2013年12月30日月曜日

『7日間でマスターする配色基礎講座』

 視覚デザイン研究所編。
 「DESIGN BEGINNER SERIES」とあるとおり、初心者向けの配色講座である。難しい専門用語は出てこない。とはいっても、私にとって理解の難しい単語は当然ある。例えば「トーン」。「トーン」とは「三属性(色相、明度、彩度)のうちの明度と彩度の交差した部分」のことであるが、ゆっくり考えると頭でわかったような気になるとはいえ、直観的には理解できない。「五役色(主役色、脇役色、支配色、融合色、アクセント色)」の違いも、すんなりとは頭に入ってこなかった。「十役色」というのもあるようで、そうなると私にはまったく手の出ないものになったであろう。
 本の内容とはあまり関係ないことから入ってしまった。この本では、モノ(色)を引き立てたり馴染ませたりするには具体的にどんな配色にすればいいか、そしてそれを発展させて、特定のイメージを伝えるためにはどんな配色を心がければいいのかということについて、書かれている。実際の広告、カタログ、写真などの豊富な実例をもとに、違う配色だったときとのパターンと本物のイメージを比べて解説してくれており、とてもわかりやすい。年齢や性差、温度による配色の違い、カジュアルさ、エレガントさ、自然らしさを表すにはどうすればいいのかなど、実例を見せられると、なるほどと頷いてしまう。特定のイメージをきちんと他人に伝えるためには、適当な色遣いをしていては駄目なんだということがよくわかる。
 ただ、それを実際に自分が表現する立場になったときにうまく使いこなせるかどうかは別である。いろいろと試行錯誤しながら自分でも手を動かしてみる必要はあるだろう。そのための基礎体力作りとして、この本は役に立つ。「色は無言のうちにメッセージを伝えるのであなどれない」との言葉が心に残る。

『グァテマラ・サキシム2013』横井珈琲

 Guatemala Sacixm。サキシムは生産者組合の名前。
 酸味も苦味も少なくて、舌を包み込む感じがとてもまろやか。チョコやダークチェリーのような重厚感を持ちながらも、飲みやすくてバランスのとれたコーヒーだと思う。口の中のコーヒーが全部喉を通り終わったあとに感じる甘い余韻がいいです。

工房 横井珈琲』札幌市西区発寒9条11丁目2-11(地図

2013年12月27日金曜日

『直感』ペッテリ・サリオラ

 2013年。『Through the Eyes of Others』Petteri Sariola。
 フィンランド出身のペッテリ・サリオラによるサード・アルバムは、全作カヴァーである。半数弱がギター・インストで、残りが歌ものになっている。
 実は前作『PHASES』(私の記事)を聴いたとき、もうペッテリ・サリオラはいいかな、と思っていた。そんな私がこのアルバムを買うことになったきっかけは、このアルバムにも入っているワム(Wham!)のカヴァー『Wake Me Up Before You Go-Go』をYouTube(こちら)で観たことによる(アンディ・マッキー(Andy McKee)がFacebookで紹介していた)。これがすごくいいのだ。パーカッシヴなスラム奏法を駆使して鮮やかにアレンジしている。途中ちょっとメロディを変えているところもまたいい。これを聴いて、もっと聴きたいと思った。
 それで購入に至ったわけだが、実際にこのアルバムをスピーカーから流してみると、いろいろと突っ込みどころが満載で戸惑った。スラム奏法と全体を覆うグルーヴ感は共通している。でも個々の楽曲の選曲、アレンジがよくわからないものが少々ある。
 まずは気に入ったものから紹介すると、上記の『Wake Me Up Before You Go-Go』のほか、ノリのいいU2の『終りなき旅』(I Still Haven't Found What I'm Looking For)、きれいで洗練した感じのColdplayの『Fix You』、グルーヴィーなOasisの『Wonderwall』、エレキでガンガン飛ばして歌も入るCharの『Smoky』、ひょうきんな感じもするThe Commodoresの『Easy』、デジタルロック風なMuddy Watersの『Hoochie Coochie Man』あたり。
 ちょっと評価しにくいのもいくつかあって、『ルパン三世のテーマ'78』くらいまではアルバムの雰囲気をあまり壊していないと思うけれど、『もののけ姫』になるとあまり馴染んでいない気がする(アレンジは好きなんですが)。The Beatlesの『Blackbird』、押尾コータローの『翼~you are the HERO~』、Michael Hedgesの『Bensusan』は、あまりにも原曲に寄り添いすぎて、ここだけ違うアーティストのアルバムみたいになっている。ギターはとてもうまいのですが。あと、電子音楽的な『ボレロ』もあまり好きになれなかった。
 全体的な印象は「ごった煮」なのである。それぞれの楽曲はいいなと思えるものもあるのに、アルバム全体でみるとちょっとばらばらな感じがする。まあ、「飽きさせない」という言い方もできるのですが。YouTubeは観ておいて損はないと思う。

