2013年12月30日月曜日

『7日間でマスターする配色基礎講座』

 視覚デザイン研究所編。
 「DESIGN BEGINNER SERIES」とあるとおり、初心者向けの配色講座である。難しい専門用語は出てこない。とはいっても、私にとって理解の難しい単語は当然ある。例えば「トーン」。「トーン」とは「三属性(色相、明度、彩度)のうちの明度と彩度の交差した部分」のことであるが、ゆっくり考えると頭でわかったような気になるとはいえ、直観的には理解できない。「五役色(主役色、脇役色、支配色、融合色、アクセント色)」の違いも、すんなりとは頭に入ってこなかった。「十役色」というのもあるようで、そうなると私にはまったく手の出ないものになったであろう。
 本の内容とはあまり関係ないことから入ってしまった。この本では、モノ(色)を引き立てたり馴染ませたりするには具体的にどんな配色にすればいいか、そしてそれを発展させて、特定のイメージを伝えるためにはどんな配色を心がければいいのかということについて、書かれている。実際の広告、カタログ、写真などの豊富な実例をもとに、違う配色だったときとのパターンと本物のイメージを比べて解説してくれており、とてもわかりやすい。年齢や性差、温度による配色の違い、カジュアルさ、エレガントさ、自然らしさを表すにはどうすればいいのかなど、実例を見せられると、なるほどと頷いてしまう。特定のイメージをきちんと他人に伝えるためには、適当な色遣いをしていては駄目なんだということがよくわかる。
 ただ、それを実際に自分が表現する立場になったときにうまく使いこなせるかどうかは別である。いろいろと試行錯誤しながら自分でも手を動かしてみる必要はあるだろう。そのための基礎体力作りとして、この本は役に立つ。「色は無言のうちにメッセージを伝えるのであなどれない」との言葉が心に残る。

『グァテマラ・サキシム2013』横井珈琲

 Guatemala Sacixm。サキシムは生産者組合の名前。
 酸味も苦味も少なくて、舌を包み込む感じがとてもまろやか。チョコやダークチェリーのような重厚感を持ちながらも、飲みやすくてバランスのとれたコーヒーだと思う。口の中のコーヒーが全部喉を通り終わったあとに感じる甘い余韻がいいです。

工房 横井珈琲』札幌市西区発寒9条11丁目2-11(地図

2013年12月27日金曜日

『直感』ペッテリ・サリオラ

 2013年。『Through the Eyes of Others』Petteri Sariola。
 フィンランド出身のペッテリ・サリオラによるサード・アルバムは、全作カヴァーである。半数弱がギター・インストで、残りが歌ものになっている。
 実は前作『PHASES』(私の記事)を聴いたとき、もうペッテリ・サリオラはいいかな、と思っていた。そんな私がこのアルバムを買うことになったきっかけは、このアルバムにも入っているワム(Wham!)のカヴァー『Wake Me Up Before You Go-Go』をYouTube(こちら)で観たことによる(アンディ・マッキー(Andy McKee)がFacebookで紹介していた)。これがすごくいいのだ。パーカッシヴなスラム奏法を駆使して鮮やかにアレンジしている。途中ちょっとメロディを変えているところもまたいい。これを聴いて、もっと聴きたいと思った。
 それで購入に至ったわけだが、実際にこのアルバムをスピーカーから流してみると、いろいろと突っ込みどころが満載で戸惑った。スラム奏法と全体を覆うグルーヴ感は共通している。でも個々の楽曲の選曲、アレンジがよくわからないものが少々ある。
 まずは気に入ったものから紹介すると、上記の『Wake Me Up Before You Go-Go』のほか、ノリのいいU2の『終りなき旅』(I Still Haven't Found What I'm Looking For)、きれいで洗練した感じのColdplayの『Fix You』、グルーヴィーなOasisの『Wonderwall』、エレキでガンガン飛ばして歌も入るCharの『Smoky』、ひょうきんな感じもするThe Commodoresの『Easy』、デジタルロック風なMuddy Watersの『Hoochie Coochie Man』あたり。
 ちょっと評価しにくいのもいくつかあって、『ルパン三世のテーマ'78』くらいまではアルバムの雰囲気をあまり壊していないと思うけれど、『もののけ姫』になるとあまり馴染んでいない気がする(アレンジは好きなんですが)。The Beatlesの『Blackbird』、押尾コータローの『翼~you are the HERO~』、Michael Hedgesの『Bensusan』は、あまりにも原曲に寄り添いすぎて、ここだけ違うアーティストのアルバムみたいになっている。ギターはとてもうまいのですが。あと、電子音楽的な『ボレロ』もあまり好きになれなかった。
 全体的な印象は「ごった煮」なのである。それぞれの楽曲はいいなと思えるものもあるのに、アルバム全体でみるとちょっとばらばらな感じがする。まあ、「飽きさせない」という言い方もできるのですが。YouTubeは観ておいて損はないと思う。

2013年12月23日月曜日

『研究発表のためのスライドデザイン』宮野 公樹

 講談社ブルーバックス。副題『「わかりやすいスライド」作りのルール』。
 本書の内容は副題にあるとおりで、「見た瞬間に発表者の伝えたいことを理解でき」、「メッセージが自然と伝わってしまう」スライド作りを目指している。そのために必要なものとして、聴衆にわかりやすく伝えるための「考え方(姿勢)」と、スライドをわかりやすく見せるためのデザイン的な「技術」の2つを教えてくれる。図表がたくさん載っていて、駄目なパターン、よいパターンの比較も豊富で、この本自体がとてもわかりやすい。すごく目新しいものは特にないけれど、ついやってしまいがちな駄目パターンを見せられてハッとする。この本に載っているような「ルール」にきちんとしたがったスライドというのは意外と少ないかもしれない。私の専門周辺の人たちに限ったことかもしれないけれど。本書に載っているようなスライドばかりだったら、どんなにか聴衆の負担が減ることだろう。
 ただ残念な点を挙げるとすれば、アニメーションや動画をどう考えるかということがまったく触れられていないことだ。 この2つはうまく使いこなす自信がないので私はほとんど使わないのだけれど、これらを使ってわかりやすいスライドをつくるコツがあるのだとすれば、ちょっと手を出してみたい機能だったからだ。
 あとひとつ、ネット上のレビューでは「色覚異常者に対する配慮がなされていない」との批判があった。 このことについてあまり考えたことがなかったが、結構大事なことかもしれない。

