2014年9月30日火曜日

『現場ですぐ使える時系列データ分析』横内大介、青木義充

 技術評論社。副題『データサイエンティストのための基礎知識』。
 R言語というツールを使って、個別株の日次データを元に、時系列データ分析を教えてくれる。内容は単変量の時系列データ分析に絞っており、自己回帰モデルや単位根過程の解説に始まり、ARCHモデルやGARCHモデルまで解説している。最後の方にはクラスタリングのペアトレーディングへの活用方法が載っていて、興味深かった。これまでRを使ったことのない人でも、パソコンへの導入はもちろん、基本的な解析はできるように配慮されている。説明は丁寧なので、きちんと読めば理解できないということはないだろう。
 とはいえ、この内容は初歩中の初歩なのだという。統計的仮説検定や正規分布についての知識は当然知っているものとして扱っているし、対数や積分もわかっていなければ、本書の中の数式を理解することはできない。この本は「データサイエンティスト」のための本であって、「普通のビジネスマン」のための本ではないのだろう。そうであれば、確かにこの本は初歩的なのかもしれない。
 この本を読んでExcelで解析してみようとは思わない方がいい。本書の内容だけではExcelに落とし込むだけの詳しい数式や定義が載っていないし(例えばShaprio-Wilk検定についてのRのコマンドは載っているが、この検定がどういう計算を行って答えを出しているかということは載っていない)、たとえ違う本からそれらの知識を得たとしても、かなり面倒くさい処理を行わなければならないことになるだろう。Rというフリーソフトは統計処理のためには本当に便利なツールなのだと実感する。
 内容的にはとてもしっかりとしていて、あるモデルをあてはめたいときに、導入条件が揃っているかどうかを調べることを端折ってしまってはいけないのだということまで、きちんと書かれている。データサイエンスの世界は結構泥臭いものなのだということもわかる。これから本気で時系列データ分析を行いたい(今は)素人の人には、いい入門書なのかもしれない。でも、データ分析はExcelでできる程度でいいやと思っている人には、ハードルが高い気がする。

2014年9月27日土曜日

『子どもの難問』野矢 茂樹 編著

 中央公論新社。副題『哲学者の先生、教えてください!』。
 「勉強しなくちゃいけないの?」「死んだらどうなるの?」「悪いことってなに?」「自分らしいってどういうことだろう?」「友だちって、いなくちゃいけないもの?」「心ってどこにあるの?」といった、子供が発しそうな22個の質問に対して、哲学者の先生が丁寧に答えてくれる。ひとつの質問には二人の哲学者が別々に回答しており、哲学者の先生は23人。
 どれもこれも簡単には答えられそうもない難しい質問ばかり。それを子供でも分かるような易しい言葉でひとり3ページで答えてくれる。同じ質問に2つの答えがあり、それぞれがまったく違う切り口で説明したりしていて、おもしろい。文は本当に平易なのでさらっと読めてしまうが、振り返ってみると実は深い答えが潜んでいたりして侮れない。答えが完結していなくて新たな問いを提示していたりもする。たぶんどの質問も本当に難問なのだ。さらっと読んだだけで分かったふりになっていては、大事なものを見落としてしまう。そういう意味では、哲学はちょっと引っかかるくらいの難しい文で成り立っている方がいいのかもしれない。読みにくい言葉で書かれていると、読者もちょっと考えながら読まざるを得ない。その点でこの本は読みやすすぎるかもしれない。その分慎重に読み進めた方がいい。
 野矢は「子どもたちにも読んでもらいたい」という。大人も子供も楽しめる本なのだ。「子どもにしか哲学はできない。しかし、子どもには哲学はできない。」そんな逆説の中にある哲学の一端に触れられる。

『ブラジル・セニョール・ニキーニョ(2014)』横井珈琲

 Brazil Fazenda Sr Niquinho。カルモ・デ・ミナスの農園。
 チョコレートのような苦味を感じる。その苦味の中にも、ほんのりとフルーティな後味があって、たぶんこの感じはナチュラル・プロセスという製法から来ているんだと思う。でもナチュラルにしてはしつこくなくてすっきりとしたコーヒーだ。それなのに味に深みもある。このコーヒーの苦味がもう少しまろやかになって甘みが増したら、私好みの味になりそう。

