2013年11月29日金曜日

『小林秀雄の恵み』橋本 治

 新潮文庫。
 小林秀雄の『本居宣長』を読んだ著者は感動し、「小林秀雄はいい人だ」と思った。そしてそれが彼にとっての「恵み」であった。『小林秀雄の恵み』とはつまりそういうことなのだが、実際読んでみるとその「恵み」が何であるのか実にわかりにくい。実のところ本書には、直接的にはあまりそういうことは書いていなくて、小林秀雄の『本居宣長』の難解さはこういうところにあるんじゃないかとか、小林秀雄は本居宣長のことをこういう理解の仕方をしているんだけれどそれはちょっと違うんじゃないかだとか、かなり批判めいた言葉をちりばめている。本書はタイトルズバリの本ではないのだ。読者は、著者が『本居宣長』を読み進めながら考えた色んなことを、いわば同時進行的に感じ取ることができるようになっていて、そうすることで著者にとっての「小林秀雄の恵み」が読者にも実感できるようになる。そう言いたいところだが、それを実感するのは実に難しい。だって読者は橋本治ではないのだから。
 著者は本書の目的を、「小林秀雄がいて、小林秀雄が読まれた時代の日本人の思考の形を知ること」とも書いている。本書は橋本治にとっての『本居宣長』の読み方を書いているわけでもあるが、そうだとしたらちょっと変わった読み方であるように思う。その時代の「日本人の思考の形を知る」ために橋本がしたことは、彼らが受け入れていた「小林秀雄」の著作『本居宣長』を読むということなのである。ちょっと回りくどくはないか。
 こうやって書くと、私はこの本にいちゃもんをつけているように思われるかもしれないが、実のところ本書はとても刺激的で、めちゃくちゃおもしろい。「小林秀雄の恵み」が何なのかはよくわからない。でもこの本を読むと「橋本治の恵み」なら感じる。だとすれば橋本治にとっての「小林秀雄の恵み」とは、私にとっての「橋本治の恵み」をシフトすればいいだけなのではないのか。
 ここまで私は本書の内容をほとんど述べてこなかった。本書の肝は、著者が『本居宣長』を読んで感じた思考の流れであるように感じるので、読者も実際に読みながらその流れに身を任せてしまえばいいと思うのだ。本居宣長は医者で学者で古事記を研究していて歌も詠む。墓は遺言にしたがって公的な墓と私的な墓がある。私的な墓には桜が植わってあって…。そんなことをここに書いてもしょうがない。実際に本書を手にとって橋本治の思考の流れにしたがっていると、なんだかわくわくしてくる。ダイナミックな日本の歴史の面白さすら感じられる。そして最後には、「小林秀雄の恵み」をほんのちょっぴり分けてもらえる。そんな本である。

2013年11月24日日曜日

『17th アニバーサリーブレンド/マロン』横井珈琲

 少しフルーティーですっきりとした酸味を感じる。口の中に残る余韻ははじめ果実っぽいのに、時間がたつにつれてチョコレートのような風味がしてくる。やわらかい甘みもある。コスタリカ、グァテマラ、ケニア、エルサルバドルのブレンドだそうである。飲みやすいのにちょっと高級感も感じさせて、ちょっぴり贅沢な時間を過ごさせてくれる。
 同じく『17th アニバーサリーブレンド』として『ポム』もラインナップされており、試飲してみた感想としては、こちらは酸味が結構きつい印象。

