2018年5月20日日曜日

『Solo』Nils Frahm

 2015年。ニルス・フラームによるピアノアルバム。
 このアルバムは、高さ3.7メートルもの高さのあるKlavins M370というアップライトピアノを使って録音されている。音はやわらかく深みがあって、ややもの悲しい雰囲気も感じられる。ギターで言えばギブソンのアコギのような印象に少し近い。すべての楽曲が即興によるもので、わりとシンプルで静かなものが多い。前半はそうやって流して聴けるような曲の構成になっているけれど、後半は、ピアノらしからぬ音を奏でる(なんだかストリングスのような)『Wall』みないた激しさのある曲や、低音の響きが印象的な『Immerse!』、ドラマチックな『Four Hands』のような曲も入っている。オーヴァーダビングしているように聞こえるものもあるけれど、すべて一発録りだという。
 実は本作はチャリティ・アルバムでもあって、彼の友人のピアノ職人David Klavinsが作ろうとしている高さ4.5メートルのピアノKlavins M450(このアルバムで使用されているKlavins M370のさらに大きい版)製作のための資金調達のための作品でもある。彼は毎年の88番目(ピアノの鍵盤数が88)にあたる日を「Piano Day」とすることを宣言して、このピアノソロアル バムを急遽リリースしたのだという。ちなみにWorld Piano Newsによると、プロジェクト発足から3年が経った2018年初めに、Klavins M450は完成した模様。リンク先に写真が掲載されているけれど、ピアノとは思えない壮大な形をしている。

2018年5月19日土曜日

『宗教国家アメリカのふしぎな論理』森本あんり

  NHK出版新書。[シリーズ]企業トップが学ぶリベラルアーツのうちの一冊。
 アメリカという国がよくわからないと、ときに感じる。科学の最先端を行っていると思っていたら、国民の結構な割合の人が進化論を否定したりしているみたいだし、最近では科学に対する予算が削られたりしている。世界平和を願っているのかいないのかもよくわからない。アメリカ・ファーストを叫びながら、それってアメリカ国民にとってもよくないことじゃん、と突っ込みたくなることもある。とここまで書いてきて、この疑問って「トランプがわからない」と言ってるのと一緒じゃないか、と思った。
 本書によると、トランプ大統領のような大統領は、アメリカという国にとっては別に珍しい部類に入るわけではないのだという。ジャクソン、アイゼンハワーなど、似たような大統領は今までにもいたらしい。ではなぜこのような人が多くの支持を受けるのか。
 それは特殊な宗教国家としてのアメリカの事情にあるらしい。成功している人は神に祝福されている。祝福されている人は成功する。成功しないのは努力が足りないからだ。極端に言えばこういう論理らしい。しかしキリスト教は、元々は勝者だけじゃなく敗者(という言い方は適切ではないかもしれない)も救う宗教だった。初期のキリスト教は実際受難の歴史を辿ってきて、必ずしも成功者ばかりが信じる宗教ではなかった。ところがアメリカは、この受難を経験していない、つまり幸運にも勝者の論理だけで突き進んでこられた国家だというのだ。なのに今のアメリカ国民は、ラストベルトに代表されるように勝者とは言えない人たちが増えてきた。彼らは、なぜ自分たちは救われないんだろうと自分たちの「負け」を理解できない。キリスト教による「富と成功」の福音、そんな伝統がアメリカを覆っているのだという。
 そしてもうひとつの忘れてはならない伝統が「反知性主義」なのだという。これは勘違いしがちだけれど、「反・知性」なのではなく、「反・知性主義」と解釈すべきだという。つまり知性そのものに対する反発なのではなく、ハーバードに代表されるエリートと政治が結びついて権威となることに対する反発なのだという。そして反知性主義とポピュリズムは相性がいい。
 こんな風にして、宗教国家としてのアメリカを解説しているのが本書である。新書という形式上、著者としては言いたいことをすべて盛り込むことはできず論理の飛躍があったりする部分もあるんだろうとは思う。しかし、単純にアメリカを自由と平等の国だと考えるのは早計すぎる、というのは本書を読むとよくわかる。現代の世界情勢を語る上で、こういったアメリカの特性を知ることは必須の知識であろう。

2018年5月13日日曜日

『失敗の科学』マシュー・サイド

 ディスカヴァー・トゥエンティワン。有枝春 訳。副題「失敗から学習する組織、学習できない組織」。
 失敗が人命に大きく関わる業界として、医療業界と航空業界がある。ところがこのふたつの業界には大きな違いがある。患者の10人に1人が医療過誤によって死亡または健康被害を受けているとの研究結果もある医療業界。それに対して2014年のジェット旅客機の事故率が100万フライトに0.23回という航空業界。その違いはどこから来るのか。それは失敗との向き合い方にあるのだという。失敗の原因を、仕方のないこと、個人の資質の問題にするのではなく、徹底的に科学的に調べ上げ、業界全体で共有していけているかどうか。
 医療業界だけでなく、政治においてもふつうの企業活動においても、さらにはスポーツにおいても、失敗が起きたときに誰かをスケープゴートにしてそれで解決させてしまっていることはないか。本当にその誰かがすべての責任を負うべきなのか。他に問題はないのか。こうした解決を行うことで、真の原因は改められることなく、同じ事故はいつまでも続く。逆に失敗を隠蔽することにつながり、 事態はいっそうひどい状況になっていく。本書ではそのような具体例を数多く取り上げ、失敗との向き合い方を指南する。
 大きな成功を収めている企業やスポーツ選手らは、ずっと成功の道を歩み続けてきたわけではないのだという。数多くの失敗をし、それらの原因をこまめに調べ、改善を行い、次につなげていく。そういった努力の積み重ねが彼らの成功につながっている。
 日々の報道、SNSなどを見ていると、安易な犯人捜し(魔女狩り)に終始し、それだけで満足してしまっている例が多くあるように感じる。人間はそういったスケープゴートをターゲットにすることで変な満足感、正義感みたいなものが満たされてしまう生き物なのかもしれない。しかしそういった行動や懲罰は問題解決にはつながらない。むしろ問題の本質を隠すことさえある。組織の成長だけではなく、個人の成長、社会の成長のためにも、本書を一読して、失敗との向き合い方を今一度考え直すことが大事だと感じた。

