2015年6月28日日曜日

『A Path To Open Air / Minute Maps』Tobias Wilden

 2012年の『Minute Maps』と2013年の『A Path To Open Air』の2つのアルバムをひとつにしたもの。トビアス・ヴィルデン。
 『A Path To Open Air』、『Minute Maps』の順に収録されており、発表順とは逆になっているが、意図はわからない。『A Path To Open Air』はギターの多重録音にマンドリンが加わっているのに対し、『Minute Maps』の方はギター1本の録音である。にもかかわらず、前者の方がおとなしい感じで、ギターだけの方がやや派手である(といっても全体的には静かなアルバムだが)。メロディらしきものはあまりなく、コード感を生かして曲をつくっている印象がある。オープンチューニングの独特の雰囲気がいい。
 実は聴き始めた当初つかみ所のないような感じがして、アンビエント風の雰囲気だけを楽しんでいた。でも1週間近くBGMにしていたら、突然、ああ、そういうことだったのか、と心にすとんと落ちるものがあった。ただのBGMにしておくにはもったいないもっと深みのある何か。その何かが何であるのかは言葉ではなかなかいい表せないのだけれど、もっとしっかりした軸のある音楽のような気がした。聴いているうちに、意外と好きになってしまったアルバム。

2015年6月24日水曜日

『有象無象百楽繪 vol.3 夏』大同ギャラリー

 うぞうむぞうひゃくらくかい。針槐(はりえんじゅ)の会グループ展。2015年6月25日~30日。大同ギャラリー。
 「爽やかな風薫る22の夏物語」として、明日からグループ展をやります。針槐の会は、講談社フェーマススクールズの受講生と元受講生を中心としてできた会です。私のように趣味で絵を描いている人もいれば、プロのイラストレーターもいます。水彩、パステル、アクリル、色鉛筆や切り絵など、バラエティに富んだ作品が並んでいます。
 大同ギャラリーはビルの建て替えのため、今年度で閉館になります。ご興味のある方は、この機会に是非いらしてください。

大同ギャラリー』札幌市中央区北3条西3丁目1番地(札幌大同生命ビル3、4階)札幌駅前通地下歩行空間1番出口直結

2015年6月23日火曜日

『ブラジル・ノッサ・セニョーラ・アパレシーダ(2015)』横井珈琲

 Brazil Nossa Senhora Aparecida。カルモ・デ・ミナスの農園。
 中煎り。ナチュラル・プロセスという処理をしている。コーヒーと思えないようなフルーティーな味と香り。イチゴの風味がする。こんなコーヒーは飲んだことがない。すごくおいしい。この感動は、2013年に『グアテマラ・エル・インヘルト・ウノ』(私の記事)を飲んで以来かもしれない。ナチュラルのくどい面が全然なく、さわやかでやわらかい酸味が口を潤す。横井珈琲によれば、ブラジル・カップ・オブ・エクセレンス・レイトハーベストの優勝ロットだそうである。ちなみにレイトハーベストはナチュラル・プロセスのコーヒーのみが対象だという。さすが。

工房 横井珈琲』札幌市西区発寒9条11丁目2-11(地図

2015年6月21日日曜日

『伝わるデザインの基本』高橋佑磨、片山なつ

 技術評論社。副題『よい資料を作るためのレイアウトのルール』。
 PowerPointやWordなどを使って、プレゼン用スライドや企画書、チラシなどをつくることが多くなった。家でというよりは仕事でつくることの方が多いかもしれない。そんなとき、ちょっと注意してルールを守ってつくるだけで、見違えるほどのわかりやすさ、伝わりやすさを持った資料になる。そんなことを教えてくれる本である。
 デザインはセンスに頼るのではなく、ルールを守ることでよくなるものなのだ。ここに書かれている、書体や文字のこと、文章の法則、図表の法則、レイアウトと配色の法則は、デザインやレイアウトに関するちょっとした書籍にはどれにでも書いてあるような、ごく基本的なものばかりである。でもそれがなかなかできない。実践編にあるbefore、afterの、beforeにあるデザインは、本当にそこかしこに見られるものだ。それがこの本に書かれている基本に沿ってレイアウトしなおすだけで、断然かっこよくなる。
 この本の良さは、一般論にとどまるのではなく、より実践的に、パソコンソフトでどう操作したらよいのかを丁寧に解説しているところなのだと思う。フォントはどういうものを選べばいいのか。文字間はどうやって設定したらいいのか。どれも明日からすぐにでも実践できそうなものばかりである。