工房 横井珈琲』札幌市西区発寒9条11丁目2-11(地図

2014年9月23日火曜日

『PANDORA』押尾コータロー

 2014年。ソロギター・アルバム。3年半ぶり。
 正直なところ、はじめ聴いたときはすんなりとはこのアルバムに入り込めなかった。何だか全体的にキラキラした音でリバーブも効き過ぎているような気がしたし、ちょっと単調な気もした(『キラキラ』という曲が収録されているが、この曲のせいでキラキラ聞こえるわけではない)。
 でもよく聴いてみるとジャカジャカ弾きながらメロディを奏でているものもあれば、しっとりと聴かせるものもあり、決して単調なアルバムではない。『亡き王女のためのパヴァーヌ』のようなクラシックの曲もあるし、日曜日のビール系の『いつか君と』みたいなウキウキするような曲もある。ジャカジャカ弾くものでは『彼方へ』なんかもいいかもしれない。
 ただ、ギターのストロークがあまりきれいな音に聞こえない。初期のアルバムに比べると明らかにギターはうまくなっているのに、なぜそう聞こえるんだろう。曲にしても、よく言われることではあるけれど、デビューの頃のような魅力があまり感じられない。押尾コータローのアルバムで一番よく聴くのは、インディーズのときの『押尾コータロー』と『Love Strings』だというのは、押尾には悪いけれど、事実なのだ。
 とはいえ、このアルバムの中にも好きな曲はある。落ち着いていてしっとりとしたバラードである『星の贈り物』と『美しき人生』、そしてフルアコで弾いたみたいな音のジャズテイストの強い『Marble』だ。もしかすると年をとると激しめの曲にはついていけなくなるのかもしれない。

『ビジネスプロフェッショナルのExcel術』日経BPムック

 日経BP社。
 ビジネスでExcel(Microsoft社)をいかに効果的に活用するかについてのムックである。大きく分けると2つのことが書かれている。見せるための技術の解説と、Excelの機能の解説だ。
 そして断然楽しいのは前者の見せるための技術の解説である。それはChapter 1~3の「慎 泰俊の世界標準のExcel表」「経営コンサルタントが作る顧客を動かすExcelチャート」「経営コンサルタントの上司に分かってもらえるExcel文書」に当たる。ダサくなく、しかもわかりやすくて効果的なExcel文書の作り方が載っている。
 後者のExcelの機能の解説としては、「効率化:手早く賢く作成するためのノウハウを学ぶ」「データ集計:数字を巧みに操るすべを知る」「データ分析:実績から次の一手を予測する」「書式設定:ビジネス向けに整える基本を作例で学ぶ」が掲載されている。たまに「おっ」という機能が載っていたり、データ分析がわかりやすく書かれていたりと目を引くものもあるのだけれど、全体的には基本的な機能の説明に終始していて、あまりおもしろい記事ではなかった。しかもこの後半は日経パソコンという雑誌の記事をそのまま掲載したものがほとんどを占めていて、この雑誌を購読している人にとっては新鮮みが足りないだろうと思う。
 前半は本当に参考になったので、立ち読みでこの部分がいいと思った人は読んでみてもいいかもしれない。

2014年9月21日日曜日

『EXCELビジネス統計分析第2版』末吉正成、末吉美喜

 翔泳社。2013/2010/2007/2003対応。
 マイクロソフト社のExcelを使った統計分析の解説書。実際のExcelの画面がたくさん掲載されていて、どこをどう操作したらいいのかを丁寧に説明してくれている。統計分析の本を読んだだけでは、なかなか実際の表計算ソフトでどう操作して分析したらいいのか悩む部分もあるけれど、この本を読むとまったく悩むことなく操作することができる。とてもわかりやすい。
 内容としては、基本統計量などの統計の基礎、相関と単回帰分析、重回帰分析、コンジョイント分析、主成分分析、統計的仮説検定(t検定、F検定、χ2検定)を扱っている。付録では双対尺度法、クラスター分析についても説明している。
 統計の数学的な面はそれほど詳しく説明していないけれど、統計分析の実践のための本としてはとてもよくできている。分析の際の注意点など、かゆいところに手が届いている。この本を読むと、自信を持って分析を行えるようになる。とてもいい本だと思う。

『Natalie Merchant』Natalie Merchant

 2014年。ナタリー・マーチャント。
 そういえばナタリー・マーチャントってこういう感じの歌を歌っていたよな、と思った。久しぶりに聴いたのだ。暗いというわけではないけれど、アルバム全体がどこか陰影を帯びていて、独特の雰囲気が漂っている。落ち着いているというのも違うし、後ろ向きというのも違う。でもメジャーキーの曲でも何だか明るい気分にはならない。彼女の語り方のせいか、曲調のせいか、はたまた歌詞のせいか(英語の歌詞だからよくはわからないのだけれど)。そう、彼女は歌うというよりは語るといった方がふさわしいような歌い方をする。ちょっと秋から冬にかけての気分によく合う。