2013年12月22日日曜日

『12:34』Calum Graham & Don Ross

 2013年。カラム・グレアムとドン・ロスによるデュオギターアルバム。
 かっこいい。のびのびとした二人のギターがうまい具合に絡み合い、開放感あふれるアルバムに仕上がっている。ちょっとしたズレが時折混じるけれど、それがまたライブを聴いているみたいな感じになっていていい。底抜けに明るい曲というのはあまりなくて、少し哀愁を感じさせる陰のある雰囲気を漂わせていたりもする。陰のあるといってもノリのいい曲がほとんどだけれど、『The Channel』のようなちょっと聴かせる曲もある。表題曲『12:34』の動画がYouTubeにアップされている(こちら)。是非聞いてみてほしい(最初に広告が入ります)。

2013年12月15日日曜日

『All I Want for Christmas』Tommy Emmanuel

 2013年。トミー・エマニュエル。もともとは2011年に出された同名の『All I Want for Christmas』(こちら)の日本盤。2011年の方が輸入盤だから安い。基本的にはギターによるクリスマスアルバム。でもトミー・エマニュエルによるギターのほか、ピアノやストリングスのサポートも交じっている。
 前半は明るい感じのクリスマスソングが多い。ご機嫌な『Rudolph The Red-Nosed Reindeer』に始まり、『White Christmas』、『Jingle Bells』と続く。『Winter Wonderland』、『Santa Claus Is Comin' To Town』もそんな感じだ。それに対して後半は落ち着いてしっとりとした曲が多くなる。私は後半の方が好きですね。『The Magic Of Christmas Time』、『One Christmas Night』、『I'll Be Home For Christmas』、『Silent Night』という感じ。原盤はそのあと壮大な『How Great Thou Art』で締めているんだけど、日本盤だけに入っているボーナストラック『Softly And Tenderly』もいいです。
 派手すぎず、暗すぎず、バランスの取れたアルバムだと思う。

2013年12月13日金曜日

『構図がわかれば絵画がわかる』布施 英利

 光文社新書。
 構図というのは、ある枠の中、それは絵画であったり写真であったりするのだが、その中で、どういう風にものを配置するか、線を配置するか、そんなことを示したものだとこれまで思っていた。しかしどうもそういう私の理解は正しくないようだ。この本は構図のことをこのようには捉えていない。この本には黄金比率も3分割法も出てこない。では構図とはなんなのか。著者は、構図にあるものはたったひとつのことだと言い、「構図は、宇宙を要約したものです。」と言い切る。
 実際のところ、私はこの本を読んで構図とはなんなのかわからなくなってしまった。点や線、形がつくる構図というのはわかる。遠近法のこともわかる。光や色がつくる構図も、何とか食らいついていくことができる。でも、「時間の構図」、「空間の構図」と言われてもよくわからない。「人体の形態や構造の中にある『構図』」というときの構図の意味もよくわからない。なぜ仏陀の生涯についての解説がこの本に必要なのかもわからない。ましてや「構図は、宇宙を要約したものです。」と言われてもまったくピンとこない。私はこの本を読んでも構図のことがわからなかった。つまりその先にある絵画もわからないということだろうか。
 いや、この本を読むと絵画のことはわかったような気になるのだ。この本には絵画全般についてのことが書いてある。私からするとそれは構図の範疇には入らないのだが、確かにそれら全体のことを「構図」と呼ぶのなら、この本のタイトル『構図がわかれば絵画がわかる』というのもある程度正しいのかもしれない。ちょっとややこしいけれど(私の書き方がややこしいのですね、きっと)。
 私が「構図」という言葉に引っ張られなければ、この本はもっとわかりやすく、おもしろいものだったのかもしれないということである。例えば最終章は「美術解剖学」についての解説だったが、非常にわかりやすく、興味深いものだった。著者の専門が美術解剖学であることと無縁ではあるまい。
 なんだかいろいろと書いてしまったが、(構図という言葉を無視して、)純粋に本書を「絵画入門」であると捉えるならば、この本は絵画へのいい案内役となってくれることだろう。

2013年12月7日土曜日

『Close-Up Vol 4, Songs of Family』Suzanne Vega

 2011年。
 1985年のデビュー以来25年を迎えて、スザンヌ・ヴェガがこれまでの作品をもう一度見直そうとして企画した「Close-Up」シリーズの4枚のア ルバムのうちの最終盤。歌とアコースティックギターの音を中心に据えている。
 総じて好きな曲が多いが、どうして家族がテーマなのにこんなに愁いに満ちているんだろうと思う。そんなところがまた好きな理由でもあるのだが、ポップで明るい感じの曲は弟を歌った『Brother Mine』くらいである。そんなふうに淡々とちょっと離れた場所から家族を見つめているような曲調ではあるが、その実、歌詞の内容は彼女と彼女の家族とのつながりを強く感じさせる、とても彼女目線の曲だったりする。強く歌い上げるのではなく、あくまで冷静を装いながらも本音はきちんと伝えるみたいな。
 『Rosemary』、『Ludlow Street』、『Pilgrimage』なんかがいいなと思う。けれど断トツに好きなのは『The Silver Lady』だった。フォーキーな感じでエドウィナ・ヘイズ(Edwina Hayes)を思わせる雰囲気を持っている。歌詞はちょっと哲学的でよくわからないのだが…。
 今回シリーズ4枚を聴いてみて特に好きだったのは、『Vol. 1-Close-Up: Love Songs』と、この『Vol. 4-Close Up: Songs of Family』 の2枚かな。でも全部いいと思う。スザンヌ・ヴェガが好きな人だったら。

