2014年6月29日日曜日

『世界を変えた17の方程式』イアン・スチュアート

 Softbank Creative。水谷淳 訳。
 方程式といえば、中学で習う1次方程式だとか、2次方程式、連立1次方程式などを思い浮かべる向きも多いかもしれない。でもここで扱っている方程式はちょっとこれらとはニュアンスが違うんだと思う。方程式は大きく2つに分かれるという。ひとつは数学的な真理を表したもので、ピタゴラスの定理などがそれに当たる。そしてもうひとつは何か未知の量を計算する方法を教えてくれるもので、例えばニュートンの重力方程式などが当てはまる。上で述べた中学で習う方程式は、それらの解き方であって、何かの真理を表している方程式そのものではない。
 本書では、巷にあふれている方程式の数々から、世界を変えるほど歴史上重要だと思われる方程式を17取り上げ、それらの解説を試みている。上で述べたピタゴラスやニュートンの方程式、それに微積分や正規分布、波動方程式、フーリエ変換のような比較的わかりやすいものから、相対論やシュレーディンガー方程式、経済学のブラック=ショールズ方程式のような理解が難しいものまで、レベルはさまざまで、内容もまた多岐にわたっている。方程式を扱っているといっても、方程式そのものの説明や解法を詳説しているわけではなく、それらの方程式が生まれた背景だとか、その方程式を使ってどのような世界が拡がっていったのかなどということが書かれており、数学の本というよりは読み物的な本である。とはいっても侮ることはできない。ピタゴラスの定理だけをとっても、それは非ユークリッド幾何学に話が飛び、最後にはアインシュタインの一般相対論にまで話は拡がる。話の内容は刺激的で、実におもしろい。経済における先物やオプションが18世紀の大阪の堂島米会所に端を発しているなど、知らなかった小話がたくさん出てくる。しかも説明がわかりやすいので、自分の中で世界がどんどん拡がっていく。
 内容がちょっと難しい部分もあって、私はオイラーの多面体の公式に絡めてのトポロジーの話とか、相対論に絡めての宇宙論の話はよく理解できなかった。そんな風にわからないところもたくさんある本ではあるけれども、とてもおもしろい本である。

2014年6月28日土曜日

『Four the Record』Miranda Lambert

 2011年。ミランダ・ランバート。
 ロック色がやや強いカントリーアルバム。最初聴いたとき、失礼ながらちょっとおばさんくさい声だなと思ってしまったけれど、この声と歌い方は聴けば聴くほど味がしみてきて、今ではすごく魅力的に感じる。第一印象だけで判断しちゃいけないと思った。
 ロックテイストが強いものでいえば『Safe』なんかがかっこいい。でも個人的な好みからすると、『Dear Diamond』とか『Same Old You』のようなカントリーチックな曲の方が好きかもしれない。『Over You』はとてもきれいな曲だと思う。好きな曲。『Look At Miss Ohio』や『Oklahoma Sky』などもいい。
 意外にはまってしまった。

2014年6月21日土曜日

『スマトラ・マンデリン・アチェ(2014)』横井珈琲

 Sumatra Mandheling Aceh。
 前にも飲んだことがあるので、てっきり記事にしているのかと思ったら、今回初めて取り上げるコーヒーだった。中煎りやや深めのインドネシアのマンデリン。
 そんなに深い煎りではないのにわりと苦味が強いのはマンデリン故だろうか。口の奥から鼻に抜ける刺激がいい。独特のフルーティな味がするのだけれど、何の果実だったかどうしても思い浮かばない。いぶしたミカン?いや、ちょっと違うような気がする。少し土臭い感じもするけれど、飲みやすくて結構いける。特徴的な苦味を楽しむコーヒー。

