2012年2月27日月曜日

『手と手』植村 花菜

 2012年。
 よく通った声はストレートに心に響いてくる。歌詞の内容もひねりのないストレートなものが多い。あまりにベタな表現であったりするところが退(ひ)いてしまったりもするけれど、そんなまっすぐなところも含めて彼女の魅力なんだと思う。キャッチーなメロディも聴きやすいし、アレンジも好きです。全体的にバランスのとれたアルバム。植村自身と佐橋佳幸によるギターもいいですね。
 特に好きなのは、2「メッセージ」、4「手と手」、10「タイムマシン」、12「光」かな。「メッセージ」は、映画「マジック・ツリーハウス」の主題歌みたいです。観る予定はないけれど。

2012年2月26日日曜日

『「聴く」ことの力』鷲田 清一

 阪急コミュニケーションズ。副題「臨床哲学試論」。
 「<聴く>ことを哲学するのではなくて、<聴く>ことがそのまま哲学の実践となるような哲学を構想すること」が、本書のひとつの目的、ひいては臨床哲学のひとつの目的でもある。「聴く」というのは、音楽を「聴く」ことではなく、他人の話を「聴く」ことである。臨床の場で行われる「聴く」という行為は、そういうことである。このように臨床哲学は「聴く」ことそのままが哲学であるという面があるが、その他にも、臨床という場特有の一面がある。それは、普遍的な人に対する哲学なのではなく特定の人に対する哲学であること。さらに一般的な原則から導かれる哲学ではなく、逆にその場その場の事例に基づく哲学であるということである。
 この「聴く」ことは日常における言葉のふれあいの中にもみられるが、精神医学の場面でも重要な意味を持っているようだ。これは「臨床」という言葉からも当然のことなのかもしれない。また、ホスピタリティというものが臨床哲学あるいは「聴く」行為といかに強い関係を持つものなのかということについて述べている一群の論説が、私にとっては印象的であった。臨床哲学云々の話は措いておいても、臨床という場とはいったいどういう場であるのか、というこの本の主題(のひとつだと思うんだけど)は、実に興味深かった。
 鷲田の語り口はとてもやさしく読者を誘い込むのであるが、書かれている内容は意外に難しい。これは以前に読んだ彼のエッセイ『普通をだれも教えてくれない』(私の記事)を読んだときにも感じたことである。一見わかりやすいのだが、全部読んだあとに振り返ってみると、狐につままれたようで何が言いたかったのかよくわからない。それで結局2度読む羽目に陥ってしまったけれど、これは鷲田と私の相性によるものなんだと思う。

2012年2月18日土曜日

『ノラ・ジョーンズの自由時間』ノラ・ジョーンズ

 2010年。原題『...Featuring Norah Jones』。この日本盤にはボーナストラックが入っていて、全19曲。ノラ・ジョーンズの選曲による、彼女と他のアーティストとのコラボレーション集。
 すごくいいです。様々なジャンルのアーティストとコラボしていて、曲も彼女の持ち歌あり、相手の曲だったりとごちゃごちゃなんだけど、全曲通して流れているノラの歌声がアルバム全体にしっかりとした統一感をもたらしている。もちろんカントリーやジャズの曲はノラのイメージを壊すことなく安心して聴けるけど、他の曲もいいんですよね。フー・ファイターズってこんな歌も歌うんだ、とか、ヒップホップも意外といいじゃん、みたいに新鮮な発見もある。全曲紹介したいけど記事としてくどくなるので、アーティストだけ紹介。

The Little Willies (リトル・ウィリーズ)
Foo Fighters(フー・ファイターズ)
Sean Bones(ショーン・ボーンズ)
Willie Nelson(ウィリー・ネルソン)
Sasha Dobson(サーシャ・ダブソン)
Dirty Dozen Brass Band(ダーティー・ダズン・ブラス・バンド)
El Madmo(エル・マッドモー)
Outkast(アウトキャスト)
Q-Tip(Qティップ)
Talib Kweli(タリブ・クウェリ)
Belle & Sebastian(ベル・アンド・セバスチャン)
Ray Charles(レイ・チャールズ)
Gillian Welch and David Rawlings (ギリアン・ウェルチ&デヴィッド・ローリングス)
Ryan Adams(ライアン・アダムス)
Dolly Parton(ドリー・パートン)
Herbie Hancock(ハービー・ハンコック)
Charlie Hunter(チャーリー・ハンター)
M. Ward(M.ウォード)
Wyclef Jean(ワイクリフ・ジョン)

