2013年5月26日日曜日

『TYPOGRAPHY 03』グラフィック社

 [タイポグラフィ]文字を楽しむデザインジャーナル。
 今回の特集は「デザイナーなら覚えておくべき厳選フォント350」。欧文書体300種類、和文書体50種類の見本が掲載されており、それぞれに簡単な説明が載っている。正直なところ中身が濃すぎて、ついていけない。スクリプト書体なら何とか区別がつくが、セリフ書体やサンセリフ書体だと、似たような書体がたくさんあって違いがよくわからない。特集のはじめに「欧文書体選びのポイント」があって、書体の違いはどこに注目するといいのかが書いてはいるのだが、まだまだ勉強不足です。
 連載では、セリフ書体を取り上げた「欧文書体のつくりかた」、たばこのMEVIUS(昔のMILD SEVEN)を取り上げた「これ、誰がデザインしたの?」がおもしろかった。
 特別記事「書体デザインの現場から」では、朝日新聞の書体「朝日書体」や、iPadの手書き文字をフォント化した「かなバンク」の「フィンガー」の作製過程が解説されており、興味深かった。
 文字自体が好きな人にはいい雑誌である。

2013年5月25日土曜日

『Reboot & Collabo.』押尾コータロー

 2013年。「Reboot」と「Collabo.」の2枚組アルバム。「もう一度、頭の中をリセットして、自分自身と向き合」ってギターを奏でた「Reboot」と、他のヴォーカリストたちとのコラボレーションを収めた「Collabo.」。
 「Reboot」では激しめの曲と静かな曲がほぼ交互に並んでいて、バランスは取れているけれどちょっと単調に感じた。でもどの曲も彼らしくて素敵な曲です。特に心惹かれた曲は『MISSION』。激しい曲でメロディらしきものもあまりないのだけれど、次々とテンポが変わって抑揚があり、構成がいいなと思った。他にはおとなしめの『キミトコト』、日曜の午後みたいな雰囲気の『Kiwi & Avocado』がよかった。
 「Collabo.」の方は正直なところあまり興味がなかったのだが、彼らしいギターの音も損なわれることなく、歌もしっかりと聴かせていて、意外とよかった。ただ、やっぱり歌ものはそのヴォーカリストの歌(曲そのものもそうだし、歌声も)が好きかどうかというのが利いてくるので、気に入った曲と押尾のギターの善し悪しはあんまり関係なくなる。たとえばギターでいえば『Shape Of My Heart』(with 渡辺美里)が好きだけど、曲自体は好きではないという感じで。曲としていいと思ったのは『瞳をとじて』(with LISA)、『IF YOU WANT』(with 氷室京介)、『Smile Blue』(with DEEN)あたり。

2013年5月18日土曜日

『森の雫』森彦

 もりのしずく。
 札幌の円山にある『森彦本店』限定のコーヒー豆、「マタリモカブレンド」。「モカマタリ」というのがふつうだと思っていたのに、どうしてひっくり返しちゃったんだろう。今はこういう表記が一般的になったんだろうか。もうひとつ、「中深煎り」と書いてあるけれど、豆は表面に油が出そうになるくらい深く煎ってあるので、ほかの店では深煎りのレベルだと思う。
 なんだか文句ばっかりつけているようだけれど、このコーヒーは大好きです。味に立体感があって、舌に残る心地よい苦味がそのまま鼻に抜けていって、首から上全体でコーヒーを味わっている感じ。かつて発寒にあった『バニティービーンズ』というカフェで出されていたコーヒーを思い出す。
 『バニティービーンズ』は深煎りのコーヒーばかりを出す店で、大好きな店だったのだが、店舗自体がある事故に巻き込まれてしまって閉店に追い込まれてしまった。その後もコーヒー豆だけは同じ札幌市内のカフェで焙煎を続けていたらしいのだが、私にとってはちょっと不便な場所にあるカフェだったので行くこともなく、そのうち私の記憶からも消えてしまって、今ではそのカフェの名前も場所も思い出せない。

 とここまで書いてみたものの、やっぱりその店が気になって調べてみた。するとどうもそのカフェは札幌地下鉄西11丁目駅近くにある『Basic』(札幌市中央区大通西10丁目 南大通ビル地下1階) というカフェらしい。今度行ってみようか。

