2010年8月29日日曜日

『物語論で読む村上春樹と宮崎駿』大塚 英志

 角川oneテーマ21。副題「構造しかない日本」。
 村上春樹や宮崎駿らによるサブカルチャー文学ないしはジャパニメーションが世界化したのはどうしてなのか。それは「構造しかないからだ」と柄谷行人は言った。本書は、著者がこの言葉を噛み砕いて読者に説明したものと言ってよい(実際、本書でそう述べられている)。構造とは主に物語構造を指すが、漫画やアニメでは、作画、演出、動きの上でも構造化(あるいは構成化)されているという。本書の前半では、主として村上春樹の『羊をめぐる冒険』をテキストに、神話学者ジョセフ・キャンベルの「単一神話論」、映画『スター・ウォーズ』との比較を行う形で、村上文学がいかなる物語構造を持っているのかを解説していく。そして後半では宮崎アニメを読み解く形で論が張られている。
 多少著者の強引さを感じないわけではないが、村上や宮崎が、著者の言う物語構造に自覚的であったことを示す事実もあり、著者の指摘は大部分正しいのであろう。本書中には、村上がオウム真理教に対して感じた嫌悪感の背景、宮崎が息子の作品『ゲド戦記』に何を見たのか、についての考察なども含まれており、なかなか興味深いものがある。
 とはいえ、実際のところ私は著者が何を言わんとしているのかが理解できないのである。著者は「構造しかない」物語を批判的に捉えているように見えるが、それがどうしていけないのかについて、私にはよくわからない。さらに言えば、彼らの作品に構造が存在し、その存在故に世界化したということはなんとなくわかるのだが、なぜ「構造しかない」と断言できるのか、よくわからなかった。構造以外の部分って当然あるだろうに。結局、私には難しすぎたということなのか。

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2010年8月26日木曜日

『巨峰』LUPICIA

 キョホウ。「ぶどうの名品・巨峰の甘酸っぱく深い香りが煎茶によくなじんだ、上品な風味のお茶に仕上がりました。」

 一見まったく同じ名前のお茶がルピシアから出ている。それは以前取り上げた(記事)。でもそちらは紅茶で、今回は緑茶である。それに、紅茶版は「巨峰」と書いて「ブドウ」と読ませている。
 緑茶版の方がずっといい。まず香りがいい。甘ったるすぎず、強すぎず、実に上品である。そして緑茶との取り合わせもいい。緑茶に、こんなに葡萄の味が合うとは思いもよらなかった。お薦めです。

LUPICIA

『猫の美術館』グラスマグ

 前回の記事の絵は、グラスマグのデザインのための原画でした。色合いはやっぱり変わってしまうようです。でも、私としては、まあ満足のいくできあがりでした。
 これはとある展覧会に出すために描いたのですが、残念ながらベスト10には選ばれませんでした。もし選ばれていたらマグカップを5個もらえるので、狙ってはいたのですが・・・
 イラストレーターの武笠昇さんからのコメントは好意的だったので、それで良しとしましょう。

2010年8月23日月曜日

『猫の美術館』原画

 オランダのアムステルダムに、『KattenKabinet』という美術館がある。運河沿いにある小さな美術館だ。猫に関する様々なアイテムを揃えており、日本では『猫の美術館』と呼ばれている。その蒐集品は、世界中から集められたイラスト、彫刻、小物などから成っている。
 私にとって猫といえばスタンラン(Théophile-Alexandre Steinlen)。この美術館で彼の作品に直に触れ、「Steinlen: Of Cats and Men」という本まで手にすることができたのは、大きな幸せだった。
 この作品(と言っても原画だが)はそんな『猫の美術館』をイメージして描いたものだ。運河にたゆたうボートから美術館を眺めた光景だと思っていただけるとありがたい。私にしては珍しく、かなり本気を出して描いた。縦8cm、横19cmの細長く小さな画面。
 さて、この絵はいったい何のための原画なのでしょう。答えは数日後。