2013年12月3日火曜日

『TYPOGRAPHY 04』グラフィック社

 [タイポグラフィ]文字を楽しむデザインジャーナル。
 今回の特集は「手書き文字の魅力」。レタリングやカリグラフィー、看板文字から相撲文字など、手で書いた文字に注目している。ペットボトルのお茶飲料の字なんていうのもある。街にあふれる手書き文字の写真も、世界中からたくさん集められている。和文、欧文の手書きフォントについても多くのページを割いている。個人的には、フォント作成ソフト(TTEdit、OTEdit、Fontographer)を使って実際に手書きフォントを作ってしまうコーナーがおもしろかった。拗音や句読点の縦書きと横書きでの位置の違いをきちんと説明している本は、私にとってはこれが初めてだった。
 特集のほかには、タイポグラフィを使ったAudiのCM(こちら) や、アメリカのホイットニー美術館で使われている「W」のデザイン、文字が変形して動物のフィギュアになる「超変換!!もじバケる」というおもちゃの紹介などが楽しい。

2013年12月1日日曜日

『Close-Up Vol 3, States of Being』Suzanne Vega

 2011年。
 1985年のデビュー以来25年を迎えて、スザンヌ・ヴェガがこれまでの作品をもう一度見直そうとして企画した「Close-Up」シリーズの4枚のア ルバムのうちの第3弾。基本はアコースティックな感じで演奏し直しているが、Vol. 1、Vol. 2、Vol. 3と進むにつれて弾き語りっぽいのは少なくなってきている。本作ではエレクトリックな音を使ったり、結構作り込んでいる。
 タイトル『States of Being』は直訳すれば「存在の状態」といったところだが、スザンヌによると「Mental Health」(精神衛生)の意味合いなのだという。重くのしかかってくるような曲調のものが多いのは、彼女の精神がそんな感じになっているということなのだろうか。
 今の私には重いのはつらい。だから好きな曲も淡々としたシンプルなものになってしまう(歌詞の内容はともかく)。『Cracking』、『Penitent』、『Pornographer's Dream』のような。ほかにはノリのいい『Last Years Troubles』も悪くない。

2013年11月29日金曜日

『小林秀雄の恵み』橋本 治

 新潮文庫。
 小林秀雄の『本居宣長』を読んだ著者は感動し、「小林秀雄はいい人だ」と思った。そしてそれが彼にとっての「恵み」であった。『小林秀雄の恵み』とはつまりそういうことなのだが、実際読んでみるとその「恵み」が何であるのか実にわかりにくい。実のところ本書には、直接的にはあまりそういうことは書いていなくて、小林秀雄の『本居宣長』の難解さはこういうところにあるんじゃないかとか、小林秀雄は本居宣長のことをこういう理解の仕方をしているんだけれどそれはちょっと違うんじゃないかだとか、かなり批判めいた言葉をちりばめている。本書はタイトルズバリの本ではないのだ。読者は、著者が『本居宣長』を読み進めながら考えた色んなことを、いわば同時進行的に感じ取ることができるようになっていて、そうすることで著者にとっての「小林秀雄の恵み」が読者にも実感できるようになる。そう言いたいところだが、それを実感するのは実に難しい。だって読者は橋本治ではないのだから。
 著者は本書の目的を、「小林秀雄がいて、小林秀雄が読まれた時代の日本人の思考の形を知ること」とも書いている。本書は橋本治にとっての『本居宣長』の読み方を書いているわけでもあるが、そうだとしたらちょっと変わった読み方であるように思う。その時代の「日本人の思考の形を知る」ために橋本がしたことは、彼らが受け入れていた「小林秀雄」の著作『本居宣長』を読むということなのである。ちょっと回りくどくはないか。
 こうやって書くと、私はこの本にいちゃもんをつけているように思われるかもしれないが、実のところ本書はとても刺激的で、めちゃくちゃおもしろい。「小林秀雄の恵み」が何なのかはよくわからない。でもこの本を読むと「橋本治の恵み」なら感じる。だとすれば橋本治にとっての「小林秀雄の恵み」とは、私にとっての「橋本治の恵み」をシフトすればいいだけなのではないのか。
 ここまで私は本書の内容をほとんど述べてこなかった。本書の肝は、著者が『本居宣長』を読んで感じた思考の流れであるように感じるので、読者も実際に読みながらその流れに身を任せてしまえばいいと思うのだ。本居宣長は医者で学者で古事記を研究していて歌も詠む。墓は遺言にしたがって公的な墓と私的な墓がある。私的な墓には桜が植わってあって…。そんなことをここに書いてもしょうがない。実際に本書を手にとって橋本治の思考の流れにしたがっていると、なんだかわくわくしてくる。ダイナミックな日本の歴史の面白さすら感じられる。そして最後には、「小林秀雄の恵み」をほんのちょっぴり分けてもらえる。そんな本である。

2013年11月24日日曜日

『17th アニバーサリーブレンド/マロン』横井珈琲

 少しフルーティーですっきりとした酸味を感じる。口の中に残る余韻ははじめ果実っぽいのに、時間がたつにつれてチョコレートのような風味がしてくる。やわらかい甘みもある。コスタリカ、グァテマラ、ケニア、エルサルバドルのブレンドだそうである。飲みやすいのにちょっと高級感も感じさせて、ちょっぴり贅沢な時間を過ごさせてくれる。
 同じく『17th アニバーサリーブレンド』として『ポム』もラインナップされており、試飲してみた感想としては、こちらは酸味が結構きつい印象。

