2011年5月31日火曜日

『新編 普通をだれも教えてくれない 』鷲田 清一

 ちくま学芸文庫。
 普通をだれも教えてくれない。この本もまた、普通を教えてくれない。
 一哲学者によるエッセイ集。でも恐れることはない。ひとつひとつのエッセイはたかだか3、4ページで、言葉遣いもやさしい。ただ、著者の本意を探ることは意外に難しい。ズバッとした物言いはしないタチなのか、核心を掴もうとすると、雲を掴むような感じになる。文章はやさしいのでさらりと読めてしまうのだが、後で振り返ると何を言いたかったのかわからない、ということがたびたびあった。問題提起型の文章が多く実際にしっかりとした主張をしていない、ということなのか、単に私の読解力が足りないのかはわからない。が、たぶん私が著者についていけていないのだろう。言葉が上滑りしていく。
 とはいえ、私でもおもしろかった話題はいくつかあった。例えば『透明なボク』の中にこんな文章がある。「人間が一番必要としているのは、自分がだれかの無視できない他人でありえている、という実感です。」(p.71)。これはすごく腑に落ちた。これがなくなると確かに辛い。他に、ある染織家に手渡された名刺に関するエッセイ、『おしゃれな名刺』がおもしろかった。この染織家の生き方を私もしてみたいのだな、と感じた。そこまでの度胸は今の私にはないのだけれど。
 全体を通した印象は、やっぱりふわふわとしているのです。そのうちエッセイ以外の鷲田の著作も読んでみたい。このままではあまりにも狐につままれた感じがするので。

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2011年5月29日日曜日

『北海道ブレンド』イノダコーヒ 札幌紀伊國屋支店

 久しぶりにこの店に来たら、期間限定で『北海道ブレンド』なるものを出していた。イノダコーヒは北海道にはこの店の他に札幌大丸にも店があるから、そちらでもメニューに載っていることと思う。やや深煎りのコロンビアをベースにしたブレンドだ。イノダコーヒのコーヒーは酸味が強いことが多いのだが、このコーヒーに酸味はほとんどない。かといって苦味が強いのかと言えばそんなこともなくて、見事に中性の味である。というかあんまりコーヒーの味がしない。その代わり香ばしさはわりとあり、そのせいか、すっきりとして透明感がある。鼻で味わうコーヒーとでも言おうか。私は疲れすぎているとコーヒーを受け付けなくなるのだが、このコーヒーなら飲んでもいいかも。元気なときは逆にちょっと物足りなさを感じそうだけど。
 私にとって北海道のイメージはこんなに凛としてすっきりとはしていないな、と思った次第。

イノダコーヒ 札幌紀伊國屋支店』札幌市中央区北5条西5丁目7番地(地図
(sapporo55ビル 紀伊國屋書店札幌本店2F)

2011年5月28日土曜日

『ぬちぐすい みみぐすい』夏川 りみ

 2011年。
 沖縄の人は、おいしいものや体によい食べ物のことを、愛情を込めて「ぬちぐすい」(命の薬)と言ったりする。だから「みみぐすい」も同じように、耳の薬、つまり耳によい音楽のことなんだと思う。
 1「ゆりかごのうた」、3「この道」、6「赤とんぼ」、7「おぼろ月夜」、10「椰子の実」。このアルバムを見たとき、正直なところ、どうして童謡とか唱歌を歌わせるんだろう、あるいは歌うんだろう、と思った。最近は歌さがしと称してカヴァーばっかりしているのも、なんだかいやだった。もっとオリジナルで攻めていけばいいのに、と。でもこのアルバムができた背景を見ると、今このときだからこそこういうアルバムを作ったんだな、ということがわかる。このアルバムをレコーディングしたのは、夏川の妊娠中から出産後にかけてだったんですね。きっと子供に贈るアルバムという意味もあったんでしょう。子供の名前は「音来(ニライ)」といって、アルバム中の2「ニライの風」、12「ニライ・カナイの子守唄」がこのことと無縁であるはずがない。この2曲はそれぞれ、新良幸人/知念輝行、佐原一哉から贈られたものだが、夏川のデビュー当時からのイメージを壊さない、まさに彼女が歌うためにつくられた感じのする曲だ。
 上で、どうして童謡とかを歌うんだろう、と書いたものの、実際に聴いてみると意外によい。歌唱力がすごいのだと思う。普通なら、えっ、ここでそう来るの?その歌い方はちょっとこの曲には・・・、というのがありそうなものだけれど、そんな引っかかりのようなものはまるでなく、すんなりと心の奥に歌声が入ってくる。
 八重山民謡の5「あがろーざ節」がいい。声の伸び、透明感、それでいて力強さがある。こういう歌は実力がないと歌えない。下地勇から提供された11「景色」もいい。壮大で、広がりと深さを感じさせる。これは曲自体がすごくいいですね。あと、気に入ったのは4「寶貝(BAO BEI IN THE NIGHT)」。台湾のシンガーソングライター、張懸(チャン・シュエン)の曲で、寶貝(バオベイ)はベイビーの音訳。ここでも子供が絡んでます。すごくかわいらしい曲で、中国語の雰囲気とメロディーが何とも言えない。原曲と比べると「寶貝(in a day)」の方により似ているとは思うけど。
 ちょっとマニアックになるけれど、ギターの音がいいな、と思った曲を弾いているギタリストは決まって古川昌義。曲でいうと、1「ゆりかごのうた」、4「寶貝(BAO BEI IN THE NIGHT)」、6「赤とんぼ」、11「景色」の4曲。