KattenKabinet』Herengracht 497
1017 BT Amsterdam(地図

2010年8月22日日曜日

『プルーストとイカ』メアリアン・ウルフ

 Maryanne Wolf。小松淳子 訳。インターシフト。副題「読書は脳をどのように変えるのか?」。
 普段何気なく読んでいる文字、文章、本・・・。今まで特に気にも留めてこなかったことだが、実は当たり前のことではない。ヒトには本を読むための遺伝子が備わっているわけではない。すなわち本を読むことは生得的にできるものではなく、生まれてからの環境、教育などによって初めてできることなのだ。そのとき脳は文字を読むことができるように、変化していく。そしてその裏では、その過程がうまくいかなかったディスレクシア(読字障害、失読症)と呼ばれる人々が存在する。ディスレクシアの人とそうでない人の文字を読むときの脳の使い方は異なる。ディスレクシアの人は右脳を多く使う。そのせいなのかどうかはわからないが、彼らの中には非常に独創的な人達も多く、過去に目を向けてみると、ダ・ヴィンチ、エジソン、アインシュタインなども、ディスレクシアだったと言われている。アメリカには15%程度のディスレクシアの人がいる。その人達はそれがために悪いレッテルを貼られたりしたりもするらしい。そうであってはならない、と著者は言う。彼らを救うためにできることは何か、ということについても、多くの研究事例を挙げて触れられている。このディスレクシアは本書の後半のテーマである。
 前半部分では、シュメール語やヒエログリフなどの誕生からアルファベットなどの文字につながる系譜を辿り、文字がどのようにしてできてきて、人々はどのようにしてそれらの文字を読むことができるようになったのかについて、考察している。この数千年に亘る読字の歴史は、ヒトが5~7歳の間に文字が読めるようになる過程とパラレルな関係にもなっている。
 ソクラテスは口承と対話を重視して、書字に対して批判的であった。これによって大事なものが失われると考えたせいである。その思いは杞憂に終わったかのようにも見えるが、著者は今の時代こそソクラテスの批判を思い起こす必要があるのでは、と問う。今は、パソコンの前に座り検索ワードを入力するだけで、膨大な知識が得られる世の中である。それによってある種の知的スキル-簡単に言えば考える力-が失われてしまうのではないか。著者の危惧もまた杞憂に終わるのかどうか、それは時代が進まなければわからない。
 最後に題名について。プルーストとイカは、それぞれ読書、神経科学のメタファーである。本書は、脳科学、心理学、教育学、言語学、文学、考古学といった様々な分野の読書(読字)に関する知識を集めた本である。読み甲斐がある。

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2010年8月20日金曜日

『ラ・ペドレラ農園』丸美珈琲店

 LA PEDRERA。ホンジュラス。柔らかい苦味の中に、少しの酸味がスパイスのように利いている。バランスはいいが、少し濁ったような味がする。個人的にはちょっと物足りない。濁るのであればもっとアクが強い方がよい。そうでないのなら、濁りを感じさせずにすっきりとしたキレを際だたせてあった方が好い。
 珈琲とは関係ないことだけど、そういえばガウディの作品に『ラ・ペドレラ(カサ・ミラ)』ってのがあったっけ。作品というか、設計した集合住宅というか。何か関係あるのかな。

丸美珈琲店』札幌市中央区南1条西1丁目2番地松崎ビル1F(地図

2010年8月18日水曜日

『Prodigal Son』Robert Wilkins

 プロディガル・サン~放蕩息子~。ロバート・ウィルキンス。1928~1935年。
 このアルバム内の曲は年代順に並んでいる。1928年頃に録音された曲を聴いて、あっ、ミシシッピ・ジョン・ハート(Mississippi John Hurt)に似ている、と思った。飄々とした歌い方や声が。ロバートはメンフィス・カントリー・ブルースを代表する人物だが、ミシシッピのブルースマンとも交流があったという。そんなわけで似た感じがするのかな、と思ったりもする。年代が進むとミシシッピ・ジョン・ハートとはまったく違った音楽になるし、初期の曲にしても彼ほどの軽妙な洒脱さといったものはないのだが。
 でも悪くない。自由な感じがいい。ギターは聴かせるタイプじゃなく、力強く歌を支えてる、って雰囲気。
 余談だが、ロバート・ウィルキンスはこのアルバム内の曲を録音した後ゴスペルに転向して、ブルースを歌わなくなったそうだ。その心境の変化の理由を知りたい。

