌作りの実践テクニック』。
 歌詞というのは文学なのではなく、音楽なのだという。そして音楽には感性の部分と理論の部分があるけれど、この本では主に理論の部分を書いていますよ、と言っている。
 作詞の基礎のところで、いきなり「自分の気持ちを書いてはいけない」とあり、目から鱗が落ちた。また、歌詞はAメロ、Bメロ、サビのどこから作ればいいのか。言葉はどうやって選べばいいのか。詞を書くときは誰の視点で書けばよいのか、などのQ&A的なものも多く載っていて、とても役に立つ。論理的でわかりやすい説明で、腑に落ちる。歌詞というものを、こんな風にシステマティックに書いていけるものだとは知らなかった。これなら初心者でも書けるかもしれない。すばらしい作品になるかどうかはその人の感性次第なのかもしれないけれど、この本に書いてあることを実践するだけで、きちんとした歌詞にはなる。そんな気がした。初心者にはとてもいい本だと思う。

2015年7月20日月曜日

『Horizon』Sakanoshita Norimasa

 2013年。
 クラシック・ギター1本で奏でられる、内省的な和声と旋律。アルバム全体からはそんな印象を持ってしまうのだけれど、中にはスウィング気味の曲が紛れ込んでいたりアップテンポの曲も多い。なのにどうしてそんな風に聞こえてしまうんだろう。音と音との間が絶妙で、心の奥底まですーっと沁みいっててくる。数曲を除いて多くの曲がオリジナルで、クラシックでもジャズでもラテンでもないその音楽は、ぼくのまわりの空間の隅々まで分け入り、部屋全体を落ち着いた雰囲気で満たす。ここが都会の一室であるのを忘れ去らせてくれるように。

2015年7月19日日曜日

『いつものにばん』横井珈琲

 横井珈琲には『いつものいちばん』から『いつものさんばん』まで、「いつもの」で始まるブレンドが3つある。これはそのひとつの『いつものにばん』。
 「いちばん」から「さんばん」にかけて、さわやか系から苦味系になっていく。この『いつものにばん』はマイルドでやわらかな味わいが売りのコーヒーだ。ナッツっぽいところもあるし、ベリーっぽい感じもちょっとする。その中に苦味のアクセントもあって、飲みやすいブレンドだけれど、それだけじゃないちょっとしたプラスアルファがうれしい。

工房 横井珈琲』札幌市西区発寒9条11丁目2-11(地図

『やさしいR入門』赤間 世紀

 カットシステム。副題『初歩から学ぶR―統計分析―』。
 「R」はコンピュータで統計分析をすることのできる統計ツールであり、R言語のことを指すこともある。本書は、そのRを使って、基本統計量、推定と検定、単回帰分析、重回帰分析、時系列分析といった確率と統計の基礎を学ぶことを目的としている。
 Rについては、その導入方法、R Console、R Editorの使い方、R言語の説明がひととおり載っているので、 使い方に迷うことはない。しかしながら統計分析についての解説は、いかにも教科書的という感じで、決してやさしくはない。それぞれの統計分析の内容について、式の導出から解析手法まで丁寧に数学的に説明されているので、数式をきちんと追える人にとってはそう難しくはないのかもしれない。でも数学的表現に慣れていないと、なんのこっちゃとなりかねない。かくいう私も、行列の固有値だとか固有ベクトル、Γ(ガンマ)関数なんてものはほとんど頭の隅に追いやられていたので、ネットで調べながら本を読むという感じになってしまい、重回帰分析、時系列分析の式の導出については半分訳もわからず読んでいた部分がある。
 本書は決してRを使いこなすための本なのではなく、Rの基本的な機能を解説するための教科書的入門書なのだと思う。実践的ではないし、数式の羅列でくらくらしてくるけれど、統計分析に手を染める前には一度は通らなければならない道なのかなとは思う。

