2012年10月30日火曜日

『巨匠たちの英国水彩画展』Bunkamura ザ・ミュージアム

 2012年10月20日〜12月9日。マンチェスター大学ウィットワース美術館所蔵の、18世紀から19世紀終わりまでに描かれた水彩画を集めた展覧会。J.M.W.ターナーの作品が多いが、それ以外にもラファエル前派やヴィクトリア朝時代のものまで多く取り上げられている。
 まず感じるのは、とても細かくて写実的だということ。眼前に広がる風景をそのまま紙に写し取ろうとしていたのかもしれない。風景画が多いのは、水彩という手法をそういう企図として使用したためなのだろう。そして、水彩(透明水彩)絵の具のほかにガッシュ(グワッシュ、不透明水彩)を一緒に使っている絵が多いのも興味深かった。ガッシュを使ったものは少し油絵っぽい雰囲気が出るようだ。
 150点以上の作品が展示されており、そのひとつひとつにそれぞれの良さを感じたが、その中でも気に入ったものについてちょっとだけ紹介したい。ジョン・ブレットの『川辺の景色、オックスフォードシャー州ゴーリング=オン=テムズ付近』は、写真のようなシャープさを感じた。鮮やかな色が印象的だったのはジョン・マーティンの『マンフレッドとアルプスの魔女』。淡い雰囲気のよいデイヴィッド・ロバーツの『カリフの霊廟、カイロ、エジプト』。光と影が印象的だったのは、ターナーの『テムズ河畔フェニングズ埠頭の火事、バーモンジー』と、ヘンリー・ブライトの『迫り来る嵐、ヤーマス海岸、ノーフォーク』。小さな人物がいい味を出しているサミュエル・プラウトの『ヴェネツィアの運河のカプリッチョ』もいい。ジョン・ラスキンの『月桂樹の枝の習作』は、青と白しか使っていないのに惹かれるものがあった。ほかに好きだったのは、ウィリアム・フレデリック・イームズの『ディナンの大通りにて、ブルターニュ地方』と、ヘレン・アリンガムの『収穫の進む畑、ケント州ウェスターハム近郊』。
 こうして見てみると、ターナーとジョン・ラスキン以外は知らない人だ。有名じゃなくても素敵な絵を描く人はたくさんいるということですね。名前の売れている人とそうでない人との差はどこにあるんだろう。

Bunkamura ザ・ミュージアム』東京都渋谷区道玄坂2-24-1(地図)

2012年10月24日水曜日

シェーグレンの会 会報第21号

 2012年10月5日発行の「シェーグレンの会会報第21号」が届いたので、その概要を。シェーグレン症候群という病気については今までブログ内でさんざん書いてきたので、その詳細には触れず、会報のなかで気になったこと、興味深かったことを箇条書きで紹介したい。ほとんどが4月7日に行われた「シェーグレンの会総会」での報告結果である。
○NPO法人化を目指しているが、なかなか手続きが思い通りに進まないらしい。
○「患者会 シェーグレン白書 速報」(アンケート調査結果、209名回収)について
・どの症状の改善が必要?:乾燥症状(56%)、疲労感(24%)、痛み(15%)。私自身についていえば、目の乾燥は気になるが口腔乾燥はあまり気にならない。疲労感は強く、手の関節、筋肉が痛む(だから実はギターを弾くのはかなりつらく、1日15分が限度。趣味なのに悲しい)。
・シェーグレンの日常生活への影響の有無:あった(85%)、交友関係が少なくなった(70%)、外出ができない(53%)。外出ができない人が多いのは意外。私は軽い方なのだ。
・職業生活への影響があった人は70%。休業退職廃業をした人と楽な仕事に変更した人を合わせると37%。結構多い。でもわかる。職場の椅子に座っているだけでつらいことは多い。仕事をずっと続けられるかどうか不安を感じる。
○「うつと睡眠」~睡眠と健康~、日本大学医学部精神医学系、内山先生
・今の常識では、ストレスがあるときはぐっすり眠ってストレスを解消したほうがいいとされるが、「昔のようにセキュリティのない状況では、ストレスがあると眠れないという特徴は生き抜くための重要な戦略だった」というのは、いわれるまで気づかなかった。なるほどである。
・入眠障害、中途覚醒、早朝覚醒を合わせた不眠は年齢を追うごとに増えていくが、逆に睡眠不足は減っていく、というのは意外。
・睡眠障害と高血圧や糖尿病、そしてうつとの間には関連があるらしい(疫学的調査)。

 事務局が金沢医科大学から日本大学に移ってから、総会の開催日と会場が6月の金沢から4月初めの東京になった。東京での総会は1度も行けていない。本当は行きたいのだが、年度初めはきつい。来年はぜひ行きたいものだが。