『安全と安心の科学』村上 陽一郎

 集英社新書。
 安全とは何なんだろう。安心とは何なんだろう。それらに向き合うために、安全を科学しよう。たぶんそういう思いで『安全学』という著書を上梓し、「安全学」という分野を著者は提唱しているのだと思う。
 例えば交通事故の場合、警察は事故の原因を人間の不注意だったり無謀さだったりするものに落とし込もうとする。でも実際には原因はそれだけでなくて、標識がきちんとしていないだとかカーブの傾きが事故になりやすい状態になっているだとか、いろんな原因があったりして、事故は起きる。事故の原因を人間の不注意のせいだけにしてしまっては、そのほかの原因を見落とすことにもなり、事故は今後もなかなか減らないだろう。きちんと事故を第三者的に評価して、事故が起きにくい構造を作っていく必要があるだろう。
 医療事故だってそうだし、原発事故だってそうだ。そこでは「フール・プルーフ」だとか「フェイル・セーフ」ということがとても大事になってきて、事故になりそうな状況になっても、事故にまで発展させない仕組みの構築がとても大切になってくる。そんな風に著者は言う。
 もっともである。でもちょっと物足りない。この本では「安心」については軽く触れられている程度でしかないし、「リスク」という概念についてもほとんど書かれていない。私は「安全」と「安心」の違い、あるいはそれらの関係についてこそ興味があって本書を手にした。「安全」と「安心」を同時に満たすことは可能なのか。人々が本当に求めているのはひょっとしたら「安全」ではなくて「安心」の方じゃないのか。そんな私の疑問にはこの本は答えてくれなかった。また、「安全」について語るときには、「リスク」概念は当然ついて回る話だと私は思っていたのだが、著者はこの辺のことについてもうまくかわしている。
 この本はちょっとエッセイぽいのである。「安全学」の紹介書としてはそう悪くはないのかもしれない。でももうちょっと突っ込んだ話を期待していた。あともうひとつ。この本の初版は2005年。つまり東日本大震災での福島原発事故以前に書かれたものである。この事故のあとに出版されていれば、おそらく内容はかなり違ったものになっていたかもしれない。

2014年9月19日金曜日

『ゴンドラの夢』

 初めてアクリル絵の具を使ってみた。全然使いこなせなかったけれど、いろいろと勉強になった。不用意に濃い色で下地塗りをしたり下書きをしたりすると、あとで大変苦労すること。アクリル絵の具には透明色と不透明色とがあって、それらを意識して使い分けないと思うような絵が描けないこと、等々。使い慣れている水彩の方がうまく描けると思うけれど、たまに違う画材を使ってみるのもおもしろい。
 ところで、私がヴェネツィアに行ってゴンドラに乗ったのは冬の寒い夜だった。その年は異常気象でマイナス10度まで気温が下がり、漕ぎ手の歌うカンツォーネを聴きながら優雅な気分に浸るなんて感じでは全然なかった。今度は暖かいヴェネツィアに行ってみたいものだ。ちなみにこの絵は昼間に撮った何枚かの写真を元にしたもの。

2014年9月14日日曜日

『PS15』Don Ross

 2014年。ドン・ロス。ソロギター・アルバム。
 全部知っている曲なのだ。それもそのはず、15年前に出された『Passion Session』とまったく同じ曲構成なのだから。つまりこのアルバムは、 『Passion Session』から15年経った記念(?)にもう一度録り直したものなのだ。どうしてまたほとんど同じアルバムを出す気になったのかはよくわからない。でも前作が名盤と言われていたのと同様、やっぱりこのアルバムも素敵なアルバムだ。前作に比べると、音が全体的にクリヤーになって、演奏もなめらかになっている。臨場感も上がっている気がする。
 どの曲も好きです。 『Passion Session』を聴いて、ドン・ロスのファンになったようなものだから。本作でも前作でもお薦めです。

『ホンジュラス・ホセ・レイナルド・ベハラーノ2014』横井珈琲

 Honduras José Reinaldo Bejarano。ホンジュラス西部のカングアル村にある農園。
 スッキリとしたコーヒーをイメージして購入したのだけれど、予想に反して意外と泥臭い印象。濁ったような味がする。でもおいしくないわけではなく、わりといける。酸味はあまりなく、ダークチェリーのような甘みがある。普段使いのコーヒーという感じ。

工房 横井珈琲』札幌市西区発寒9条11丁目2-11(地図

『Illustrator ABC』井上 のきあ

 エムディエヌコーポレーション。
 Adobe Illustratorの解説本。CS3からCS6まで対応している。大きく3つのパートに分かれており、「A」では基本的な操作方法、「B」では特殊機能の活用方法、「C」ではラスター画像の取り扱い方法や印刷に関する機能などを解説している。
 Illustratorはとかくややこしいなという印象を持った。ひとつのことを実現する方法はひとつではなく複数あり、それがまったく同じ効果を生む場合もあれば、ちょっとだけ違う場合もある。そんなややこしい機能についてこの本はきちんと解説してくれているのはありがたい。図版も多いし項目も多岐にわたっているし説明もちゃんとしている。1回読んだだけではよくわからないところもあるけれど、それは必要に応じて辞書的に使えばいいのだと思う。
 ただ、ちょっと読みづらい。レイアウトがぐちゃぐちゃだし、機能や項目が全部大文字で書かれているし(例えばブラシストロークは「BRUSH STROKE」じゃなくて「Brush Stroke」の方が絶対読みやすいと思う)、段落の一字下げがないなど。
 そんな風にちょっと読みにくいところもあるけれど、内容的には充実していると思う。今後はわからないことがあればこの本を開くようにしてみたい。