2015年6月20日土曜日

『名画は語る』千住 博

 キノブックス。
 名画と言われる45枚の西洋画について、日本画家である千住博が語る。彼は日本画家と言われながらも西洋の絵画に大きな影響を受けてきたのだという。本書は、ときには彼の言葉で、そしてときには画家自身や周囲の人たちの言葉を借りて、軽妙に絵画の特長や裏話について語っていく。どうしてその絵に魅了されるのか。どうして画家はその絵を描いたのか。絵の示す真実とは何か。
 読みやすいのに、興味をそそる適度な深さがあって、実におもしろい。知らない絵も中にはあった。でもその絵にもなぜか引き込まれた。著者は絵について解説しながらも、「いい絵」とはどんな絵だろうかと、逆に読者に問いかけてくる。そして最後に著者の考える「いい絵」との答え合わせが待っている。もちろんその答えはひとりひとり違っていて全然構わないのだろうけれど、こうして時代を超えて鑑賞され続けてきたからには、ほかの絵とは違う何かがその絵には備わっているのだろう。それが何なのか、この45枚の絵画とそれに添えられた文章から、おぼろげながらも読者に伝わってくる。
 絵画にあまり興味がない人にとっても、これを読めば、きっと絵を見るのが好きになってしまうんじゃないかと思えてしまうくらい、素敵な本。

2015年6月18日木曜日

『一生太らない体のつくり方 スロトレ実践編』石井 直方

 エクスナレッジ。
 『一生太らない体のつくり方』私の記事)の続編。前書では主に理論について書かれていたのに対し、本書はその実践について書かれている。前回の私の記事に書いたように、私の買った本には大事な付録がついていなかったので、このスロトレ実践編を読むことで、ようやくスロトレを始めることができた。ちなみにスロトレとはスロートレーニングのことで、筋トレの一種である。
 太らない体をつくるためには基礎代謝を上げるのが効果的で、そのためにスロトレを推奨している。ただしスロトレ(筋トレ)自体には脂肪燃焼効果はないので、実際には有酸素運動を平行して行うのがいいという。スロトレの効果が現れてくるまでには3ヶ月ほどかかるらしい。
 というわけで、1度だけこのスロトレを実践してみた。時間にして15~30分。やっているときはそれほどつらいわけではなかったのだが、やった後がきつかった。体全体に力が入らなくなって、次の日まで筋肉痛。スロトレをやった後6時間くらいは脂肪燃焼効果が高く、その間に有酸素運動をするといいと書かれてあったが、とても運動なんてできるような状態ではなかった。そのうち慣れるのだろうか。スロトレは週に2回やればいいということで、何とかがんばってみようかと思う。 私は太ってはいないが低体温なので、体温を上げるためにも筋肉量を増やそうと思った次第。

2015年6月14日日曜日

『For Django』Joe Pass

 1964年録音。『フォー・ジャンゴ』ジョー・パス(ギター)。ジョン・ピサノ(John Pisano, g)、ジム・ヒューアート(Jim Hughart, b)、コリン・ベイリー(Colin Bailey, d)。
 同じギタリストであるジャンゴ・ラインハルト(Django Reinhardt)に捧げた1枚。ジャンゴの曲もあるし、彼のためにミュージシャンたちが作曲したものもある。ピアノなしのシンプルな構成で、やわらかいギターの音が前面に出ている。速弾きも結構あるけれど、全体としては落ち着いた雰囲気。安心して身をゆだねられる。30分ちょっとと短いのが難だけれど、好きなアルバム。