シェーグレンの会HP

2012年10月22日月曜日

『おるすばん』2012第45回KFSアート・コンテスト展

 第45回KFSアートコンテストの童画部門に出品しました。ありがたくも入選をいただき、以下の日程で東京セントラル美術館に展示されます。1日くらいお邪魔しようかな。

2012年10月23日(火)~28日(日)。11:00~18:00(最終日15:00まで)。
『東京セントラル美術館』東京都中央区銀座2-7-18銀座貿易ビル5F(メルサGinza-2)

2012年10月20日土曜日

『MOVE』上原ひろみ

 2012年。Hiromi The Trio Project featuring Anthony Jackson & Simon Phillips。前作『VOICE』私の記事)に引き続き、コントラバス・ギター(6弦ベース)にアンソニー・ジャクソン、ドラムスにサイモン・フィリップスを迎えてのトリオ構成。
 最高にいい。アルバム全体で1日の流れを表しているという。表題曲『Move』のアラームで始まり、『11:49 PM』の夜中0時ぴったりの鐘の音で幕を閉じる。時の流れであり身体の動きであり感情の動きでもある「Move」。それらを全部ひっくるめてのアルバム。
 『Move』では、変拍子が複雑に絡み合う独特のリズムが体幹を激しく揺さぶる。そしてそのあとに続く『Brand New Day』では一変朝靄のような静かなピアノソロで始まる。ぞくぞくする。時には激しく、そして時には静かに、こんな風に動静入り交じってアルバムは時を刻んでいく。いい。ピアノはもちろん、ベースもドラムスも。息がぴったりと合っている。どの曲もいいけれど、特に好きなのは表題曲の『Move』と、ベースのメロディで始まる『Fantasy』の2曲かな。

2012年10月15日月曜日

『都市・地域 水代謝システムの歴史と技術』丹保 憲仁

 鹿島出版会。
 地球は「水の惑星」と呼ばれるように豊富な水に恵まれているけれども、そのうちの淡水は2.7%しかなく、さらに日常的に使える淡水は0.01%にしかすぎない。川や湖から海へ流れ出た水は蒸発して雲になり、雨や雪となって地上に降り注ぐ。その水文大循環の途中の水を人類は利用することとなる。この限られた水を、今後地球上の人口が100億人を超えるというなかで、どのように使っていけばよいのか。地球あるいは人類はそれに耐えられるのか。そのために必要な水システムとは。そのような大きなテーマを扱っているのが本書である。
 著者は地球上の水サイクルを4つに分ける。前出の水文大循環を第1サイクルとして、都市・地域内の第2サイクル、さらに小さなコミュニティ・工場レベルの第3サイクル、そしてもっと小さい個別生産場・生活場である第4サイクルである。本書の中心的議論である上下水道システムは第2サイクルにあたる。また、水俣病は製造工程である第4サイクルで物質収支をきちんと取らなかったために第1サイクルにまで汚染がおよび、公害となったとする。このように、それぞれのサイクル内、あるいはサイクル同士でどのように水の量と質が変換・移動していくのかを考えることが重要だという。
 著者の問題提起のひとつとして、大きなエネルギーを使って人間が飲める水を水道水としてつくり、それを便所や散水などのすべての用途に使うということは、この先やっていけなくなるのではないか、というものがある。一人が1日に使う量は200~300リットルであるが、今の水道水レベルの上質な水は1日50リットルくらいしか必要としていないという。この点をひとつの立脚点として、次世代の生態系にもやさしい水システムはどうあるべきか、という提案を最終章で述べている。この本で取り上げられている興味深い話題は、すべてこの最終章の提案のためにあるといっても過言ではない。とはいえこの提案はひとつの提案にすぎず、ほかの解答を拒否するものではない。
 難しい本だと思う。ローマの水道に始まり現在に至るまでの上下水道の歴史をかなり詳しく書いてある。それは単なる歴史的事実を述べるにとどまらず、水処理や水の輸送の仕組みまできちんと解説している。個別例でいえば、札幌、東京、香港、シンガポールの水システムの歴史はかなり突っ込んだところまで詳説している。ただ、それを460ページほどの本にまとめるのは相当無理があって、たとえば水質変換システムの仕組みの説明は大事なところ以外は大分はしょっていたりする。一度も勉強したことのない人がこれを読んで理解できるかどうかは怪しい。そこは読み飛ばせばいいのだけれど。
 東京という大都市が成り立つためには、その裏に栃木、群馬といった広大な水源地がなければならない。さらにいえばそこに住む人々の口にする食料を作り出すために、膨大な仮想水を海外から輸入していることになる、といったことは、多くの人が知っておいたほうがいい事実なのかもしれない。化石エネルギーに頼らない太陽エネルギーだけでは、日本の人口は4000万人くらいしか養えない、という事実にも目をつぶってはいけないだろう。
 今後の地球を占う上で、エネルギー、食料、そして水の問題はどうしても避けて通るわけにはいかないのだ。そんな大事なことをこの本は教えてくれる。