2014年9月9日火曜日

『プロのイラストレーターになる!』イラストノート編集部

 誠文堂新光社。副題『イラストでお金を稼ぐ50の方法』。
 プロのイラストレーターはどうやって仕事をしているのか、どういった心構えで仕事をしているのかについて、格式張らずにわかりやすく書いてある。
 ポートフォリオはどうやって作るか。どこに売り込むか。営業マナーはどうあるべきか。インターネットをどう活用すればいいか。自分をどう磨くか。個展をどう生かすか。実際の仕事の流れはどうなっているか。ギャランティーはどれくらい?等々。イラストレーターという仕事の全体像がよくわかる。漠然とイラストレーターになりたいと思っている人には、とても参考になる本だと思う。
 結構厳しいことも書いてある。プロっていうのは簡単に考えちゃいけないんだということが身にしみてわかる。私がイラストレーターになることはたぶんないのだと思うけれど、自分がなるとしたらかなり大変な仕事だなと思う。絵を描くことが好きなだけではイラストレーターにはなれないのだ。当たり前の話かもしれないけれど、そんなことを強く感じた。

2014年9月8日月曜日

『問題解決のためのデータ分析』齋藤 健太

 クロスメディア・パブリッシング。
 ビジネスにおいてデータ分析をどう生かすかについて、ABC分析や損益分岐点分析、RFM分析などを使って解説している。実際に具体例を示して、どういう考えにしたがってどんな風にデータ分析をしたら問題解決に至るかということが書かれているので、わかりやすくはある。実例が多いので、参考になるところも多いかもしれない。ほとんどの分析はエクセルを使ってできるようになっており、巻末にはエクセルの機能(vlookup、ピボットテーブル、ソルバー)の解説もついている。
 確かにこの本の中では分析はうまくいっている。考え方も悪くはない。でも、腑に落ちないところもある。データだけでは導き出せない結論(仮説)が述べられていたりするのだ。それは著者の長年の経験だったり勘だったりするのだろうと思う。その結論(仮説)はおそらくは間違ってはいない。最後にはデータにより裏付けられているからだ。ただ、その仮説を導き出すには相当の能力が必要となると思うのだ。誰でもできるわけではない。そこのところをこの本ではうまく逃げているので(そこのところが書かれていないので)、これを読むとなんだか自分でも簡単にできるんじゃないかと思わされてしまう。実際には違うのに。
 本書を読んだら実際のデータを使って試行錯誤してみるといいのだと思う。そのうちに著者のような分析の勘みたいなものが自然と備わってきて、無駄の少ない的確な分析ができるようになるんだと思う。そんなゴールを想像できるようにしてくれる本なのかもしれない。
 ただ、今書いたことと矛盾するかもしれないけれど、これくらいの分析は普通の企業だったらとっくにしてると思う。個人事業主とかはなかなかここまで手は回らないかもしれないけれど。それとも大きな会社でも意外とやられてないのかなあ。よくわからないです。

2014年9月4日木曜日

『wolken』Henning Schmiedt

 2009年。ヘニング・シュミート。ピアノソロアルバム。
 タイトルの「wolken」は、ドイツ語で「雲」という意味らしい。イージー・リスニングっぽい感じで、本を読むときなど、BGMとしてとてもいい。極端な低音がなく、全体的に高音寄りの印象。たまに特徴のある耳に残るフレーズがあるものの、アルバムを通してあまりメロディとしては頭に入ってこない。本当に邪魔にならないのだ。このことは長所なのか短所なのかはわからない。でも好き。

2014年9月3日水曜日

『ブラジル・イペ』横井珈琲

 Brazil IP。カルモ・デ・ミナスの農園。
 すごくおいしい。とても口当たりがやわらかくて、後味がとてもいい。、全然苦くなくて、かといって酸味も強くなく飲みやすいのだけれど、軽いわけではない。飲んだあと、ふくよかで甘い香りが口の中を包む。どんな味かといわれると、とても形容が難しいのだけれど、たぶんこのちょっと生っぽい甘みは、パルプトナチュラルという製法から来ているんじゃないかと思う。コーヒーの果肉を取ったあと、粘液質の部分を残したまま乾燥させる製法だ。これはもう一度買ってもいいなと思わせる。

工房 横井珈琲』札幌市西区発寒9条11丁目2-11(地図