工房 横井珈琲』札幌市西区発寒9条11丁目2-11(地図

『日本シェーグレン白書2012』日本シェーグレン症候群患者の会

 発行は「NPO法人シェーグレンの会」。副題『シェーグレン患者の実態、日本シェーグレン患者会員の横顔、調査報告書2012年』。
 シェーグレン症候群は目や口の乾燥、疲労感などを主訴とした自己免疫疾患であるが、全身疾患であり、患者によって実にいろいろな症状が出る病気である。
 この白書は、2011年に行われた日本シェーグレン症候群患者の会会員を対象としたアンケート結果をまとめたものである。患者に対するアンケートはこれまでも何回か行われてきたとのことであるが、刊行物としてまとまったのはこれが最初だそうである。アンケート回答者の実に96%が40歳代以上であり、女性の割合は98%を占める。
 アンケートの内容は、受けている医療・診療の状況、治験について、日常生活への影響、社会保障制度・経済について、不安やつらいこと、医師および社会への要望のほか、自由記載となっている。
 治療に一番期待することは、目や口の乾燥症状がなくなること、倦怠感が取れることが上位を占めている。治療以外では、医師やまわりの人、社会の理解がもっと進んで欲しいとの意見が多いような印象を受けた。患者は一見健康そうに見えるため、なかなか理解が進まないものと思われる。医師ですら理解が足りないと見なしていることは特筆すべきことである。また、特定疾患などの社会保障制度の充実を求める意見も多い。日常生活への影響は85%の人が「あった」と答え、「生活が不便」のほか、「家事ができない」、「経済的に苦しい」があとに続いた。趣味娯楽の制限については、「外出ができない」「交友関係が少なくなった」を挙げる人が多い。職業生活への影響も、70%の人が「あった」と答えている。
 自由記載では、個々人の病状、苦しみ、要望などが切実に語られている。その内容はあまりに多岐にわたっているのでここでは詳細を省くが、ある意味、ほかのアンケート結果よりも心に訴えるものがある。早く病気の理解、そして病気の解明が行われることを望んでやまない。
 この白書の発行はシェーグレンの会のホームページでも告知されているが、一般の方の入手方法は私にはわからなかった。入手希望の人は、ホームページに記載されているメールアドレス宛に問い合わせてみてはどうだろう。

『リキテックス大全』

 美術出版社。副題『アクリル絵具入門者から、スキルアップしたい人まで』。
 アクリル絵具の代名詞的存在であるリキテックス。そのリキテックスの使い方を紹介する本である。「活用編」と「技法編」の2部構成となっている。
 「活用編」では、村上隆、空山基、千住博といった第一線で活躍する13人のトップアーティストの創作術を紹介している。絵を描くときに、技術を完全に学習することは最低限必要なことだという人もいれば、いや、感性の赴くままに描けばいいという人まで、様々な考え方をする人がいておもしろい。作品も平面的なものから立体造形物まで幅広い。個人的には、網中いづる、松本陽子、津上みゆきの作品が好きだった(なぜかすべて女性というのは、単なる偶然であろう)。
 後半は「技法編」となっているものの、実際には技法を説明しているというよりは、リキテックスというものがどういうものか、絵を描くには何が必要かということを解説していると考えた方がいい。リキテックス絵具の特徴、カラー、絵具チューブのラベルの見方、色の作り方、絵を描く前の下準備としてのジェッソの種類と使い方、盛り上げたり薄くしたりするメディウムの紹介、テクスチャジェルの特徴と使い方、筆やパレットの話、どんなもの(紙とかコンクリートとか)に描けるのかという話。
 私はアクリル絵具を使ったことがなかったので、アクリル絵具が海のものとも山のものともつかなかった。どこから手をつけていいのかすらわからなかった。そんな私でも、この本を読んでアクリル絵具の全体像が見えてきた。まず何を購入すればいいのか、そんな初歩的なところからわかった。どんな絵を描けるのかについてのイメージは「活用編」で十分に広がった。そのうちいろいろと試してみよう。

2013年11月23日土曜日

『Forward』Erik Mongrain

 2012年。エリック・モングレインによる3枚目のソロギターアルバム。
 タッピングやパーカッシブな音を絡めながらのアルバム最初の曲『Fearless』から、なんだか懐かしい感じがする。とてもマイケル・ヘッジス(Michael Hedges)的な感じがするのだ。もともと彼はヘッジス・フォロワーとして知られていたわけだけれど、初期の頃の超絶技巧的な演奏は少なくて、ゆったりとして陰のある雰囲気を醸し出している曲が多いところが、前よりもいっそうヘッジスっぽいなと感じさせるのだ。そう思いながら聴いていると、なんとこのアルバムの最後を締める曲がヘッジスの『The Happy Couple』のカヴァーである。原曲よりもキーは落としてあり、より抑制的な感じはするが、ほぼ完コピに近い。彼自身もじゅうぶんにヘッジスを意識してこのアルバムを作っているということだ。とはいえただ単に真似をしているというわけではなく、きちんと彼の中で昇華して新たな音楽を作り出しているのはもちろんである。メロディらしいメロディがないにもかかわらず、まとまったひとつの曲として感じさせるところがすごいと思う。アルバム全体から受ける落ち着いた印象が、今の私の心の空虚な部分を埋めてくれる感じがして、とても好きなアルバムである。

