2013年8月30日金曜日

『Scenery』川畑 トモアキ

 2012年。『シーナリー』。ソロギター・アルバム。
 春夏秋冬のほか、様々な風景をイメージした曲が詰まっている。よく響く音はとてもキラキラしていて、まるで水面に映る太陽の反射のようだ。この音には、『Dreamer』のような明るいきれいな曲がとてもよく似合う。どの曲もメロディが美しく、無理がなく聴きやすい。私はそんな中でも、ちょっと陰のある、なのに明るい感じのゆったりとした『花鳥風月』や『Snow Dance』のような曲が好きだ。この系統の曲では『SAKURA』が出色かもしれない。このアルバムには二つのカヴァー曲、『海の見える街』(映画『魔女の宅急便』より)と『守ってあげたい』(松任谷由実)が取り上げられているが、私は特に前者のアレンジが素敵だなと思う。そして最終曲『再会』が静かな曲ながら感動的で、胸を打たれる。その余韻が心地よい。

2013年8月25日日曜日

『エンジニア直伝!DAWミックス&マスタリング・テクニック』

 リットーミュージック・ムック。
 『サウンド&レコーディング・マガジン』の人気特集を集めたものである。とても基礎的なことから説明してくれているので、わかりやすい。付属DVDを聴きながら読み進めると、例えばコンプを挿す前と後の違いなどが耳でわかるので、実にいい。ただ、プロはこんなに細かいところまで気を遣って音楽を作っているのかと、自分のいい加減さと比べると愕然とする。実際のところ、いろいろなプラグインを使う前後の違いは私の耳からするとほんのわずかで、この違いの善し悪しを自分で本当に判断できるのか、実に心許ない。よい耳、そしてよいモニター環境をもって初めて、よい音楽が作成される土台ができるのだと、痛感する。私にそんなよい耳があるのか・・・
 内容的には、「ミックス・ダウンとマスタリングの意義」「基礎から学ぶコンプ練習帳」「EQがうまくなる=ミックスがうまくなる」「空間系エフェクト攻略レポート」「ひずみ系プラグインで手に入れるアナログの質感」「オートメーションであなたのミックスが変わる!」「音作りの可能性を広げる"プラグインの重ね技"」「2ミックスの仕上がりに驚くほど差が出るトータルEQ&コンプ活用術」「自分の曲を良い音でネットにアップ 自宅マスタリングの"ツボ"」といったような構成で、どれも役に立った。初心者の私にとって、しばらくはバイブルになりそうな予感がする。

2013年8月24日土曜日

『Heavenly Music』細野 晴臣

 2013年。
 いつものことではあるのだが、肩の力の抜けた自然体の細野晴臣がここにいる。基本、カヴァー集である。海外のものが多いが、日本語に訳している曲もある。例えば『Tip Toe Thru The Tulips with Me』(Nick Lucas)、『All La Glory』(THE BAND)なんかをほっこりと日本語で歌っている。いい。よくよく聴いてみると、英語詞のものよりも日本語詞のものの方がいいような気がする。カントリーチックな『When I Paint My Masterpiece』(Bob Dylan)、アンプラグドなジャジーな雰囲気の『ラムはお好き? part 2』(これは細野の作曲)。
 全体的に軽く流しているような感じもする今回のアルバムだが、曲解説の下には原発事故に絡んだコメントが多く書かれていて、この何事もないように流れてくる音楽が逆に怖い。最後の、場末のアンニュイな感じを醸し出している曲のタイトルは『Radio Activity』(Kraftwerk)、すなわち『放射能』である。そう考えると、『Heavenly Music』というこのアルバム名が、単に名曲を集めたという意味なのではなく、もっと違う意味を含んでいるような気がしてくる。考えすぎか。

