2013年9月28日土曜日

『Close-Up Vol 1, Love Songs』Suzanne Vega

 2010年。
 1985年のデビュー以来25年を迎えて、スザンヌ・ヴェガがこれまでの作品をもう一度見直そうとして企画した「Close-Up」シリーズの4枚のアルバムのうちの第一弾。ベースやエレキギターなどが入っている曲もあるが、基本的にはアコースティックギターと歌が中心のシンプルな構成で録り直している。
 デビューした頃と変わらぬ雰囲気で、アコースティックな感じが実にいい。私はアルペジオやスリー・フィンガーを使ったギターと彼女の歌だけの曲がとても気に入った。『Gypsy』、『(I'll Never Be) Your Maggie May』、『Song In Red And Gray』といった曲だ。そうじゃないものでも、ベースも入ったやや激しめの『Marlene On the Wall』だとか、妖しげな光を感じさせる『Headshots』などもいい。そういえばわりと最近の曲である『Bound』(これもギターと歌だけ)の悲しく切実な感じもいい(歌詞はそんなに悲しくはないのだが)。
 私が初めて彼女のアルバムを購入したのは1987年のセカンド・アルバム『Solitude Standing』だった。前掲の『Gypsy』はこれに入っている曲だ。もうそのときから20年以上が経つのかと感慨深い。このシリーズの残りの3枚も楽しみだ。なお、このシリーズは4枚ばらばらにも売られているが、1、2枚目と3、4枚目をそれぞれセットにしたお得版もある。

2013年9月26日木曜日

『マスタリングの全知識』葛巻 善郎

 Rittor Music。副題『CDから配信まで』
 曲を作って、録音して、ミックスして、とそこまでやったあと、曲を配信する前にするのがマスタリングである。例えば曲ごとにばらばらな大きさの音を、アルバムを通して一定の大きさに聞こえるように調整したりする。そのマスタリングの基礎知識をひととおり学べるようになっている。
 マスタリングの仕方は決まったやり方があるわけではなく、それを行う人によって全然違う。でもその上で私(著者)はこうやっている、というスタンスで解説している。つまり著者の立ち位置が読者からわかりやすく、それでマスタリングの全体像もつかみやすくなっている。また、プロの現場でのマスタリング方法のほかに、宅録(自宅での録音)ではこうやるといい、ということも載っているので、素人には参考になる。抽象的議論ではなく、きっちりと説明してくれているのもいい。ただし「全知識」というのは大袈裟で、実際には全体像を初心者にもわかりやすく解説している程度に考えておいたほうがいい。
 内容的には、マスタリングの全体像、コンプレッサー、リミッター、イコライザーの使い方、波形編集とノイズ除去、ネット配信用の圧縮音源(mp3とかAACとか)を作るためのコツなどについて触れている。
 マスタリングの考え方についてわかりやすく書かれているので、私のような初心者にはよい本である。

2013年9月23日月曜日

『2CELLOS IN2ITION~コレクターズ・エディション』2CELLOS

 2012、2013年。クロアチア出身のステファン・ハウザー(Stjepan Hauser)とルカ・スーリッチ(Luka Sulic)の2人のチェリストが結成したデュオ、2CELLOSのセカンドアルバムに、日本盤独自CDを1枚つけた2枚組。
 Disc2には、グリー・キャスト・ヴァージョンの『Smooth Criminal』、1台のチェロを2人で二人羽織みたいに弾いている『Every Teardrop is a Waterfall』、NTTドコモ「ツートップ」CM曲の『影武者』などが入っていて、結構お得だと思う。ただ、『IN2ITION』を持っている人は同じCDを2枚持つことになるので微妙かもしれない。
 今回のアルバムはチェロ2台だけではなく、ヴォーカル、ギター、ピアノ、ドラムスなども加わり、豪勢な感じに仕上がっている。チェロの生音をそのまま聴かせるもののほかに、エレクトリックなサウンドにしているものも多い。全体としてロック色が強い。音も荒々しい。エルトン・ジョン(Elton John)がヴォーカルの『Oh, Well』、スティーヴ・ヴァイ(Steve Vai)がギターを務める『Highway To Hell』など、格好のいい曲が揃っている。チェロを聴いているという感じはあまりしない。激しい曲の中でも、きちんとバランスよく収まっている。『Every Breath You Take』、『Candle In the Wind』、『Orient Express』のような静かな曲もあるが、チェロのアルバムなのではなく、ロックのアルバムなのだろう。『影武者』を聴きたくて購入したが、意外と短い曲だった。