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2010年8月16日月曜日

CLUB HARIE, Summer 2010

 『クラブハリエ』はバームクーヘンのお店。『たねや』のバームクーヘン部門なのかな。
 写真は2010年夏季限定「サマーバーム」の箱。大小の金魚があしらってあって可愛い。箱をひっくり返すと1匹だけ黒い金魚がいる。その遊び心がまたいい。

CLUB HARIE

2010年8月15日日曜日

『二世古マルセラン』

 ニセコマルセラン。ホームページでは「二世故」と書いてあるけれど、パッケージには「二世古」と書いてある。どっちが正しいのだろう。
 いわゆるサン・マルセランチーズ(St.Marcelin)で、加熱も圧搾もしないフレッシュチーズである。でもウォッシュや山羊を思わせるようなクセがある。少し酸味があって、このクリーミーさとコクはどうしてもフレッシュチーズのような感じがしない。今でこそ慣れたので普通に食べられるが、初めはぎょっとした。もっと熟成が進むと、トロトロになってくるらしい。おいしい、という人もいるが、私は苦手だ。


ニセコチーズ工房HP

2010年8月13日金曜日

『2010北海道陶芸会展-帰-』丸井今井札幌

 丸井今井札幌一条館8階美術工芸ギャラリー。2010年8月11日~16日。

 会場の真ん中で作家さん達がたむろしていて怖かったので、さっと見ただけ。 
 「草の窯」の中村裕の作品が良かった。粉を吹いたような淡く柔らかな風合いの花入れは気品があった。
 他にも好きなものがあったのだが、作家の名前が覚えられなかった。さらに言えば、本当に居心地が悪かった。

北海道陶芸会HP
「草の窯」HP

『コロンビア・サン・イシードロ』横井珈琲

 やや浅めの中煎り。浅煎り気味のコロンビアは久しぶりだ。でもこれはすごくおいしい。苦味も酸味も柔らかで、フルーティな香りが口の中を潤す。香りは鼻で感じるもので、口で感じるのは味だろう、というなかれ。実際口の中に香りが拡がるのだ。甘く、南国のフルーツを思い起こさせる、この余韻は素晴らしい。

工房 横井珈琲』札幌市西区発寒9条11丁目2-11(地図

2010年8月11日水曜日

『札幌スタイル展2010』大丸藤井セントラル

 大丸藤井セントラル7階スカイホール。2010年8月10日~15日。

 札幌スタイルとは、「札幌の風土を暮らしの中に活かしながら、生活や気持ちをもっと豊かにする楽しさ、暖かさ、面白さ、新しさ、美しさを持った製品」(HPからの引用)を札幌市が認証することで、札幌ブランドを発信していこう、というものである(と思う)。少し堅苦しさというか変な真面目さがあるところが私は苦手なのだが、札幌スタイルに登録された製品自体はお洒落でスタイリッシュであるし、このブランディング戦略自体も方向性としては良いものだと思う。
 さて、今回はその認証商品を一堂に集めた展覧会だ。もちろん購入もできる。常設のショップはJRタワーイースト6F展望室エントランスにあるが、ここまで大きな規模のものではないので、この展覧会は行ってみるといい。石鹸やキャンドル(写真は「フロストフラワー」と名付けられたキャンドル)などの小物から、カバンや帽子、椅子などまで、様々な商品が登録されている。私はずっと札幌スタイルな商品がどんなものなのか知りたかったので、いい機会だった。今回は澪工房の木でできたシンプルなマグネットを購入。


札幌スタイルホームページ

大丸藤井セントラル』札幌市中央区南1条西3丁目2(地図

2010年8月10日火曜日

『Golden Slumbers』The Beatles

 実質的にビートルズ最後のアルバムと言われているアルバム『Abbey Road』のB面に収録されている(『Let It Be』が最後だけれど、録音はこっちの方が後)。このアルバムはビートルズのものとしては好きな1枚。『Golden Slumbers』は、ビートルズがそれまで世に出していなかった音源を、ポールが一人黙々とつなげて作ったと言われるメドレーの中の1曲である。その曲群がB面に収録されているのは、何か象徴的な感じが私にはする。そしてここ数日私の頭の中から離れない曲が『Golden Slumbers』なのだ。すごく短い曲で、あれっ、という間に違う曲に変わってしまう。曲がいつの間にか溶けていく。黄金のまどろみの中に。(眠くはならないです。実際は)