2012年10月14日日曜日

『Poroco 15th Anniversary Blend』横井珈琲

 「月刊poroco」の創刊15周年を記念したつくったブレンド。写真はぼけてしまっているけれど、次のように書いてある。

「オレンジ、プラム、ヘーゼルナッツ、ミルクチョコの風味 なめらかな舌触りとキャラメルやハチミツの甘さが魅力です」

 ここまで味を詳しく書かれてしまったら私にはこれ以上書きようもないんだけど、ここまで複雑な味だろうか、とは思う。濃いめに淹れると少しざらついたような感じになる。ふつうに淹れろよ、ということなのだろうが。ほどよくやさしい酸味がある。後味がいい。冷めてからの味も風味豊かで意外によい。
 2012年10月31日まで販売している。

工房 横井珈琲』札幌市西区発寒9条11丁目2-11(地図

2012年10月8日月曜日

『横井の秋2012』横井珈琲

 9~11月限定珈琲。
 エルサルバドル、コスタリカ、コロンビアを使った中深煎りのブレンド。アプリコットとかプラムといったようなフルーツ系の余韻がある。弱い酸味と苦みが交ざり合って、でもそれぞれの輪郭がはっきりとしていて立体感がある。どんぴしゃではないけれど、好きなタイプの味(横井のブレンドの中では、「いつものさんばん」がかなりどんぴしゃです)。いける味だと思います。

工房 横井珈琲』札幌市西区発寒9条11丁目2-11(地図

『だれも知らなかった楽典のはなし』東川 清一

 音楽之友社。
 楽典は音楽の文法というか教科書というか、そんな類いのものだと思う。なぜ「思う」なのかといえば、私は楽典というものを読んだことがないからだ。だからここでは、この本は楽典とはどういうところが違っておもしろいのか、といった話はできない。単純に読んだ感想を述べたい。
 音符や音楽記号の話、五線譜の成り立ち、音程について、旋法と調について、音階やリズム、テンポについてなど、おそらくは楽典と同じような項目について書いてある。実際のところこの本はおもしろい。それは単に説明的な音楽理論のみを述べているのではなくて、成り立ちあるいは音楽の歴史をも学べるからだろうと思う。この本はモーツァルト時代の音楽理論家テュルクの『クラヴィーア教本』から引用している説明が多い。だから著者も述べているように、一部に「モーツァルト時代の楽典」という側面も持っている。
 ソのシャープ(嬰ト)とラのフラット(変イ)はもともとは違う音だったのに、なぜ今は同じ音としてとらえられることが多くなったのかという経緯だとか、旋法は固有な5度種と4度種の組み合わせの違いだとか、メトロノーム記号に対する向き合い方だとか、興味深いことがたくさん書かれている。それも根本的なところから教えてくれるので、おもしろい。
 でも難しい本だとも思う。音楽を中学校の授業までしかやってなくて、これから音楽を始めてみようかな、というような人には正直きついと思う。そういう人を対象にしたかのような説明も確かに散見されるのだけれど、大部分は結構マニアックな話題のような気がした。たとえば日本の音階について述べた第8章は、私にはさっぱり理解できなかった。もうひとつ私に取っつきづらかった点があるとしたら、音階の記号が「ハニホヘトイロハ」である点だろうか。ふだんは「CDEFGAB」の方がなじみがあるので、当初は頭の中で変換するのに手間取った。クラシック音楽をやっている人には造作ないことなのかもしれないが。
 趣味で独学で音楽をやってきたけれども、もうちょっと突っ込んだ話を聞きたいという人は楽しめる本だと思う。

2012年10月6日土曜日

『The Very Best of Diana Krall』Diana Krall

 2007年。ダイアナ・クラール。
 彼女を知ったのは実はついこの前。ウィリー・ネルソン(Willie Nelson)の『American Classic』私の記事)の中で『If I Had You』をデュエットしていたのを聴いたのが最初。売れているジャズヴォーカリストだなんてことはまったく知らなくて、あぁ、いいかも、とちょっと思った。それで、まずはベストからだろう、と。
 声や歌い方はわりとあっさりしている印象を持った。あまり力が入らず、さらっとした感じ。初めはそんなところがちょっと物足りなくもあったのだが、聴き込んでみると意外と気に入った。でもすごくいい、という感じではなく、BGMとしてかけ流していてちょうどいいという程度。何かほかの作業をしていても邪魔にならない。このアルバムの中では『The Heart of Saturday Night』が特に好きな曲です。適度にゆるいところがいい。