2013年9月22日日曜日

『マスタリング・エンジニアが教える 音楽の聴き方と作り方』小泉 由香

 Rittor Music。
 著者は音楽をスピーカーで聴くことを勧めている。そしてPART 1では、スピーカーを使ってどうやって耳を鍛えるかということを解説している。まじめにやろうとすると、結構厳しい。自分の耳が、スピーカーから出てくる音をどのように捉えられるようになれば合格ラインなのかが掴みづらいからだ。繰り返し試行錯誤して何時間も音楽と向き合っていけば、そういう耳にもなるのかもしれない。でも難しいと思う。こういうことは、直接手取り足取りその場で教えてもらいたい気がする。
 PART 2ではマスタリングの実際と称して、著者がマスタリングしている最中の他の関係者とのやりとりなどを紹介したりしている。時折交ざる対談、コラムも併せて雑談という感はあるものの、プロの本音が聞けて楽しい。音楽を携帯プレーヤーなどに圧縮して聴くことについてのエンジニアの考え方などが透けて見える。PART 3では、音楽制作に役立つ10の常識が書かれているが、コラム的な軽い内容である。
 音楽を聴くときの聴き方として、視覚タイプと体感タイプがいるという。ああ、そういえば私は音を見ているな、という発見があった。全体的にすぐに役立つというほどのものでもないけれど、読み物としては楽しめた。

2013年9月21日土曜日

『めぐみ』栗原 恵

 実業之日本社。著者はかつて全日本女子バレー代表を務めたこともあるバレーボール選手。
 少し前に、とある新聞で彼女の特集を数日間していたことがある。けがや病気についての記事で、たまたまそのときは彼女が取り上げられていた。もともと彼女のファンだったものの、この手の本に手を出すほどではなかったけれど、この記事がきっかけで手に取った。
 幼少の頃から5年ほど前までの著者本人のことが書かれている(発売が2008年なので)。本当に自分で書いたの?と思うほど文章がしっかりしていて、テンポよく最後まで読ませる。厳しい指導やけがのことなど、決していいことばかりではないけれど、彼女のバレーボールに対する姿勢や思いが伝わってくる。
 なにかを覚えるためにでもなく、深く物事を考えるためでもない、ただ純粋に楽しい読書をしたのは、随分と久しぶりのことである。たまにはこんな読書体験をした方がいいのかもしれないと、そんなことを思った。

2013年9月19日木曜日

『雪の上の少女の習作』

 ある作家の作風を真似てはいますが、模写ではありません。とある人物の小さい頃の白黒写真をアレンジしてみました。うまく描けないなあ。

2013年9月18日水曜日

『TONEWOOD』Max Roest

 2012年。ソロギターアルバム。
 オランダ出身のギタリストで、これがファースト・アルバムとなる。はじめ聴いたとき、えっ、アンディ・マッキー(Andy McKee)のアルバムを間違ってかけてる?と思ってしまった。アンディの良い曲を集めたアルバムに聞こえた。それくらい影響を受けている。あとからショップの説明を読んでみると、これは本人も公言していて、アンディのほかに、ドン・ロス(Don Ross)、アントゥワン・デュフール(Antoine Dufour)、プレストン・リード(Preston Reed)等からインスパイアされているという。なるほど確かにそうかもしれないと納得した。変則チューニングにタッピングを駆使しつつも間においしいフレーズを潜り込ませて、といった感じ。
 本当にどの曲も私好みで、素敵な作品の詰まったアルバム。上で書いたようなアーティストの曲が好きな人は(たぶん)絶対に好きなアルバムのはずだ。すごい新人だと思った。

Shop at Pooh Cornerで見てみる

2013年9月16日月曜日

『ちひろの絵のひみつ』ちひろ美術館・編

 講談社。
 「ちひろ」とはもちろん「いわさきちひろ」のことである。水彩絵の具で子供や花などを描き、絵本画家としても知られる。日本人であればこんなことをわざわざ言われなくても当たり前のように知っていることなのだろうけれど、それはすごいことだと思う。
 本書はそんないわさきちひろの絵の技法について書かれた本だ。たらし込みや白抜きなどの水彩の扱い、構図の取り方、色の使い方、鉛筆やコンテについてなど、様々な方向から絵のひみつを解読していく。ほとんどすべてのページに図版が掲載されており、ちひろの絵を堪能しつつ、絵の技法も学べるようになっている。
 ちひろは何歳の子供でも、それとわかるように表現できたという。その観察力、デッサン力はすごい。一見すべて同じように見える「目」であっても、よく見ると細かく描き分けていることは初めて知った。黄色の不透明水彩を使っていることは新鮮だった(白はよく使われる)。
 この本を読むと、手を動かして絵を描きたくなる。実際私はいくつかの絵を模写しながら読み進めていた。やっぱりいわさきちひろは私の好きな画家なんだな、と再認識した。