『森彦』

2013年5月15日水曜日

『世界の美しい欧文活字見本帳』嘉瑞工房コレクション

 グラフィック社。
 どのページを開いても、素敵な欧文デザインが目に飛び込んでくる。これは嘉瑞工房という欧文活版印刷会社が所有している、様々な活字会社、鋳造会社から出されている書体の見本帳やパンフレットなどを取り上げた本だ。120以上の書体、約350もの見本帳類、古くは18世紀から現在まで。見応えがある。ただ文字が並んでいるだけなのではない。絵や写真との取り合わせ、文字の大きさや色などを変えた他の書体との組み合わせなど、それこそ美しい図版の数々がここにはある。活字会社がここぞというPRのために作ったものだから、信頼感もある。私は欧文に囲まれた生活をしていないから、どういう組版が美しいのか、どういう文字間、行間が美しいのかといったことが、直感としてはわからない。でもこの本を美の規準にするという手もありなんじゃないかという気がしたりする。世の中で色んなデザイン、組版があふれているけれど、少なくとも本書は平均以上だろうというあまり根拠のない確信。でも確からしい確信。
 本書は図版が大きい。ページの大部分を占めている。まず「見せる」ということを主眼にしているからだろう。そして、そのほんの隅っこにコンパクトながらきちっとしたコメントが添えられている。それが、一瞬見所がわからずに戸惑った視線を落ち着かせる役目を担っている。一度は全部目をとおしたあとも、しばらくするとまた、つい開いてしまう本。

2013年5月11日土曜日

『Pour Me a Drink』Edwina Hayes

 2010年。エドウィナ・ヘイズ。
 ギターと声だけのアルバム。基本的に彼女の弾き語りで、数曲だけリードギターが入る。エドウィナ・ヘイズはアイルランドで生まれイギリスで育ち、今はアメリカとイギリスを行ったり来たりしている。そんな彼女が歌うのはフォークソングというくくりの中の音楽なのだろうと思うが、それはアメリカン・フォークあるいはカントリーと、ブリティッシュ・フォークの両方が混ざったものなのだろう。でも正直な話、その区別は私にはわからない。ただ、日本のフォークとはやっぱり違っていて、私はそんな外国のフォークが好きだ。このアルバムの11曲のうち8曲が彼女の作った曲なのだが、どれもこれも昔から歌い継がれてきたような懐かしい感じがする。そして彼女の歌声も好きでたまらない。私の中では、ノラ・ジョーンズ(Norah Jones)だとかナタリー・マーチャント(Natalie Merchant)、チャン・シュエン(張懸)を聴くときと同じような気持ちよさを感じる。
 アルバムを通してみると、前半部での『Leave a Light On For You』、『Call Me』、『Pour Me a Drink』でゆったりとアルバムの雰囲気に浸っているところで、おもしろい曲が入る。トラディッショナルの『Froggie Went a Courting』だ。これはボブ・ディランによるカヴァーが個人的に好きなのだが、彼女はそれよりもさらっと歌っており、母親が子供に語って聞かせているような優しさを感じる。そしてそのあとに続く3曲がまたいい。『I Won't Say Your Name』と『Feels Like Home』と『Irish Waltz』だ。このうち『Feels Like Home』はカヴァーで、映画『私の中のあなた(My Sister's Keeper)』でも使われたランディ・ニューマン(Randy Newman)の曲なので、聴いたことのある人もいるかもしれない。
 エドウィナ・ヘイズ、いいです。『Good Things Happen Over Coffee』(2011年)もあわせてどうぞ。

2013年5月10日金曜日

『ロバート・ハインデル絵画展』札幌三越ギャラリー

 2013年5月7日~13日。Robert Heindel。
 会場でスーツ姿の女性に声をかけられた。話しぶりからすると、三越の人ではなく、この絵画展と直接関係のある人のようだった。
「前にもいらしたことがあるんですか」
「はい、生前から好きでした」
そういえば2005年に亡くなってから、もう8年になる。そんなに経つのか。