工房 横井珈琲』札幌市西区発寒9条11丁目2-11(地図

『日本シェーグレン白書2012』日本シェーグレン症候群患者の会

 発行は「NPO法人シェーグレンの会」。副題『シェーグレン患者の実態、日本シェーグレン患者会員の横顔、調査報告書2012年』。
 シェーグレン症候群は目や口の乾燥、疲労感などを主訴とした自己免疫疾患であるが、全身疾患であり、患者によって実にいろいろな症状が出る病気である。
 この白書は、2011年に行われた日本シェーグレン症候群患者の会会員を対象としたアンケート結果をまとめたものである。患者に対するアンケートはこれまでも何回か行われてきたとのことであるが、刊行物としてまとまったのはこれが最初だそうである。アンケート回答者の実に96%が40歳代以上であり、女性の割合は98%を占める。
 アンケートの内容は、受けている医療・診療の状況、治験について、日常生活への影響、社会保障制度・経済について、不安やつらいこと、医師および社会への要望のほか、自由記載となっている。
 治療に一番期待することは、目や口の乾燥症状がなくなること、倦怠感が取れることが上位を占めている。治療以外では、医師やまわりの人、社会の理解がもっと進んで欲しいとの意見が多いような印象を受けた。患者は一見健康そうに見えるため、なかなか理解が進まないものと思われる。医師ですら理解が足りないと見なしていることは特筆すべきことである。また、特定疾患などの社会保障制度の充実を求める意見も多い。日常生活への影響は85%の人が「あった」と答え、「生活が不便」のほか、「家事ができない」、「経済的に苦しい」があとに続いた。趣味娯楽の制限については、「外出ができない」「交友関係が少なくなった」を挙げる人が多い。職業生活への影響も、70%の人が「あった」と答えている。
 自由記載では、個々人の病状、苦しみ、要望などが切実に語られている。その内容はあまりに多岐にわたっているのでここでは詳細を省くが、ある意味、ほかのアンケート結果よりも心に訴えるものがある。早く病気の理解、そして病気の解明が行われることを望んでやまない。
 この白書の発行はシェーグレンの会のホームページでも告知されているが、一般の方の入手方法は私にはわからなかった。入手希望の人は、ホームページに記載されているメールアドレス宛に問い合わせてみてはどうだろう。

『リキテックス大全』

 美術出版社。副題『アクリル絵具入門者から、スキルアップしたい人まで』。
 アクリル絵具の代名詞的存在であるリキテックス。そのリキテックスの使い方を紹介する本である。「活用編」と「技法編」の2部構成となっている。
 「活用編」では、村上隆、空山基、千住博といった第一線で活躍する13人のトップアーティストの創作術を紹介している。絵を描くときに、技術を完全に学習することは最低限必要なことだという人もいれば、いや、感性の赴くままに描けばいいという人まで、様々な考え方をする人がいておもしろい。作品も平面的なものから立体造形物まで幅広い。個人的には、網中いづる、松本陽子、津上みゆきの作品が好きだった(なぜかすべて女性というのは、単なる偶然であろう)。
 後半は「技法編」となっているものの、実際には技法を説明しているというよりは、リキテックスというものがどういうものか、絵を描くには何が必要かということを解説していると考えた方がいい。リキテックス絵具の特徴、カラー、絵具チューブのラベルの見方、色の作り方、絵を描く前の下準備としてのジェッソの種類と使い方、盛り上げたり薄くしたりするメディウムの紹介、テクスチャジェルの特徴と使い方、筆やパレットの話、どんなもの(紙とかコンクリートとか)に描けるのかという話。
 私はアクリル絵具を使ったことがなかったので、アクリル絵具が海のものとも山のものともつかなかった。どこから手をつけていいのかすらわからなかった。そんな私でも、この本を読んでアクリル絵具の全体像が見えてきた。まず何を購入すればいいのか、そんな初歩的なところからわかった。どんな絵を描けるのかについてのイメージは「活用編」で十分に広がった。そのうちいろいろと試してみよう。

2013年11月23日土曜日

『Forward』Erik Mongrain

 2012年。エリック・モングレインによる3枚目のソロギターアルバム。
 タッピングやパーカッシブな音を絡めながらのアルバム最初の曲『Fearless』から、なんだか懐かしい感じがする。とてもマイケル・ヘッジス(Michael Hedges)的な感じがするのだ。もともと彼はヘッジス・フォロワーとして知られていたわけだけれど、初期の頃の超絶技巧的な演奏は少なくて、ゆったりとして陰のある雰囲気を醸し出している曲が多いところが、前よりもいっそうヘッジスっぽいなと感じさせるのだ。そう思いながら聴いていると、なんとこのアルバムの最後を締める曲がヘッジスの『The Happy Couple』のカヴァーである。原曲よりもキーは落としてあり、より抑制的な感じはするが、ほぼ完コピに近い。彼自身もじゅうぶんにヘッジスを意識してこのアルバムを作っているということだ。とはいえただ単に真似をしているというわけではなく、きちんと彼の中で昇華して新たな音楽を作り出しているのはもちろんである。メロディらしいメロディがないにもかかわらず、まとまったひとつの曲として感じさせるところがすごいと思う。アルバム全体から受ける落ち着いた印象が、今の私の心の空虚な部分を埋めてくれる感じがして、とても好きなアルバムである。