2015年7月18日土曜日

『夢見るフランス絵画』北海道立近代美術館

 2015年6月27日~8月23日。『印象派からエコール・ド・パリへ』。
 19世紀から20世紀にかけてのフランスは、多くの芸術家が集い、旺盛な芸術活動を繰り広げていて、実に興味深い。今回はそんな中から、印象派、フォーヴィスム、エコール・ド・パリの画家たちを中心に展示している。ルノワール、モネ、セザンヌ、モディリアーニ…。人気のある画家はきっとこんな画家たちなのだろう。でも今回は、彼ら以外の画家の作品が目に止まった。
 キリスト教に対する敬虔さが色濃いルオーの作品群の中でも、珍しく静物を描いた『装飾的な花』。たとえば『カシスの港』、『雪の道』といった、明暗差のはっきりとしたドラマチックなヴラマンクの作品。ほかには、「白の時代」ではないユトリロの作品が多かったのも、この展覧会ならではだったのではないか。『ラゲピーのまっすぐな通り(タルヌ=エ=ガロンヌ県)』なんかが気に入った。そして妖しい光を放つ藤田嗣治の『バラを持った少女』。色鮮やかながらちょっと怖いキスリングの絵…
 作品数が71点とやや少なめだったのが残念だったけれど、往事のフランスの絵画に囲まれた時間は、なかなかに楽しかった。

北海道立近代美術館HP

2015年7月17日金曜日

『哲学入門』戸田山 和久

 ちくま新書。
 プラトンもアリストテレスも出てこない。それだけじゃなく、デカルトもヘーゲルもニーチェもフッサールも、私の好きなウィトゲンシュタインも出てこない。出てくるのは、デネット、ミリカン、ドレツキ、ペレブームといった耳慣れない哲学者ばかり。そう、著者は哲学史をなぞることで哲学入門としようなんて気は、さらさらないのだ。そうではなくて、読者をいきなり「哲学する場」に引き込もうとする。科学の発達した現代の、現在進行形の哲学の中に放り込もうとする。
 人間とロボットを分けるものは何?「意味」って何者?情報が伝わるってどういうこと?自由とか道徳って本当は何のこと?人生の意味って?
 そんな問いに、現代の哲学はどういう答えを用意しているのか。たとえ正解にたどり着いていないにしても、それらについてどう考えているのか。この本は、これらについてとても親しみやすい軽妙なタッチで、丁寧に解説している。でも馬鹿にしちゃいけない。語り口はやさしいけれど、議論は結構入り組んでいてややこしい。きちんと読んでいないと、迷子になってしまう。かなり本気な哲学入門なのだ。でもそれだけに読み甲斐がある。そしておもしろい。哲学って何をしている学問なのかな、と気になっている人には、哲学史に出てくるような有名な哲学者の理論を並べ立てるだけの入門書よりも、むしろこういう哲学の現場に居合わせている感覚を味わわせてくれる入門書の方が、哲学の世界に一歩足を踏み込むきっかけをつくってくれるのかもしれない。

2015年7月12日日曜日

『煎茶』どこでもそら

 和歌山県熊野地方で無農薬のお茶をつくっている「どこでもそら」の煎茶。渋みは少なめで、やさしい香りのする甘いお茶。飲みやすいので、つい何杯も飲んでしまう。
 いつもはコーヒーか紅茶ばかりを飲んでいるので、煎茶を飲むのはすごい久しぶり。そういえば、コーヒーとか紅茶は産地や銘柄ごとの違いを意識しながら飲んでいるけれど、煎茶を飲むときはあまり気にしたことがない。飲み比べるときっと違うのだろうに、残念ながら私の舌には煎茶用の地図ができていない。もったいないことだ。
 味とは関係ないことだけれど、「どこでもそら」のお茶を入れている缶のパッケージがかわいい。
 今日は中村藤吉本店の「抹茶かすていら」があったので、2煎目以降はこれとあわせていただいた。うん、お茶と合っていておいしい。