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2011年5月25日水曜日

『R style by 両口屋是清』

 名前のとおり「両口屋是清(りょうぐちやこれきよ)」プロデュースの和風カフェ。表参道ヒルズ3階の一番奥にある。店内は明るくカジュアルな感じで、すっきりとした印象。
 ぜんざいやあん餅、パフェなど色々と楽しめる。テーブルで網焼きをしていただく団子などもある。私は雑誌で見た、クリームチーズとあんをきんとん仕立てにした「きんとんフロマージュ」目当てに行ったのだが、あいにくこの商品は冬しか出していないらしい。そこで選んだのが「本日の茶菓」。小豆を糖衣でくるんだ干菓子と、薯蕷饅頭(じょうよまんじゅう)のセット。せっかくの主菓子(おもがし)だったので抹茶がいいかな、と思いもしたが、長居をしたかったので今回は台湾茶の四季春高山茶を合わせてみた。お湯の入ったポットも一緒に供されるので、3、4杯飲める。薯蕷饅頭は人肌よりも少しだけ温められており、そうした心遣いが嬉しい。抑えられた甘みが絶妙で、少し粘り気のある生地の食感も相俟って実にうまい。
 最近はおいしいケーキよりもおいしい和菓子を食べたときの方が幸せな気分になる。年のせい?

R style by 両口屋是清』東京都渋谷区神宮前四丁目12-10 表参道ヒルズ本館3階(地図

2011年5月23日月曜日

『フェルメール《地理学者》とオランダ・フランドル絵画展』Bunkamuraザ・ミュージアム

 2011年3月3日~5月22日。もう会期は終わっているけど、このあと愛知県豊田市美術館にて巡回展を開くようです。
 題名のとおり、フェルメールの描いた『地理学者』を中心にした展覧会。ドイツ、フランクフルトにあるシュテーデル美術館所蔵の作品を取り上げている。フェルメールの作品の中で、男性の単体像は少ない。この『地理学者』の他には『天文学者』くらい。『地理学者』は左手の窓から差し込む明かりに向かって、コンパスを持つ男性が顔を上げているところを描いている。フェルメールの他の作品と同じく柔らかい光に満ちており、ものすごく穏やかで、静寂すら感じる。この絵画世界の中に入り込みたいと思うほど魅力的で豊かな空間が、縦横50センチメートル四方ほどの小さな平面に表現されているのは驚きだ。この展覧会の冠になっているのに恥じない、すばらしい作品である。フェルメールはやっぱりいい。
 他の展示作品で気に入った作品を挙げてみたい。
 室内画では、少し荒さを感じるが空間構成の巧みさが光るピーテル・ヤンセンス・エーリンハの『画家と読みものをする女性、掃除をする召使のいる室内』、すっきりとして洗練されたイメージを醸し出すピーテル・コッドの『演奏家たち』がいい。
 人物画では、フランス・ハルスの『男の肖像』、ニコラース・マースの『黒い服の女性の肖像』が魅力的だった。
 静物画では、透明感のある質感が見事な次の4作品を紹介したい。アブラハム・ミフノンの『合金の盆の上の果物とワイングラス』、ピーテル・ド・リングの『果物やベルクマイヤー・グラスのある静物』、ハルメン・ルーディングの『苺の入った中国製の陶器とレーマーグラスのある静物』、ペトルス・ウィルベークの『ヴァニタスの静物』。
 最後に風景画。アールベルト・カイプの『牧草地の羊の群れ』、『運河の風景』は純粋に好き。ヤーコプ・ファン・ロイスダールの5作品は叙情的な雰囲気がたまらなくよい。さすが、という感じ。ヤン・ファン・オスの『静かな海の上の小船と帆船』はすっきりとしていてきれいな作品。遠近法の消失点と光源の位置をうまく合わせて、レンブラントの風景画バージョンのような雰囲気すらあるアールト・ファン・デル・ネールの2作品、『漁船のある夜の運河』、『月明かりに照らされた船のある川』はうまい。
 たまにこうして美術作品に囲まれた時間を過ごすのはよいものです。