 ご想像のとおり、私の頭から離れないわけは、数日前に中村義洋監督の『ゴールデンスランバー(この英訳は"Golden Slumber")』を観たせいである。だから頭の中で鳴っているのは、斉藤和義バージョンだったり、劇団ひとりバージョンだったりもする。これを観たせいで、この曲は映画と不可分になってしまった。何か複雑なイメージを喚起する曲となってしまった。

以下、amazonで見てみる。
Abbey Road (Dig)
ゴールデンスランバー [DVD]

2010年8月9日月曜日

"SOFA Fair", SEMPRE

 センプレからDMが届いた。

"SOFA Fair 10% OFF"
2010 8.9(Mon)-31(Tue)

 素敵な写真が葉書の裏を埋め尽くしている。もらって嬉しいDMってあるんだ。新しい感動。
 行けないけど。

『SEMPRE』のHP
『SEMPRE HONTEN』東京都目黒区大橋2-16-26(地図
『SEMPRE AOYAMA』東京都港区南青山5-13-3 FIK南青山ビル1F(地図

2010年8月8日日曜日

『Pagliacci』

 宮越屋珈琲・パリアッチ。藻岩山麓通りから、かつて「ちざきバラ園」があった所に向かう道に入ってすぐ左にある。北から南に車を進めているのであれば、山側にある大きな黒い建物の上部に「宮越屋珈琲」と赤い大きな字で書いてあるのが山麓通りから見えるので、目印になる。
 道化師という名のその喫茶店は、雑誌置き場に鎮座している洒落たピエロの人形を除けばおどけた感じはまったくしない。店内ではクラシック音楽が常時流れているので、もしかしたらレオンカヴァッロのオペラ「道化師」を意識した命名なのかもしれない。カウンターの他は仕切りで分けられた4人掛けのテーブルが数ブロックあり、客同士の視線が交差しないように配慮されている。この店の作りは落ち着く。
 私は今回初めてこの店にきたつもりでいたのだが、実は過去に何度か来ている。店内の雰囲気も知っているし、マスターの顔も覚えている。なぜか店の外観と店名だけ忘れていた。でもここは単純に店との再会を喜ぼう。

『宮越屋珈琲Pagliacci』札幌市中央区伏見2丁目2-90(地図

2010年8月4日水曜日

『梅』LUPICIA

 ウメ。「かすかな酸味が魅力の中国烏龍茶に、梅の香りをつけました。」

 ほんの少しの梅の香りがちょうどよく、おいしくいただける。ただ、私の舌の至らなさのせいで、説明を読むまで紅茶だと思っていました。烏龍茶と言われてもぴんと来なくて、そう言われれば烏龍茶かも、っていうくらい。品のよいフレーバードティーです。

LUPICIA

2010年8月3日火曜日

『Péché Mignon』

 ペシェ・ミニョン。仏語で「小さな罪」、あるいは「甘い物好き」。北海道内に限ると、私が一番おいしいと思うケーキ屋さん(焼き菓子やパンも売っているけど)。店内奥に広いイートインスペースがある。
 函館の住宅街にあってちょっとわかりづらい。色んな行き方があると思うけど、私は函館新道を降りてから五稜郭方面に向かい住宅街を抜け、深堀電停の所で電車通りを横切り、右手にスーパー魚長が見えたら右折し、少し行った店の場所を示す看板の所で左折して・・・という行き方を、よくする(この説明じゃ絶対わかんないよね。地図を見て行くか、カーナビに住所を入れてください)。
 この日はケーキ2個とドリンクのケーキセット。二人で来ている人はケーキセットひとつにドリンクをつけて、二人で2個のケーキを食べている人が多い。でも私は一人で2個しっかり食べます。左から「ココ・ルージュ」、「ピュイ・ダムール」、奥はポットのウヴァティー。どれも大満足。
 実はこの店のケーキで一番のお薦めは、秋の季節限定「モンブラン」。金色に光り輝くそのケーキは他では味わえません。

Péché Mignon』函館市乃木町1-2(地図