2012年2月15日水曜日

『Castleton, FTGFOP1 2011-DJ173』LUPICIA

 インド、ダージリンのクルセオン・サウス地区にある、キャッスルトン茶園によるセカンドフラッシュ。つまり夏摘み紅茶。
 豊潤な、という形容詞はこういう紅茶のためにあるんだ、と思った。酒も飲めないくせにこんなことを言うのは変だけど、高級なシャンパンのような香り、と言ってみたい衝動に駆られる。味もしっかりとしていて、おいしい。
 でもふだん飲むにしては重々しすぎるかな、とも思う。あまりに不釣り合いな高級腕時計をはめて街に繰り出しているみたいな、場違いな居心地の悪さ。ゴージャスすぎる。以前飲んだキャッスルトン(記事)はこんなに重厚ではなかった。
 今度はキャッスルトンのファーストフラッシュを飲んでみたい。

LUPICIA

『エスプレッソブック』門脇 洋之

 柴田書店。副題「基本技術とアレンジドリンク」。
 「エスプレッソの基本技術」、「ベイシック&アレンジドリンク」、「僕はこうしてカフェを開業した」の3章に分かれている。
 第1章では、エスプレッソの淹れ方やスチームドミルクの作り方、エスプレッソマシンの手入れ、コーヒー豆の基礎知識などを扱っている。写真が多く、説明も微に入り細に入りといった感じで、ものすごくわかりやすい。すぐにでも試してみたくなる。エスプレッソマシンは業務用のものを対象にしているので家庭用エスプレッソマシンには当てはまらない部分もあるが、基本技術としてはどちらも変わらない。
 第2章で取り上げられているドリンクの種類は50種類にもわたり、写真が美しいので見ているだけで楽しくなる。作ってみたいのはもちろんだが、飲んでみたいという気持ちの方が大きい。そんなドリンクを家庭で作れるとしたらすごいことではないか。カフェを開業したいという人にも参考になると思う。
 そんなカフェを開業したい人には第3章も役に立つかもしれない。著者が『CAFÉ ROSSO』を開業するまでの経緯や苦労話が聞けておもしろい。何しろ彼は日本のバリスタチャンピオンになった人物である。
 全体的に写真の多さと説明のわかりやすさが際立つ。私のエスプレッソに関するバイブルになりそう。

 本書には『CAFÉ ROSSO』についての記載も多いが、出版当時はカフェとしての位置づけだったこの店は、現在カフェスペースを縮小してビーンズショップ的な店に生まれ変わったそうだ。詳しくはこちら

2012年2月12日日曜日

『バレンタインブレンド(2012)』徳光珈琲

 フルシティロースト。かなり苦みの強いブレンド。甘いケーキと合わせるといい感じ。喫茶店で飲む「フレンチブレンド」にこういった感じのが多い気がする。そういえば可否茶館のバレンタインブレンドも苦みが強かった。チョコレートと一緒に飲んだときにおいしく感じるようにしているのかもしれない。プチフールとかチョコが欲しくなる。

徳光珈琲

『GERARD LE BLEU』

 「ジェラール・ル・ブルー」。箱には「ジェラール フロマージュブルー」と書いてある。ジェラールクラシックシリーズのブルーチーズ版。
 カマンベールチーズみたいで、何も知らずに食べたら青カビタイプだとは思わないかもしれない。ほんのりと青カビを感じる程度で、ものすごく食べやすい。これがもうちょっと熟成が進んでくると、また違った顔を見せるのかもしれないけれど。

2012年2月11日土曜日

『Waltz for Debby』Bill Evans Trio

 1961年録音。ビル・エヴァンス・トリオ。ビル・エヴァンスのピアノ、スコット・ラファロ(Scott LaFaro)のベース、そしてポール・モチアン(Paul Motian)のドラムス。
 繊細で壊れそうな、まるでガラスのようなピアノの音が全体を包み込んでいる「My Foolish Heart」で始まるこのアルバムは、もともと6曲編成だった。軽やかで印象的な表題曲「Waltz for Debby」、姪のデビーのために書かれたこの曲は、もちろんこのアルバムの中で一番の位置を占めているのだろう。この曲が終わってさて次の曲、と思うと、また「Waltz for Debby」の旋律が流れ始める。そう、私の買ったこのバージョンには同曲の別テイクが収められているのだ。何も連続して並べなくても、と思うが、実はこれだけではない。どこか倦怠的な「Detour Ahead」も、こぎれいな感じの「My Romance」も別テイクが並んで収められている(これらに最後の「Porgy(I Loves You, Porgy)」を合わせて、計4曲がボーナストラックとして収められている)。これは編集の失敗だと思う。アルバムの一体感がまったく損なわれてしまっている。「Porgy」はまだいいにしても、他の3つのボーナストラックは余計だと思う。せっかくよい曲で詰まっているのに残念だ。買うときは中に入っている曲を確かめて、余計なトラックの入っていないバージョンを購入することをお勧めする。
 曲はいいです。ドラムスはサポートに徹しているけれど、意外とラファロのベースが活躍していて、ピアノとベースは同等の地位を与えられているように感じた。ビル・エヴァンスの名前ばかりが有名だけれど、このアルバムはトリオのものなんだな、と妙に納得した。