2013年12月23日月曜日

『研究発表のためのスライドデザイン』宮野 公樹

 講談社ブルーバックス。副題『「わかりやすいスライド」作りのルール』。
 本書の内容は副題にあるとおりで、「見た瞬間に発表者の伝えたいことを理解でき」、「メッセージが自然と伝わってしまう」スライド作りを目指している。そのために必要なものとして、聴衆にわかりやすく伝えるための「考え方(姿勢)」と、スライドをわかりやすく見せるためのデザイン的な「技術」の2つを教えてくれる。図表がたくさん載っていて、駄目なパターン、よいパターンの比較も豊富で、この本自体がとてもわかりやすい。すごく目新しいものは特にないけれど、ついやってしまいがちな駄目パターンを見せられてハッとする。この本に載っているような「ルール」にきちんとしたがったスライドというのは意外と少ないかもしれない。私の専門周辺の人たちに限ったことかもしれないけれど。本書に載っているようなスライドばかりだったら、どんなにか聴衆の負担が減ることだろう。
 ただ残念な点を挙げるとすれば、アニメーションや動画をどう考えるかということがまったく触れられていないことだ。 この2つはうまく使いこなす自信がないので私はほとんど使わないのだけれど、これらを使ってわかりやすいスライドをつくるコツがあるのだとすれば、ちょっと手を出してみたい機能だったからだ。
 あとひとつ、ネット上のレビューでは「色覚異常者に対する配慮がなされていない」との批判があった。 このことについてあまり考えたことがなかったが、結構大事なことかもしれない。

2013年12月22日日曜日

『12:34』Calum Graham & Don Ross

 2013年。カラム・グレアムとドン・ロスによるデュオギターアルバム。
 かっこいい。のびのびとした二人のギターがうまい具合に絡み合い、開放感あふれるアルバムに仕上がっている。ちょっとしたズレが時折混じるけれど、それがまたライブを聴いているみたいな感じになっていていい。底抜けに明るい曲というのはあまりなくて、少し哀愁を感じさせる陰のある雰囲気を漂わせていたりもする。陰のあるといってもノリのいい曲がほとんどだけれど、『The Channel』のようなちょっと聴かせる曲もある。表題曲『12:34』の動画がYouTubeにアップされている(こちら)。是非聞いてみてほしい(最初に広告が入ります)。

2013年12月15日日曜日

『All I Want for Christmas』Tommy Emmanuel

 2013年。トミー・エマニュエル。もともとは2011年に出された同名の『All I Want for Christmas』(こちら)の日本盤。2011年の方が輸入盤だから安い。基本的にはギターによるクリスマスアルバム。でもトミー・エマニュエルによるギターのほか、ピアノやストリングスのサポートも交じっている。
 前半は明るい感じのクリスマスソングが多い。ご機嫌な『Rudolph The Red-Nosed Reindeer』に始まり、『White Christmas』、『Jingle Bells』と続く。『Winter Wonderland』、『Santa Claus Is Comin' To Town』もそんな感じだ。それに対して後半は落ち着いてしっとりとした曲が多くなる。私は後半の方が好きですね。『The Magic Of Christmas Time』、『One Christmas Night』、『I'll Be Home For Christmas』、『Silent Night』という感じ。原盤はそのあと壮大な『How Great Thou Art』で締めているんだけど、日本盤だけに入っているボーナストラック『Softly And Tenderly』もいいです。
 派手すぎず、暗すぎず、バランスの取れたアルバムだと思う。

