2014年1月26日日曜日

『There and Gone』Ed Gerhard

 2012年。エド・ガーハード。Tony Markellisがベースとして参加しているが、基本的にギター音楽。ワイゼンボーンやラップスティールの曲もある。カヴァーとオリジナルが半々くらいだが、ビートルズ作品を除くと、すべてエド・ガーハードの曲に聞こえてしまうくらい自然にまとまっている。
 はじめ聴いたときは、ちょっと地味なメロディラインが多いなと感じた。でも繰り返し聴くとこれくらいの方が嫌みがなく、ずっと聴いていられる感じがした。速弾きや派手なパフォーマンスはなく、ゆったりとした感じの曲が多い。 田園風景が目の前に広がっているような曲や、ちょっとアンニュイな感じを漂わせている曲……。そんな感じが心を落ち着かせる。このアルバム、いいです。

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2014年1月19日日曜日

『夜はそのまなざしの先に流れる』空気公団

 2012年。日本橋公会堂で行われたライブ音源に、あとからちょっと音を足したりしてできたアルバム。
 はじめ、このアルバムがライブをもとにしているということを知らずに聴いていた。『天空橋に』の2分以上にわたる長いイントロ、『暗闇に鬼はいない』、『つむじ風のふくろう』、『にじんで』という3曲のインストゥルメンタル。なにか変わっているなと思っていたが、ライブだと知ってちょっと頷けた。このアルバムは通しで聴かなければいけない。スピーカーから流れてくる空気感がいい。
 空気公団は歌がいいのだと思う。山崎ゆかりのやさしい声。だからインスト曲よりも歌ものの方がずっと好きだ。『きれいだ』、『街路樹と風』、『元気ですさよなら』など。『夜はそのまなざしの先に流れる』というアルバムタイトルは、『夜と明日のレコード』という曲の中の歌詞にそのままある。そういえばアルバムジャケットにある長時間露光した北の夜空は、まるでレコード盤のようだ。
 一部の曲で、演出が過剰に聞こえる。シンセサイザー、ギター、ドラムの音が気になる。もっと落ち着いたアレンジの方が聞きやすいな、と感じた次第。

『横井の冬2013-14』横井珈琲

 深煎りで、ダークチョコを食べたときのような苦味がある。香りはあまり強くない。これといって特徴のあるコーヒーではなく、いかにもブレンドして味を調えましたという感じで、バランスはいい。酸味はほとんどないので、酸味が好きな人は駄目かもしれない。おいしい!といった感動はないものの、味的に私の好みに近いので、普段飲み用のコーヒーとしては十分満足。

工房 横井珈琲』札幌市西区発寒9条11丁目2-11(地図

2014年1月18日土曜日

『サイエンティフィック・リテラシー』廣野 喜幸

 丸善。副題『科学技術リスクを考える』。
 サイエンティフィック・リテラシー、つまり科学リテラシーとは、平たくいえば、科学について読み解く力、科学の本質を見抜く力のことなんだろうと思う。この科学リテラシーや科学技術コミュニケーションに関する書籍は数多く出版されているが、その多くは自然に関する知識やそれをいかに人々に伝えるかという内容になっていて、それでは片手落ちなんじゃないかと著者はいう。そして本書ではその片手落ちの部分、つまりは科学技術リスク・コミュニケーション論とでも呼ぶべき領域に焦点を絞って解説を試みている。
 リスクという言葉はつくづく厄介な言葉だと思う。各人各様にいろいろな解釈なり感じ方があって、例えば交通事故のリスク、喫煙のリスク、原子力発電のリスクという言葉を聞いたとき、みんながみんな同じイメージを思い浮かべるわけではない。そのリスクを比較するとき、どうしてもリスクを過大評価したり過小評価したりというバイアスがかかってくる。では専門家の間では統一された見解があるのかといえば必ずしもそうでもない(ただし、もちろん専門家の方がしっかりとしたリスク概念を共有しているだろう)。さらにいえば素人と比較したとき、専門家には専門家特有のバイアスがかかってしまうという事態も起こりうる。かように厄介なリスクであるが、本書では科学者たちにある程度共有されているリスク概念を何とか立体的に俯瞰できるように導いてくれる。そこには科学的に記述することの限界も透けて見える。その限界を見据えることもまた科学リテラシーなのだと思う。「リスクを知るには科学技術に依拠しなければならない」が、科学に基づかないリスク議論を行ってしまう専門家もいると指摘している。この本を読めば、そんな科学「風」な議論を見破ることもできるようになるかもしれない。
 本書は数字が多い。リスクの数値化について多くの紙幅を割いている。自然災害のリスク、チェルノブイリ原発事故のリスク、飛行機事故のリスク、インフルエンザのリスク……。この数値化はリスクを語るときに避けては通れない。このことによって初めて、チェルノブイリ原発事故のリスクが調査機関によって異なるという驚きも味わうことができる。ここでの数値は、どれも科学的ではあるのだ。ではなぜ異なるのか。そのリスクの見積もり方にまで目を向けることもまた、科学リテラシーの一部なのだ。
 著者は寺田寅彦の言葉、「ものをこわがらな過ぎたり、こわがり過ぎたりするのはやさしいが、正当にこわがることはなかなかむつかしいことだと思われた」という言葉を引用して、リスクに向き合う際のバランス感覚の重要性を説く。そのバランス感覚を磨くのは難しいことではあるが、本書はそれを磨く一助となってくれることだろう。