Bunkamuraザ・ミュージアム』東京都渋谷区道玄坂2-24-1(地図

2011年5月15日日曜日

『cafe perico』

 カフェ ペリコ。pericoとはスペイン語でインコのこと。札幌中心部の狸小路の1本南の通り沿い、駅前通りの東側のブロックの雑居ビルの2階に入っている。2階に上る階段はどこか裏寂れた感じがして、本当にここでいいんだろうか、と不安にさせられる。でもほどなくこのカフェの温かい明かりを奥に見つけてほっとする。
 店内はそれほど広くはないが、席数が少なめなせいか窮屈さはない。入り口から右側がカウンター、左側には2~4人用テーブルが4つ。4人テーブルにはゆったりとした2人掛けソファが設えられており、実際に座ってみるとどこかの邸宅に招き入れられたような贅沢な気分を味わえる。
 コーヒーの種類はマイルドとフレンチの2種類しかないが、結構おいしい。飲み物はソフトドリンクからアルコールまで幅広い。夜は軽いバー気分なのだろうか。今日はランチの時間からワインとチーズ盛り合わせの客がいたけれど。食べ物はトースト、ホットサンドにケーキ数種の他、おつまみが少々。この手のカフェにしてはケーキが思いの外おいしくてびっくりする。写真はスモークサーモンとクリームチーズのホットサンド。

cafe perico』札幌市中央区南3条西3丁目 新山ビル2F(地図

2011年5月14日土曜日

『NO REFUGE』下地 勇

 2011年。ノー リフュージュ。
 ミャークフツと呼ばれる沖縄宮古島方言で歌を奏でる下地勇(これまでヤマトゥグチ(標準語)で出したアルバムは1枚しかない)。もちろんこのアルバムもミャークフツ。正直な話、日本語には聞こえない。当然何を言っているのかはわからない。なのにどうしてこんなにも心を打たれるのだろう。歌詞カードにある標準語訳を読むとどうってことないのに、隣に書いてある実際の歌詞からはオーラのようなものが感じられる。下地の歌を聴くと、その感じが倍加される。力強い曲も、悲しい曲も、楽しげな曲も、それぞれに味がある。8「アトゥダマ ドゥ ウプダマ」のような明るいアップテンポな曲も、それとは対照的な3「Reset」も、同じ高音の下地の声なのに、後者はあまりにも切ない。下地の力なのか、方言の力なのか。
 うまいコメントが思いつかないのだけれど、唯一無二という言葉がぴったりのアーティスト。それだけにアクも強いので、人には薦めづらい。でも私は、歌だけでなく、声だけでなく、この人の弾くアコースティックギターの音も結構好きだったりするのです。

