2012年6月30日土曜日

『がんばらない生き方』池田 清彦

 中経の文庫。
 今の世の中には、がんばる生き方をしなければならない、という時代の空気があるが、そんなにがんばらないでほどほどの生き方をしてはどうですか、というのが、この本の趣旨である。がんばりたい人はそうすればいいけれど、がんばりと結果は必ずしも比例しないし、がんばることの副作用だってある。ここは考え方を変えてみたらどうですか、というような感じで話が進んでいく。ときに毒や辛辣な意見も交ぜながら、しかし全体としては肩肘張らない雰囲気で書いている。
 基本的に雑談、という感じがする。確かに言うことは正しそうだけれど、根拠をきちんと述べているわけでもないし、本人もそこまできちんと論じるつもりもない。普段思っていることのエッセンスを並べてみました、という感じだ。
 私はがんばりすぎた生き方をして身体を壊したという過去(たぶんその因果関係は間違っていないと思う)があるので、この本で書かれているような生き方をすべきなんだろうな、とは思う。 でも全部の人がそうすべきだとも思わない。ただ、がんばる生き方でもがんばらない生き方でも、どっちの生き方をしてもそれらを認めあえる社会がいいな、と思う。

がんばらない生き方

2012年6月25日月曜日

『ギリシア神話入門』吉田 敦彦

 角川選書。副題「プロメテウスとオイディプスの謎を解く」。
 ゼウスに逆らって人間の味方をして人間に「火」を与えたとされる、「先見の明(プロメテイア)」を名として持つ神、プロメテウス。そして、スピンクス(スフィンクス)の謎を解きテバイを救い、人々にあがめられていたテバイの王オイディプス。その二人についての物語を原典から説き起こし、ギリシアの歴史とも絡めながら解説している。
  プロメテウスについては、ヘシオドスの2編の叙事詩『神統記』『仕事と日』、アイスキュロスの悲劇『縛られたプロメテウス』を見比べ、作者によって、あるいは時代によってまったく異なる視点をとっていることを明らかにする。オイディプスに関しては、ソポクレスの『オイディプス王』、『コロノスのオイディプス』から、あまりに不条理で絶望的な悲劇とその救いについて細説している。
 ものすごく深い。そしておもしろい。これまでギリシア神話それ自体を読んでも、おびただしい数の神々や土地の名前の羅列に辟易するだけで、内容が全然頭に入ってこなかった。ところが神話のできた背景や経緯も念頭に置いた本書の解説を読むと、ギリシア神話が実におもしろい物語(こう書くのは語弊があるかもしれないが)であることがわかった。たとえばスピンクスの謎と答えは、一般に「朝は4本足、昼は2本足、晩には3本足であるものは何か。 それは人間だ」というふうに与えられるが、原典では少し違う問いになっていて、その答えも単純に「人間」というだけではない、と説明される。その答えの意味するところは、解説なしではわかりえない。私のような初心者は、神話そのものではなく、解説書のほうをまずは手に取るべきだ、ということを教えられた。
 「人間とは何か」「どう生きねばならぬか」という現代にも通じる謎に、古代のギリシア人がどのように挑んでいたのか、それを垣間見させてくれる良書である。

2012年6月17日日曜日

『I Will Say Goodbye』Bill Evans Trio

 1977年の録音。
 美しい。ビル・エヴァンスの晩年の作品だという。そういえば『You Must Believe in Spring』(私の記事)が録音されたのも1977年だった。このアルバムは、その作品ほどには悲しみに満ちあふれてはいない。ただ、美しい。
 彼の作品を語ろうとすると、いつも言葉が出てこない。こんなに好きな演奏なのに。

2012年6月16日土曜日

『Jungpana Upper FTGFOP1 2011-DJ75』LUPICIA

 ジュンパナ・アッパー。
 インド・ダージリンのクルセオン・サウスにあるジュンパナ茶園の夏摘み紅茶。セカンドフラッシュですね。香りはすごく華やかで、でも飲んでみるとどっしりとしていて、意外な感じがする。喉を通ったあともずっと口の中に残る余韻がたまらないですね。しっかりとした味で、重厚な甘さが長い間続く。きっとこれがセカンドフラッシュのよさなんですね。おいしいです。
 以前はダージリンはそんなに好きではなかったんです。高級感だけがただあって、重厚さがない、と思っていた。でも違ったんですね、本当は。煎れ方が悪かったのか、舌がついていっていなかったのか。
 いや、これは本当においしい。

LUPICIA

2012年6月13日水曜日

『Crema di PARMIGIANO REGGIANO』CALZETTI

 パルミジャーノクリームプレーン。
 クリームチーズなのにあっさりしていなくて、すごくコクがある。名前のとおり、パルミジャーノ・レッジャーノを思わせる味と香りがする。色は真っ白。おいしいです。ここのところ毎朝、これをトーストに塗って食べてます。