『プー横丁』で見てみる

2013年11月12日火曜日

『STUDIO ZOO』Newton Faulkner

 2013年。ニュートン・フォークナー。
 彼にとっては8枚目のアルバムらしいが、私は2008年の『Hand Built By Robots』から聴き始めたので、私にとっては4枚目のアルバムとなる。過去3枚のアルバムに比べると、キャッチーでかっこいい、といった印象は薄れ、おとなしめのアルバムだと思う。これまでのイメージどおりの曲は『Indecisive』、『Losing Ground』くらいだろうか。全体的にきれいな曲だなと感じる作品が多い。ギターの音もメロディも。そして、スピーカーから出てくる音がとても立体的で、空間上に絶妙に配置されたギターの音色と彼の声が頭の中に広がっていく感じが、実に心地よい。それらの音がない部分を占める空間もまた、音楽を形づくっているんだということを強く感じる。バラード調の『Don't Make Me Go There』、さわやかさのある『Waiting On You』、ささやくように静かに歌い上げる『Innocent』など、派手さはないけれどいい曲が揃っている。

2013年11月10日日曜日

『Orange & Ginger』LUPICIA

 オレンジ&ジンジャー。ドライジンジャーをブレンドしたオレンジティー。
 今までオレンジと生姜という組み合わせを飲んだことはなかったけれど、レモンと生姜はよくあるのだから、こういうのもあっておかしくないんだと、パッケージを見て思った。口にしてみると、かなり甘ったるいジンジャーの香りが鼻をつく。苦手かもしれない。でも実際に飲んでみると全然甘くない。逆に淡泊すぎて拍子抜けする。オレンジの味もそんなにはしない。香りの強さと味との間にはギャップがある。香りは苦手だけれど、味はまあまあ好きかもしれない。体が温まる。

LUPICIA

2013年11月9日土曜日

リベンジ『少女(?)Aの肖像』

 以前描いた『少女(?)Aの肖像』(こちら)を描き直してみた。少女になるように心がけてはみたものの、まるで別人です。どちらの方がモデルに似ているかはこの際おいておくことにして、絵としてはこっちの方がいいのかな。
 ただ、この一連の習作で試みた、鉛筆でかなり描き込んでから水彩で色をつけるという方法が、私に合っているかどうかは不明。ふつう水彩を描くときは下書きはさらっと形を取るだけにするものなんですよね。

『抹茶きらら玄米茶』LUPICIA

 北海道のお米「きらら397」を使った玄米茶に、抹茶を加えたもの。
 抹茶くささが全然なくて、ごく自然な感じの玄米茶。お茶と玄米のバランスがよくて、まろやかでおいしい。香りもいい。おそらく「きらら397」を使わなくても同じような味になるんだと思うけれど、このお米を使うことで名前が華やかになりますね。とても気に入りました。

LUPICIA

2013年11月4日月曜日

『LJ Plays The Beatles Vol. 2』Laurence Juber

 2010年。ローレンス・ジュバー。ポール・マッカートニー(Paul McCartney)率いるWINGSに一時期参加していたギタリスト、ローレンス・ジュバーのソロギターによるビートルズ作品カヴァー集第2弾。
 ギターの音はきれいだし、うまいし、ビートルズの雰囲気もそのまま。でもちょっと物足りない。元歌に寄り添いすぎて、縮こまっている感じがする。もっとはじけちゃってもいいのにと思う。可もなく不可もなしという感じ。第1弾『Lj Plays the Beatles!』の方が好きです。ただし、私が個人的にこのアルバムに期待しすぎていて、聴いてみると意外と普通で逆にがっかりしてしまったというだけの話で、第1弾と第2弾の間にそれほど出来具合の差はないのかもしれない。こっちの方が残念感が強かったというだけの話で。
 ビートルズの雰囲気をギターソロでそのまま聴きたいという人にはいいと思う。リフやオブリガートの入れ方も原曲そのままという感じです。このアルバムの中で比較的好きなアレンジだったのは、『Drive My Car』、『Please Please Me』、『All I've Got To Do』、『Michelle』といったところでしょうか。

『グァテマラ・ラ・ブレア2013』横井珈琲

 Guatemala La Brea。
 主張しすぎない程度の少しの酸味があり、チョコミントのようなさわやかな感じのチョコレートを口にしたような感覚。果物のプラムみたいな雰囲気もある。さわやかな感じではあるものの、すっきりとした酸味が立っているわけではなく、ちょっぴりとした雑味があって全体的にやわらかい印象となっている。飲んだあとに鼻に抜ける香りが心地よい。昨年の記事(こちら)とは印象が違いますね。

工房 横井珈琲』札幌市西区発寒9条11丁目2-11(地図