『プー横丁』で見てみる

2013年11月12日火曜日

『STUDIO ZOO』Newton Faulkner

 2013年。ニュートン・フォークナー。
 彼にとっては8枚目のアルバムらしいが、私は2008年の『Hand Built By Robots』から聴き始めたので、私にとっては4枚目のアルバムとなる。過去3枚のアルバムに比べると、キャッチーでかっこいい、といった印象は薄れ、おとなしめのアルバムだと思う。これまでのイメージどおりの曲は『Indecisive』、『Losing Ground』くらいだろうか。全体的にきれいな曲だなと感じる作品が多い。ギターの音もメロディも。そして、スピーカーから出てくる音がとても立体的で、空間上に絶妙に配置されたギターの音色と彼の声が頭の中に広がっていく感じが、実に心地よい。それらの音がない部分を占める空間もまた、音楽を形づくっているんだということを強く感じる。バラード調の『Don't Make Me Go There』、さわやかさのある『Waiting On You』、ささやくように静かに歌い上げる『Innocent』など、派手さはないけれどいい曲が揃っている。

2013年11月10日日曜日

『Orange & Ginger』LUPICIA

 オレンジ&ジンジャー。ドライジンジャーをブレンドしたオレンジティー。
 今までオレンジと生姜という組み合わせを飲んだことはなかったけれど、レモンと生姜はよくあるのだから、こういうのもあっておかしくないんだと、パッケージを見て思った。口にしてみると、かなり甘ったるいジンジャーの香りが鼻をつく。苦手かもしれない。でも実際に飲んでみると全然甘くない。逆に淡泊すぎて拍子抜けする。オレンジの味もそんなにはしない。香りの強さと味との間にはギャップがある。香りは苦手だけれど、味はまあまあ好きかもしれない。体が温まる。

LUPICIA

2013年11月9日土曜日

リベンジ『少女(?)Aの肖像』

 以前描いた『少女(?)Aの肖像』(こちら)を描き直してみた。少女になるように心がけてはみたものの、まるで別人です。どちらの方がモデルに似ているかはこの際おいておくことにして、絵としてはこっちの方がいいのかな。
 ただ、この一連の習作で試みた、鉛筆でかなり描き込んでから水彩で色をつけるという方法が、私に合っているかどうかは不明。ふつう水彩を描くときは下書きはさらっと形を取るだけにするものなんですよね。

『抹茶きらら玄米茶』LUPICIA

 北海道のお米「きらら397」を使った玄米茶に、抹茶を加えたもの。
 抹茶くささが全然なくて、ごく自然な感じの玄米茶。お茶と玄米のバランスがよくて、まろやかでおいしい。香りもいい。おそらく「きらら397」を使わなくても同じような味になるんだと思うけれど、このお米を使うことで名前が華やかになりますね。とても気に入りました。

LUPICIA

2013年11月4日月曜日

『LJ Plays The Beatles Vol. 2』Laurence Juber

 2010年。ローレンス・ジュバー。ポール・マッカートニー(Paul McCartney)率いるWINGSに一時期参加していたギタリスト、ローレンス・ジュバーのソロギターによるビートルズ作品カヴァー集第2弾。
 ギターの音はきれいだし、うまいし、ビートルズの雰囲気もそのまま。でもちょっと物足りない。元歌に寄り添いすぎて、縮こまっている感じがする。もっとはじけちゃってもいいのにと思う。可もなく不可もなしという感じ。第1弾『Lj Plays the Beatles!』の方が好きです。ただし、私が個人的にこのアルバムに期待しすぎていて、聴いてみると意外と普通で逆にがっかりしてしまったというだけの話で、第1弾と第2弾の間にそれほど出来具合の差はないのかもしれない。こっちの方が残念感が強かったというだけの話で。
 ビートルズの雰囲気をギターソロでそのまま聴きたいという人にはいいと思う。リフやオブリガートの入れ方も原曲そのままという感じです。このアルバムの中で比較的好きなアレンジだったのは、『Drive My Car』、『Please Please Me』、『All I've Got To Do』、『Michelle』といったところでしょうか。

『グァテマラ・ラ・ブレア2013』横井珈琲

 Guatemala La Brea。
 主張しすぎない程度の少しの酸味があり、チョコミントのようなさわやかな感じのチョコレートを口にしたような感覚。果物のプラムみたいな雰囲気もある。さわやかな感じではあるものの、すっきりとした酸味が立っているわけではなく、ちょっぴりとした雑味があって全体的にやわらかい印象となっている。飲んだあとに鼻に抜ける香りが心地よい。昨年の記事(こちら)とは印象が違いますね。

工房 横井珈琲』札幌市西区発寒9条11丁目2-11(地図

2013年10月27日日曜日

『The beginning』絢香

 2012年。
 2年間の活動休止期間を経ての復帰アルバム。静かなピアノの旋律から始まる『はじまりのとき』は、まさに彼女にとっての「はじまり」でもある。それは4曲目の表題曲『The beginning』につながり、それがそのままアルバムタイトルにもなっている。「はじまり」とはつまり、このアルバムに込めた彼女の思いそのものなのだろう。すべての曲の作詞作曲に彼女自身が関わっており、このアルバム自体が自身による初プロデュース作品でもある。
 全体的にバランスがよく、ピアノの音と彼女の声との絡み合いが印象的な作品が多かった。歌い方も以前よりもずっとすっきりとしていて、無理のあるねっとり感がなくなり、聴きやすく感じた。アルバムの中ほどにある『繋がる心』だけがなんだか軽い感じで浮いているような気がしたが、前半と後半を区切る小休止なのだと考えると、これはこれでいいのかもしれない。ちょっとノリのいいポップな曲も、静かに聴かせる歌も、総じて好きな曲が多く、もうすでにしてこのアルバムは私のお気に入りの一枚である。