2013年9月15日日曜日

『陽だまりの公園』SAKI

ギターソロの曲を初めて作ってみました。チューニングは6弦からDADGADです。

『哲学・航海日誌 II』野矢 茂樹

 中公文庫。もともと1冊だった『哲学・航海日誌』(春秋社)を、文庫化にあたって2冊にした2冊目。
 私が扉を開けるとき、腕が伸びたから扉が開いたという因果関係は正しいか(扉を開こうとしたから腕が伸びたではいけないのか)。私が彼を銃で撃って3時間後に死亡したとしたら、いったいいつ殺したことになるのか。料理をしていて塩を取ってほしいとき、「塩がない」と言うことで意図を伝えることがある。言葉にはこのように字義だけでは意味が掴みきれないことがあるが、これをどう考えればよいのか。
 日常に潜むちょっとしたことなのだが、何でも哲学になってしまう。哲学者がこれらのことを解明しようとすると、ともすれば非現実的な解を与えてしまうことがある。例えば最後にあげた例でいえば、「言葉には意味がない」とか「言語なるものは存在しない」とかいう結論になってしまったり。それに対して筆者はあくまで日常の感覚を大切にする。哲学なんて無縁の人でも自然と頷けるような解を求めようとする。 その道のりは決して平坦ではない。読んでいて訳がわからなくもなってくる。でもその答えは十分納得できるものになる。
 本書が対象としている事象は、自由だとか義務だとか抽象的なことではなくて、日常の出来事を元にしていることがほとんどなので、取っつきやすい哲学書(哲学エッセイ)だと思う。

2013年9月11日水曜日

『宮古島 癒しの波音CDブック』喜田 圭一郎

 マキノ出版ムック。副題『体と心に自然のリズムを取り戻す』。

 疲れていたのだろうか。
 海の音が聞きたかった。ザバァーンと強く岩肌に打ち付ける波音。海のすぐ近くではなく、少し離れたところから聞く波の音。日本海の荒波の音。子供の頃いつも聞いていたあの音。
 その思いは、ただそのときだけの思いではなかった。その欲求は幾日も幾日も続いた。そのたびに昔を思い出した。あの頃に戻りたかった。でも私はこれからを生きることしかできない。
 そんな日々が続いたある日、朝刊の下にこの書名を見つけた。宮古島。まだ訪れたことのない南海に浮かぶ島。北国の海とはまったく違うであろうことは容易に予想できた。しかしこの際そんなことはどうでもよかった。ただ波の音が聞きたかった。
 波打ち際に打ち寄せる穏やかな音。おそらくは珊瑚礁の欠片からなる砂に打ち寄せる波。すぐ耳元で、今にも波がかかってしまうような距離の砂浜に寝転がって聞いているような波音。時折鳥の声が聞こえる。癒やされる。

 本書に付属しているCDには、宮古島で録音された67分間の波の音が収められている。時間帯の異なる2曲(?)が入っているが、その違いはよくわからない。著者は24時間かけ流しを薦めている。ただ、本の内容には科学的なものが少しと科学風のものがたくさん含まれていて、微妙な感じがした。波の音を聞くと、私を含めた一部分の人(ほとんど全員かもしれないのだが)が癒やされるのは確かなのだと思う。ただ、現在のところそれを科学的に説明できるには至ってはいないのだから、単に波の音を聞くと癒やされる、という説明だけでいいじゃないか、と思う。無理に科学的説明を加えなくとも。
 私はこのCDの音はとても好きです。「サウンドヒーリング」と表紙に書いてあるが、少なくとも私にとっては当たっている。