2013年12月13日金曜日

『構図がわかれば絵画がわかる』布施 英利

 光文社新書。
 構図というのは、ある枠の中、それは絵画であったり写真であったりするのだが、その中で、どういう風にものを配置するか、線を配置するか、そんなことを示したものだとこれまで思っていた。しかしどうもそういう私の理解は正しくないようだ。この本は構図のことをこのようには捉えていない。この本には黄金比率も3分割法も出てこない。では構図とはなんなのか。著者は、構図にあるものはたったひとつのことだと言い、「構図は、宇宙を要約したものです。」と言い切る。
 実際のところ、私はこの本を読んで構図とはなんなのかわからなくなってしまった。点や線、形がつくる構図というのはわかる。遠近法のこともわかる。光や色がつくる構図も、何とか食らいついていくことができる。でも、「時間の構図」、「空間の構図」と言われてもよくわからない。「人体の形態や構造の中にある『構図』」というときの構図の意味もよくわからない。なぜ仏陀の生涯についての解説がこの本に必要なのかもわからない。ましてや「構図は、宇宙を要約したものです。」と言われてもまったくピンとこない。私はこの本を読んでも構図のことがわからなかった。つまりその先にある絵画もわからないということだろうか。
 いや、この本を読むと絵画のことはわかったような気になるのだ。この本には絵画全般についてのことが書いてある。私からするとそれは構図の範疇には入らないのだが、確かにそれら全体のことを「構図」と呼ぶのなら、この本のタイトル『構図がわかれば絵画がわかる』というのもある程度正しいのかもしれない。ちょっとややこしいけれど(私の書き方がややこしいのですね、きっと)。
 私が「構図」という言葉に引っ張られなければ、この本はもっとわかりやすく、おもしろいものだったのかもしれないということである。例えば最終章は「美術解剖学」についての解説だったが、非常にわかりやすく、興味深いものだった。著者の専門が美術解剖学であることと無縁ではあるまい。
 なんだかいろいろと書いてしまったが、(構図という言葉を無視して、)純粋に本書を「絵画入門」であると捉えるならば、この本は絵画へのいい案内役となってくれることだろう。

2013年12月7日土曜日

『Close-Up Vol 4, Songs of Family』Suzanne Vega

 2011年。
 1985年のデビュー以来25年を迎えて、スザンヌ・ヴェガがこれまでの作品をもう一度見直そうとして企画した「Close-Up」シリーズの4枚のア ルバムのうちの最終盤。歌とアコースティックギターの音を中心に据えている。
 総じて好きな曲が多いが、どうして家族がテーマなのにこんなに愁いに満ちているんだろうと思う。そんなところがまた好きな理由でもあるのだが、ポップで明るい感じの曲は弟を歌った『Brother Mine』くらいである。そんなふうに淡々とちょっと離れた場所から家族を見つめているような曲調ではあるが、その実、歌詞の内容は彼女と彼女の家族とのつながりを強く感じさせる、とても彼女目線の曲だったりする。強く歌い上げるのではなく、あくまで冷静を装いながらも本音はきちんと伝えるみたいな。
 『Rosemary』、『Ludlow Street』、『Pilgrimage』なんかがいいなと思う。けれど断トツに好きなのは『The Silver Lady』だった。フォーキーな感じでエドウィナ・ヘイズ(Edwina Hayes)を思わせる雰囲気を持っている。歌詞はちょっと哲学的でよくわからないのだが…。
 今回シリーズ4枚を聴いてみて特に好きだったのは、『Vol. 1-Close-Up: Love Songs』と、この『Vol. 4-Close Up: Songs of Family』 の2枚かな。でも全部いいと思う。スザンヌ・ヴェガが好きな人だったら。

2013年12月3日火曜日

『TYPOGRAPHY 04』グラフィック社

 [タイポグラフィ]文字を楽しむデザインジャーナル。
 今回の特集は「手書き文字の魅力」。レタリングやカリグラフィー、看板文字から相撲文字など、手で書いた文字に注目している。ペットボトルのお茶飲料の字なんていうのもある。街にあふれる手書き文字の写真も、世界中からたくさん集められている。和文、欧文の手書きフォントについても多くのページを割いている。個人的には、フォント作成ソフト(TTEdit、OTEdit、Fontographer)を使って実際に手書きフォントを作ってしまうコーナーがおもしろかった。拗音や句読点の縦書きと横書きでの位置の違いをきちんと説明している本は、私にとってはこれが初めてだった。
 特集のほかには、タイポグラフィを使ったAudiのCM(こちら) や、アメリカのホイットニー美術館で使われている「W」のデザイン、文字が変形して動物のフィギュアになる「超変換!!もじバケる」というおもちゃの紹介などが楽しい。

2013年12月1日日曜日

『Close-Up Vol 3, States of Being』Suzanne Vega

 2011年。
 1985年のデビュー以来25年を迎えて、スザンヌ・ヴェガがこれまでの作品をもう一度見直そうとして企画した「Close-Up」シリーズの4枚のア ルバムのうちの第3弾。基本はアコースティックな感じで演奏し直しているが、Vol. 1、Vol. 2、Vol. 3と進むにつれて弾き語りっぽいのは少なくなってきている。本作ではエレクトリックな音を使ったり、結構作り込んでいる。
 タイトル『States of Being』は直訳すれば「存在の状態」といったところだが、スザンヌによると「Mental Health」(精神衛生)の意味合いなのだという。重くのしかかってくるような曲調のものが多いのは、彼女の精神がそんな感じになっているということなのだろうか。
 今の私には重いのはつらい。だから好きな曲も淡々としたシンプルなものになってしまう(歌詞の内容はともかく)。『Cracking』、『Penitent』、『Pornographer's Dream』のような。ほかにはノリのいい『Last Years Troubles』も悪くない。