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2011年5月11日水曜日

『構造構成主義とは何か』西條 剛央

 北大路書房。副題「次世代人間科学の原理」。
 構造構成主義は著者が打ち立てた人間科学におけるメタ理論である。「メタ」というととたんに抽象的になってしまう感があるが、簡単にいうと、世界をどのように認識するか、という考え方を示したものである。人間科学といっても色々とある。厳密に数値を統計的に扱うハードサイエンス的なものから、臨床研究のようなソフトサイエンス的なものまで様々である。ともすればそれらの主義主張は対立し、それが不毛な議論を生むようなことも起こる。構造構成主義は、それらを包括し、その対立を雲散霧消してしまうので、有意義なコラボレーションを生み出すことにつながるという。そんなことって本当にできるのか。そこが、「考え方」なのである(私は構造構成主義の意義をそのように受け取った)。
 構造構成主義は哲学と科学という二つの領域をドッキングさせることによって生まれた。哲学の側からは主にフッサール現象学と竹田青嗣現象学、科学の側からは池田清彦の構造主義科学論。それにソシュールやレヴィ=ストロースからのエッセンスをほんの少し。本書の大部分は、それらからどのように構造構成主義が導出されるか、ということを解説している。そして最後の方で少しだけ、構造構成主義の適用例を紹介する。適用例としては、人間科学的医学の例がよくまとまっている。
 ところで、構造という言葉は実にわかりづらい。構造とはシステムのことではない。システムは存在的概念で、構造は存在論的概念である。構造は関心相関的に立ち現れてくる。ここでの構造は方法論や筋道と考えるといいかもしれない。関心は個々の研究者や個人によって異なるのであるから、そこから立ち現れてくる構造は複数あることになる。つまり構造(方法論)は多元的であり、それによって構造構成主義は様々な立場の研究領域をまとめ上げる力を持つことができる。著者はこのように主張しているんだと私は理解した。
 構造構成主義は人間科学だけに限る必要はまったくないのであって、科学(自然科学とか人文科学、医学全般)の領域すべてを俯瞰できる立場にある理論なのだと感じた。ただしその理論的基盤は本書が主張しているほどには磐石ではない印象を持つ。まず、前半の哲学的な論述はちょっとばかり雑である。エッセンスはうまく取り出してはいるのだろうが、そのつながりは自明ではない。また、科学の側からのアプローチは池田の構造主義的科学論をそのまま用いており、その妥当性について詰めた議論は行われていない。もう少し丁寧な論述の進め方をしてもらいたかった。大きな可能性があると思えるのに、少しもったいない。
 構造構成主義に対しては、そんな当たり前のことをわざわざ大上段ぶって主張するほどのことではない、とする意見も多数あるようだ。しかしその当たり前のように見えることが実は研究者間で共有化されていない、ということもまた事実なのだと思う。さらにまた、当たり前に見えるが故に、これまできちんと理論化されてこなかったということもあるだろう。そのことが構造構成主義の意義を引き下げることにはならないと私は思う。
 余談だが、この論の元になっている池田清彦の著作群はおもしろい。私は好んでこの人の本を読んでいる。

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2011年5月8日日曜日

『欧文書体2』小林 章

 美術出版社。タイポグラフィの基本BOOK。副題「定番書体と演出法」。『欧文書体』(私の記事)の続編である。
 大きく2章から成っているが、その章に入る前に「海外の暮らしの中の書体」と銘打って、海外の街角などで見つけた書体を豊富な写真で紹介している部分がある。これが結構楽しい。こんな旅行の楽しみ方もあるのかと。
 第1章は「フォント演出入門」。高級感を演出する書体、親近感を演出する手書き風書体、食欲をそそる書体、イギリスらしさを演出する書体など、大きくカテゴリー分けされた書体を、これまた実際に使われている写真入りで、丁寧に解説している。150を超える書体について、書体の特徴は何か、どんな場面で使ったらいいのかなど、ポイントを押さえた説明が付いていて、役に立つ。
 第2章は「定番書体徹底解剖」として、Helvetica(ヘルベチカ)、Garamond(ガラモン)、Palatino(パラティノ)、Univers(ユニヴァース)など16の書体について、実際にその書体の作者にインタビューした記事が載っている。アドリアン・フルティガー、ヘルマン・ツァップ、マシュー・カーターなど、その数は10名を超える。書体が生まれた背景や、何をねらって作った書体なのか、あるいは作者の人物像など、興味深い話題がふんだんに取り上げられている。
 書体(あるいはフォント)好きにとっては、たまらない内容である。