『少女(?)Aの肖像』

 久しぶりに人物画を描いてみた。でもこれは少女ではなくて大人の顔立ちですね。おかしいなあ。もっと若い人をモデルにしたはずなのに。

2013年10月24日木曜日

OS X MavericksとWindows 8.1に游ゴシックと游明朝が標準搭載

 こんな記事を見つけた。

OS X MavericksとWindows 8.1にプロフェッショナル用書体の游ゴシック体と游明朝体が標準搭載

 游ゴシック体と游明朝体は、字游工房が販売している書体。
 なんか洗練されている感じがして以前から好きだった書体で、いつか買おうと思っていた。そうしたら、なんとWindows 8.1に標準搭載されているというではないか。Windows 8.1にはつい2日前にアップグレードしたばかりだ。Wordでフォントを確認したら、本当に入っている。うれしい!
 Macにはもともとほかにも好きな書体がいっぱい標準搭載されていたけれど、游書体も搭載されるとは。Mac使いの友人にもお伝えしたい。

 字游工房HP

2013年10月17日木曜日

『西村 和 作陶展』2013札幌三越ギャラリー

 にしむらなぎ。2013年10月15~21日。札幌三越本館9階三越ギャラリー。
 ここ数年この作家の作陶展にはなるべく顔を出すようにしているが、いつも新しい試みが見られる。今回なんといっても目を引くのは、赤と白の組み合わせが印象的な陶漆白釉の器たちである(西村のブログ参照)。陶漆は陶胎漆器のことで(ただし彼女は自分の作品を陶胎漆器とは呼ばない。以前聞いた話だと、おこがましいそうだ。私の聞き間違いかもしれないけれど)、陶器の上に漆を塗って仕上げた器である。今回の作品はこの陶漆に白い釉薬を合わせたものだ。上で張ったリンク先の写真はフリーカップであるが、酒次(さけつぎ)やぐい飲みなど、もうちょっと小さい作品のほうが引き締まった感じがして私は好きだった。この白釉の代わりに渋い光を放つ金釉を合わせた陶漆金釉のフリーカップもなかなかいい。
 今回見ていて感じたのは、茶道具が多くなってきたことと、陶漆作品が多かったことだ。抹茶茶碗も少なくとも6客はあった。陶漆でいえば鈍い銀色と黒を合わせた錫蒔陶漆香炉が目立っていた。ただの陶漆も内部から光を放っているような感じがして魅力があった。そういえば半円ではなく直線から成る青海波(せいがいは)の花入れは、朝日に反射した光のグラデーションを思わせ、文様とともに印象的だった。
 でもこの展覧会で一番気に入った作品は、作家さんには申し訳ない気もするのだが、木賊文(とくさもん)香炉である。縦に青みがかったストライプの入った香炉で、地の白にも少しにじみが感じられ、とても落ち着いた雰囲気を持っている。なぜ申し訳ない気がするかというと、昔からよくある陶器という感じがして、作家にとっては新しい試みではないと思われるからだ。でもこれは畳によく似合うと思う。
 上で紹介したもののほかにも、昔から手がけている象嵌作品や彩泥の器などもあったり、木工作家、村木昭彦による額とのコラボ作品(西村のブログ記事)があったりして、いろいろと楽しめる。お近くの人は是非。

2013年10月14日月曜日

『LJ Plays the Beatles!』Laurence Juber

 2000年。ローレンス・ジュバー。ポール・マッカートニー(Paul McCartney)率いるWINGSに一時期参加していたギタリスト、ローレンス・ジュバーのソロギターによるビートルズ作品カヴァー集。
 このアルバムの存在は以前から知っていたが、ビートルズはカヴァーじゃなくてもいいな、と思い、購入までには至らなかった。ところがとあるカフェでコーヒーを飲んでいるときにこのアルバムがかかっていて、すごくいい、と思って店員にアルバム名を聞いたら、『LJ Plays the Beatles!』だという。それで慌てて購入してみたわけだ。実際のところ家で聴いてみると、カフェで聴いたときのような感動はない。そのカフェの音響設備が我が家に比べてずっといいということなんだと思う。でもカフェで聴いたときほどの感動はなくても、このアルバム自体は結構いい。アレンジは自然で、ビートルズの雰囲気は壊さずに、きれいな感じに仕上がっている。ギターもうまい。
 どの曲も悪くはないのだが、特にいいと思ったのは、『Things We Said Today』、『You Won't See Me』、『This Boy』、『Oh Darling』、『For No One』、『Can't Buy Me Love』。こうしてみるとあまり有名どころはないのだが、『Let It Be』とか『Yesterday』みたいな誰でも知っている曲も入っている。安心して聴けるアルバム。

2013年10月13日日曜日

東寺、金堂のスケッチ

 京都にある東寺(教王護国寺)の金堂です。有名な五重塔も描こうとしたのですが、観光客がいっぱいいて、いい位置からスケッチするのは無理でした。でもこの金堂も国宝です。796年に創建されたと伝えられていますが、その後焼失し、1603年に再建されたのが今の姿です。
 それにしても日本の神社仏閣は描くのが難しい。