2013年8月21日水曜日

『茉莉春毫』LUPICIA

 モーリーチュンハオ。中国緑茶ベースのジャスミンティー。「茉莉」はジャスミンのこと。
 今回はティーバッグのものを飲んでみた。ジャスミンの香りがとても上品で、優雅な感じがする。でも味はちょっと物足りない。おいしいことはおいしいのだが、もう少しきちんと渋みも甘みもあったほうがいい。ただし、たぶんこれはティーバッグのせいだと思う。急須に多めの茶葉を入れてしっかりと煎れれば、私好みの味になるような気がする。ただ薄いように感じるだけだから。
 このお茶の芳香は素敵です。

LUPICIA

2013年8月17日土曜日

『harukazeharmonics』田中彬博

 2008年。ソロギターアルバム。
 てっきり『knot』(私の記事)がファーストアルバムだと思っていたら、このアルバムが初めてのアルバムでした。『knot』はセカンドアルバムです。本作の方が明るくて若さがあふれている印象を持つのは、『Etude of The Sun/太陽のエチュード』、『Gakuen Tengoku/学園天国』といった作品が始めの方にあるからなのかもしれない。タッピングなどが前面に押し出されている曲もあるものの、実のところよく聴いてみると日本的なメロディがことのほか多く、意外と落ち着いたアルバムである。そういえば日本的なメロディを感じたのは、『knot』でもそうだった。これは彼の持ち味といえるかもしれない。大御所のような安定感があり、吉川忠英が述べているように、「熟せる、若き、アコギスト」という表現はいいところをついている。
 ただ、好きな曲は上に書いたような曲ではなくて、押尾コータローを思わせる『Silver Wings/君と夢の間の銀の翼』でした。結局私はこんな曲が好きみたい。田中にはちょっと申し訳ない気がする。

Shop at Pooh Cornerで見てみる

『日本人のための日本語文法入門』原沢 伊都夫

 講談社現代新書。
 おそらくはほとんどの日本人が、学校において国語文法(本書では学校文法といっている)を学んできた。でもこの本に書かれている日本語文法は、それとは異なるものだ。学校文法は古典文法の流れをくむもので、日本人のための文法であるのに対し、本書における日本語文法は例えば外国人など、日本語を学ぶ人のための文法なのだという。著者は決して学校文法を否定的にとらえているのではなく、ただ単に系統の違う文法なのだという言い方をしている。その外国人の学ぶ日本語文法の概略を、これまで学校文法しか学んでこなかった日本人のために解説したのが本書である。
 外国の人はこんな風に日本語を学んでいるのかと、ちょっと驚いた。学校での文法と全然違うではないか。よくいわれる「は」と「が」の違いがこんなにもわかりやすく説明されうるのだということは、今までまったく知らなかった。本書を読んで、この違いがようやく理解できた。そして、ふだん何気なく使っている「ローラさんは小泉さんに夫を殴られた」や「私は雨に降られた」という表現(間接受け身文)が欧米文にはない発想だということも初めて知った(間違ってるかもしれないけれど解説すると、「ローラさん」も「私」も主語に見えるけれど、直接的には「殴られ」てもいないし、「降られ」てもいない)。他にも、外国人学習者にとってわかりやすいところと間違えやすいところがいろいろと例示されていておもしろい。逆に間違えやすいところが、どうしてふつうの日本人が間違えないのかと不思議に思うほどだ。
 著者はこの日本語文法入門をとおして、日本語というものがいかに日本文化と関わり合っているのか、ということを教えてくれる。日本人の生活習慣、ものの考え方が日本語を規定したのか、それとも逆に日本語が日本人の生活習慣、ものの考え方を規定したのかはわからない。しかしそれらが密接に関わり合っている事実は厳としてあり、そしてそのことは日本語だけにいえることなのではなく、すべての言語に通ずることなのだ、ということも示唆しているように感じる。
 本書は「日本語文法」を学んだことのある人にとっては、もしかすると物足りなかったりもどかしかったりするのかもしれない。しかしそうでない日本人にとってはとても興味深く日本語の基本が書かれている本だと思う。私は本書を読んで、もっと日本語と丁寧に向き合って文章を書かなければならない、と感じた。