『Thurbo FTGFOP1 2013-DJ30』LUPICIA

 タルボ。
 タルボはダージリンの茶園のひとつで、ミリク(Mirik)と呼ばれる地帯にある。これはその春摘み紅茶、つまりファーストフラッシュだ。昨年のだからやや古いけれど、まだ余裕で賞味期限内。
 ファーストフラッシュの良さはその若々しさにあるのだと思う。この紅茶も煎れた瞬間に立ち上る若草のような香りがいい。少し南国のフルーツのような、あるいはハチミツのような甘さも感じる。味もしっかりしていておいしい。緑茶や台湾茶のような雰囲気もある。鼻と舌の両方を楽しませてくれる本当においしい紅茶。

LUPICIA

2014年1月12日日曜日

『To All the Girls. . .』Willie Nelson

 2013年。ウィリー・ネルソン。
 18人(組)の女性ヴォーカリストと歌ったデュエットアルバム。基本的にカントリー。やさしく飄々としたウィリー・ネルソンの声と相手女性の声との絡み合いが実にいい。最初ウィリーが歌い始めて、途中からもうひとりが入ってくるというパターンが多い。ノリがいいのがあったりバラードっぽいのがあったりと曲調はいろいろだけれど、どれもいい。
 この中から特に気に入ったのを挙げるとすれば、ドリー・パートン(Dolly Parton)との『From Here To the Moon And Back』、ミランダ・ランバート(Miranda Lambert)との『She Was No Good For Me』、ノラ・ジョーンズ(Norah Jones)との『Walkin'』、リリー・メオラ(Lily Meola)との『Will You Remember Mine』、ポーラ・ネルソン(Paula Nelson)との『Have You Ever Seen the Rain』、ティナ・ローズ(Tina Rose)との『After the Fire Is Gone』あたり。

『タイポグラフィの基本ルール』大崎 善治

 Softbank Creative。デザインラボ(Design Lab+)。副題『プロに学ぶ、一生枯れない永久不滅テクニック』。
 タイポグラフィの基礎知識を、とても丁寧に教えてくれる。書体やフォント、紙や本などのタイポグラフィの素材の話、文字の並べ方や文字揃えなどの基本テクニック、1枚の紙の上にどのように文字をレイアウトするかというレイアウトパターンの紹介、男性あるいは女性的にしたり子供っぽさや品格を出すにはどうしたらよいかという演出スタイルの話、そして文字を作る話。どれもこれも特別な前提知識などなくてもすんなり頭に入ってくる。ひとつひとつのトピックにわかりやすい具体例がついているのがいい。
 マニアックにタイポグラフィを突き詰める気はないけれど基礎だけは押さえておきたい人、そしてこれからタイポグラフィを学んでいきたいという人にはぴったりの本。最低限この本に書いてあることを実践するだけでも、かっこいいデザインができるんじゃないだろうか。

2014年1月5日日曜日

『ウクレレDIY完全ガイド』

 Rittor Music Mook。
 DIYとは「Do It Yourself」の略で、つまりこの本はウクレレを自分で作ってしまおうという本である。工具や材料はホームセンターなどで準備しなければならないが、原寸大の型紙が付属しているので、作ろうと思えばわりと簡単に手を出せる。バンドソーや糸鋸盤はちょっと敷居が高いかもしれないが、頑張ればノコギリや糸鋸でも何とかなる。
 このように、基本的には専用工具などを使わなくてすむように、実際のウクレレ製作家が行う手順などを多少アレンジして説明している。とはいっても、この本にあるような針金のフレットや木製のペグ(糸巻き)、ナット、サドルに飽き足らない人でもステップアップできるように、市販のウクレレのように本格的なフレットやペグを付ける方法も説明されている。ただ、実際に市販されているウクレレとは大きく違うところがひとつある。ボディのサイド(横板)の作り方である。これは一般的には薄い板を曲げて作るのだが、本書では厚い板をくりぬく方法を採っている。個人的には薄板を曲げる方法もオプションとして説明しておいてほしかった。
 ちょっとうれしい記事もあった。インレイ(象嵌で作る模様)の作り方が載っていたことである。以前インレイについて書かれている本を探したことがあるのだが、どうしても見つからなかった。こんなところで出会えるとは、という感じである。
 もともとウクレレを作りたくてこの本を購入したのではなく、ウクレレの製作過程を知りたくて手にしたのだが、読んでいると実際に作りたくなってしまった。

