2017年12月16日土曜日

『やってはいけないデザイン』平本 久美子

 翔泳社。
 ノンデザイナー向けのデザインの入門書である。デザイン以前に、まず原稿の話から入っているのがおもしろい。説明文やタイトル、キャッチコピーのことだ。その話をした上で、レイアウト、文字・フォント、カラー、写真・イラストなどについて解説している。ほぼすべてのテーマについて、「やってはいけない!」例と「これでOK!」例を提示し、それに解説を加えるという形をとっている。最後にはフリー素材サイトの紹介やお薦めのデザイン参考書についても触れている。
 個人的には「やってはいけない!」デザインなんてものはなくて、ただ、ダサかったり伝わりにくかったりするデザインがあるだけだと思っている。それはさておき、この本に挙げられている「やってはいけない!」例は、わりと私の職場でもよく見るちょっとイケてない素人臭いデザインであることは確かである。デザインを外部に発注してこんなのが出てきたら、たぶん呆れる。本書ではそれをどうすれば改善させることができるのか改善案を提示しているわけだけれど、ほんのちょっとのことなんだけど、驚くほどデザインが良くなっている。プロとしてはこんなのは当たり前のことばかりかもしれないけれど、業務上で名刺やパワポ資料、チラシなどを自分で作らなければならないときには、大いに参考になるだろう。とてもわかりやすかった。

2017年12月13日水曜日

『世界の最新医学が証明した 究極の疲れないカラダ』仲野 広倫

 アチーブメント出版。
 著者は日本ではちょっと聞き慣れない「スポーツカイロプラクター」という仕事をしている人だ。医師とほぼ同様の教育を受けた、手術を行わずに主に手技によって施術をする骨格と筋肉の専門家らしい。カイロプラクターはアメリカでは重宝されているらしくて、オリンピックチームにも同行するのだという。日本における柔道整復師や鍼灸師と通じるところもあるのかもしれないが、科学的な知見に基づき、合理的な診断を行うところが違うらしい。
 ストレッチを運動前にしても効果は上がらないだとか、毎日1万歩歩いてもしょうがないだとか、いろいろと日本人の常識とは違うことを、科学的根拠を持って説明している。大事なことは機能運動性の向上だということで、日常の動作をするときに気をつけたいことや、その向上のためにやっておきたいエクササイズなどをわかりやすく解説している。
 ただ、「疲れないカラダ」の意味するところがこの本を読んでもよくわからなかった。腰痛だとか肩痛を良くする方法、つまり「痛み」を軽減して元気に生きるための方法については書いてある。でもそれが「疲れない」ということかといえば、多分そうではなくて、著者の使う「疲れない」と、私の感じる「疲れない」の意味合いがなんとなくズレているような気がした。
 結局著者の言いたいことは、この本に書かれていることをきちんと実践して、それでもどうにもならないときはカイロプラクターに診てもらえということなのかな、と思った。内容的にはさらっと読めてしまう軽い本なので、ちょっと物足りなさを感じた。

2017年12月10日日曜日

『Rest』Charlotte Gainsbourg

 2017年。シャルロット・ゲンズブール。
 フランス語の響きが好きで、たまにフレンチ・ポップなぞを聴いてみたくなる。そんな気分を感じ取ってくれたのか、ベストなタイミングでシャルロット・ゲンズブールの新譜が出たというのを聞いて、取り寄せてみた。
 シャルロット・ゲンズブールは私にとっては女優であって、以前に何度か彼女が主演の映画を観たこともある。でも歌手としての彼女はよく知らなくて(映画の主題歌なども担当していたようだが)、今回がほぼ初めての彼女の歌との出会いだった。ジャケット写真を見たときは、正直私のイメージしていたシャルロットとはまったく異なっていて戸惑ったが、歌声には彼女の印象がそのまま残っていた。軽やかにふわふわと浮いているようにささやくように歌い上げるさまは、母親のジェーン・バーキンとはまた違っていて、より私好みだった。ポール・マッカートニーから提供された『Songbird in a Cage』以外はすべて彼女が作詞していて、曲調としては全体的にエレクトロニックな雰囲気を持つ曲が多い。『Rest』や『Sylvia Says』、『Dans Vos Airs』なんかが結構好きな曲だった。ちょっとほかのアルバムも聴いてみたくなった。