2018年5月12日土曜日

『Autumn』George Winston

 1980年。『オータム』ジョージ・ウィンストン。
 ちょっと前に、番組だったのかCMだったのか忘れてしまったのだけれど、テレビからジョージ・ウィンストンの『Longing/Love』(『あこがれ/愛』)が流れてきて、ああ、懐かしいと思い、このアルバムに入っていることを確認して、買ってみた。『Longing/Love』は昔から何度も色んなCM等に使われてきたので、聞いたことのある人は結構多いんじゃないかと思う。ちょっともの悲しげな、ソロピアノ曲だ。そしてまたこのアルバムに入っている7曲すべてが、同じくソロピアノによるものである。どの曲もわりとメロディーははっきりしており、ややスローテンポの癒やし系の音楽だ。ただし今風の環境音楽とは系統が違って、少し古くさく感じる面もないではない。あと、趣味の問題だけれど、ピアノの音があまり好みの音ではなかった。もうちょっとやわらかい音が好きかな。少しキンキンして聞こえる。
 話は変わるけれど、このアルバムがウィンダム・ヒル(Windham Hill)・レーベルから出ていることを知って、びっくりした。ウィンダム・ヒルはギターのイメージが強かったので(アレックス・デ・グラッシ、ウィル・アッカーマン、タック・アンド・パティ、マイケル・ヘッジスなど)。色んな音楽を出していたのですね。

2018年5月5日土曜日

『ブルンディ・ムバンガ・ナチュラル(2018)』横井珈琲

 Burundi Mpanga Natural。ブルンディのムバンガ・ウォッシングステーションのコーヒー。ブルンディの農家は小規模なものが多く、ウォッシングステーションと呼ばれる生産処理場に持ち込んで、コーヒー豆を処理しているのだという。だからこの豆も、ムバンガ地区の豆ではあろうけれど、単一農園のものではない。このステーションの処理方法はウォッシュトプロセスが主なようだが、このコーヒー豆はナチュラルプロセスによるもの。
 わりとすっきりとした飲み口で、ビワや梨といったようなさっぱりとした酸味を感じる。華やかな香りが心地よく、フルーツミックスジュースのような複雑さも持っている。くせは少なく飲みやすいが、スペシャルティコーヒーっぽい高級感も持っていて、なかなか贅沢なコーヒータイムを味わえる。

工房 横井珈琲

『Having』Trespassers William

 2006年。トレスパッサーズ・ウィリアムのサード・アルバム。
 私がインディーロックやドリームポップ・バンドとして知られるトレスパッサーズ・ウィリアムを知ったのは、ロッテ・ケストナー(Lotte Kestner)が以前所属していたバンドだと聞いたときが初めてだった。ロッテ・ケストナーの本名はアンナ・リン・ウィリアムズ(Anna-Lynne Williams)といって、トレスパッサーズ・ウィリアムではヴォーカルやギターを担当していた。私は彼女の声や歌い方がとても好きだったので、導かれるようにこのバンドに到達した。
 ロッテ・ケストナー名義の曲よりは多少音数が多くてにぎやかな気はする。でも基本はそんなに変わらなくて、なんだかアンビエントな、あるいは空中を漂っているような、そんな音楽である。ただ、パッドのせいか音があまりクリアではなく、厚い雲に覆われているような雰囲気を感じないでもない。
 このバンドは2012年に解散しているけれども、もうちょっと他のアルバムも聴いてみようかと思っている。

2018年4月30日月曜日

小学生以来の長期入院

 不覚にも運動中に脚を怪我してしまって、入院し手術をした。そんな入院中に、暇をもてあましてボールペンで描いたスケッチ。
 描いている途中に看護師さんが来て車椅子をずらしてしまい、そこからは想像で描いた部分もあるので、パースがおかしくなっていたりするのも、まあ愛嬌。ボールペンのインクが途中から出なくなったのだけれど、ほぼ描き終えていたのでこれくらいの雑な完成度でもいいかな、と自分に言い聞かせてもいる。
 本当は入院中にアップしたかったのだけれど、スマホからはどうしても画像をアップできず、退院してからのアップになった。そんなわけでしばらくブログの更新が止まっていたりする。
 それにしても、手術前よりも手術後の方が痛みがひどく、さらにいえば入院中よりも退院してからの方が痛みがさらに一層増すっていうのは思いもよらなかった。痛み止めのセレコックスで全身薬疹が出て、痛み止めを飲んでいないせいもあるのかもしれないけれど。また、薬疹って薬をやめたらすぐによくなるわけではなく、結構長く後を引くことも初めて知った。薬疹のケアが意外と面倒くさい。入院中に処方された薬が原因の薬疹だったら、その分の治療費くらいは自費じゃなくてもいいのに、とちょっと思ったりもしたけれど、そこまで病院側が負担するとなると病院経営はうまく成り立たなくなるのかもしれないですね。
 というわけで以前のように活動できるようになるまでの半年の間、リハビリをがんばらねば。