2012年6月7日木曜日

『島渡る~Across the Islands~』大島保克

 2012年。おおしまやすかつ。
 大島は沖縄の島歌をずっと作り続けている人だ(でも年はとっていない)。このアルバムは全曲オリジナル曲からなる。本作にも入っている10「イラヨイ月夜浜」は、夏川りみをはじめ、いろんな人がカヴァーしている代表曲だといえるだろう。1「川」、3「まつりのあと」、9「島渡る」なども同じような傾向の曲だ。
 ほとんどの曲に大島の三絃がかぶっており、彼の歌(声)と三絃が、このアルバムの雰囲気を決めている。でもその声は、前作『大島保克 with ジェフリー・キーザー』(amazonで見てみる )に比べて少し老いたように感じる。以前の声の方が個人的には好きかも(ちなみにこの前作はかなりお薦めです。Geoffrey Keezerのジャズピアノが、大島の声と三絃に見事にはまっていて、透明感があってお洒落な雰囲気でいっぱいです。曲は沖縄と八重山の民謡が中心です)。声といえば、鳩間可奈子の高音との絡みが聴きどころの4「来夏世(くなつゆ)」もいい。アルバム全体に沖縄らしさを吹き込んでいる仲宗根"サンデー"哲による太鼓も実にいい。栗コーダーカルテットの近藤研二のギター、ウクレレも落ち着きがある。
 驚いたことにこのアルバムにはHEATWAVEの山口洋と細海魚(ほそみさかな)が参加している。5「流星」のバックで流れているエレキギターは、HEATWAVEそのままだ。彼らがまだ音楽活動をしていることがうれしくなる。
 このアルバム内で一番好きな歌は、いかにも琉球民謡といった感じの6「マンタラ祝(いわい)」、7「与那岡(ゆなむり)<早調子>」、13「与那岡(ゆなむり)」 です。癒される。

2012年6月2日土曜日

タニウツギ

 今日はよい天気だった。ぶらぶら近所を歩いていると、道端に満開のピンクの花がきれいに咲いていたのでパチリ。
 本当は、あっ、ウツギだ、と思って写真を撮ったんだけど、家で調べてみると純粋なウツギではないみたい。幹が中空だったらウツギ(空木)という話もあるけれど、ふつうウツギといったらユキノシタ科のものを指すらしい。卯の花ですね。
 これはたぶんタニウツギ(谷空木)。スイカズラ科です。私にとってウツギといったら、このタニウツギかハコネウツギ(箱根空木、ベニウツギとも)ですね。ユキノシタ科のウツギは頭に浮かんでこない。ハコネウツギもスイカズラ科です。ハコネウツギは、白い花と赤い花が同時に咲いているときの雰囲気がとても好き。実際には白が赤に変わっていくみたいだけど。

2012年6月1日金曜日

『西村 和 作陶展』石の蔵ぎゃらりぃ はやし

 2012年5月31日~6月5日。にしむらなぎ。
 札幌駅北口の第1合同庁舎の東側に、今回の会場がある。軟石の建物のお洒落なギャラリーだ。ドアを開けて右側2階建て部分がギャラリーで、左側がカフェになっている。2階建てといってもそんなに広くはなく、ぎしぎし音を立てる狭い階段など、なかなか味のある空間である。
 1階には彩泥の器や、私が家で使っている褐色のカップと同じデザインながら渋い灰色に焼き上げたものなどが並ぶ。懐かしい雰囲気。花入れには、浦島草(ウラシマソウ)など(なんかマニアックな香り)、自宅の庭から運んできた草花がさりげなく飾られている。焼き物の落ち着いた色に、この緑がよく映える。
 目を惹いたのは2階の壁だ(写真を許可してもらいました)。草花の描かれた縦長の陶板が並ぶ姿は壮観である。今回の展覧会で一番のお気に入りだ。写真では見にくいが、手前から順に、蔓梅擬(ツルウメモドキ)、浦島草、野イチゴ、蓮(ハス)、水樽(?)、花菖蒲、百合、野ぶどう、クジャクサボテンと並んでいる。とくに中ほどにある蓮の絵が私の心をとらえた。2階にはこのほか、錫蒔陶漆や象嵌作品などもあった。
 昨年三越ギャラリーで開かれた展覧会(私の記事)では抹茶茶碗などが並び、高級イメージがあったが、今回は身近で温かい雰囲気に包まれていた。

西村和のHP
『石の蔵ぎゃらりぃ はやし』 札幌市北区北8条西1丁目(地図