2012年2月8日水曜日

『バレンタインブレンド(2012)』可否茶館

 独特の味がする。「カカオやナッツを思わせる」と店頭には書いてあった気がするが、まさにそのとおり。香りはあまりしないコーヒーなんだけど、喉越しを通ったあとに感じる余韻が香ばしい。苦みの中にもほんのちょっとだけ甘みの感じるブレンド。少し口に残るえぐみがアクセント。1年に一度くらい、こんなほろ苦さを感じるのもいいかも。

可否茶館HP

2012年2月7日火曜日

『日本語のデザイン』永原 康史

 美術出版社。
 日本語の文字、特にひらがなのデザイン、さらには冊子や書物の中での日本語や文字レイアウトのデザインの歴史について、主に書かれている。古いものでは万葉集から、平安、鎌倉、江戸、明治、戦前、戦後と、デザインの系譜をたどりながら、今後の日本語のデザインはどうなっていくかまで、追っている。掲載されているカラー図版は大きくて美しい。さらに量も多い。これらの図版を見ているだけでも楽しい。中身もよく調べられている。
 しかしながらこの本は中途半端だと思う。史実に基づいた記述は詳細で役に立つものの、時折見せる根拠不明の断定口調にかなりのストレスを感じる。全般的に研究書のような体裁を醸しながら、 著者の嗜好が何の前触れもなくひょいと顔を出す。著者は研究者ではなくグラフィックデザイナーだから、ある程度はしょうがないのかもしれない。でもそれなら逆に、著者の考えるデザインのあり方といったようなものを前面に押し出していけばよかったと思う。なまじっか研究書然としているものだから、著者の考えが根拠もなくはめ込まれると、読む方はとまどってしまう。突然アルファベットについての考察が出てくるのもよくわからない。
 いろいろと批判してしまったが、大部分についてはとても参考になるし、目の肥やしにもなる(何しろ美しい)。そして、今後も本書に目を通す機会は何度かあることと思う。だからこそ詰めの甘さがもったいないとも感じるのだ。もう少し時間をかけて作り上げればよかったのに。

2012年2月5日日曜日

『味わいブレンド』徳光珈琲

 シティロースト。コクも強いけれど、酸味が結構ある。苦みはほとんどない。酸味が強いとすっきりとしたコーヒーが多いけれど、これはコクがあるというところが特徴的な気がする。一般的にはおいしいコーヒーの部類に入れてもいいのだろうけれど、残念なことに私は好きではない。
 酸味が強いとき、淹れるときの温度を高温にしてみると飲みやすくなることが多い。このコーヒーもしかり。物の本によると、酸味はどんな温度でも抽出されやすいけれど、苦みは高温にしたときの方が抽出されやすい。私のやり方は、一応理に叶っている。

徳光珈琲

2012年2月4日土曜日

『古文の読解』小西 甚一

 ちくま学芸文庫。
 本書は大学入試向けの参考書である。この文庫版は2010年に出たものだけれど、元の初版は1962年のものだ。でも色褪せてはいない。おもしろい。500ページちょっともあるので最初は読み通せるか不安だったけれど、すんなり読み切った。読み物としても楽しめるのだ。平安時代の暮らしから始まり、文学史をざっと眺めて、文法や解釈のキモ、俳句や和歌まで、幅広く扱っている。幅が広いので、そんなに深いところまでは攻め入っていないけれど、ポイントはしっかりと押さえている(ように感じた。古文が苦手な私が言うのもなんですが)。英語を取り混ぜた説明なんて妙に納得させられる。著者も述べているように、古文のすべてをこの本一冊で読み解けるようになるなんて無理な話で、良質の古語辞典と(豊富なテキストという意味での)教科書は欠かせない。でもこの本を読むと、古文の読み方みたいなのがわかってくる。高校の時に出会っていたらな、と思う。
 初学者向けではない。ある程度古文を勉強した人を対象としている。一通り勉強したもののなかなか点数に結びつかない人、そんな人がいい。高校2年の夏頃に2、3回読んでみるのがいいんじゃないだろうか。また、古文が得意な人でもおもしろく読めると思う。目から鱗の話題にいくつか出会えるはずだ。 そしてこの本を読んだあとは、たくさんの古文に触れること。それも大事だ。