工房 横井珈琲』札幌市西区発寒9条11丁目2-11(地図

『ALIVE』上原ひろみ

 2014年。Hiromi The Trio Project Featuring Anthony Jackson & Simon Phillips。
 ピアノの上原に、コントラバス・ギターにアンソニー・ジャクソン、ドラムスにサイモン・フィリップスを迎えてのトリオ構成は、2011年の『VOICE』(私の記事)、2013年の『MOVE』(私の記事)に続き3作目だ。このアルバムはタイトルからもわかるように、「生きる」とテーマにしている。この世に生まれ、迷いながらも夢を追いかけ、自分を探し求め、遊び、ときには戦い、時は過ぎてゆき、人生もまた続いていく。これがそのまま9曲のタイトルにつながっている。彼女の曲は当然のことながら歌詞はないのだけれど、テーマと曲調が見事にあっていて、気がつくと曲に入り込んでしまう。
 変拍子が訳がわからないことになっているのに不自然さがなく力強く攻める『Alive』。迷い漂う『Wanderer』、ピアノだけで別世界に連れて行ってくれる『Firefly』。激しい曲も静かな曲も3人の息はぴったり合っていて、やっぱりこのトリオはすごいと思ってしまう。
 『Spirit』や『Life Goes On』が気に入ったけれど、どの曲もそれなりに好き。ただ、『VOICE』や『MOVE』のときのようなインパクトは、このアルバムからは感じなかったかな。私の過去の記事を見てもらえばわかると思うけど。

2014年6月17日火曜日

『The Anatomy of Type』Stephen Coles

 Harper Design。副題『A Graphic Guide to 100 Typefaces』。
 「字体の解剖」とか「字体の分析」みたいな意味のタイトル。副題にもあるように、クラス分けされた100種類の書体の形を分析的に解説している。
 本を開くと、まずはカラフルな大きな文字列が目に飛び込んでくる。ひとつの書体が見開きで解説されているのだ。そしてそれらの字の特徴的な箇所について矢印で説明している。例えばMinionだったら、「e」の横棒がちょっと斜めになっているだとか、「t」の横棒と縦棒の間(左上のところ)にはそれらをつなぐ斜めのブラケットがないだとか、「g」は細いけれど下の丸が大きいだとか、いろいろ見所を教えてくれる。さらにその書体のデザイナー、製作会社などはもちろんのこと、その書体が作られた意図だとか歴史なども書かれている。比較してみるといい書体が載っていたり、どんな場面で使えば効果的かなんて情報まで書いてあるので、とても参考になる。掲載されている書体はGill SansとかTimes New Romanなどの古い書体も含まれているけれど、2000年以降に作られた、わりと新しい書体が多い印象を持った。
 字間設定の妙だとか文章を組んだときの見え方なんてものはこの本には書いていないけれど、字の形そのものに対するガイドとしてはとてもよくできている。ふだん何とはなしに読んでいる文字が、細部を見るとこんなに違っているのかとびっくりする。残念なことにこの本は洋書で欧文書体を対象にしたものだけれど、和文書体を対象にしたこういう本があってもいいのにと思った。

2014年6月13日金曜日

『西村和小品展』石の蔵ぎゃらりぃ はやし

 2014年6月12日~6月17日。にしむらなぎ。
 「石の蔵ぎゃらりぃはやし」は再開発地域に入ってしまったので、ここでの小品展もこれが最後か、もしかしたらもう一度くらいできるか、というところ。ここは札幌駅北口から少し歩いたところにある札幌軟石造りのお洒落なギャラリー。カフェが併設されているのかギャラリーが併設されているのかはわからないが、この建物の1階部分の一部で、彼女の陶芸作品を見ることができる。そういえば茶道雑誌『淡交』の6月号にインタビュー記事が載っていた。
 彼女の陶器は漆を使った作品がおもしろい。白と赤のコントラストが目を引く彩度の高いものから褐色や鈍色の落ち着いた雰囲気のものまで、また、フリーカップなどの普段使いのものから抹茶碗や水差しなどのちょっと敷居の高いものまで、ほんのちょっとのスペースに実に幅広い作品が並ぶ。そして、それに庭から採ってきたという和花などがさりげなく色を添える。この空間に身を置くと、日常とは少し違った贅沢を味わいながらも、不思議と心が落ち着く。
 いつものことだが作家さんと立ち話。その時間もまた楽しい。