2013年10月11日金曜日

2013国際シェーグレン症候群患者会

 平成25年の国際シェーグレン症候群患者会が、10月10日、京都大学医学部芝欄会館山内ホールにて開催された。この患者会そのもののほか患者同士の交流の中で、色々と考えさせられることが多々あったが、ここではなるべく私情をはさまずに要点だけを記しておきたい。
 フランスからは、国際的協力あるいは協同の観点から、国際的ネットワークの話がなされた。
 アメリカからは、米国の患者団体の目指している方向について説明があった。それによると、米財団では、シェーグレン症候群の認知度を高めるための活動、発病から診断がつくまでの期間を短くするための活動、教育、研究の推進(財政的支援を含む)に力を注いでいるそうだ。また、患者自身も行動すべきだとし、医師に理解してもらう努力や企業への働きかけ、ガイドラインの作成などを例として挙げていた。そして、4つの薬が治験中である旨、説明があった。
 日本からは、NPO法人化、シェーグレン症候群白書の刊行について説明があり、今後5年以内に、一部の活動性の高いシェーグレン症候群に対する有効な治療法が出てくるのではないかとの見通しが示された。
 これら各国の状況報告に加えて、慶應義塾大学医学部の坪田先生による「ドライアイの最新治療」と題する特別講演があった。これについては、箇条書きで概要を記したい。
・ドライアイの人には視機能の低下が起こる。普通に測定すると1.2の視力があったとしても、1分間測り続けると視力が安定せず、瞬間的に0.2の視力しか出ていないということが起こりうる。こうして測定された視力のことを、実用視力と呼ぶ。
・実用視力の改善には、環境改善、眼の治療、全身治療の3つの方法が有効である(私の記憶違いかもしれない)。
・環境改善としては、眼の周りの湿度を高める専用の眼鏡が開発されている。また、ドライアイの患者はパソコンやLED電球の発するブルーライトに弱いが、これを軽減する眼鏡も開発されている。
・眼の治療としては、TFOT(層別治療)がある。ジクアス点眼薬により、実用視力が上がる(シェーグレン症候群には、ムコスタよりもジクアスの方が合っているらしい)。また、歯と同じように眼も洗うべきでは、との話もあった。
・全身治療としては、栄養バランスを考えたカロリー制限、運動、ご機嫌に生きる、の3つを挙げていた。これに関しては色々と面白い話があったが、詳細についてはこの患者会の内容がUstreamでもアップされているようなので、そちらを観ていただきたい。また、私は読んでいないが、坪田先生は『長寿遺伝子を鍛える』という本を出しており、そちらの内容ともかぶっていると思われる。
 今回の患者会では、この最後の特別講演が面白かった。ただし上で書いたことは、私の理解不足、記憶違いによる間違いも含まれているかもしれない。その辺はお許しいただきたい。

2013年10月6日日曜日

『数学的推論が世界を変える』小島 寛之

 NHK出版新書。副題『金融・ゲーム・コンピューター』。
 副題にある金融、ゲーム、コンピューターの3つを貫くツール、それが「数学的推論」なのだと著者はいう。「数学的推論」とはつまりは数理論理のことで、「かつ」「または」「でない」「ならば」などで組み立てられた記号論理のことである。多くの金融取引はコンピューターによって自動化されており、ゲーム理論を使って数学的推論のもとになされる。本書は数学的推論を通じて、現代の金融社会を読み解く視座が得られることを企図して書かれている。
 ロトくじやルーレットなどのギャンブルで確実に儲けるためにギャンブラーがとった方法、金融クラッシュの原因、かの投資家ジョージ・ソロスの稼ぎ方、チェス王者とコンピューターとの戦いなど、興味深い話で読者を引きつけ、それらの話の合間合間に数理論理の解説をしつつ、数学的推論の面白さや重要性を説いている。
 でも、この数理論理の解説は読者にとってかなり手強いと感じる。数学や経済を専門に学んできていない私にとっては、ゲーデルの不完全性定理の証明についていくのは結構きつい。本書にはこのような定理についての証明がいくつも載っている。さらに数理論理の発展の歴史をなぞる感じで、多くの数学者等の名前や定理が出てくる。これは本書の目的にとって必要な項目なのか、少し疑問を感じる。読者を引きつける導入的なトピックと数理論理の解説の間には大きなギャップがあるように思うのだ。数理論理のツールの解説に多くのページを割いた結果、実際の金融への数学的推論の適用については、ちょっとばかり端折らざるを得なかったのではないか。そもそも内容的にものすごくてんこ盛りな感じなので、新書形式ではなく、もう少し違う体裁を採ったほうがよかったのではないかと思う。
 本書はこれだけで完結しているというよりは、数学的推論というのはこんなにおもしろいんだよ、と示すことで、数理論理の世界へと誘(いざな)う足がかり的な本なのだと思う。ただ私はその世界に足を踏み入れる勇気がない。そこはあまりにも難解な世界だという印象を、本書を読んで持ってしまったので。

『Close-Up Vol 2, People & Places』Suzanne Vega

 2010年。
 1985年のデビュー以来25年を迎えて、スザンヌ・ヴェガがこれまでの作品をもう一度見直そうとして企画した「Close-Up」シリーズの4枚のアルバムのうちの第2弾。基本はアコースティックな感じで演奏し直しているが、Vo. 1に比べると弾き語りっぽいのは少ない。
 有名どころでいえば、児童虐待を扱った『Luka』、何気ない日常を綴った『Tom's Diner』が入っている。 『Luka』はギター1本で歌っているが、ちょっと物足りない気がした。たぶん原曲のイメージが強すぎるせいなのだろう。悪くはない。淡々としているところが逆に怖いともいえる。『Tom's Diner』もベースが加わってちょっと切迫感がある。都会の暮らしは彼女の目からするとよくなっていないということか(たぶん私の考えすぎ)。
 気のせいか、ギターの音が前面に出た曲が好きだ。『NY Is a Woman』、『In Liverpool』、『The Queen & the Soldier』。歌い手としては、本当は歌詞も聴いてほしいのだと思う。でも私は音楽をBGMとしてかけていることが多く、邦人歌手のものでさえ歌詞を聴かない。聴こうとしても意味が頭に入ってこない。歌詞カードを見ても意味がわからないことが多い。まるで万葉集に収録されている歌を読んでいるように。そうやって考えてみると、スザンヌ・ヴェガの歌詞はわりと耳に入ってくる方なのだと感じる。ちょっと歌詞カードで確認してみたいような感覚に駆られる。聞き流せないというか。
 ビートルズの曲?と一瞬疑ってしまう曲があった。新曲の『The Man Who Played God』である。なかなかいい曲ではある。