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2011年5月7日土曜日

『母の日ブレンド』徳光珈琲

 ハイローストのブレンドだから、若干浅煎りめ。そのせいでやや酸味が勝った味がする。喉ごしはフルーティではあるものの、結構クセがあると思う。でも香りはすっきりとして透明感がある。豆の量はあまり多くしない方がおいしいと思う。冷めてくるとクセが強くなってくるので、私は熱いうちに飲んでしまう。悪くはないと思うけれど、好みではない。
 明日は「母の日」ですね。

徳光珈琲
『徳光珈琲大通店(TOKUMITSU COFFEE Café & beans)』札幌市中央区大通西3丁目大通ビッセ2F(地下鉄大通駅直結、北洋大通りセンタービル)(地図

2011年5月5日木曜日

『GERARD Camembert』

 ジェラール・カマンベール。フランス産のカマンベールチーズ。日本で白カビタイプといえば真っ先に挙がるのがこのカマンベールだが、私にとってはかなり久しぶり。
 もっちりとして弾力のある食感。表面の白カビはうっすらとある程度で、厚くはない。味は素直で食べやすい。調子に乗るとすぐにでも完食してしまいそうになるので、なるべく長い間楽しめるようにセーブしながらとは思っているが、もうなくなりそう。

2011年5月4日水曜日

『茉莉双花仙桃』LUPICIA

 Jasmin Double Flowers。モーリーソウカセントウ。「手毬(THÉ MARI)」シリーズの中の一品。

 ジャスミンの香りを付けた甘い緑茶。工芸茶は見た目重視で味はいまひとつのことが多いのだが、これはおいしい。その代わりというわけではないのだろうが、見た目はちょっと失敗している。ねらいとしては、緑のお茶の上にキンセンカの黄色を挟んで、真ん中に千日紅の赤い花が鎮座する、というものだったのだと思う。でも2種類の花の色がくすんでしまって、ねらった効果がうまく出なかった感じです。
 とはいうものの、工芸茶を飲むと贅沢な雰囲気に浸れますね。この写真のように、ゆったりとした大きめのグラスで煎れるといいと思います。3、4煎はいけます。
 ちなみに茉莉はジャスミン、仙桃は中国の伝説にある不老長寿の桃のことです。お茶の形が桃の形をしているから、このような名前になっているんだと思います。

LUPICIA

『VOICE』上原ひろみ

 2011年。ベースにアンソニー・ジャクソン(Anthony Jackson)、ドラムにサイモン・フィリップス(Simon Phillips)を迎えての、久々のトリオ構成。
 聴いてすぐにそれとわかる彼女のピアノ。ときには力強く、ときには優しく美しく奏でられる旋律。それに負けないくらいに心を揺さぶるリズム。それをしっかりとサポートするベースとドラム(特にサイモン・フィリップスのドラムがすごい)。3人がそれぞれに主張を繰り返しながらも、渾然一体となり、ひとつの作品、すなわちこのアルバムを作り上げている。よく聴くとテクニカルな曲構成と演奏技術にびっくりもするのだけれど、普通に聴く分にはそれらを微塵も感じさせずにさらりとやってしまっているのがすごい。
 ぐいぐいと押しまくる1「Voice」や6「Desire」のような曲に混じって、ちょっとおどけたような3「Now or Never」や、高音の響きの美しい幻想的なピアノソロ曲7「Haze」などの曲もあり、飽きさせない。そして最後には9「ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第8章《悲愴》第2楽章」の美しいアレンジで、アルバム全体をしめやかに締めくくる。やっぱりこのアルバムは全部を通してひとつの作品なんだ、という印象を強く受ける。
 上原ファンにとってもそうでない人にとっても必聴アルバムだと私は思う。

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2011年5月2日月曜日

『桜ブレンド』可否茶館

 春の限定コーヒー。
 実は、可否茶館からはちょっと遠ざかろうかな、と思っていた。なのに店舗の目の前を通ったときに、あまりにもタイミングよく家のコーヒーが切れていたのを思いだしてしまったので、つい購入してしまった。コーヒーケースの上に並べられていた、光沢のあるきれいな赤い袋に目がくらんでしまったのかもしれない。
 さて、このブレンドはよくできていると思う。実においしい。かすかに苦味を感じさせながらも柔らかい甘さが舌を包み込む、私好みのブレンドだ。たまにこういうブレンドを出してしまうから、やっぱり可否茶館からは離れられないのだ。

可否茶館HP