 30分くらいその女性と話をしながら観ていただろうか。ロバート・ハインデルと初めて対峙したときのことなどすっかり忘れていたが、話をするうちに少しずつ記憶が開けてきて、その場を去る頃にはおぼろげながらもそのときのことがよみがえっていた。それは15年ほど前、まだ札幌駅前に五番館西武というデパートが建っていたとき、そこの赤レンガホールでの展覧会でのことだった。両手を広げたよりもまだ大きい画面の中央に逆光のバレリーナが片脚をあげて立っている絵だったように思う。バレリーナの手から水平に伸びるバーと床に描かれた色とりどりの線が印象的だった。後方に数人のダンサーが佇んでいたような気もする。いや、もしかするとこれは私の思い違いか。何度か足を運んでいる彼の絵画展全体の印象が作り上げたただのイメージにすぎないのかもしれない。
 ロバート・ハインデルはダンサーを描き続けた画家で、「現代のドガ」とも称される。その画面からは、ダンサーという言葉から思い浮かべるのとはまた違った、静謐な雰囲気が漂う。彼の絵によく使われる青の印象、それはラピスラズリそのものなのだが、その青い色がフェルメールの描く少女の絵を連想させ、その静けさとも相まって意外なつながりを感じさせる。
 会場ではロバート・ハインデルの油彩のほか、生前に彼の監修によって作られたサイン入りのリトグラフ、没後に彼の奥さんによって作られたリトグラフ(サインの代わりにバラのエンボスマークがついているが、元の絵はもちろんロバート・ハインデルの手によるもの)など、30点ほどが展示、販売されていた。

札幌三越HP

2013年5月7日火曜日

ひと休み

 ひと月ほど前に東京に行った。渋谷でハチミツを買って、表参道でお香を買って、美術館にでも寄って、その後はゆっくりして帰ってこよう。そう思っていた。
 なのに東京に着いたときにはすでに疲れはてていて、結局何ひとつしてこなかった。飛行機はマイルで、宿は知り合いのところで、という感じだったから、この小旅行で使った現金はペットボトル2本分の300円だけだった。こんな安上がりな旅は、後にも先にもしたことがない。
 この絵は行きの新千歳空港で描いたものだから、そんなに疲れていたわけではなかったように思う。でももしかしたら、このときすでに、中央の男性のように暗い雰囲気をあたりに振りまいていたのかもしれない。
 つい最近、気が滅入るような経験をし、そういえば1ヶ月前もそうだった、と思った次第。

2013年5月5日日曜日

『Maiden Voyage』Herbie Hancock

 1965年の録音。日本では『処女航海』というタイトルで知られるアルバム。ハービー・ハンコック(piano)、フレディ・ハバード(Freddie Hubbard, trumpet)、ジョージ・コールマン(George Coleman, tenor sax)、ロン・カーター(Ron Carter, bass)、アンソニー・ウイリアムズ(Anthony Williams, drums)。
 初めての航海に出て、無事帰ってくるという物語仕立てになっている。『Maiden Voyage』では、ゆったりと一定のリズムを刻みつつ曲が流れ、航海に出る雰囲気がよく出ている。その後山あり谷ありで進み、最後には『Dolphin Dance』の美しいメロディで幕を閉じる。
 メンバーは他のアルバムでマイルス・デイヴィス(Miles Davis)と組んだりしている人ばかりで、マイルスの代わりにフレディ・ハバードが入ったという感のあるアルバムではある。私はフレディ・ハバードのことはよく知らないが、この作品での彼のトランペットは結構気に入っている。『The Eye of the Hurricane』や『Survival of the Fittest』での颯爽と走り抜けるトランペットの勢いがいい。後者での現代クラシックのようなピアノのフレーズも印象的で、この2曲は耳を引きつける。そしてそのすぐあとに続く『Dolphin Dance』では前曲までの激しさが嘘のように平和が訪れ、その落ち着いた雰囲気に癒やされる。
 アルバム全体の構成が見事で素敵なアルバム。

2013年5月4日土曜日

『いわさきちひろ展』北海道立近代美術館

 2013年4月27日~6月2日。
 好きな画家は?と聞かれたら、頭に浮かぶ数人の中に、いわさきちひろの名前は必ず入る。小さなときから私のまわりには当たり前のように彼女の絵があった。絵本はもちろん、小学校のときの国語の教科書の表紙もそうだったし(教育出版だったと思う)、家のちゃぶ台の上に無造作に置かれていた『子どものしあわせ』(草土文化)の表紙も彼女の手によるものだった(当時)。ぼかしやにじみを多用したやわらかくやさしい彼女の色彩は、まだ小さい私の心にもすーっとしみこんできて、気がつくと絵の世界に自然と入り込んでいった。
 そういえば、いわさきちひろの絵が好きだなんてことを話した記憶は一度もないのに、父がおみやげに月めくりのカレンダーを買ってきてくれたことがあった。それはいわさきちひろがヨーロッパに旅行したときのスケッチをカレンダーにしたもので、その中の『オーデンセ アンデルセンの家』が今回の展覧会にも展示されていて、懐かしい気持ちでいっぱいになった。そんな私が親の手を離れ、初めて行った東京観光の目的のひとつが、下石神井にある『ちひろ美術館』だったことは、自然な流れだったのかもしれない。
 この『いわさきちひろ展』では、『ちひろ美術館』所蔵の130点あまりの作品を展示している。初期の頃から晩年までの彼女の作品の数々に触れていると、思いがけず遠い日の想い出が浮かんできて、それはまるで、いつかきた自分の道にもういちど足を踏み入れてしまったかのようだった。