2013年8月11日日曜日

『グアテマラ・エル・インヘルト・ウノ』横井珈琲

 El Injerto I。グアテマラのウェウェテナンゴ地域リベルタッド地区にあるエル・インヘルト農園のコーヒー。
 実は店先でアイスコーヒー仕立てのものをほんのちょっと試飲させてもらっただけなんだけど、ものすごくおいしかった。南国のフルーツを思わせる香りが飲んだあとに口の中に拡がり、そのフルーティなさわやかさがとてもよかった。今度こういうドリンクを出してみようと思うんですが飲んでみませんか、と言われて試飲してみたとしたら、もしかするとこれがコーヒーだとは思わなかったかもしれない。なにかのフルーツを乾燥させてお茶にしてみたような感じ。今までのグアテマラのイメージをよい意味で壊された。横井珈琲では、「パパイヤ、オレンジ、ラズベリーの風味。ジャスミンの香り。豊かでなめらかな口当たり。ブラウンシュガーの甘さ」と紹介している。もし飲む機会があれば逃してはいけないと思う。
 でも私は買っていません。すごく高くて手が出ませんでした。

工房 横井珈琲』札幌市西区発寒9条11丁目2-11(地図

2013年8月10日土曜日

『春愁秋思』空気公団

 2011年。
 大貫妙子にちょっとユーミンが混ざった感じの声だな、と思った。空気公団を聴くのは初めてなのだ。
 穏やかだけれど、清涼感のある音楽。ときにからっと、ときにしっとりとはしているけれど、どれも肌にまとわりつくようないやな感じがしない。曲調もメロディも、耳の邪魔にならない歌詞も、全部がなんだか私に合わせて奏でてくれているかのような心地よさ。手作り感のあふれるジャケットまでいい。
 1997年結成というから、もうかなりの年月が経つのに、私の耳に入ったのはつい最近のことだった。どこだかのCDショップで薦められていたのが目に止まったのがきっかけだったような気もするが、CDを購入したのも随分前でしばらく聴かずにおいたままだったので、今となってはこのアルバムと出会ったきっかけはよく思い出せない。ただ「春愁秋思 空気公団」と手書き風の明朝体で書かれた、駅のプラットフォームにたたずむ3人のメンバーがさりげなく入り込んだイラストタッチのジャケットが、ここしばらくの間私の部屋のひとつの模様となって同居していたという事実だけが、私の中にはあった。そうやっていつの間にか空気のような存在となっていたその模様が奏でる音楽とこうして出会い、実際にこうやってその音楽が部屋に満たされると、それまで模様だけが部屋にあった時間までがなにか大切な意味を持っていたような気がするのだ。「空気公団」という名詞自体が、そんな私の気分を言い得て妙である。そして、エンディングでの「『なんとなく今日の為に』生きているかも」がいつまでも残響となって漂っている。

2013年8月2日金曜日

『MAIDEN VOYAGE』Salyu

 2010年。
 ときにハスキーなのに張りのある歌声。少しもたついた感じもするねっとりとした歌い方。その声が上質なメロディに乗ってやってくる。こう書くと、声に対してあまりよいイメージがわかないかもしれないけれど、実はこの声がとても好きだ。初めはそんなに好きではなかった。『landmark』、『TERMINAL』といったアルバムの頃だ。でもなにか耳に残る声で、ずっと聞いていないとまた聞きたくなる。そんな声だった。そしてこの処女航海という名のアルバムで、私の好みと彼女の声がぴったりとはまった。もう3年も前のアルバム。どうして今まで聴かないでいてしまったのか。そういえば日本女性のポップスを聴くのは随分と久しぶりのことだ。私は耳が悪いのか、歌詞がよく聞き取れない。だから日本人だろうと外国人だろうとあまり関係がないと、そう思っていた。でもそれは違う。このアルバムを聴いていてそう思った。歌詞全体はうまく聞き取れないけれど、各々のフレーズに寄り添った日本語歌詞のひとつひとつはなぜだかじんわりと心に染み込んでくる。意味はわからないままなのに。英語を聞くときとは違う感覚。不思議な安心感。この人の音楽とは戦う必要がないんだ。ただ受け入れていればいいんだ。そうやって身をゆだね、一週間かけ流していた一枚。