『少女Bの肖像』

 別にあなただけが悪いといっているわけではないの。ただ、ちょっと気にくわないの。

2015年6月13日土曜日

『下流志向』内田 樹

 講談社文庫。副題『学ばない子どもたち 働かない若者たち』。
 90年代以降、学びから逃走している子供たちが増えたという(本書が書かれたのは2007年)。しかもやむにやまれず逃げているのではなく、積極的に逃走している。なぜか。それは彼らが幼くしてこの市場経済の中で、消費主体としての個を確立してしまったからではないかという。何もかも市場原理である等価交換という観点から見てしまう。そしてそれは教育についても例外ではなく、学ぶことという苦痛に見合うだけのメリットがあるかどうかで判断してしまう。メリットがないと感じればそこから積極的に逃れようとする。教育を受けるメリットは教育を受けた後でしかわからないにもかかわらずだ。ニートについてもしかり。働いただけのメリット(賃金等)が得られないから働かない。そんな風に著者は言う。
 もしそうだとすれば未来は暗い。これは構造的なものだからだ。今の社会構造上生まれるべく誕生した「学ばない子どもたち」、「働かない若者たち」。彼らは自ら下流に向かって突き進んでいる。その中でももちろん「学ぶ子どもたち」はいる。そこに格差が生まれる。
 わりと楽しく読んだ。なるほどとは思う。確かに学びから逃走しているように見える子供たちがいる。こうやって考えると、なんとなく辻褄が合っているように感じる。ああ、そういうことだったのかと。でも本当なんだろうか。話題は教育の場から社会生活の場にまで広がるのだけれど、本当にこういう切り口でばっさり切ってしまってもいいのだろうか。何しろここには著者の頭の中以外の根拠がほとんど記されていないから。本書が書かれてから10年近くの歳月が経ち、このことを裏付けるデータは揃ってきたのだろうか。当時とは状況が変わってきたようにも思えるが。ちょっと今の著者の考えを知りたいと思った。

2015年6月10日水曜日

『いつものいちばん(2015)』横井珈琲

 横井珈琲には「いつもの」から始まるブレンドが3つある。「いちばん」「にばん」「さんばん」だ。
 我が家の定番は『いつものさんばん』だった。「さんばん」は3つの中で一番苦味の強いブレンドで、コクと深みが特徴だ。以前は苦い珈琲が好きだったので、当然の選択だった。でも最近はどうだろう。コスタリカとかエチオピアとか、どちらかと言うと酸味に特長のあるコーヒーが好きになってきた。もしかすると今の私なら『いつものいちばん』がおいしく感じられるようになったかもしれない。そう思って今回、数年ぶりにこのブレンドを購入してみた。
 やっぱりだ。とてもおいしい。すっきりとした酸味とやわらかい甘みが口の中に広がり、幸せな気分になる。ほんのちょっとだけ感じるクルミの風味がよいアクセントになっている。しばらくこのブレンドでいいなという感じ。

工房 横井珈琲』札幌市西区発寒9条11丁目2-11(地図

2015年6月6日土曜日

『El sentido del paisaje (Solo guitarra II)』Guillermo Rizzotto

 2013年。ギジェルモ・リソット。
 粒立ちのはっきりした切れのいいクラシックギターの音色。アルゼンチン出身らしく、ときおり南米の香りが漂う。まるで50年、100年も前から演奏されてきたかのようなクラシカルな雰囲気を持っているけれど、現代的な旋律もそこかしこに紛れ込む。どの曲もつい聞き入ってしまう存在感があり、BGMとしてかけていたはずなのに、いつの間にか読書やパソコンから意識が曲の方に飛んでしまう。聞き流すことのできないソロギターアルバム。

『人間の絆』モーム

 岩波文庫。W. Somerset Maugham。行方昭夫 訳。全3巻。
 モームによる半自伝的小説。あとがきにも書いてあるが、「絆」というのは原題とはちょっとニュアンスが違うのかもしれない。「束縛」とか「隷属」という方が、読後感と合っている。
 足に不自由のあるフィリップが幼い頃両親と死に別れ、伯父夫妻のところに預けられる。そのフィリップが出会う友人や恋人らとの人間模様を通して、人間同士のつながりやフィリップの成長が描かれる。主人公のまなざしはとても率直で飾り気のないものなので、ときにあまりにも生々しくどぎつくも感じられる。人間の嫌な面、良い面がフィリップ自身とその知人たちを通してオブラートなしに語られる。読んでいて不快になることもあるけれど、それは私が自分自身に隠してきた本当の感情が、この小説の中ではあからさまになっていることによるのかもしれない。話の展開は早く、この本が3冊もある小説には思われない。ミルドレッドとの愛憎劇、パリに住む老詩人クロンショーが、これが人生の意味だと言ってフィリップに手渡したペルシャ絨毯の切れ端。波瀾万丈の生き方をしてきた主人公が最後に手にするもの、それは何なのか(最後と言っても30歳くらいであるが)。
 人生や人間関係の機微がこの小説のおもしろさなのは間違いない。しかし、画家を目指していた頃のパリ画壇の話題など、人間模様以外の部分もかなりおもしろい。ただ、結末を急ぎすぎた感がちょっとある。4巻まであっても良かったのではないか。