2013年9月8日日曜日

『MINAS - TOKYO』Toninho Horta

 2012年。トニーニョ・オルタ。。
 日本人プロデューサーと組んだ、ギターとボーカルだけからなるアルバム。トニーニョはブラジルのミナス・ジェライス州の出身だったはずだから、 『ミナス-トウキョウ』なんだと思う。ギターとボーカルだけとはいえ、ギターは重ねてあるし、インストあり、日本人女性歌手Nobieとのデュエットありと、飽きさせない。私は意外にNobieとの絡み合いが好きで、日本語歌詞ながら『Beijo Partido』、『Miki』、特に後者が気に入った。でも彼はギターがとてつもなくよいので、インストも聴かせてくれる。スキャットは入るが、『Mocidade』や『Quadros Modernos』なんかがいい。アルバム『Toninho Horta』 にも入っていた『Saguin』、『Vôo Dos Urubus』はやっぱりいい。
 ギターが軽快に走っています。

2013年9月7日土曜日

『サントリーニ島の午餐』

 初めてガッシュ(不透明水彩)で作品を描いてみました。
 ギリシャ神話のパロディです。パスタを食べようと思ったら実はそれはメドゥーサで、目が合って石になってしまったという馬鹿げた話です。
 ほかにもギリシャ神話のネタをいくつか入れてみたので、よろしければ探してみてください。例えば洋上のヨットに乗っている人は誰でしょう。

シェーグレンの会会報第22号

 2013年8月31日発行の「シェーグレンの会会報第22号」が届いた。日本シェーグレン症候群患者の会HPでも公開されている。主に2013年4月13日に行われた総会の内容である。シェーグレン症候群は膠原病類似疾患で、ドライアイ、ドライマウスを主症状とする病気、というのが一般的な理解であろうが、それだけの病気ではないんだよ、ということがよくわかる。会報のなかで興味深かったことについて紹介したい。それは私の症状に関係するところ、ということでもあるのだが。
○東京都より、4月10日付でNPOの認可が下りた。名称は「NPO法人シェーグレンの会」。患者会の名前は「日本シェーグレン症候群患者の会」。
○シェーグレンは重篤度が低く生命に影響はないので医療関係者からは軽く見られがちだが、学問的には米国ではリウマチの次はシェーグレンだといわれているので、ネガティブに考えないでほしい。
○シェーグレンで関節痛や筋炎を訴える患者がいるが、本当に筋肉を壊していく筋炎とは機序が違うのではないか。
○シェーグレンは皮疹、薬疹、肝障害が多い。
○シェーグレンは色んな症状が出るので、この病気に詳しくない医者だと検査漬けになってしまう。
○涙液異常に伴う角結膜上皮障害があるドライアイ用に、水分分泌とムチン分泌を促進するジクアス点眼液が2011年に発売された。
○上記障害があるドライアイ用に、ムチン産生促進とゴブレット細胞の増加作用のあるムコスタ点眼液が2012年に発売された。
○一般内科医を受診するきっかけとなった臨床症状第1位は、目の乾燥、口の乾燥をおさえて関節痛である。
○便秘と病気は関係あるかもしれない。

 会報ではあまり詳しく書かれていませんでしたが、2013年10月10日に次の会場で「国際シェーグレン症候群患者会」が開かれますので、興味のある人はどうぞ(詳しくはこちら)。
京都大学医学部芝欄会館 山内ホール
(京都市左京区吉田近衛町 京都大学医学部構内)

日本シェーグレン症候群患者の会HP

『オリジナル曲をキッチリ作りたいギタリストのための作曲・アレンジ・DTMガイド』近藤 元

 リットーミュージック。
 私は勘違いしていたのだが、この本はギターを中心とする音楽を作曲・アレンジするための本ではない。あくまで、ギターを弾く人が一般の曲を作曲・アレンジするのに役立つように書かれた本である。巻末付録のコード進行パターンにはギターのコードダイアグラムが掲載されているが、それ以外の部分は別にギタリストではない人が読んでも困ることはない。
 内容はごく基本的なことしか書かれていない。掘り下げたい人は他書にあたるとよいだろう。作曲やメロディ、コード進行、リズム・パターンの打ち込み、上モノの話、録音、ミックスと、曲を作るための一通りの流れがつかめるようになっている。これだけ広範囲のものを扱っているせいだと思うが、系統立てて書かれているわけではなく、一問一答的な感じである。著者も述べているように、興味のあるところだけ読んでもいいように見開きで1トピックにまとめられている。
 私はちょっと物足りなかった。付録CDについてだが、中の音源の音圧レベルがばらばらで聴きづらく、演奏も雑に感じた。もうちょっと丁寧に作ってくれたらよかったのにと思う。