北海道立近代美術館HP

『No.13(2013)』可否茶館

 可否茶館では、たまに番号のついたコーヒー豆を売ることがある。昔からよく見るのは『No.15』だが、特有のクセがあるので私は苦手で、ほとんど買ったことがない。ほかに『No.9』(私の記事)というのもあった。これは苦めのコーヒーだが、残念ながらあまり好きではなかった。そして今回、初めて『No.13』という豆を店頭で見たので購入してみた。
 店頭で試飲したときはやや酸味を感じたのだが、実際に家で飲んでみると酸味はほとんどない。ほんの少しの苦味はあるけれど、わりと中性的な味だ。飲みやすいことは飲みやすいけれど、コクや甘みなどの深みがなく淡泊で、ちょっと物足りない。残念ながら、このコーヒー単独ではそれほどおいしくはない。チョコレートなどのお菓子と一緒に飲むといいのだと思う。私自身このコーヒーを淹れたときは、ついお菓子を探してしまう。

可否茶館HP

2013年5月3日金曜日

『確率・統計でわかる「金融リスク」のからくり』吉本 佳生

 講談社ブルーバックス。副題『「想定外の損失」をどう避けるか』。
 株や外国為替などのリスクを、本書付属のサイコロを転がすことによって実感してもらおう、という趣旨で書かれている。でも実際にサイコロを転がすことによって得られる確率(リスク)も掲載されているので、その数字だけでリスク評価を実感できる人は別にサイコロでシミュレーションしなくてもいいんだと思う。
 レバレッジを利かせたFX取引は高リスク。デイトレードは高リスク。長期運用は低リスク。世間に転がるこんな風説は全部嘘っぱちだと著者はいう。シミュレーションしてみると、こんな結果にはならないという。実際本書で述べられている方法でシミュレーションしてみるとこれらの風説が正しいとはいえないことがよくわかる。ただ、著者のいうリスクは単位期間における資産価値の変動を見ているのではなく、実際の運用期間によって得られる資産価値の変動の絶対値でリスクを比較していることには注意しなければならない。1日の株価の変動よりも1年の株価の変動の方が大きいのは当たり前ですね。
 本書で主にリスク指標として取り上げられているのは、「ボラティリティ」というものだ。これは金融の世界では、株価や円相場などの変化率の標準偏差のことを指す。つまり株などの上がり下がりの度合いのばらつきの指標。ボラティリティが大きいと上がったり下がったりしやすくて(リスクが大きい)、ボラティリティが小さいと上がり下がりも小さい(リスクが小さい)。これを考慮に入れた上でサイコロを転がすと、例えば1ヶ月後に日経平均連動型投信がどう変動するかというのが実感することができる。株価や円相場だけではなく、オプションを使った仕組み債のリスクをシミュレートしたりもできるようになっている。そうやって見ていくと、世の中にはハイリスク・ハイリターンという商品だけじゃなく、ハイリスク・マイナスリターンなんて商品もあるんだということを教えられる。
 実は本書では、上げ相場や下げ相場の見方、ローソク足の見方なんていう類いのことはまったく取り上げていない。純粋に確率、統計的な処理のみでリスク・シミュレーションをしている。それなのにここまでのリスク評価ができるんだということには正直驚いた。むしろ確率、統計的な処理だけで考えるからリスク評価ができているといえないこともないが。本書で述べられている前提に沿えば、確かに著者のいうことは正しい。だから私はこの本の内容が納得できた。でも一般に思われているような常識とは異なる結論になっている部分もある。もしかするとこれは、本書の前提が実経済とは違うからなのかもしれない。その評価は私にはできない。そうではあるけれど、本書のようなリスクの考え方があるということは知っておいて損はないのだと思う。