2014年1月4日土曜日

『Missile Bell』Trace Bundy

 2008年。トレース・バンディ。アメリカのコロラド州ボールダーで行われたコンサートの模様を収めたDVDとCDをセットにしたものである。
 彼はアコースティック・ギタリストで、ファンからは「アコースティック・ニンジャ」と呼ばれているという。それは、彼自身が忍者好きで『Acoustic Ninja』という曲を作っているのはもちろんのこと、その演奏風景からもそう呼ばれるにふさわしいようなパフォーマンスを行うせいなのだと思う。さまざまなカポ(カポタスト)を何個もギターにつけて、それをずらしたり外したり、またつけ直したりと、ほかにはない演奏をする。ここで、カポというのは、ふつうギターの全部の弦をギターに挟むようにつけて調を変えたり(弦全体を1音とか2音とか上げたり)するものだが、全部の弦ではなくて一部の弦だけの音を上げたりするパーシャル・カポなんてものもある。彼はこれらのカポを複数つけて、その合間を縫うように指を滑らせて演奏をするのだ。『Hot Capo Stew』という曲では5個ものカポが使われていて、最後にはそれらを全部少しずつ取り外していって演奏を終わるというような芸当をしたりする。そのほか、両手タッピングだったりギター本体をパーカッションのようにたたいたり、ルーピング装置を使って自分の演奏をダビングしながら多重演奏を行ったりと、まさに「Ninja」と呼ばれるに値する演奏を披露する。
 ただ、これはライブ盤のせいかちょっと音が荒くて雑な感じがする。本作はCDを聴くというよりは、DVDを観てトレース・バンディのパフォーマンスを満喫しながら楽しむ、というのがいいやり方なのだと思う。

2014年1月3日金曜日

『0』青葉 市子

 2013年。
 クラシックギターと歌だけの、なのにとても豊かな光景が目の前に広がる、素敵なアルバム。ダイナミックスが豊かで音がつぶれいてなくて、曲の速さが緩急自在で、情感豊かに繰り広げられる音の世界。そのゆらぎのようなものが実に心地よい。国東半島旧第六トンネル内を歩きながら紡いだという10分超の即興演奏『いりぐち でぐち』のライブ感もたまらない。
 この音楽のジャンルって何なんだろう。ふと考えたけれど思いつかない。「青葉市子」という独自世界。うまく言葉では表現できないけれど、この世界がとても気に入ってしまった。

2014年1月2日木曜日

『まちモジ』小林 章

 グラフィック社。副題『日本の看板文字はなぜ丸ゴシックが多いのか?』。
 世界中の街角で見られる「文字」が、たくさんの写真とともに紹介されている。それは道路標識だったりレストランの看板だったり消防車やバスに書かれている文字だったり、実に様々だ。国も日本は当然のこと、アメリカ、フランス、ドイツ、アルゼンチン、タイ、香港など、多岐にわたっている。ほとんどのページが写真で埋められており、言葉でくどくど説明するよりも、まずたくさんの実例を見てわかってよ、という感じだ。
 そういえば街にあふれている「文字」は、きちんとフォント名のついた書体はもちろんあるんだけど、手書き看板のような手で書いた文字もたくさんあるんだな、ということに改めて気がつかされた。そして手書きの味みたいなものも厳然としてそこにあって、それは私にとっては発見だった。著者もきっとそんなところを読者に知ってもらいたかったのだろうと思う。著者の足は看板職人のもとへも向かう。
 もちろんきちんと名前のついたフォントの話もたくさんある。例えば「Frutiger」とか「Futura」とか「Optima」とかを使った「まちモジ」の話など。街のなかには本当にさまざまな書体が使われているんだということを感じる。最後の方には「まちモジ」とは直接の関係のないフォント自体の話もちょっと出てくるけれど、それは本書にとっては「余分」なんだと思う。これはこれで読んでいておもしろいのだけれど。
 これからは、外に出たら看板の文字が気になりだしそうな予感。

2014年1月1日水曜日