2013年9月4日水曜日

『信楽 熟成ほうじ茶』LUPICIA

 滋賀・信楽の一番茶をじっくり寝かせて焙じたもの。
 すごく香ばしい。味もしっかり濃厚なのに出過ぎた感じがしなくて、甘みもあってとてもおいしい。ふだんそんなにほうじ茶を飲む方ではないんだけど、保育園のときとか入院したときとかに出てくるほうじ茶とは全然違う。そんなお茶と比べられてもLUPICIAは困ってしまうかもしれないけれど、いずれにせよこれは本当においしいです。浸出時間が45秒から1分と短めなのに注意。

LUPICIA

『哲学・航海日誌 I 』野矢 茂樹

 中公文庫。もともと1冊だった『哲学・航海日誌』(春秋社)を、文庫化にあたって2冊にした1冊目。
 「頭が痛い」とあなたが言う。「そうか、それは大変だね」と私は返す。このとき私はあなたの痛みをわかっているんだろうか。たとえあなたが「頭の前の方が締め付けられるようでがんがんする」と言ったところで、私はそれをわかってあげられることはできるんだろうか。当然私は痛くない。あなたが痛がっている姿は見える。そんな姿から類推して、私ならああいう痛みを感じているな、と想像するのか。それでは私の頭が痛いことを想像しているだけではないのか。あなたが痛いことを想像しているのではなくて。
 訳がわからないかもしれない。結局他人の知覚なり感覚(さらにいえば心も)なりを他人である私が理解できるのかどうか。そんなことなんだと思うけれど、例えばこんなネタを使って、日常気にもしていなかったことがよく考えると説明できない、そんな問題を取り上げて丁寧に掘り下げていく。哲学入門書、あるいは哲学エッセイといった感じで、読みやすい。とはいえ私はある程度集中できる環境でないと読み進められなかったのだけれど。
 本書は上で述べたような「他我問題」についての内容が半分くらいを占めていて、あとは「規範の他者」という括りになっている。ただ、後者はちょっと雑多な印象で、意味、根源的規約主義、言語ゲーム、アスペクト論といった問題を取り上げる。
 野矢の挙げる例は絶妙で、語り口もわかりやすい。そしてできるだけ日常の実感に近い解を提示しようとしていることに好感を持てる。中には私の感覚とは相容れないものもあるけれど、哲学ってそういうものかと。

2013年9月1日日曜日

『Macで文字デザイン』成澤 正信

 グラフィック社。副題『コンピュータ時代の文字づくり』。
 この本には改訂版があり、実はそちらの方を手に入れたかった。『デジタル文字デザイン上級コース Illustratorによる文字づくり』(ライフ通信刊)である。ところがこちらの方はほとんど流通していないようで、どうしても購入元を探し出せなかった。それで、amazonで売られていた本書を購入した。
 文字づくりについての本といえばほとんどがデザイン面を重視したものが多いのに対し、本書はとても実用的な一冊である。基本的な文字の構造、イラストレータによる文字づくりの解説、書体見本の三つが、ほぼ3分の1ずつのボリュームを占めている。この中でもイラストレータによる文字づくりに関する解説がとても参考になった。初心者でも迷わない丁寧な解説は、これからイラストレータを使って文字づくりをはじめようとする人にはとても役立つのではないか。イラストレータを使っている人には常識以前の話かもしれないが、ベジエ曲線を効率よくきれいに描くのは、初学者には大変なことである。
 本書はMacのイラストレータに特化した本だが、Windowsを使っている人でも参考になると思う。フォント作成ソフト「FONTOGRAPHER」についても少し触れている。ただし1999年発行と、コンピュータに関わる本としてはちょっと古いかもしれない。

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『ボリビア・アグロ・タケシ』横井珈琲

 Bolivia Agrotakesi。アグロ・タケシ農園は標高1,900~2,600mもの高地にある農園だそうだ。そのせいで熟成に時間がかかり、この独特の風味を醸し出しているといわれる。
 ペーパーで淹れても少し濁りを感じるやわらかい味。煮詰めたリンゴのようなフルーティで苦味のある味。それにほんの少しの酸味が同居している。カヌレっぽい感じもする。口の中全体で楽しめるのがいい。香りは上品であまり主張はないのだけれど、外から部屋に入ってきたときにこのコーヒーがあると、実に心地よい贅沢な香りの空気にうれしくなる。

工房 横井珈琲』札幌市西区発寒9条11丁目2-11(地図