2013年10月4日金曜日

『伝統工芸ってなに?』日本工芸会東日本支部 編

 芸艸堂(うんそうどう)。副題『見る・知る・楽しむガイドブック』。
 小学校高学年から大人までを対象としたガイドブック。豊富な写真、図版を使って、伝統工芸に携わる人が集まる日本工芸会の7分野を紹介、解説している。この7分野とは、陶芸、染織、漆芸(しつげい)、金工(きんこう)、木竹工(もくちくこう)、人形、諸工芸のことである。それぞれの分野にはどんな作品があるのか。そしてそれらをどうやって作るのか、ということを簡潔に説明している。少しわからなかったところもあったけれど、全般的にとてもわかりやすい。
 例えばどんな作品が載っているかを漆芸から抜き出してみると次のような感じだ。蒔絵(まきえ)、螺鈿(らでん)、沈金(ちんきん)、蒟醤(きんま)、彫漆(ちょうしつ)、平文(ひょうもん)、漆絵(うるしえ)、卵殻、鎌倉彫。もちろん全部の伝統工芸を扱っているわけではないけれど(例えば木竹工に寄木細工が載っていない、とか)、じゅうぶん広範囲をカバーしている。
 すごくいい本だと思う。見ているだけで楽しい。

2013年9月28日土曜日

『Close-Up Vol 1, Love Songs』Suzanne Vega

 2010年。
 1985年のデビュー以来25年を迎えて、スザンヌ・ヴェガがこれまでの作品をもう一度見直そうとして企画した「Close-Up」シリーズの4枚のアルバムのうちの第一弾。ベースやエレキギターなどが入っている曲もあるが、基本的にはアコースティックギターと歌が中心のシンプルな構成で録り直している。
 デビューした頃と変わらぬ雰囲気で、アコースティックな感じが実にいい。私はアルペジオやスリー・フィンガーを使ったギターと彼女の歌だけの曲がとても気に入った。『Gypsy』、『(I'll Never Be) Your Maggie May』、『Song In Red And Gray』といった曲だ。そうじゃないものでも、ベースも入ったやや激しめの『Marlene On the Wall』だとか、妖しげな光を感じさせる『Headshots』などもいい。そういえばわりと最近の曲である『Bound』(これもギターと歌だけ)の悲しく切実な感じもいい(歌詞はそんなに悲しくはないのだが)。
 私が初めて彼女のアルバムを購入したのは1987年のセカンド・アルバム『Solitude Standing』だった。前掲の『Gypsy』はこれに入っている曲だ。もうそのときから20年以上が経つのかと感慨深い。このシリーズの残りの3枚も楽しみだ。なお、このシリーズは4枚ばらばらにも売られているが、1、2枚目と3、4枚目をそれぞれセットにしたお得版もある。

2013年9月26日木曜日

『マスタリングの全知識』葛巻 善郎

 Rittor Music。副題『CDから配信まで』
 曲を作って、録音して、ミックスして、とそこまでやったあと、曲を配信する前にするのがマスタリングである。例えば曲ごとにばらばらな大きさの音を、アルバムを通して一定の大きさに聞こえるように調整したりする。そのマスタリングの基礎知識をひととおり学べるようになっている。
 マスタリングの仕方は決まったやり方があるわけではなく、それを行う人によって全然違う。でもその上で私(著者)はこうやっている、というスタンスで解説している。つまり著者の立ち位置が読者からわかりやすく、それでマスタリングの全体像もつかみやすくなっている。また、プロの現場でのマスタリング方法のほかに、宅録(自宅での録音)ではこうやるといい、ということも載っているので、素人には参考になる。抽象的議論ではなく、きっちりと説明してくれているのもいい。ただし「全知識」というのは大袈裟で、実際には全体像を初心者にもわかりやすく解説している程度に考えておいたほうがいい。
 内容的には、マスタリングの全体像、コンプレッサー、リミッター、イコライザーの使い方、波形編集とノイズ除去、ネット配信用の圧縮音源(mp3とかAACとか)を作るためのコツなどについて触れている。
 マスタリングの考え方についてわかりやすく書かれているので、私のような初心者にはよい本である。

2013年9月23日月曜日

『2CELLOS IN2ITION~コレクターズ・エディション』2CELLOS

 2012、2013年。クロアチア出身のステファン・ハウザー(Stjepan Hauser)とルカ・スーリッチ(Luka Sulic)の2人のチェリストが結成したデュオ、2CELLOSのセカンドアルバムに、日本盤独自CDを1枚つけた2枚組。
 Disc2には、グリー・キャスト・ヴァージョンの『Smooth Criminal』、1台のチェロを2人で二人羽織みたいに弾いている『Every Teardrop is a Waterfall』、NTTドコモ「ツートップ」CM曲の『影武者』などが入っていて、結構お得だと思う。ただ、『IN2ITION』を持っている人は同じCDを2枚持つことになるので微妙かもしれない。
 今回のアルバムはチェロ2台だけではなく、ヴォーカル、ギター、ピアノ、ドラムスなども加わり、豪勢な感じに仕上がっている。チェロの生音をそのまま聴かせるもののほかに、エレクトリックなサウンドにしているものも多い。全体としてロック色が強い。音も荒々しい。エルトン・ジョン(Elton John)がヴォーカルの『Oh, Well』、スティーヴ・ヴァイ(Steve Vai)がギターを務める『Highway To Hell』など、格好のいい曲が揃っている。チェロを聴いているという感じはあまりしない。激しい曲の中でも、きちんとバランスよく収まっている。『Every Breath You Take』、『Candle In the Wind』、『Orient Express』のような静かな曲もあるが、チェロのアルバムなのではなく、ロックのアルバムなのだろう。『影武者』を聴きたくて購入したが、意外と短い曲だった。