西村和のHP
『石の蔵ぎゃらりぃ はやし』 札幌市北区北8条西1丁目(地図

2014年6月11日水曜日

『ラヂオ』青葉市子と妖精たち

 2013年。
 彼女はクラシックギター片手にささやくような歌声をそれに乗せた作風のものが多いけれど、本アルバムでは、坂本龍一、細野晴臣、小山田圭吾、U-zhaanという豪華布陣がサポートに入っている。これは2013年元日にオンエアされたNHK-FM「坂本龍一ニューイヤー・スペシャル」のスタジオ・セッションをCD化したものらしい。当然のことながらピアノの音やエレクトリック・ギターの音が入ってくるのだが、それが彼女の世界観を少しも損なうことなく、むしろそれを深めているのがすごいと思った。小山田の曲である『Star Fruits Surf Rider』ですら彼女の曲に聞こえてくる。でもさすがに細野と歌う『悲しみのラッキースター』、『Smile』(ともに『HoSoNoVa』細野晴臣所収)は細野色が強かったけれど(でもすごくいい)。
 青葉市子の世界は一種独特であったりするけれど、私ははまっている。

『コスタリカ・サンタ・ローサ1900』横井珈琲

 Costa Rica Santa Rosa 1900。
 やわらかい、花のような香りを含んだやさしい酸味がいい。コスタリカは酸味が強いイメージがあるけれど、これはきつすぎないちょうどいいところを狙っている。もしかすると、豆のまわりの粘着質の部分を若干残した感じで乾燥させるハニープロセスを踏んでいるせいなのかもしれない。飲みやすくて、舌を包み込むようなやさしさを持つコーヒー。よいです。

工房 横井珈琲』札幌市西区発寒9条11丁目2-11(地図

2014年6月6日金曜日

『Unforgettable』Joe Pass

 1992年録音。ジョー・パス。ガットギターによるソロギターのジャズアルバム。
 ジャズはピアノかトランペットが好きだった。ギターは何となく野暮ったい感じがして、マイク・スターン(Mike Stern)とか小沼ようすけとか好きなギタリストがいないわけではないけれど、あまり聴いていなかった。なぜかジョー・パスも聴いていなかった。
 静かで落ち着いていて耳にうるさくなくて、なのに心にしみる。素朴に聞こえるのに、縦に横につながる音の並びは絶妙で、ちっとも飽きさせない。こんなにいい音楽だったのなら、もっと早くに聴いておけばよかった。

『パナマ・ママ・カタ・ゲイシャ/ナチュラル』横井珈琲

 Panama Mama Cata Geisha/Natural。パナマにあるママ・カタ農園のゲイシャ種のコーヒーで、ナチュラル・プロセスで乾燥させたもの。
 ちょっと値の張る豆だったのだけれど、メニューの中で燦然と輝いていて目に飛び込んできたので、何の気なしについ購入。そして淹れてみて、匂いをかいで、あっと思った。飲んでみてさらに確信した。この「ナチュラル」ってコーヒーの果実を生豆にするときの方法が「ナチュラル」ってことなんだと。メニューには書いてあったのかもしれないけれど、飲むまで気づかなかった。
 「ナチュラル・プロセス」とは、コーヒーの果実の果肉を取らないで、そのまま乾燥させる方法のことだ。生臭いと言っては失礼かもしれないけれど、独特の味と香りがする。熟しすぎた南国のフルーツの香りといえば近いだろうか。やわらかくてフルーティで、この独特の感じが好きな人は、はまってしまうかもしれない。もしかすると誰かに「コーヒー」と言わないで飲んでもらったら、これがコーヒーだとは思わないかもしれない。そんなちょっと異次元のコーヒー。好みは結構はっきりと分かれると思う。

工房 横井珈琲』札幌市西区発寒9条11丁目2-11(地図

2014年6月1日日曜日

『文字のつくりかた』デザインの現場 BOOK

 美術出版社。副題『“伝わる”文字はどうやって生まれるの?』。
 なんだか見たことのある記事が多いなと思ったら、本書は『デザインの現場』2009年6月号の特集記事に新たに記事を加えて一冊にまとめたものだった。6~7割は同じ内容じゃないだろうか。それはさておき。
 ロゴとかフォントなど、文字についてのいろいろな記事を載せている。ロゴについては、クライアントとのやりとりを含めた文字の製作過程の話が多い印象。書体については、資生堂の製品に使われている資生堂書体や、電子媒体でも長文が読みやすいようにと作られた凸版文久体の記事がおもしろかった。字游工房が教える和文の文字のつくりかた講座は実践的で役に立つ。ほかには、街で見かける看板の文字をフォント化する「“のらもじ”発見プロジェクト」がおもしろい(こちらのURL参照)。
 全体的に既視感があってちょっと興ざめの部分もあるけれど、復習だと思えばいいのかもしれない。