2017年12月7日木曜日

『○×でわかる! デザインが良くなる5つのポイント』MdN編集部

 エムディエヌコーポレーション。
 2つのチャプターからなっていて、前半が「クライアントからの注文通りに仕上げるデザインのコツ」、後半が「クライアントからの注文に柔軟に対応する写真・文字・配色のアイデア」となっている。とはいうものの、本書の主役は明らかに前半で、クライアントからダメ出しされる前の「Before」と、それを改善した「After」を1セットにして見開きで示している。それがタイトルにある「○×」に対応している。そして、そのポイントとなるのが、「レイアウト」、「配色」、「文字」、「写真」、「図・イラスト」の5つというわけだ。クライアントの要求は、「高級感を出して」とか「明るく元気な印象にして」とかいうように50種類に分けられていて、○×の例もそれに合わせて50の例を提示している。
  確かにそれらはクライアントの要求を満たしていて、「Before」よりも「After」の方が良くなっている。でも「Before」は見るからに何も考えないでデザインしてみましたという感じの例も多く、わざとイケてないものにした感が否めない。なんかそこのところがちょっとモヤモヤした。改善案も、大幅にデザインを変更しているものから少しの変更にとどまっているものまで幅があって、どっちかに統一した方がわかりやすいと思った。改善案の方向性はそれこそ無限にあるだろうから。
 ただ、多くのデザイン例を見ることができて、ああ、こういうやり方もあるんだなと参考になることも結構あった。アイデアに行き詰まったときにちょっと開いてみるという読み方をするなら、わりと役に立つのかもしれない。

2017年12月3日日曜日

「あきの雫」がクリエイティブ・コモンズを採用

 私のホームページ「あきの雫」上の作品を、クリエイティブ・コモンズの「表示」「非営利」「改変禁止」4.0国際ライセンスのもとで公開することにしました。今までは「All Rights Reserved.」としていたのですが、それをやめました。簡単に言えば、非営利であれば、「詩月あき」という名前を表示した上で、改変しない状態で作品をそのまま利用するのであれば、自由に使っていいよ、ということです。
 最初は営利目的でもいいかな、と思ったのですが、後々の自分の活動に支障が出るといやなので思いとどまりました。たいした絵は描いていないですが、葉書でもフライヤーでも自由に使ってください。
 ホームページの公開方法を変えたついでに、デザインもちょっと変えて、日本語のWebフォントも導入してみたんですが、ページの読み込みに時間がかかってしまって、しばらく表示がおかしい状態が続きます。そのうち対策を考えますが、来年かな。

『あきの雫』http://akinoshizuku.com/

2017年12月1日金曜日

『多数決を疑う』坂井 豊貴

 岩波新書。副題「社会的選択理論とは何か」。
 物事を決める時、あるいは選挙、投票。そんなとき当然のように多数決によって選ぶことが多い。そしてそれが民主的なやり方なのだと多くの人に思われている。でもそれは本当だろうか、ということを本書は問うている。
 例えば3人の候補者がいる選挙を考えたとき、原理的には3分の1を超える得票が得られれば、その他の3分の2弱の人が、絶対にその人が嫌だと思っていたとしても当選するということがありうる。しかし多数決ではなく、ボルダルールというものを使うと、当選しないことも出てくる。ボルダルールとは、1番いいと思う人には3点、2番目には2点、3番目には1点というように点数を割り付け、投票を行うものだ。このやり方の方が民意を反映しているといえないだろうか。本書でも検討しているように、ボルダルールに欠点がないわけではない。でも、単純な多数決よりも民主的と言えないだろうか。
 今のはほんの一例であるが、 多人数で物事を決めるやり方は、多数決以外にもいくつも考えられる。比例選挙区制やトーナメント制もその例のひとつだ。その方法の選び方次第で、結果もまた違ってくる。「多数決は民主主義だ」とか、「多数決で決めたんだから負けた方は従わなければならない」とか、逆に「民主主義は少数意見をくみ取ることだ」とかいろいろ言われるけれど、ことはそう簡単な話ではなさそうだ。この本は、そんな風に「多数決」を批判的に検証して、社会的選択理論とは何かということを読者に教えてくれる。それと同時に、民主主義とは何かということを読者に深く考えさせる。今の社会の仕組みのあり方は、本当にこのままでいいんだろうか、と。

2017年11月26日日曜日

『マイケル・ヘッジス アコースティック・ギターの革新者』南澤 大介

 リットーミュージック。
 マイケル・ヘッジス(Michael Hedges)は私の好きなギタリストベスト3に入るミュージシャンだが、これまで手に入る楽譜集としては本人らの監修による『Rhythm, Sonority, Silence』(7曲収録、英語)くらいしかなかった。それが今回、日本語で、押尾コータローのスコアの採譜や『ソロ・ギターのしらべ』シリーズでも知られる南澤大介によって、楽譜集が刊行された。わずか43歳という若さでこの世を去ったヘッジスの生い立ちや音楽の話、奏法の解説に加えて、9曲のスコアが掲載されている。前著と重なる曲も2曲あるけれど、解説が詳しいのでうれしい。収録されている曲は以下の通り。

  • The Happy Couple
  • Baby Toes
  • Peg Leg Speed King
  • Eleven Small Roaches
  • Silent Anticipations
  • Aerial Boundaries
  • Hot Type
  • Ragamuffin
  • Two Days Old
 マイケル・ヘッジスの登場以降、アコースティックギター・シーンは明らかな進化を遂げ、ヘッジス・フォロワーと呼ばれるギタリストも数多く誕生した。私のブログで取り上げているギタリストの中にも、彼の影響を受けた人は多い。彼のテクニックは確かにすごいのだけれど、それ以上にその音楽性を知ってもらいたい。そんな彼の曲を自分の手で弾ける手助けをしてくれる本書の刊行は、素直にうれしい。