どこでもそら』和歌山県東牟婁郡那智勝浦町南大居875

2015年7月11日土曜日

『Atelier』川畑トモアキ

 2015年。『アトリエ』。ソロギター・アルバム。
 彼の弾くギターの音はキラキラしている。もうちょっと落ち着いた音の方が自分としては好みだけれど、この音があるせいもあって、曲全体が華やかな雰囲気に包まれている。耳に心地よいメロディの、きれいな曲が多い。メロディメーカーといってもいいと思う。『笑顔』という曲が、シンプルながらも胸を打つものがあって好きだ。『眠りの森』では、スティール弦にしては珍しくトレモロ奏法を使っている。ほかに荒井由実の『卒業写真』をカヴァーしているけれど、ちょっとアレンジが楽しげ過ぎる気がした。

2015年7月5日日曜日

『カレンシー・オブ・マン~出逢いの記憶~』メロディ・ガルドー

 2015年。『Currency of Man』Melody Gardot。
 ビブラートのきいたダークな歌声にやられてしまってメロディ・ガルドーを聴き始めたのは、アルバム『Worrisome Heart』私の記事)からのことで、もう6、7年も前のことになる。19歳の時の交通事故の後遺症を引きずりながらも、それがきっかけで彼女の音楽が生まれてきた。その重みを感じさせる歌詞もまた、聴き応えのある安定したメロディとともに魅力的である。ほとんどの楽曲を彼女自身が手がけているというのが驚きなくらい、堂に入っている。
 壮大で拡がりを感じさせる、『Morning Sun』と『Once I Was Loved』の2曲がとても好きだ。

『森ブレンド』高野珈琲店

 ニセコ町の町外れにある小さなコーヒー販売店。併設のカフェもある。なんて書いておきながら、実は行ったことがない。ホームページの写真を見ると、自然豊かな中にある素敵なお店という印象。
 このコーヒー豆は、酸味がほとんどない苦味系のブレンド。でもそんなに苦味が強いわけでもなく、わりと飲みやすい。すーっと口の中を通っていく。ちょっとナッツの風味がする。ふだん飲みにいいかもしれない。

高野珈琲店』北海道虻田郡ニセコ町有島126-90

2015年7月1日水曜日

『猫が屋根から降ってくる確率』竹内 薫

 じっぴコンパクト新書。副題『世の中の出来事は猫と科学で解明できる』。
 「ボク」と「K妻」と「R嬢」と「シュレ猫」によるサイエンスエッセイ。登場人物からしてふざけているし、語り口もかなりくだけているけれど、中身は意外と真面目。量子力学、宇宙、大地震、噴火、カメラ、イルカと鯨、ノーベル賞、男と女、夢の国……。科学にちょっとでも関係があればジャンルを問わず、世界を縦横無尽に飛び回る。科学書にしては珍しく、ときに政治的なことも出てくるけれど、著者がふだんから世の中の出来事にアンテナを張っている証拠なのだろう。内容は、あまり科学に詳しくなくても(シュレ猫の名前の由来にピンとこなくても)まったく問題なく読み進められるくらい、かみ砕いて書かれている。
 よく読むと深いところもあるけれど基本的に軽い読み物なので、バリバリの理系書だと思っていたり、猫が屋根から降ってくる確率を真面目に知りたい人には不向きかもしれない。

『ボリビア・アグロ・タケシ・ティピカ(2015)』横井珈琲

 Bolivia Agro Takesi Typica。アグロ・タケシ農園は標高1,750~2,600mもの高地にある農園だそうで、そのせいで熟成に時間がかかり、独特の風味を醸し出しているという。ティピカは品種。
 淹れたては苦味の方が勝っているけれど、冷めてくると酸味が出てくる。バランスのいいやわらかい口当たり。ビワや和梨のような風味を感じる。ミルクチョコっぽい舌触り。

工房 横井珈琲』札幌市西区発寒9条11丁目2-11(地図